東京永久観光 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2005-03-17

公然の内気


http://homepage3.nifty.com/wtbw/(d/d/05-2.html#anchor03162005)

それとなく人を褒めておいたら7年も後になって伝わったというヒューマンドラマ。瓶に詰めて海に流した手紙もグーグルはきっちり回収するということだが、一方、現在のブログにおいては、リファーやトラックバックが完備しているため、こうした独り言や片思いはもはや許されない。


 *


これを難しく長く言うと以下のようになる。


…ブログのツールは、読み手や他のサイトとの「関係」も強化させている。

特定の記事に直接アクセスできることはすでに述べたが、それに加え、ブログでは記事一件ごとに読み手がコメントを書き込める。従来、読み手がコメントを伝えるには、別に設けられた掲示板に移動して書き込むのが一般的だった。ブログでは、その掲示板のスペースが記事ごとに付属していると思えばいい。

リンクの要領にも変化が見られる。ブログのサイトにリンクする場合は、特定の記事をリンク先に指定し、画面のトップにすぐ表示させることができるのだ。この設定は従来のサイトでもできるが、ブログではそれが簡単であり標準でもある。リンク先としてサイトやページの全体を漠然と示す従来のやり方が、改められつつある。

まとめていえば、読み手や他のサイトとの交信が、より正確に柔軟に行えるようになったということだ。ブログをブラウズするときは、サイトという「内面」全般に向き合うよりも、整理された「内面」の各要素にそのつど触れていると言っていい。

こうしたブログ特有の設計によって、ウェブサイトに思考や言葉の花が開くような光景を、随所で観察できるようになった。もともと個人サイトは、持ち主が一人記事を書きあげ、後はそれをただ読むという静的なイメージだった。しかしブログの記事はコメントやリンクという代謝を伴っている。同じ記事を次にブラウズすると、コメントが書き足されている。それを受けてまたコメントが、さらには新たな記事が、と細胞分裂をするかのように繁殖する。そうした成長のなかでサイトも読み書きも初めて命を保つ。サイトの全体像がそのように推移してきた。

注目すべき機能がまだある。ブログのサイトはアクセス記録を自らチェックし、そのまま表示する。一般に、あるウェブサイトに初めてアクセスするには、たいてい他のサイトからのリンクを伝っていくわけだが、ブログのサイトがアクセスされると、リンク元になったサイトのアドレスが自動的に検出され、すぐに表示されるということだ。これは、自分のサイトにリンクしている他のサイトを逆探知することでもある。アクセスの回数もリンク元のサイトごとにカウントされる。しかも日付単位や記事単位でもアクセス記録はチェックできる。これまでもアクセス状況を調べる手段はあったが、ブログのツールはそれを自らルーチン化したと言える。しかも、その記録は迷わず公開される仕様になっている。アクセスという「関係」は、当人の沈黙や自覚を超え、確実に刻み込まれていくのだ。

コメントやアクセス記録と似ているが、微妙に違う特殊な機能がもう一つある。ブログのサイト同士では、自分のサイトが相手のサイトになにか言及してリンクした場合に、相手のサイト上に、自分のサイトへの逆リンクと言及内容の一部を表示することができるのだ。ポイントは、リンクした側の存在を、リンクした側の操作で、リンクされた側のサイトに反映できるという点だ。これもブラウザ上の操作で実行できる。この機能は「トラック・バック」と呼ばれている。

リンクとは一方向の矢印だったはずだ。ところが、アクセス公開やトラック・バックの機能を実装するやいやな、リンクは双方向に転じる。それがありありと実感できる。

これまで「リンクしました」「サイトを見ました」という通知をメールや掲示板で知らせ合うことがあった。それは、後から選択して追加する行為だった。しかし、ブログのサイト同士であれば、通知するという行為は、「リンクする」「サイトを見る」という最初の行為に事実上含まれてしまう。いささか無遠慮なような、あるいは逆に奥ゆかしいような、奇妙な感じがする。リンク「関係」の明らかな公然化だ。喩え話をするなら、「片想いはもはや胸に秘めておけなくなった」あるいは「告白さえすれば相思相愛になれる」といったところだろうか。コミュニケーションとしては決定的な変質に思える。

従来の掲示板やリンクを介してすでに顕在化していた「関係」。ブログはそれをいっそう微細にスキャンし、確実にトレースし、動かしがたい事実に変えていく。他のサイトから自分のサイトへの「関係」も、その逆も同様だ。…

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20050317