『君と僕。』第10話「on your mark」のメモ


 脚本/花田十輝、 コンテ/島崎奈々子、演出/越田知明・島崎奈々子。



 良き回でした。


 千鶴と茉咲の描写が良かったです。



 アバンでの千鶴のモノローグで示されるように、彼は心に何かひっかかりを覚えている。本人に自覚はないが、どうやら茉咲のことが気になっているようだ。




 お化け屋敷において、茉咲に手を握られたりして(これは茉咲の勘違いよるもの)、千鶴は徐々に茉咲のことが気になっていく。


 春たちのクラスが出している喫茶店で台詞の練習をしている茉咲と千鶴たちは会う。そこで、茉咲は台本の紙で指を切ってしまう。千鶴は、茉咲に絆創膏をまいてあげようとしたが、ひどく拒絶される。


 Bパートの冒頭において、茉咲と春の出会いのエピソードを千鶴は聞く。春も茉咲に絆創膏をあげようとしたが、ひどく拒絶された。でも、春は拒絶されても諦めることなく、茉咲を追いかけて、絆創膏をあげた。そこで、千鶴は自分と春の違いに気づく。千鶴は茉咲に拒絶されたらそこで諦めてしまうが、春は拒絶されても諦めることなく茉咲に接する。



 春は「追いかける男」であり、千鶴は「追いかけられない男」なのだ。



 茉咲は春にドジな所、失敗した恥ずかしい姿を見られるのが嫌であり、台本の紙で指を切ったことを春に隠したりする。そういう性格なので、演劇で失敗してしまいとてもショックを受け、どこかに行ってしまう。


 千鶴は茉咲を探して校内を歩き回る。そこで、茉咲が女子トイレにひきこもっていることがわかる。


 ここで感動的なのは、千鶴が女子トイレに入っていくことだ。花子さんの衣装を着ているとはいえ、男子が女子トイレに入っていくことなど普通はできない。でも、茉咲のために千鶴は一歩を踏み出す。


 そう、追いかけるのだ。


 追いかけられない男であった千鶴は、茉咲のために追いかける男へと変わる。変質者扱いされようが、なんだろうが、千鶴は茉咲をどこまでも追いかける。


 千鶴は茉咲をずっと励まし続け、慰める。いつもふざけている千鶴だが、必死に、真剣に、茉咲に接する。その甲斐もあってか、茉咲は元気を取り戻す。


 演劇で茉咲は、シンデレラを励ますねずみの役を演じた。女子トイレでは、茉咲がねずみからシンデレラへと変わり、千鶴がねずみとなり、シンデレラを励ます。




 茉咲が女子トイレが出て行ったあと、千鶴は自分の姿を鏡で見る。「この格好は無いだろ・・俺」と千鶴は云う。自分の格好を忘れるほど、千鶴は懸命になっていたのだ。


 自分のことなど見てなく別の人のことを見ている人のために、なりふりかまわず行動する。この点が良かった。


・・・・


 紙コップを銜えて話す千鶴の仕草がツボだった。アニメでこういう仕草って、なんか新鮮だ。他でやっているの見たことなかった。



 猫の描写がいつもより冴えていた。要が静奈に褒められて頬を赤く染めている時に映し出されるのが、この猫。この猫の顔ベストだな。