『迷い猫オーバーラン!』第11話「迷い猫、割れた」のメモ

 監督・コンテ/草川啓造、脚本/木村暢、演出/吉田泰三、作画監督/佐々木貴宏



 第11話の監督は、草川啓造さん。前回予告の「血のブルマ事件」というフレーズから、ギャグ回になるんだろうなと思っていたら、やっぱりそのまんまだった。パロディやミュージカルなど、バカバカしいギャグ回に。ブルマ派とスパッツ派が争うっていう時点でもうバカバカしいんだが。でも、裏では、文乃・千世・希との恋愛話と希の過去話をクライマックスに向けてまとめている堅実な回であった。それと、カットのテンポの良さ。手堅い良回だった。


 「スパッツの歌」、「ブルマの歌」まで作ってのミュージカル。踊ってはいないんだけどね。



 最初、白であったモブが、スパッツ派女子の「赤」とブルマ派男子の「青」の二つの色に色づけされ、互いの勢力が明瞭になっていく。モブの使われ方が印象的。



 ブルマ派とスパッツ派の争い。バカバカしい争いかと思われたが、裏では巧との二人三脚を獲得するという争い、巧を取り合う争いだったわけで。ブルマ派VSスパッツ派=巧を取り合う千世と文乃の恋愛バトル。このブルマ派とスパッツ派の戦い(巧を取り合う恋愛バトル)に、参加しないのが巧と希(それと大吾郎)。巧はいいとして、なぜ希は恋愛バトルに参加しないのか。それは後段で。



 希が猫にご飯を与えるシーン。一匹の猫に対して、「これはこの子たちの分」と云って、ご飯を食べさせない。希は「お皿の上の幸せには限りがある」と云う。体育館のシーン。希は巧に「4匹の猫がご飯のお皿を取り合うとき、私はどうしたらいい?」と尋ねる。4匹の猫っていうのは、文乃と千世と希と乙女であり、4人が巧を取り合う状況を猫に仮託して話したわけで(乙女は対象外でもいいと思うだが)。第3話で描かれた希の悩みがまた反復される。希は人と争うというか、誰かから何かを奪ってしまうことを忌避しているようだ。それと、幸せを求めすぎないようにしている。故に、巧を取り合うことが真の目的のブルマ派とスパッツ派の争いには加わらない。希の悩みと過去が最終回でどのように解消されるか。最終回はサトジュン。うまくやってほしい。



 徹底的なショットの対比。騒ぎまくる文乃と千世とは対照的に物静かな希。ブルマ派(千世)対スパッツ派(文乃)の喧騒とガランとした体育館にいる希。静と動のコントラスト。この静と動のコントラストが、巧を取り合う文乃と千世とそんな争いから一歩身を引いてしまう希の姿をより鮮烈に映し出す。



 ブルマ派(千世)にもスパッツ派(文乃)にも属さない巧。選択することをしない。千世も文乃も希も選ばないどっちつかず。体育館での希の問いにも、千世や文乃の問いにも、まともな返答をしない。このこれでもかっていうぐらいに描かれる「どっちつかず」の巧が誰かを選択をするっていうのが最終回なのかなと思いもしたが、まぁ結局は何も選択せず曖昧な感じに終わるのだと思うけど。何かしらの答えは出すのだろう。



 おまけ。今回のオンライン編集(板倉玄さん)はというと・・・。