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2009.10.28.Wed

『君に届け』第4話が面白い〜表情の描写の有無〜

『君に届け』第4話が面白い〜表情の描写の有無〜を含むブックマーク




『君に届け』第4話「噂」ついて色々と書いていきたいと思います。




表情


 第4話「噂」では、黒沼爽子と吉田千鶴・矢野あやね・風早翔太達に生じた「ズレ」を主題の一つとして展開していく。ここでの「ズレ」とは意思の不疎通であり、今回爽子と吉田達は流された「噂」によってコミュニケーションがうまく取れない状態に陥る。その意思の疎通・不疎通を第4話では、登場人物たちの「表情」を描写する・しないによって表現していくことになる。


 Aパート、学校の外のベンチでお弁当を食べている爽子のもとに、吉田と矢野がやってくる。三人は仲良く昼食を食べ、爽子のおかずを吉田が食べたり、矢野のおかずを爽子が食べたりする。前に書いた「君に届け 第2話「席替え」が面白い」の「贈ること」の段を参照するが、このおかずのやりとりは爽子と吉田達の融和の象徴であり、贈り・贈られたものを受容することによって(食べること・自分の中に入れること)、彼女たちの心は繋がり、互いの意思の疎通が十分に取れている。ここでの爽子と吉田達の表情はちゃんと描写されており、爽子は吉田達の表情を見ることができ、吉田達も爽子の表情を見ることができる。意思の疎通がとれている時は、爽子と吉田達は互いの表情を視認することが可能なのだ。第4話では、相手の表情を読み取れるということは相手の考え・心が読み取れることと同じ意味を持つ。同じくAパート、爽子と詩乃が会話している最中、吉田と矢野がやってくる。この場面は、爽子と吉田達の間にちょっとした「ズレ」が生じる所である。爽子と詩乃を影から覗くような吉田達のPOVショット(だと思われる)から爽子のクロースアップに切り替わる。ここでの爽子の表情は不透明であり、ちゃんと描かれない。吉田達の主観(POV)では、爽子の表情は見えない・読み取れない状態。今まで吉田達は爽子の表情を読み取れていたのだが、ここでは読み取れなくなる。この表情が読み取れないということは、相手の考え・心が読み取れなくことと同義であり、ここから爽子と吉田達の間に暗雲が垂れ込めてくる。

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 教室で吉田と矢野が爽子に「私たちのことが好きか」と尋ねる所では、表情を描写する・しないの「切り替え」によって、互いの変化をうまく描いている。吉田達が「私たちのことが好きか」と爽子に尋ねる。背景の色彩は白くなり、空気が一変、緊迫感が生じ、吉田達の真剣さが画面から伝わってくる。机に置いた吉田の手の指先は爽子の方に向けられ、向かい側の爽子の握った手へとカメラは移動する。吉田の爽子に向けられた伸びた指からは、吉田の真意を問いただす意志の強さが感じられ、爽子は握って丸めた手で吉田の想いを受け止める。爽子は吉田の問いに答えようとするが、それが吉田達にはうまく伝れられなく、吉田達を好きじゃないという誤解を招いてしまうことになる。ここでも前と同じく爽子の表情は不透明であり、吉田達は爽子と意思を読み取れない。吉田は「わかった」と言い、指先は爽子に向けられることはなくなった。ここで吉田達の視点から、爽子の視点へと切り替わり、今度は吉田達の表情が不透明・描写されなくなる。次は爽子が吉田たちの表情を読み取れなくなり、爽子は吉田達の心・考えが読み取れなくなる。そして爽子は自分の想いが伝わったと勘違いする(この後一緒にいると迷惑だという勘違いをまたするわけだが)。

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 「ズレ」が「ズレ」を呼ぶことになる。下駄箱での爽子と吉田達の場面では、また爽子の表情は描写されなくなる。吉田達には、爽子の考え・真意がわからず(勘違いをする)、完全に互いの意思の疎通は途切れている。この前の下校の場面では風早までもが、爽子の表情=心情を見ることができなくなっている。

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 Bパートラストでは、爽子、吉田と矢野、風早の三人を捉えるのだが、そこでは彼女/彼達の表情は描写されることはない(爽子と風早は後ろ姿)。Aパートで見せた彼女/彼達の意思の疎通は無くなり、その疎通は途切れてしまうことになる。Aパートで吉田達と仲良く昼食をとった場所で、爽子は意図的にフェンス越しに捉えられる。窮屈なフェンスの枠で区切られたその姿には、彼女の心に蜘蛛の巣のようなフェンスが張り巡らされて、心が締め付けてられているような彼女の沈痛な心情が滲み出ている。

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 第4話では、意思の疎通・不疎通を、登場人物達の表情を描写する・しないで表現し、登場人物たちの心情の変化を視覚的に表していく。





 第4話冒頭では、今回起きる出来事の前兆として、泡を使う。Aパート冒頭、爽子が入浴している場面。彼女は湯船につかりながら、吉田や風早達がそばにいてくれる幸せを噛みしめる。温かいお湯は、彼女の幸福そのもの(吉田や風早のこと)であり、爽子は口の部分まで湯につかり、幸福を体全体で感じる。しかし、お湯=幸福の中に、泡が生じる。その泡から場面が転換し、吉田達の悪い「噂」へと移行する。泡のはじけて消えてしまう脆さは、幸福が長続きせず消えてしまうことを物語る。場面の最後に泡を最後に映し出すことによって、これから起きる吉田や風早の齟齬を予見し、端的に示している。

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最後に


 吉田も矢野も本筋に入る前に話を止めるのはどうかと・・・。





おまけ


 Aパート、トイレで吉田達が回想する所。場面転換が印象的。水の中に潜って場面が切り替わるのは、回想=彼女たちの意識の深層に入り込むからなのか?

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 背景が華やかだと人物の喜び具合が目で見えてわかりやすい。


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