この坂道をどこまでも「Q.E.D.-証明終了-・第47巻」



可奈はどうして自分の無実を信じてくれたのか?

Q.E.D.-証明終了-」はすごいとしか言いようがないわけでして・・・・。何がすごいって単行本を出すために“1話まるごと描き下ろし”しているところじゃないですかね?これで単行本のための描き下ろしって何回目だ??


「坂道」は描き下ろし

この作品は、基本的に1つの単行本に2話収録で作っています。もちろん最新47巻の収録も2話。ただし、掲載誌の月マガ+は隔月誌となっています。それでいて、月マガで連載中のC.M.B.-森羅博物館の事件目録-」と同時に単行本を出すため、どうしても1話をまるまる描き下ろす必要があるんですね。で、本当にそれをやっている・・・・と。普通に考えて、無茶やってるな〜と思うわけです。数えてはいませんが、描き下ろしの「坂道」という話は、90ページ超あるはずです。
それでいて、QEDもCMBも事件解決ものなわけです。何個ネタを考えてあるんだと、加藤先生の創造力はどうなっているんだと。加藤先生のファンは驚くしかありません。




Q.E.D.の真骨頂

描き下ろしじゃない方の「陽はまだ高い」では、得意(?)の数学話が展開されていました。テーマはNPクラスのお話。数学って難しい!と思う人にとっても、比較的わかりやすく描かれているのも、この作品のいいところですよね。個人的には、NPの問題のように“やる意味あるの?”という数学テーマを、実は重要な話なんだよと描いているところが好きです。
このお話では、NPクラスの研究をおこなっているチームに起きた情報漏洩未遂について描かれました。まぁ、うまいことテーマのNPについて絡めて解決していましたよ。他の人はどう読んでいるかはわかりませんが、自分の場合、基本的に犯人を考えずに読んでいます。それより話の持っていき方、解決の仕方が楽しくて楽しくて。もちろん犯人を当てることも醍醐味ですけどね。



坂道


動画の方は加藤先生が作成してアップしているものです。映画風予告編だそうです。うーん、多才すぎる。


あのときなぜ―

「坂道」は単行本の帯にも書かれているのですが、過去にヒロインの可奈が友人の無実を信じたというお話になっています。友人はいじめられていた過去がありましたが、可奈によって救われました。今ではモデルとして活躍する一歩を踏み出せる権利を持った状態。ただ、どうしても自信が持てない。あの日の事件の真相を知るまでは・・・・という展開。
ちなみに、過去の事件とは、友人の机に男子のゲーム機が入っていて盗みを疑われた・・・・のに可奈だけは何故か無実を主張し信じてくれたというもの。その真相を、可奈がどうして信じてくれたのかを教えてくれたら、モデルとして頑張れると友人は語っています。友人にとって可奈は自分を奮い立たせてくれる存在でした。だからこそ真相を知りたいという理由が描かれているのですが、ネタバレになるので割愛。


お金がなくなった

可奈たちを含めた仲良し5人組でワイワイやっている時に、友人のお金がなくなりました。ここまできて犯人が誰なのかなんて、なんとなーくわかりきっていますが。


解決しました

色々と大団円。犯人は友人であり、可奈にカマかけしてました。どういう理由でカマかけをしたのか、過去の事件の事実とは、色々とあるんですが割愛。そこは勿体無いから読みましょう。
で、どうしても言いたいのが、QEDという作品の特徴は?と聞かれたら大体“数学話”になると思うんですよ。あと、“人が死なない”とかね。もちろんそれもあるんですけど、加藤先生の作品ってキャラたちの“人情話”もかなり上手いと思うわけでして。今回の坂道なんてその最たるものだったのではないかと思います。いつもクールな燈馬の話だけではなく、熱血ヒロイン可奈の魅力が「坂道」ではたーっぷり描かれていました。これがめっちゃいいんだよなあ〜。
それはそうと、燈馬くんは可奈の電話だけでほぼ把握してる描写をよく見かけます。これってすごすぎると思うんですが。これが愛の力か・・・・。むふふ。




さてさて、話は変わって、どうやら掲載誌の月下少年マガジン+が再度リニューアルするそうです。マガジンGREAT→イーノ→月マガ+→???という流れで来ていますが、基本的に全て月マガの増刊誌なので、看板だけすり替わってる状況です。なんというか・・・・不憫だよなぁ。これだけいい作品(QED)を武器として持っているのにね。正直、看板レベルとしては講談社のトップクラスです。なんだろう・・・・この最強エースを擁した弱小球団感は。
あー補足はしておきますが、マガグレもイーノもプラスもいい雑誌だったと思います。弱小球団ではないけど、最強月刊誌の兄弟としては光が相対的に小さく感じてしまったのかもしれません。でもまぁ、さすがに月マガ+のやり方は長く続かないだろうとは思ってましたが。いーっつも言ってるけど、マガグレで良かったんじゃない?とはいえ、進化しよう、成長しようという心意気は買ってます。

でもまぁ、雑誌が変わっても、Q.E.D.は続いていきます。どんな困難があろうと、描き下ろしを1話まるまる作ろうとも、加藤先生なりの坂道を登るだけなのでしょう。・・・・急斜面にみえるけど。