創造的適応とは何か

石井(2010)は、長年マーケティングの研究をしていていつもそこに戻ってしまう言葉として「創造的適応(creative adaptation)を挙げている。創造は状況を作り出す活動だが、適応は状況に合わせて自らを変身させる行動であり、一見矛盾しているが、マーケティングの本質は「みずからの状況を創り出しつつ、その状況に適応する」ことなのだという。


例えば「相手の言うことを言われたとおりにやる」のは創造的でない適応で、相手の心を思慮することなく何かをする」のは創造的であったとしても適応ではない。むしろ、相手の要望を、あらためて自分の中で再構成し、それに対応しようとするのが「創造的適応であると石井は説明する。


個人なるは組織が、めまぐるしく変転する状況に対応する上においても、あるいはまた、はやりすたりの速い理論や技術を自分(あるいは組織)の中に取り込む上においても、創造的適応の姿勢を欠かすことはできないと主張する。相手・対象の本質を自分の中でつかみ直し、而してそれに応える姿勢を保つことで、しっかりと地に足をつけたブレのない対応が可能となり、みずからを見失うこともなくなるという。


情報的視点から見れば、瞬く間に流れる情報に対し、成り行き任せで流れるままにしておけば、たまたま気がついたときに手を打つといったような「場当たり的な対応」になってしまう。それでは、組織は環境の変化に右に左に揺さぶられるばかりで、長期にわたる成長どころか組織の存続さえも覚束ない。そこに「情報を集め、増やし、そして使いこなす」組織的な工夫が望まれるに至る。