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2005-01-25

映画『誰も知らない』

是枝裕和監督『誰も知らない』を下高井戸シネマで。

最近よほどのことがないと映画に行かなくなってしまい、ゆえに観るのはよほどの選択をかいくぐったものだけになるから当然ともいえるが、文句なく良かった。文句だけじゃなく、映画についてガリガリ語りたい気分にもならない。観ているときの私の気持ちには、後からわざわざ何かを埋めたり削ったりせずにはいられないような不足や過剰がまったくなかった、――そんな落ち着いた時間をずっと過ごせたということだろう。以下はだから余計なことばかり。

カンヌで注目されたことが印象に残っているせいか、この光景を外国人ならどんなふうに感じるだろう、なんてことをけっこう気にしながら観ていた。あのくらいのマンションは粗末に映るだろうか、立派に映るだろうか。ああいうコンビニやコインランドリーや自販機はどこの国にもあるのだろうか。パチンコ店やタクシー会社の雰囲気はわかるだろうか。冬は寒く夏は汗が吹きだしてエアコンがないと辛い日本の気候は、うまく伝わっただろうか。食卓におけるカップ麺の位置づけが分からないことはないだろうが、どん兵衛の天ぷらだけを齧る味はさすがに分からないだろう。お年玉。桜の花。詰め襟やセーラーの学生服。いじめ。援交。子供を置いて出ていく母親とはどれくらいユニバーサルな事象なのだろう。テレビゲームだけは世界の子供にかなり共通の娯楽だろう。などなど。

最優秀男優賞を得た長男役。もちろん彼にも文句はない。しかし他の3人、長女・次男・次女がまた、うっすらはしていてもあからさまにその子でしかありえない実在感をそれぞれに醸し、誰ひとり見おさめにしたくないと思わせるところがあった。しかし映画は終る。

万引の濡れ衣から長男を救ってくれたのは、コンビニでアルバイトしていた無口で不器用そうな若い女だった。そのあとコインランドリーで正月をひとり過ごしていた彼女は、またひとつ長男を手助けすることになる。しかしそんな繋がりも進展はせず、月日はただうつろっていったようで、彼女も店から消えた。すべてのシーンが日本の現在をそっと撫でるように進んでいくなかで、とりわけこの人に私はエールを送りたかった。わが国の今における、何と言っていいのか分からない「身につまされるもの」や、しかしそれと少なくとも同じくらいの「捨てたもんじゃなさ」を、ふとこの人やこの人との繋がりには感じられて。しかし本当いうと私は、コンビニの若者ではなく、いじめられる中学生でもなく、もっと小さい子供たちでもなく、タクシー運転手の木村祐一とかパチンコ店員の男の身の上にこそ、もっと共感したほうがいいのかも(いや深い意味はない、年齢的にとか)。

この映画の各シーンでは、ミスタードーナツでも公園でも商店街でも、背景に映る人はたぶん一般の人だろうが、それだけでなく、背景のノイズもあまり絞らずそのまま生かしているように感じられた。それはこの映画特有のリアリティといっていい良さに通じていると思う。むしろ普通の映画で役者の音声だけがやけに浮き立たって聞こえることのほうが不自然…というほど映画はいずれも自然な存在ではそもそもないのだろうが…、まあなんかそういうところもとても好まく思った。

『誰も知らない』オフィシャルサイト http://www.daremoshiranai.com/

ASIN:B0002PPXQY

オフィシャルサイトで今知った。コンビニ店員役の人(タテタカコ)は、クライマックスの挿入歌を歌っている人でもあったのだ。

タテタカコ http://tate.navelfactory.jp/profile.html

(「ショボい歌い手ナンバーワン」を目指し…)

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