『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』の細やかな描写


 気になったので色々と。

 TST登場以降はとんでもない展開だが、前半部分の細やかな描写がなかなか良かった。

 台詞で説明せずに映像で表現していくのが好印象。


 Aパート。主人公・神前夕哉の起床のシーン。夕哉の机の上が映し出され、そこにおそらく速水もこみちをモデルにしたと思われる料理本が置いてある。彼が、料理ができる男だということは、後に描写されるのだが、それを先に説明している。また、彼が料理について学んでいることもわかる。


 家族での朝食シーン。父が海外赴任することを、直接的には云わず、日常の会話の流れで間接的に説明している。それに加え、写真を映すことによって、父子家庭であること、父が技術者であることをさらっと描写する。ここのさらっと加減が良い、長々と説明してしまう作品が結構多いので。




 美月と夕哉の玄関前でのシーン。カットを割らずに1ショットで描写する。前景(美月)と後景(夕哉)を使っての芝居がなかなか良い。多層的な見せ方が面白い。



 学校のシーン。漫画本がでかすぎて、まったく隠れていません。




 教室で授業中の夕哉が、窓越しにグランドで体育をしている美月を見るシークエンス。そこで夕哉は、美月が足が遅いこと・美月の笑顔を知ることになる。自分の前では見せない美月の素顔がわかってくるという、夕哉がまだ美月のことを何も知らないことがよくわかるシークエンス。




 美月のマフラーの巻き方。髪の上からマフラーを巻くっていうのが、ちょっと気になった。ネットで調べるとファンが多い巻き方らしいですね。マフラーからはみ出る髪の毛のモフっていう感じがなかなか可愛らしい。マフラーの巻き方で登場人物の特徴づけをするのも細かい。



 病室でのシーン。美月のカバンはテレビの台の上に置き、自分のカバンは地面に置く。彼女のカバンが地面に置いて汚れないようにする配慮。夕哉が美月に気をかけているのがよくわかる。

 OPを境に主観が変わる。OP前は夕哉の主観。OP後は美月の主観。OP前に美月の主観を入れないことによって、妹が何を考えているのかわからないという雰囲気が巧く出ている。




 美月が帰宅してからの家でのシーン。ここら辺は、細かい描写が続く。美月は自室に入るとすぐに鍵をかける。誰にも入られたくないという(他者を拒絶する)気持ちが伝わる(当たり前の描写だと思うが、意外としない作品が多い)。夕哉と母の会話を聞かないように掛け布団をかぶる描写も他者を拒絶していることがわかる描写だ。夜になったのでカーテンを閉める描写などは、結構忘れながちな描写。はっきり云って描写しなくてもいいことだと思うが、描写することによって、リアルさが生まれる。人物の一動作を省略せずに丁寧に描写していくことで、現実味が出てくる(アニメには重要な部分だと思う)。


 夕哉が買ってくるプリン。なぜコンビニで売っているちょっと高めなプリンを買って来たのだろうとちょっと疑問に。安めのプリンとかでもいいのに。アニメによく出てくるのはプッチンプリンっぽいのが多いのに、なぜこっちなのか。夕哉が気を使って、ちょっと高めのプリンを買ってきたのだろうか。と思っていたら、第2話で寿日和がプリンのクリーム部分をやらしく食べる描写があり、そのためにクリームがあるプリンを買ってきたのだなということがわかる。




 第2話での美月がトイレで着替えるシーン。ここでなぜか美月はスカートを下から脱がずに上にあげて脱ごうとする。なぜそんな変な脱ぎ方をするのだろうと疑問に思った。おそらくトイレなので、床にスカートが着くと汚れるから、汚れないために上にあげて脱いだのだと思う。ホント細かいです。ちなみに第2話のスーパーで登場したお母さんを探していた女の子は、第1話でもちらっと登場してます。細かいっす。



 日常描写を細やかに表現していて良かったです。家の家具や小道具のデザインも安直なものではなくて、ちゃんと作られている。監督の畑博之さんの仕事はあんまチェックしていなかったのですが、振り返って見てみようかな。