大森に再び住むのも悪くないかも

おでん・すがた@大森

 そんなこんなで、長野の日帰り出張から無事に、そして予想よりも渋滞が少なく早めに帰って来られたワタクシは、最近めっきり課外活動でのパワーダウンが著しいように思い、その反省も込めてほぼ3週間ぶりに大森の地に赴いたのでした。というのも、前回期待をして出掛けてお休みだったお店がどうにも気になるので、改めて訪れてみようと気になっていたからなのでした。
 小雨のそぼ降る中、大森駅に降り立ったワタクシは早速東口方面に向かいました。以前はプリモと呼ばれていた駅ビルの、現在はアトレのエスカレーターで下に降り、出口から外に出ると一本目の通りを越えて二本目の通りに入りました。

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 ここは以前住んでいた頃には、全くと言って良いほど訪れたことのなかった地域なので、逆にとても興味深いのです。お目当てのお店はもちろん前回確認済みなのですが、他にもまだまだ未確認のお店も気になりますし、もう一度グルリとこの一丁角を一回りしてみることにしました。

 その中で、立ち飲み屋さんの風情を感じさせるこちらの『満天酒場』というお店に入ってみることにしました。もう一軒並んだ『樽屋』さんというお店も迷いますが、どちらが良いのかは判りませんからもう当たって砕けろ、ぐらいの気分です。
 中は立ち飲みのようで、その実、すべての卓・カウンターに椅子が備え付けてあり、まぁ言ってみれば普通の居酒屋さんです。というのも、ホッピーを頼んでテーブルの上に置かれた伝票を見て愕然としましたが、こちらは『949』を筆頭にするチェーン系の名前がズラリと印刷されていて、その大元はかの『大庄』さんだったのです。うーむ、よりによってわざわざ独り酒をチェーン系の居酒屋でするとは、トホホ。と思いましたが、考えてみれば大森というのはこの『大庄』さんの研修センターがあるくらいですから、その影響力は並々ならぬものだと推測されるのです。*1
 とは言うものの、海産物をメインに力を入れているようで、イカの一夜干しは丸のまま¥380とハーフサイズ¥200があるようなので、とりあえずのつまみにハーフサイズを頼みました。
 最初は空いているような店内でしたが、時間が経つにつれて混みだしてきました。ホッピーの中を2杯お替りして、焼き物の盛り合わせ(5本)とお通しがあって¥1,455となれば安いほうでしょう。入口の立て看板に貼り付けられたサービス券を提示すると¥200オフというサービスもありましたしね(嬉)。
 チェーン系の居酒屋さんということでテンションも上がらず、写真を撮りませんでしたがまぁ一軒目としては悪くはありませんでした、というのが結論としてお次のお店へ行って見ましょう。

 お次は、前回は混雑していて入ることを躊躇してしまったもつ焼きの『萬作』さんです。しかしながら、今改めて写真を見直してみると、確かに外のビニールシートで囲われたオプション席に人影があるものの、他には空席が目立っていましたね。どうも初めてのお店だと注意深さが足りなく、混んでいそうに見えるとすぐに諦めてしまうという悪い癖が出ていたようです。
 今回は裏側から(写真左側の路地奥から)歩いて来たので、お店の混み具合がはっきりと把握できました。カウンターの空いているところに席を決め、それほど長居する気はなかったので酎ハイを頼みます。さすがに二軒続けてホッピー祭りをやるとお腹がダボダボになりますからね。
 見上げたお品書きにはレバ刺しの文字が燦然と輝き*2、即座に注文。薄くスライスされたレバーは、薄いためにプリプリとまでは行きませんが、それでもなかなかの歯応えです。この日は雨降りという悪条件もあって、空いている店内にはお客さんの影もまばら。そこで目の前のややポッチャリ体型の店員さんに尋ねると、創業は四十数年ほどだとか。御見それいたしました。それを教えてくれた別の店員さんもハキハキと明朗快活で感じが良いのです。最初からこのお店にすれば良かったかな、と思ってもアフター・フェスティバル(後の祭り)*3。一杯飲み干し、そろそろ良い気分になってお会計を告げると¥1,000にも満たないお会計で申し訳なくなります。今度は最初から来ますね、と心の中で呟いてようやくお目当てのお店に移動します。

 それが、こちらのおでん屋の『すがた』さん。今日はしっかり電燈が灯っています。先程の『萬作』さんからは一軒挟んで並びにあります。外からは窺い知ることの出来ない、まだら模様の入ったガラスの引き戸を開けると思わずため息が漏れるようなほれぼれとするワタクシ好みの、磨き込まれた白木のカウンターがお出迎えです。やや年配の女将さんがやんわりと迎えてくれます。
 うーん、と思わず唸りながらまだ誰も居ないカウンターのやや入口に近い辺りに腰を据えると周りをキョロキョロと眺め回したくなるのを堪え切れません。お飲み物は?の問い掛けに、この雰囲気ならばとお酒を注文しました。いつもはグダグダと拘りを捨て切れないワタクシですが、この雰囲気でお酒の銘柄がどうこういうのは野暮ってものです。黙って出されたお酒をおいしく頂きましょう。

 奥で何某か拵えていた女将さんが戻って来て、果たして出されたお通しは季節の筍とワカメの若竹煮。一口含むと、上品な味付けでそれでも関西とも違うお味。聞くと女将さんは秋田のご出身だそうです。数年前に旦那さんがお亡くなりになったそうですが、それまではご夫婦で30年ほど前からおでん屋さんをされているそうです。
 こちらのお店の雰囲気がとても気に入ったので酒の酔いも手伝って、女将さんに撮影の許可を求めると店内のこのカウンターを誉める方は居ても、撮りたいと言われたのは初めてだと照れくさそうに、それでも快諾して頂けました。

 もちろん、おでん屋さんに来たのですから、おでんを頂くことにしましょう。それほど濃い目ではない汁に浸ったおでんから、大定番の大根とつみれを頂きました。ほど良く煮込まれた大根はグズグズになるでもなく、良いお味でした。つみれもいわずもがな、ですね。
 価格は明示されていないし、正直言ってお値段はやや高いようですがトータルで満足させて頂けました。おでんを味わう、これも本来の目的でしたが、このお店の雰囲気を味わうこと、これが最大の収穫でした。
 今住んでいる錦糸町も長くなって来て、住まいは更新の時期を迎えていて手続き中ですが、なんだかまた大森に越して来たくなる、そんな気分にさせられる夜でした。

*1:かく言うワタクシだって、学生の頃はしょっちゅうお世話になっていたのですからね

*2:オーバー。好物だからそう見えただけ

*3:下らん