8/3 GPF08@Zepp Tokyo

id:RNYAOOことRYOちゃんの件をみんなに知らせたのは私だ。どうして知ることになったかその詳細は省く。8/2の夜に私が直接RYOちゃんの妹さんと話をして、詳細を聞き、みんなに知らせた。妹さんは友だちに連絡するまで手がまわらなかったようだった。無理もない。持病があったとはいえ、夏の突然の死だったから。

友だちの死をこんな風にみんなに伝えることになるなんて思わなかった。1件目の電話では私もすごく動揺していた。手が震えていた。みんなに連絡するうちに少しずつ落ち着いてきたけれど、今思えば全然落ち着いていなかったと思う。私の声はだんだん抑揚がなくなっていって、自分でも立て板に水みたいなしゃべり方だと思いながら、RYOちゃんの死を知らせていった。

それから、突然人の死を知った人間がどういう反応をするかを知った。本当にまず「えっ?」って聞き返す。本当に。その電話口で泣き崩れるような人はほとんどいない。ただそこにあるのは驚きだけで、悲しみなんてふってこないもんなんだって知った。

ひとしきり電話連絡をして、今度は電話番号を知らない友人たちに知らせるためにPCの前に座る。ふとメッセンジャーを見たら、RYOちゃんがオンラインだった。かかっている曲はedge。正確にはRYOちゃんと連絡がとれなくなってから、ずっとその曲が流れていた。メッセンジャーがオンラインだったから、まさかRYOちゃんが死んでいるなんて、私は夢にも思わなかった。そしてRYOちゃんが最後に聞いた曲がedgeだとしたら、できすぎていると思った。普段だったらいろんなPerfumeの曲が(Perfumeじゃない曲も)RYOちゃんのメッセンジャーのステータス部分には流れている。でも、少なくともこの数日、RYOちゃんが死んだと私たちに知らされたその日の瞬間まで、メッセンジャーのステータスはedgeのままだった。*1

誰だっていつかは死んでしまうでしょ
だったらその前にわたしの一番硬くてとがった部分をぶつけて
Perfume/edge

その夜―――というか、私がそれを知った3時間後には、私を含め10人のPerfumeヲタが我が家に集まった。みんなRYOちゃんの死を知ったばかりで動揺している。あるヲタは酒を飲み、ひどく酔っ払い、あとから来たヲタに「なんで死んだんだよ」と中身が入っている2リットルのペットボトルを投げつけた。みんなでしんみりしながら、そして思い出話に笑いながら、くだらない冗談を言い合いながら、眠れない夜を一緒にすごした。その間も、私たちの携帯電話は事実を確認するヲタ仲間からのメールがずっと着信を知らせていた。

私たちがそれを知った時点で、通夜も葬儀も終わっていた。だから妹さんを巻き込んだ壮大なドッキリなんじゃないかと思っていた。でもそれにしては手がこみすぎている。でもみんな何度も何度も「ドッキリだよね、きっと」と言い合った。

みんなが帰ったり寝静まったりしたあと、PCにもたくさんの連絡が来ていた。相変わらずメッセンジャーでのRYOちゃんのステータスはedge。メッセンジャーで繋がったほかの友だちにも報告をして、私はふとRYOちゃんの日記のバックナンバーを見た。

私がRYOちゃんと会ったのは2004年頭の亀戸だ。そして、Perfumeをそれだけ見てきたということは、それだけRYOちゃんと一緒の空間にいたということ。実はもめたこともある。でもいつのまにかみんな仲良しになった。私はそれほどプライベートで親しくしていたわけじゃない。*2ふと、そういえば去年RYOちゃんが入院していたときのことを思い出して、その日記を読んだ。日記を読んで「あいつバカなんじゃねえの!」と初めてちょっとだけ泣きそうになった。でもまだ実感がわかない。

少年のまま死ねたらと願う
大人になれば誰だって死ぬんだから
自分だけを憎んで
少年のまま死ねたらと願う
id:RNYAOO:20070117

あの入院のとき、RYOちゃんは病院を抜け出してイベントに来ていた。だから、誰もRYOちゃんの病気がそんなに重いなんて思ってなかった。日記はすげえ暗かったけど、病院を抜け出してイベントに来ているRYOちゃんは全然そんなかんじじゃなかった。でも、思い返せば死を予感させる出来事はたくさんあった。本当にたくさんあった。

あのエコライブのとき、会場に入ってから、私はRYOちゃんの隣にいて西日がきついねなんて話をしていて、そしたらいきなりRYOちゃんはしゃがみこんで、んで私のスポーツドリンクを奪い取って、全部一気に飲み干した。でもしゃがんだままだった。ライブが始まろうとして、ようやく立ち上がったけれど、私は「体力ないんじゃないのー」なんて笑っただけだった。

よく冗談みたいに「いつ死ぬかわかんないから必死なんだよ」なんて言ってたけどみんなあんまり本気にしてなかった。いや、少なくとも私は本気にしてなかった。

翌日。Perfumeが出るGPFの日。RYOちゃんのチケットはRYOちゃんが本当に仲がよかった友だちに行ってもらうことにした。そして、私も実はチケットを持っていなかった。基本的に私は2マン以上の対バンにはいかない。でも行かなくちゃいけないような気がして、仕事先に「友人のお通夜なんです」と嘘なんだか本当なんだかわからないことを告げて、〆切を延ばしてもらい、どうにかこうにかチケットを手に入れて会場へと向かった。

会場には、チケットを持っていない、RYOちゃんの死を知ったばかりのヲタたちもいた。みんな一様に暗い。ライブ前とは思えないくらいに暗かった。

そしてライブ。

Perfumeの前のアーティストたちのバラードを聴くだけでなんだか泣きそうになる。

そしてPerfume。私はひとりでステージを見ていた。

GAMEイントロからエレクトロワールドへ。3人の姿を見た瞬間、涙腺が決壊した。いつもRYOちゃんがいるはずの場所にRYOちゃんはいない。くだらない意地を張って、マナー違反どころかルール違反もして、Perfumeたちのこと以外はどうでもいいみたいに、醜いほどに必死にいつもRYOちゃんが確保していたあの場所に、RYOちゃんはいなかった。いないのに3人は歌う。踊る。そんなのは当たり前だけど、でも歌う。ステージを見なくちゃと思うけれど、涙でよく見えない。3人とも笑ってた。いつもどおりに笑ってた。RYOちゃんの、私たちの大好きなPerfumeの笑顔だった。

MCの内容もよく覚えてない。ごめん、本当に覚えてない。私はただ泣いていた。

love the world。RYOちゃんの日記はこの曲が1位を伝えたところで終わった。そんなのできすぎてんだろ? RYO。なんだその壮大なシナリオ。おまえ本当にバカだろ。バカだって知ってたけど、本当にバカだろ? 

そして、シークレットシークレットからSEVENTH HEAVENへ。

もしもね この願いがちゃんと叶うなら
はじけて 消えてもいいよ ってどんだけ
Perfume/SEVENTH HEAVEN

もうダメだった。あんなに人がたくさんいるところで本気で嗚咽をあげた。うーうー言ってたと思う。まわりが不審がるくらい、こんなに歳をとってから、あんなに泣いたことはないってくらい泣いた。どうしようもなかった。RYOちゃんの死を知ってる奴らはみんなぼろぼろ泣いてたと思う。

きっとそのまま宙へ 昇っていくの 天国へ
Perfume/SEVENTH HEAVEN

天国昇ってどうすんだよ、このバカ。武道館見ないでどうすんだ! それともあれか、これで最前確保が余裕になったってことか! バッカじゃねーの!

MC。またもMCの内容はよく覚えていない。

そして次! スウィートドーナッツ!!!!

ここまでずっとずっと今日は最近の夏フェス系の新曲ばっかりのセットリストなんだと思っていた。あのイントロが流れ始めて、メンバーがRYOちゃんの死を知ってるんじゃないかと思ったくらいの衝撃だった。

亀戸で初めてPerfumeを見たときのことを思い出した。いろんなライブを思い出した。そのライブがどのライブなんだかわからない。みんなで手をあげてくるくるまわったりした。今の圧縮っぷりじゃそれもできない。振り付け教室もあった。あの頃からすると嘘みたいだけど、ずっとあの頃から一緒にPerfumeを応援してきた仲間だ。Perfumeがてっぺんとったとこ見て、その後はしらんぷりかよ、あいつ。バカみたい。バカじゃないの?

曲の途中、あ〜ちゃんが涙ぐんだ。知ってる。前に出演したときを思い出したんだって知ってる。昔のことを思い出して泣いたんだって知ってる。でもあのときのGPFだってRYOちゃんはいたはずだ。あ〜ちゃんの涙に私の涙も加速する。人がいっぱいの噴水広場でも一緒に泣いたけど、今は違う。別々に泣いてる。違うことで泣いてる。あの、RYOちゃんが、バカな珍古参のRYOが、もうここにはいないことに私は泣いてる。

ポリリズムからチョコレイト・ディスコ。ほとんど記憶がない。圧縮と悲しみと、なんだかよくわかんない感情の中で、必死にあ〜ちゃんを見ていた。泣きすぎてもう声が出ない。でもあ〜ちゃんを見ていた。

ラストMC。

3人が古くからのファンに感謝を述べた。少しだけおさまった涙がまたこぼれてきた。RYOちゃんはここにもういない。本当に古くからのファンで、この場所にいる人間なんてほとんどいない。でもRYOちゃんはずっとずっと古くからのファンがいなくなったあとも、ずっとPerfumeを追いかけていた。ずっとずっと。これからもきっとずっと。

ライブが終わり、私は外に出て、自販機の間でまた泣いた。なにかを思って泣いたわけじゃない。ただただもう泣いた。

その後、いつものように反省会。ライブに来ていなかった古参のファンが半分くらい、翌日は月曜日だってのに30人以上が集まった。それはスペアザ対バンのあとにみんなで反省会をした同じ部屋だった。あそこで昔の話をバカみたいにしたことを覚えている。RYOちゃんと私、それから2〜3人の古参がぐだぐだと懐古厨として話をして、まわりの奴らに「古参うぜえ」なんて言われたっけ。

RYOちゃんの死を知ったばかりの人もいたけれど、でもほとんどの人は昨晩中にRYOちゃんのことを知っていて、少し落ち着いているみたいだった。

お通夜はやっぱり死んだ奴のことに文句を言って笑い飛ばす会じゃないといけない。前日と同じようにみんなでしんみりしたり、笑ったり、冗談いったりした。15人くらいの人間が午前様になるまでいて、私は途中で翌日のこともあって退散した。もう明日は会社休むなんて言ってた人もいたから、もしかすると反省会は今日の夜まで続いていたのかもしれない。

死者を美化なんてしない。RYOちゃんはマナー知らずのくそったれだった。でもPerfumeが大好きで、Perfumeを好きな人たちのことが大好きだったことだけは間違いない。

RYOちゃんの人生はできすぎなストーリーだ。昔からずっと必死にPerfumeを追いかけて、オリコン1位とったところで、指定席になった武道館を見ないで死ぬなんて、最期に聞いてた曲がedgeだなんて、本当にできすぎてる。それはPerfumeのシンデレラストーリーができすぎなのと似てる。少なくともRYOちゃんが死んだあの日その瞬間まで、PerfumeのストーリーはRYOちゃんとともにあった。くそったれなヲタの人生をPerfumeと一緒にすんなって? じゃあ聞くけど、Perfumeをこの世で一番見てたのは誰だと思う? 毎週亀戸とピューロランドに通ってて、今にいたるまでPerfumeのほとんどすべてのライブを見て、ほとんどのライブで最前とって、CD100枚以上買ってたバカなんてほかにはいないんだよ。伝説のアイドルに伝説のヲタがいるのは当たり前だろ?

ってやっぱりこれ、amuseとRYOちゃんが仕掛けた壮大なドッキリなんじゃない? 誰か書いたシナリオ? なんてね。でも、やっぱりたぶんこれは嘘じゃなくて、真実で、その証拠にメッセンジャーにもうRYOちゃんはいない。edgeはもう流れていない。

そこから見えるPerfumeは笑ってるかなあ? まあRYOちゃんがいるのは天国なんかじゃなくて0列なんだろうけどさ。そして相変わらずあ〜ちゃんは泣いてるんだろうけどさ。

武道館、絶対来いよ!

*1:mixiミュージックによると、最後のセットリストは違う5曲なんだけどね。

*2:なのにみんなに知らせることになってしまったのだけれど