俺たちに翼はない・・・・残るは脚と体力と魂と
―それはきっと何処にでもある、ありふれた物語。
週刊少年チャンピオンで連載中の「ANGEL VOICE」が面白いです。
本作品は、喧嘩ばかりしていた市立蘭山高校サッカー部が、サッカーを通して更生・・・しているかは分かりませんが、とにかく青春と熱さを魅せるサッカー漫画です。ただ、もう不良がサッカーをしているとかどうでもいい設定に見えてくるくらい、ここのサッカーが熱い。
現在戦っている相手は高校最強でもある船和学院。ただただ強いの一言です。実はこの船和学院を倒さないと廃部が決定という・・よくある設定ではあるのですが、前半から失点に次ぐ失点。結果から言えば完全に負け。お笑いによくある「最後の1点は・・・倍です」「えーっ!?」みたいな展開でもない限り敗退、廃部が決定です。試合としては後半32分で0−9まできました。
市蘭0−9船和学院
圧倒的な敗北―。ここにくるまでに監督は何をしていたんでしょうか。どんな作戦を与えてくれていたのでしょうか。そんな監督が授けてくれた策はたった一つ。・・・「走れ」。10分走ってダメなら、また10分全力で走れ。それでもダメなら・・・・走れ。もう作戦でもなんでもありません。しかし、それでも走り続けた市蘭の選手たち。
後半11分の時点で0−5にされ敗北は決定的な中、
悔しいから・・・最後まで走るんだ
市蘭サッカー部がここに存在したんだということを高校最強チームに刻み込んでやろう
オレたちはここにいたんだ
と走り続けることを誓い合います。9点差なんて高校サッカーではよくある光景です。その時の負けたチームの絶望感と途中で諦めた気持ちが表情にまじまじと見てとれるくらいの敗北です。普通は心が折れます。そんな中で、相手に「俺たちは存在した」「諦めずに走り続けた」と船学に知らしめるために市蘭は走りました。
「せめて船学(あいつら)の胸に刻みこんでいこう オレたちがここにいたことを」
今の日本代表にない本当の魂がここにあります。アジア内では強者である日本もひとたび世界に出れば弱者になります。こんな気持ちで世界と戦ってもらいたい。「そんなことはない」「代表の選手は本気で戦っている」と日本代表のサポーターから言われるかもしれません。ただ、一言だけ言わせてもらえば、彼ら(市蘭)はその上にいます。
市蘭の選手は決してエリートではありません。キレイに飛び立てる翼はありません。それでも・・・、それでも走り続ける脚と!!!走り抜ける体力と!!!諦めない魂があるんですよ!!これが本当の高校サッカーのあるべき姿だと思います。オシャレなエリアのなんとかにはマネできない芸当ですね。
ANGEL VOICE 9 (少年チャンピオン・コミックス)
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