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2015-05-02

映画Disk鑑賞記録 2015年 (1)


第七の封印/イングマール・ベルイマン(1957)

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冬の光/イングマール・ベルイマン(1963)

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処女の泉/イングマール・ベルイマン(1960)

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ベルイマンの映画は初めて。

『第七の封印』。いきなり立ちふさがった死神の黒い装束そして白い顔面。目が釘付けになる。そして岩場の海岸で生死をかけたチェスが始まる。寺山修司『田園に死す』に似た面白さか。ただし寺山映画の極彩色とは正反対で、チェスの駒とボードも白と黒なら海岸の風景も白と黒。その強い陰影が素晴らしい。それに、そもそも十字軍の騎士、魔女裁判、黒死病といった中世のアイテムには、映画であれなんであれ興味津々。終盤では、人々がテーブルに集って祈るなか、グンネル・リンドブロムが死神の訪問に気づくところの表情も忘れられない。奇妙だが、むしろ最後の審判にとうとう神がやってきたかのムードだったから。ラストは、その人々を引いた死神が鎌などを手にして歩く丘の稜線の遠景。

『冬の光』。人の顔を長く写す映画だと感じた。そうして面長のマックス・フォン・シドーがヨーナス(洋茄子?)という役名なのも気になった。それにしても、彼がひどく塞ぎこむのは、中国の核武装とか神の沈黙とかのせいよりも、北欧の冬の日照不足が影響してはいまいか。もともと神を知らない私はそんな余計なことを考える。神の不在をめぐってはこちらにも少し書いた(http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20150318/p1

『処女の泉』。これまたヨーロッパ中世の敬虔な、あるいは野蛮な人々が、ありありと描写されているのだろうと思いつつ鑑賞した。藪の中で荒くれの男たちが女を襲うところは、黒澤明の『羅生門』を思い出した。こちらは平安時代だから日本の1000年前。

それだけでなく、この3作を通してイングマール・ベルイマンは「黒澤明っぽいな」というのが最大の印象。ともに国を代表する監督であり世界の巨匠でもある。そして次々と大文字のテーマを選び迷わず真正面からぶつかるような映画作りをしていると感じられる。一言でいうなら「大まじめ」、2人とも。多くが白黒映画であることや戦後の似た時期に名作を送り出している点もオーバーラップする(黒澤が8歳上だが)  

それにしても、スウェーデン語は英語みたいに響くけれど、みごとに1語もわからないのだった。ちなみにベルイマンは英語読みだとバーグマンだという。


ゴーン・ガール/デイヴィッド・フィンチャー(2014)

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評判にまさる面白い展開。エイミーは『アメリ』の邪悪版と言えるのではないか。ニックのとまどった顔が、『道』のアンソニー・クインを思い出させてならなかった。

監督が別音声で解説をしている。ほとんど脚本(ストーリー)の出来の良さについて語る。それをいかに映像化したかという自らの仕事については意外なほど語らない。それをほぼ語らないことにこそ、監督の揺るぎない自信が現れているのかも。

ハリウッドの傑作をこうしてたまに鑑賞すると、脚本も撮影も編集も完璧なので驚愕する。この映画は見る前にイメージするストーリーが誰の予測をも上回って破綻していくところに空前の魅力があると思うが、映画作りは1ミリも破綻しない。

ハリウッド映画というのは、産業やプロダクトとしての集積度や完成度が、ものすごく高いのだろう。日本でそれに似たものを探すとしたら、車作りとか? コンビニのサービスとか?

それにしても、この観客の予測を見事に裏切ってめまぐるしく破綻するストーリーに比して、映画製作の破綻のなさには、繰り返し言うが驚嘆するばかりだ。匠の技だから当然だろうが、その素人臭さの全くないところには、あまのじゃくにも退屈を感じなくもない。『東京都北区赤羽』とは違うよねと。

監督が3週間ロケハンして決めたという、アメリカ中西部の小さな都市のムードに魅了される。特に映画の冒頭。そして、こういう所に自分が生まれて育つことが意外にもまったく想像できないことに驚く。

アメリカ映画のおかげでアメリカの人物や生活はどこの国のそれよりも数多く見ているけれど、アメリカはそもそも日本とはあまりにも違う国なのだと感じる。

(ネタバレ注意)―――――― 今気づいたが、破綻というなら、周到に準備して冷静にやり遂げるかに思われたエイミーの計画自体が破綻していくところが、この映画を最も面白くしているのかなとも思える。

(ネタバレ注意)―――――なんとなく『ミスティック・リバー』を思い出させもした。米の普通の町の日常がかいま見えるからか。映画作りの完璧さも似ている。そしてもう1つ、殺人の真犯人が見逃されたままになるところ。賢明で良心的な警官が明らかに疑っているにもかかわらず。


恐怖分子/エドワード・ヤン(1986)=劇場鑑賞=  

 http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20150319/p1


アクト・オブ・キリング/ジョシュア・オッペンハイマー(2012)

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このような虐殺がさほど昔でもないインドネシアで行われたというのは衝撃的で奇妙ですらあるが、その出来事をどうすればうまく実感・消化できるのかと考えたとき、たとえばこのように奇妙な方法で映画を撮影していくという出来事を通してならできるのかもしれない。そんなことを思った。


ポエトリー アグネスの詩/イ・チャンドン(2010)

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イ・チャンドン監督、またもや傑作だ。私には名も知らぬ土地の空気や見も知らぬ人々の感情が、むせ返るほどの息詰まるほどの切実さで伝わってきた。

『シークレット・サンシャイン』では密陽という韓国の地方都市の何の変哲もないところに引き込まれたが、今回も、韓国という隣国の、知っているようでまったく知らない、病院の待合室や救急車、老人介護の仕事、公営アパートの生活、町のカルチャー教室、地元の飲食店、中学生の男子や教師たち、警察官、バスや自家用車、農村の集落といったもののすべてが、得も言われぬリアリティーを運んできた。物語の筋もよく出来ている(カンヌ国際映画祭で脚本賞)

詩を作るということがモチーフやテーマの1つ。しかもそれがとても大切に扱われていることも好印象。クライマックスでは、その詩1行1行の音声の連なっていく効果が、画面1カット1カットの光景の連なっていく効果に、重ねられていく。

参考になるレビュー(http://tamacine.blogspot.jp/2012/06/shi.html


赤い砂漠/ミケランジェロ・アントニオーニ(1964)

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『太陽はひとりぼっち』に続き、またモニカ・ヴィッティ。コートの緑色が唐突で映えた。

全体に夢の中にいるような、あるいは今にも世界が終わるかのような雰囲気の映画だった。主人公の女性が精神の失調を抱えているせいもあろう。だがそれ以上に、工業地帯の道路でも街の石畳の路地でも、余計な人物がほぼ出てこなくて、聞こえてくる音もぼそぼそとした話し言葉以外は静まり返っていたように記憶し、それが影響しているのかとも思う。

映画の簡潔な紹介はこちら。http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=462


太陽がいっぱい/ルネ・クレマン(1960)

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そしてまた『太陽はひとりぼっち』に続いて、アラン・ドロン。こちらは若さと色気が全開だった。何度も見ているが面白い。マリー・ラフォレの鼻の下の彫りの深さ。


死刑台のエレベーター/ルイ・マル(1958)

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ついでというわけではないが、同時期のフランスの名作を久しぶりに堪能。ルイ・マル25歳の監督作。

殺人と逃走のサスペンスの妙味、あるいは写真が現像されて犯行動機が自ずと発覚するところなど、ヒッチコック的な秀逸さか。

主人公の男女よりも、花屋の娘とその恋人の未熟きわまりない男とが衝動的に車を盗んで遠出しハプニングが繰り返されていくところこそ、ヌーベルバーグっぽいと思った。


★1900年/ベルナルド・ベルトリッチ(1972)

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『旅芸人の記録』がギリシヤの現代史なら、この映画はイタリアの現代史を垣間見るといったところ。とりわけファシズムを扇動し実行したという黒シャツ隊と呼ばれる民衆グループの様子。そして田舎の巨大な屋敷と農園で一生を送ることを運命づけられた大地主の家族たちと小作人の家族たち、それぞれの退廃と勤勉の日々。ただ、描き方が露骨というかクドいというか、エログロがやけに目立つのは、ベルトリッチらしいのか。

それにしても、日本の場合は戦時中 大多数が「お国のために」であって、こうした左派・右派の憎みあい殺しあいは皆無だったのか? その後遺症が戦後 続いてきたという感じもしないし。ちょっとその関連で:http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20150217/p1


リスボンに誘われて(2014)

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小説『リスボンへの夜行列車』の映画化。小説を読んだ直後に見たので、映画とはまさに省略の技法なのだと自覚した。

主人公はベルンから夜行列車でリスボンにやってくる。西ヨーロッパの多様性と均質性ということを考えた。ドイツとフランスがあるだけでなくスイスとポルトガルがあり、スペインやイタリアもあればイギリスもありスウェーデンやフィンランドまであるわけだから、すごいじゃないか。各国間に決定的なギャップはないのだろうに、それぞれが独自の歴史と文化そして都市の魅力をしっかり保っている。

小説では主人公がポルトガル語の響きに惹かれたことが旅の発端になり、そうした外国の言語自体がテーマの1つになっていたので、映画はどうするのかと思っていたら、やっぱりすべて英語だったので、少し違和感はあるものの、それで成立できてしまうヨーロッパの現実もしくはヨーロッパ映画の現実ということについても、感心してしまった。多くの役者は母語でないだろうから、けっこうたどたどしい。かつて『存在の耐えられない軽さ』がプラハやジュネーブを舞台にしながら英語で演じられていたのを思い出す。

リスボンの路面電車を映画でみたのは、ヴェンダースの『リスボン物語』以来か。ずいぶん経った。


SRサイタマノラッパー/入江悠(2009)

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公開当時から友人に勧められていたがやっと見た。北関東リアリズム。最後は泣けて胸が熱くなる。『サウダーヂ』(富田克也)に匹敵する見応えだった。

(サウダージについては、http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20120111/p1


遙かなる山の呼び声/山田洋次(1980)

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健さん追悼の気持ちがまだ続いていて、評判の高いこの一作を手にしてみた。感動的だった。『幸福の黄色いハンカチ』のような賑やかさや喜劇の要素がないぶん、シンプルでよかった。黄色いハンカチが北海道のロードムービーなら、こちらは北海道の自然と土地の人を腰を据えて眺めるような体験になる。以下も健さん関連。

★新幹線大爆破/佐藤純弥(1975) http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20150111/p1

★動乱/森谷司郎(1980) http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20150111/p1


こころ/市川崑(1955)

 夏目漱石のこころ(新潮文庫連動DVD)

2014年は夏目漱石が「こころ」を著して100年とのことで朝日新聞は復刻連載を始めた。それが刺激になり、私は今回キンドルで読むことにして、半分くらいまできたところ(語り手が父親の病気のために帰省しているあたり)で、このDVDを借りてみた。

映画は初めての鑑賞。森雅之と新珠三千代。写実的でけっこう原作どおりで読書のイメージをうまく膨らませてくれた。それに比べると、映画『それから』は監督(森田芳光)と役者(松田優作)の持ち味がとても大きく出ていたと思う。

ちなみに、新潮文庫の『こころ』は186刷で700万部を突破しているそうだ。『人間失格』がそれに次ぐ670万部。http://www.shinchosha.co.jp/news/blog/2014/08/01.html

「こころ」はストーリーが太い1本線だが、「人間失格」はエピソードの積み重ねだった記憶がある。映画はどちらが作りやすいのか。(映画『人間失格』は見ていない)


ツレがうつになりまして。/佐々部清(2011)

 ツレがうつになりまして。 スタンダード・エディション [DVD]

原作の漫画をだいぶ前に読んでいたので映画もみてみた。堺雅人は漫画のツレっぽくないというか、うつ病っぽいかんじに見えないのだが、実際、いかにもうつ病っぽく見える人ばかりがうつ病になるわけではないだろうし、そもそもいかにもうつ病っぽいかんじというのもいいかげんなものだろうから、これはむしろいいのか。


ポセイドン・アドベンチャー/ロナルド・ニーム(1972)

 ポセイドン・アドベンチャー [Blu-ray]

子どものころ映画館でみたのが懐かしい。ジーン・ハックマンの髪がまだわりとふさふさ。


◎映画Disk鑑賞記録 2014年 (2)

 http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20141229/p1