『花咲くいろは』第17話「プール・オン・ザ・ヒル」のメモ〜西村純二〜


 気になったことをメモ。


 脚本/西村ジュンジ、コンテ/西村純二、演出/太田知章。


 第16話「あの空、この空」に続く前後編の後編。


 

 第16話と第17話は若旦那と女将のエピソードだ(崇子と若旦那のエピソードでもある)。

 女将は皐月に喜翠荘を継いで欲しいと考えていた。子供の時から女将はずっと皐月を見ていたのだ。キラキラと輝きカリスマ性のある皐月とは違い、どこか頼りなく地味な縁。間違いなく縁は皐月の影に隠れる存在だっただろう。第16話にプールの回想シーンがある。ぷかぷかと浮き輪で浮いている縁は、プールサイドにいる女将を呼ぶが、女将に声は届かない。すると、目の前に勢いよく水面から身体を出したキラキラと輝く皐月が登場する。そこで回想は終了する。この回想は第17話に続く。プールから上がった皐月を女将はずっと見ている。そこに、二台のジェット機が轟音を響かせ、飛行機雲を出しながら飛んでいく。その2台のジェット機は平行状には飛ばず、いずれ交わるように飛んでいく。縁は、また女将を呼ぶ。第16話で何度名前を呼んでも振り向かなかった女将だが、今回は女将は振り向き、縁を見る。

 この回想と二つの飛行機雲は、女将と縁の関係を象徴する。



 女将(母)はずっと皐月のことを見ているものだと縁は思っていた。姉に対してコンプレックスを持ち、母も姉のことばかり考えていると感じていた。回想が示すように女将はどんなに呼んでも自分を見ることなく、皐月ばかりを見ている。

 しかし、女将は縁のことをちゃんと見ていたのだ。

 他人を庇えるようになり成長した縁を見て、女将は感心する。女将は自分の息子もちゃんと見ていた、想っていたのだ。第17話の回想で、女将は振り向き縁を見る。皐月だけでなく縁も見る。そこで登場する寄り添うように飛んでいく2台のジェット機、いずれ交わる飛行機雲は、縁と女将をあらわしているかのようだ。

 女将と縁の親子の絆を表現する2台のジェット機




 二本の飛行機雲のように、女将と縁も寄り添っている。


 その寄り添うような飛行機雲を見て、結名は「変な雲」と云う。



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 凝った見せ方で面白かった。どのようにして魅力的に見せるか、効果的に見せるのか。


 西村純二的な見せ方。

 俯瞰ショットの多さ。



 ハーモニー2連発。




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 派手なお化粧もとれ、勝負服も水に濡れ透ける。それは、身も心も裸になるということ。崇子の心が露わになる。




 第11話やOPでも示されているが、皐月は都会に身置く人間だ。わざわざ東京タワーに皐月を配置するのは、緑豊かな喜翠荘とは全く別の世界にいる存在、高層ビルがありコンクリートの世界にいる人間だということ指し示すため。皐月が見ている世界は、都会の景色であり、喜翠荘がある丘からの景色ではない。




 影+水面の反射で彼女の心理的陰影を。



 ここで髪が揺れる。カメラが引くと、扇風機があり、その送風によって髪がなびいたことがわかる。髪をなびかせるようにして、崇子の「はい」とい台詞を効果的に見せる。ここの見せ方好きだ。




 こういう構図の見せ方とかも良い。




 水面に反射させる見せ方も好きだ。




 西村純二監督の脚本もいいけど、コンテとかももっと見たいです。