『中二病でも恋がしたい!』 自分らしくと中二病


 第5話「束縛の…十字架(ハード・スタディ)」を観て。


 第5話を視聴したとき、印象的なレイアウトやケレン味ある見せ方、躍動感やかっこよさから山田尚子さんか内海紘子さんかと思っていたら、後者だった(こういう派手な見せ方は京アニでこの二人ぐらいしかいない)。


 『けいおん!!』の頃から、目立っていたけど、いまは本当にすごい。今までの回で一番面白かった。今回は、どことなくけいおんっぽい見せ方。



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 本編中、七日先輩が気になる言葉を云っている。


 丹生谷がチアリーディング部に行くのにちょっと疲れているらしい。そもそも、丹生谷はチアリーディングに興味があったわけでなく、中二病と正反対だから入ったとのことだ。そのことに関して、七日先輩は丹生谷は無理をしていて、六花たちは無理していないと云う。


 七日先輩から見れば、六花は自分の好きなこと(中二病)を思う存分しており、丹生谷は好きでもないことを仕方なくしているように映っている。七日先輩は、中二病に対して、自分に正直に生きている人・自分の好きなことを隠さない人という認識を持っているように思える。



 七日先輩も凸守も自分に素直に生きている。自分のしたいことを隠さずに生きている。


 七日先輩は、「昼寝」という人と変わった趣味を持っている。自分専用の枕を持って所構わず昼寝をする姿は、かなりおかしいだろう。他の人とは違く見える。でも、彼女はそれを隠さず、人に合わせることもなく、昼寝をやめない。自分に素直な人なのだ。


 凸守も七日先輩と同じく自分の欲望のままに生きている。自分の好きなことを曲げようとはしない。全身全霊で中二病を満喫しており、彼女はとても幸せそうだ。彼女が高校生になった時、果たして勇太と同じく中二病を過去の恥部というのだろうか。



 七日先輩も凸守も原作には登場しないアニメ版オリジナルキャラということだが、なぜこの二人をアニメに登場させたのかわかるような気がする。自分に素直な人間、好きなことに真っ直ぐな人間という勇太とは違う存在だからだ。勇太は途中で中二病をやめた人間であり、自分の好きなことを押さえつけた人間だ。


 第2話で勇太がモーゼルを使っているところを七日先輩に見られて、必死に隠そうとする。この行動から見て取れるように、勇太はこういうものがまだ好きなのだ。


 勇太や丹生谷は、自分が勘違いして恥ずかしいことをしていたと気づいたから、中二病をやめたのだろうか。本当にそうなのだろうか。周りの人と違うから、疎外されたから中二病をやめたのではないか。本編中、勇太が中学時代一人で食事をしている姿の描写が物語るように、彼はおそらく周りから受け入れてもらえず孤独だったように思える。人に差別されるから、奇異の目で見られるから、中二病をやめた。周囲の人に合わせるべく、自分の興味があること/分野を押さえつけたのだ。



 六花は自分の好きなことをまだ押さえつけてはいない。自分の思うままに生きている。でも、それを続けることができるのだろうか? 六花が好きなことは、ゴスロリのファッションだったり、オカルト趣味だったり、大勢の人が持つ趣味とはちょっと違う趣味だ。そんな彼女に、好きな人が出来たとき、好きな人に中二病をやめろといわれたら、好きな人が自分の好きなことが嫌いだったら、彼女はどうするのか? 七日先輩も凸守のように自分のやりたいことをやめずに、自分に素直に生きるのか。それとも勇太のように自分の好きなことを押さえつけるのか、丹生谷のように皆が羨むからといって興味のないことをやるのか。六花はどの道を選ぶのか。六花を受け止める人は現れるのだろうか。



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 気になったことを色々と。


 冒頭からテンションが高く、アオリで見せたり、カメラワークも激しかったが、Bパートのキッチンでの勇太と六花のシーンでは一転して、落ち着きのある静謐な画面設計になる。カメラも動かさなくなる。静と動の強弱の見せ方が良い。このシーンのために、前半であんなに動かしていたのかと思うほど、対比が効いている。


 勇太の心理描写も良い。片付けていない朝食の食器を見て十花が帰っていないことをわからせ、六花が一人ぼっちだということがわかる。十花があまり帰ってこない一人ぼっちの家は、彼女の居場所ではなく、今や七日先輩や丹生谷がいる同好会が彼女の居場所なのだ。そのために勇太は頑張る。彼女の居場所をなくさせないために。




川沿いでの六花と勇太のシーン。夕暮れが美しいシーンだ。



 ラストの六花の振り返るバストショット。勇太から送られたメールアドレスは、六花にとって初めてもらった男性からのプレゼントだったかもしれない。それに加え、自分の中二病を受け入れてくる男性は勇太が初めてなのかも。


 あの立花の笑顔は恋をしている顔であり、それを恥ずかしげもなく描写できるのが女性演出家の力なのか。




 前回の記事の続き。携帯のデコレーションに続き、筆箱もデコレーションが。




 何時まで子供を起こさせてんだよ。