ウェスタディアの双星

ウェスタディアの双星―真逆の英雄登場の章 (電撃文庫)

ウェスタディアの双星―真逆の英雄登場の章 (電撃文庫)

 これは期待できる!
 発売前は、購入する予定は全くありませんでしたが、他サイトの方々の間で評判が良かったので購入してみました。それで読み終わった後に気がついたのですが、この本って、お留守バンシーシリーズの作者さんの新シリーズだったんですね。前シリーズとは、全く毛色の異なるジャンルだったので、こういう話も書けたのかと、素直に驚かされました。
 さて、戦記モノの醍醐味と言えば、個人的に弱小国が大国に挑む展開だと思っているのですが、そういった意味では、ウェスタディア勢の現状は戦記モノとしては理想的な始まりだと思います。王の死後、後を継ぐはずの王子は、王位継承権を破棄して亡命するし、宰相や軍の上層部ですら、保身に走って国を逃げ出してしまいます。そんな状態から、商人出身のチェザーリが先王との義理を果たすために、王家の血を引くルシリアを捜していく展開は、まさに国興しという感じがして良かったと思います。
 まあ、国興しの部分は、結構速いテンポで消化されていってしまいましたが、他国から攻め入られて、戦争が始まったあたりから、かなり面白くなったと思います。
 うーん、主人公が誰かあやふやだったり、SFが舞台で戦艦が出てくるのに国々の技術力差が書かれていなかったりと、気になるところも多いのですが、丁寧に話が練られているためか、今後が期待できる面白さと言いますか、読み終わった後に、ルシリアが女王として成長していく姿や、チェザーリが外交で手腕を振るう姿、バドエルやアルフォーニが戦艦を率いて戦っている場面が、不思議と読みたくなってくるんですよね。シリーズの幕開けとしては地味かもしれませんが、うまくいけば長期シリーズとして続いていくのではないでしょうか。
 次の巻も購入決定、と。