となり町戦争 三崎亜紀


となり町戦争
話題になっているのに、つまらなかった。
主人公が最後まで戦争が起こっていることの実感がわかなかったように、
私も最後まで何のために戦争をやり、実際どういう被害が出ているのかが
よくわからなくて共感できなかった。
戦争に加担しているのは地域住民の中でも一部みたいだし、
広報で告知されているといっても住民はどこまで理解しているのかなぞだし。
そんな中で自分の人生をささげて町に忠誠を誓う香西さんの行動も不可解だった。

イン・ザ・プール 奥田英朗

☆☆☆
イン・ザ・プール
空中ブランコ」の第2弾。
「自分はこうあるべき」という意識で凝り固まっちゃっておかしくなっちゃった人々を
かなり変わった精神科医・伊良部が非常識な治療法で治療します。


常識にとらわれずに伊良部のように生きればストレスレスだけど、
伊良部が自由奔放に生きられるのは、実は大病院の伊良部病院の跡取り息子だからなんだよなあ、
と気づいたら、少し小説の面白さが減っちゃったかも。


経済基盤がしっかりしてれば人間自由に生きられるものなのかしら。
でも、自分が思っているより人は他人のことにかまっちゃいないから、
もっとやりたいようにやって平気なもんなんだよね。

麦の海に沈む果実 恩田陸

☆☆☆☆
麦の海に沈む果実 (メフィスト・クラブ)
面白かった!私好みの小説だなあ。
最初はすこし「ロミオとロミオは永遠に」に似てるかな、と思ったけど、
「ロミオ・・・」よりこっちのほうが納得いくし、面白い。


校長が絶対権力を握るとある学園は、世間から隔絶されたところにある。
この学園は、生徒によって違う役割を果たす。
まず、温室育ちのぼんぼん向けの「ゆりかご」としての学園。
次は、主に芸術家を目指す子どもたち向けの超英才教育の場「養成所」としての学園。
最後に、愛人の子・罪を負った子達向けの「墓場」としての学園。


「墓場」としてつれてこられた子どもが圧倒的に多いせいか、この学園は3月以外は原則転校・編入が禁止なのに、いつのまにか「いなくなる」生徒が多い。


「3月の学園」といわれるこの学園に例外的に2月の最後の日に編入してきた理瀬。
その学園では校長が絶対権力を握っていた。
校内には最新鋭の盗聴機器も備えてあり、生徒たちの行動は校長に筒抜け。
その中で起こる殺人事件、精神に異常を来たす生徒達。
校長は生徒を掌握するために、定期的に「お茶会」を開く。
「お茶会」という密室で錯綜するそれぞれの思惑。
権力にすりつぶされ、犠牲となる生徒。
でもそれは校長の跡取りを選ぶための巨大なゲームだった。

という話。
こういう話私好きだなあ。

さよならアメリカ 樋口直哉

☆☆☆
さよならアメリカ
「となり町戦争」がつまらなかったからこれも期待していなかったんだけど、
これは結構面白かった。
となり町戦争もこれも何か新人賞を受賞したんだよね。


突発的にとなり町との戦争が始まるって言う設定も奇抜だったけど、
この作品の「袋をかぶって生活する」袋族という設定もかなり奇抜。


だけど、袋をかぶって生活するっていうのはきっと思ったほど不快ではないんだろうなと思う。
KKKとか頭巾をかぶるけどさ、自分は見えてるのに自分の表情が他人からはわからないっていうのは
結構快適って言うか、それに惹かれる気持ちはなんとなくわかる。