「ユーモアの鎖国」読了。

 石垣りん著「ユーモアの鎖国」(ちくま文庫)読了。1973年に刊行された散文集。自らの生い立ちや、詩に対する思いなどを綴った文章がまとめられている。
 4歳で生母と死別し、その後も継母や兄弟が相次いで亡くなった。女性が外で働くことが珍しい時代に15歳で銀行に就職し、定年の55歳まで勤め上げた。結婚もせず、子どももいない。そう聞くと寂しい人生のように思えるが、著者にはいつも詩の世界があった。
 幼いころから死が身近にあったこと、学歴がないことへのコンプレックス。それが詩人としての原動力になったことは間違いないが、その作品は決して卑屈にはならず、力強さと覚悟に満ちている。ちくま文庫らしい名作。ただ、書かれた時期や掲載媒体が一切記されていないのは残念に思った。

ユーモアの鎖国 (ちくま文庫)

ユーモアの鎖国 (ちくま文庫)