司法書士とくの日記(ブログ)

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戸主の相続(35名の相続人)

相続人が多数になると相続は大変!


昭和22年5月2日までに生じた
戸主の相続については、
通常、家督相続となりますが、
除籍謄本等を取得してみると、
戸主に子(直系卑属)がいない場合で、
戸籍に家督相続の記載がなされていない
ケースがあります。
このような場合、
家督相続人が選定されていないとして)
民法附則25条2項の
規定によって、新民法が適用される
ケースがあります。
家督相続であれば、戸籍上はっきりしており、
「一人相続」ですが、
民法が適用となると、「共同相続」となり、
相続人が非常に多数になってしまうことがあります。


私が遭遇した例1


被相続人
改製原戸籍謄本の記載
「戸主 甲(昭和18年死亡)」
「妻 乙」
(戸籍には甲と乙の記載のみ)


甲の欄には、死亡の記載はあるが、
家督相続事項の記載はない。
甲には、直系卑属はいない。
(この戸籍は、分家で独立した戸籍がつくられており、
甲には、本家(他の戸籍)に直系尊属や兄弟姉妹がある)


家督相続事項の記載がないまま、
法務省令27号により、
あらたに戸籍が編製され、
「筆頭者 甲」
「乙(昭和51年死亡)」
の新戸籍がつくられている。


戸主の甲が死亡した際、
法定家督相続人(直系卑属)はなく、
指定家督相続人もない場合、
その妻は選定家督相続人になり得るから、
選定されていないとすると
この例のような場合、
民法が適用され(民法附則25条2項)、相続人は、
妻の乙と、他家(他の戸籍)に入っているけれども、
直系尊属(他家)、もしくは、
直系尊属がいなければ(すでに死亡していれば)、
兄弟姉妹(他家)になる。


選定されていたかどうかについては、
今となっては不明(家督相続事項がないということは
選定はされていないと思われる)。


もし、当時乙が選定されていて、戸籍の届出だけを
していなかった場合は、今からでも選定されていたとして、
乙を家督相続人として役所に届出ができる(らしい)。
(でも、実際は、選定されていたかどうかなんて
わからない)


妻の乙としては、戸主の甲が死亡したら、
直系卑属はなく、その家(戸籍)には自分一人となり、
家が途絶えたという感じで、
家督相続人を選定し、戸籍上の届出をしよう
なんて意識がなかったであろうことが予想できる。
(ただし、この例の場合、
妻を家督相続人に選定できる者は、妻自身ではなく親族会で、
実際のところ、妻(家女でない、他家から入った通常の妻)
家督相続人に選定されるケースは少なかったらしい)


結果、この例の場合、妻乙(昭和51年死亡)
の兄弟姉妹、その子、
さらに、戸主甲の直系尊属、そこから甲の兄弟姉妹
(その子、孫(被相続人からみると甥姪の子))も相続人となり、
相続人が非常に多くなってしまった(相続人の数35名!)。
戸主甲名義の不動産があったのだから、
「乙を家督相続人に選定し、戸籍上の届出をして
おいてほしかった」と思われる事案でした。
(結局、時間はかかったが甲名義の不動産については、
遺産分割で妻乙の兄弟姉妹の子が取得)


私が遭遇した例2


その家(戸籍)の戸主が昭和20年に死亡し、
その家(戸籍)に、母、弟妹と妻がいた
(戸主死亡当時、生きていた)場合(直系卑属はいない)、
指定がなければ母が(通常)弟を家督相続人に選定することになる
(第1種選定家督相続人)が、その選定がなされていない場合。
この場合、新民法が適用され、妻と母が相続人となる。
こちらも数次相続を経て、相続人は多数となった(相続人16名)。
(弟が家督相続人に選定されていればこんなに相続人が多数に
なることはなかった)


(旧民法での相続)
http://www.amy.hi-ho.ne.jp/sakai-siho/kyuminnpou.htm


(参考)
http://www.amy.hi-ho.ne.jp/sakai-siho/senrei.pdf


(数次相続)
http://www.amy.hi-ho.ne.jp/sakai-siho/suujisou.htm