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橋本努 HASHIMOTO-TSUTOMU このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2017-06-05

■プライマリー・バランスを超える財政赤字の正当化

21:05 | ■プライマリー・バランスを超える財政赤字の正当化を含むブックマーク ■プライマリー・バランスを超える財政赤字の正当化のブックマークコメント

鍋島直樹『ポスト・ケインズ派経済学名古屋出版会

鍋島直樹さま、ご恵存賜りありがとうございました。

 ポスト・ケインジアンは、民間の貯蓄が超過している場合には、政府が赤字財政の下で公共投資をするべきだ、と発想します。

 むろん、「財政赤字」が深刻になると、かえって経済を不活性にしてしまうでしょう。ですがポスト・ケインジアンは、それほど深刻に考えないようですね。86頁参照。

 「投資に対する貯蓄の潜在的な超過が存在するときにのみ財政赤字の必要が生じる」というのはその通りですが、では民間の貯蓄が、投資に対して慢性的に超過している場合は、どのように考えるべきでしょうか。

 GDPの成長率が国債金利よりも高い場合に、基礎的財政収支(プライマリー・バランス)の赤字は持続可能、というのがこの学派の教義(ラーナーの機能的財政アプローチ)でありますが、この考え方に問題はないでしょうか。

 この場合、GDPの成長率と金利は、実質で考えても、名目で考えてもよい、ということになっているようですが、たとえば名目で、GDPの成長率がほぼゼロになる場合には、貯蓄が慢性的に超過している場合でも、財政赤字正当化できないことになりますよね。そうした事態において、この学派はどんな政策を提案するのか。興味を持ちました。

2017-05-11

■日本で成功した唯一の革命とは

21:54 | ■日本で成功した唯一の革命とはを含むブックマーク ■日本で成功した唯一の革命とはのブックマークコメント

大澤真幸日本史のなぞ なぜこの国で一度だけ革命が成功したのか』朝日新書

大澤真幸様、ご恵存賜りありがとうございました。

 大変スリリングに読みました。

 北条泰時に対する追討命令が、朝廷から出されます。関東の武士たちは動揺したでしょう。それまで武士たちは、全面的朝廷に対抗したことはなかったからです。

 泰時は、最初は「無条件降伏」を支持したようです。どうも優柔不断だったらしい。

 でも最終的には、北条泰時天皇側の軍に勝つ。これが「承久の乱」(1221)です。

 それで戦後、泰時は

(1)三人の上皇を流罪にした。

(2)幼い天皇仲恭天皇)を廃した。

(3)出家していた後鳥羽の兄を還俗させて、上皇とするとともに、その息子を後堀河天皇として即位させた。

 さらに泰時は、京都六波羅探題をおいて西国と東国を統一。

 加えて、最も重要な偉業を成し遂げます。関東御成敗式目という法律を定めるのです。合議体の評定衆によって(つまり人々の共同意志によって)、裁判の公正性を保つという制度ですね。

 御成敗式目は、国外の法を導入するのではなく、国内において、自発的な仕方で(つまり固有法として)法を築いたものでした。これによって泰時は、幕府朝廷と対等な、正統な支配者であることを明らかにします。

 日本人はこのとき、自分たちでいわば内側からの共通意思でもって、天皇の権威を借りずに、法を制定することに成功した。いわば憲法制定権力を共同で行使したのだと。これが革命の本質であるというわけですね。

 これはハーバーマスの考える憲法制定と革命の関係に近いでしょう。この革命の理念照らしていえば、第二次世界大戦後、私たち日本人がすべきであったことは、昭和天皇を廃して別の天皇を擁立することであり、またその上で、アメリカ圧力から脱して、自分たちで内側から憲法を制定し、天皇制に依存しない権力の正統性を打ち立てるべきであった、ということになるでしょうか。

2017-05-10 ■戦略家グナイゼナウ このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

橋爪大三郎『戦争の社会学光文社新書

橋爪大三郎さま、ご恵存賜りありがとうございました。

 貧乏な家庭に生まれたアウグスト・フォン・グナイゼナウ(1760-1831)は、軍人になり、アメリカ独立戦争にはイギリス軍として参加しました。帰国するとプロイセンの軍に加わります。

 グナイゼナウは、ナポレオンの作戦の特徴を研究します。

 ナポレオン軍の戦略は、敵の主力に、敵を上回る兵力を集中させて決戦を挑むというものでした。敵が崩れて撤退すると、そこを追撃して、立ち直れなくする。

 この戦略に対抗するためには、けっして決戦に応じない、その前に撤退する、というのがグナイゼナウの考え方でした。もっとも相手が退いたときには追撃を加える。これを繰り返していれば、決して負けない。軍事力は消耗しない。最終的には、ナポレオン軍のほうが消耗して、勝つことができるというわけですね。

 ワーテルローの戦い(1815)でも、こうしたグナイゼナウの采配が光りました。

 ベルギーワーテルローでは、互角の戦いが続く中、それ以前に敗走したはずのプロイセン軍が、ふたたびナポレオン軍のまえに現われる。側面を突かれたナポレオン軍は総崩れになり、パリに戻ったナポレオンは退位しました。

2017-05-08 ■『職業としての学問』を徹底的に精査した労作 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

野粼敏郎『ヴェーバー『職業としての学問』の研究』晃洋書房

野粼敏郎様、ご恵存賜りありがとうございました。

 野粼先生の研究人生のなかで、おそらく主著になるであろうご労作であると思われます。粘り強い研究の末に、包括的な研究の成果を一書にまとめられましたことを、心よりお喜び申し上げます。

 あるべき研究者の像は、いわゆるプロテスタンティズムのように一つのことに専念するタイプではなく、今井弘道氏がいうような、批判的な市民であるというわけですね。専門化がすすむ学問において、自らの本分を信じて邁進するだけでなく、その学問の意味を批判的に問い返して、社会生活の場面においては市民として発言し行動する。このように制度のなかで埋没しないことが重要である、という主張は、まさに今日のリベラルにふさわしい立ち位置であると思いました。

2017-05-02 シノドス国際社会動向研究所シンポジウム01 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

シノドス国際社会動向研究所」(略称シノドス・ラボ」)の企画の第一弾として、

下記のようなシンポジウムを開催します。

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「若者の政治参加と社会運動――シノドス国際社会動向研究所シンポジウム01」

富永京子×橋本努×仁平典宏

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参加無料です(申込が必要です)。

詳しくはこちら→http://synodos.jp/info/19670

若者の社会運動から、「新しい中間層」とその政治の可能性を考えます。

是非、ご参加いただけるとうれしいです。

以下、同HPの内容をそのままコピーします。

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2011年東日本大震災以降、若者たちを中心として、路上での抗議行動が盛り上がった。脱原発運動や特定秘密保護法に対する反対運動安保法制反対デモである。ところで、かつてゼロ年代にも、若者たちは反貧困運動や反グローバル運動に従事している。それでは、ゼロ年代若者たちと、震災後の若者たちのあいだには、一体どのような違いがあるのか?

ゼロ年代に見られた運動の担い手には、問題の当事者性をめぐってふたつの類型がみられた。ひとつは、問題の当事者でないにもかかわらず、途上国貧困層ボランティアや支援にあたる人びと。もうひとつは、自らが「貧困」「不幸」であるという強いフレームを掲げて、当事者としての立場から貧困運動に携わる人びとであった。

ゼロ年代の運動参加者たちと、2011年以降の運動に参加する人びとは、同じく社会運動を担う「若者」であるが、社会問題への関わり方が大きく異なっている。

かつての反貧困運動の中では、運動に従事した者たちは、格差・貧困問題に即して「若者」というアイデンティティを構成した。しかし、安全保障・特定秘密法案というテーマに即すとき、それとは別の構成の仕方が必要になる。そこでサブカルチャーを共有していること、デモに用いられる「パロディ」や「ネタ」を共有していることが、「若者の運動」であるとアイデンティファイするひとつの要素になった。

さらに重要な点として、自分を社会の中でいかに位置づけるかという問題がある。安保法案反対デモ、特定秘密保護法反対運動従事する若者たちは、自分たちを「不幸」とは捉えない。自らは幸福で豊かだが、しかし安保法案特定秘密保護法のもたらす問題を、将来的に自分の生活に被害をもたらす課題として捉え、運動に関わった。それは典型的な中道左派的運動でもある。

これまでの中道左派的な運動は、普段から政治に関心を持たないような人びとへの要求をそれほど行ってこなかった。なぜ2011年以降の若者たちは、「普通の人びと」への訴えかけを熱心にしたのか? そこには、震災後の社会や市民の見方における転換があるのではないか?

以上のような動きは、市民が自らの「声」を政治に届けようとする試みであり、シノドス国際社会動向研究所(シノドス・ラボ)が目指すところの「新しいリベラル」や「オルタナティブな市民」像を構想する上でも重要な事例である。そこで、富永京子による新刊『社会運動と若者――日常と出来事を往還する政治』(ナカニシヤ出版)を題材とし、「若者の政治参加と社会運動」をテーマにシンポジウムを開催する。

震災後の若者の社会運動は、どのような社会変動を映し出しているのか? また、日本にかぎらず近年、台湾香港社会運動や、アメリカから世界に広がったオキュパイムーブメント(占拠運動)など、国内外でさまざまな若者の運動が見られたが、これらは果たして「新しいリベラル」の台頭と言えるのだろうか?

シンポジウムでは、『「ボランティア」の誕生と終焉』(名古屋大学出版会)の著者、仁平典宏氏をお招きし、シノドス・ラボ理事の富永京子と橋本努が、社会運動のみならずボランティアという形を含めての政治参加、それらが提示するオルタナティブな社会のありようについて、議論を通じて考えていく。

シンポジウム詳細

日時:5月20日 15時30分〜17時30分

場所:NagatachoGRID地下1階「SPACE0」

参加費:無料

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下記のホームページの「フォーム」よりお申し込みください。

http://synodos.jp/info/19670

会場はこちら。

https://grid.tokyo.jp/

仁平典宏さんの著作『「ボランティア」の誕生と終焉』。

シンポで取り上げる富永京子さんの著作

昨年出た以下の本が、富永さんの処女作です。

以上です。

2017-03-21 「シノドス国際社会動向研究所」設立に向けて このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

「新しい政治を生み出すために、シノドス国際社会動向研究所をつくりたい!」

このメッセージとともに、先月、研究所の設立に向けてクラウド・ファンディングをはじめました。

https://camp-fire.jp/projects/view/21892

これまでファンドに協力していただいたみなさま、心からお礼申し上げます。

また、この機会にシノドス国際社会動向研究所の趣旨にご賛同いただけましたら、

あと残すところ6日の募集ではありますが、どうかサポートしていただけますと幸いです。

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いま私たちは、この研究所の設立に際して、

一般社団法人」の資格を得るための手続きを進めています。

さまさまなルールを決めて、定款を作成しました。

各種の書類を揃えて、できれば四月から本格的にスタートさせたいと思っています。

最初に企てる研究・社会調査は、

まさに「新しい中間層の可視化」です。

私たちはいま、この研究を進めています。

この他にも、さまざまな研究をすすめていくつもりですが、

この研究所の運営、あるいは理論的なバックボーンについてのアイディアは、

当初、韓国の「中民研究所」のハン・サンジン氏から得ています。

http://www.earnglobal.org/main/z2_main.php

もちろん私たちが目指すところは、この研究所とはまったく別のものになるでしょうが、

一つの先例として、これからも参照していきたいです。

社会科学の研究を通じて、政治に貢献するための回路を作り出したいと思っています。

シノドスでは明日以降、この研究所の設立をめぐって、「鼎談」を載せる予定です。

http://synodos.jp/

こちらもよろしければご訪問いただけますと幸いです。

引き続き、どうぞよろしくお願いします。

2017-03-04 韓国で起きた大統領退陣デモに関するコンファレンス

韓国で起きた大統領退陣デモに関するコンファレンス

21:24 | 韓国で起きた大統領退陣デモに関するコンファレンスを含むブックマーク 韓国で起きた大統領退陣デモに関するコンファレンスのブックマークコメント

f:id:tomusinet:20170304205255j:image:medium

昨年11月、韓国で盛り上がりを見せた、「朴槿恵(パク・クネ)」大統領に対する退陣要求デモ。

LEDキャンドルを手にした人々が、さまざまな場所でデモンストレーションを繰り広げた。

キャンドルライト政治」とも呼ばれるこの運動は、社会理論の観点からどのように意味づけられるのか。

韓国の中民研究所では、3月8日にコンファレンスを開催予定。

上の写真はそのプログラム

報告はすべて英語で行われ、外部からの参加も可能という。

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シノドス国際社会動向研究所」(四月に立ち上げ予定)でも、

こうした研究と連動して、社会理論と社会運動論の連携から、

新たな政治の可能性を探りたいと思う。

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韓国の中民研究所はこちら。

http://www.joongmin.org/

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シノドス国際社会動向研究所は、現在、

設立のためのクラウドファンディングを継続中。

https://camp-fire.jp/projects/view/21892

いま、一般社団法人化にむけて、組織作りと研究準備をすすめています。

2017-03-01 ■人工知能が自分の好みを教えてくれる このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント


感情化する社会

感情化する社会

大塚英志『感情化する社会』太田出版

大塚英志様、ご恵存賜りありがとうございました。

 人工知能(AI)の発達は、たしかに目を見張るものがあります。

 例えば人工知能に、たくさんの猫の写真やビデオを見せてみたら、人工知能の側で計算をはじめて、ある認識パタンにもとづいて「猫という存在はこういう感じの生物だ」というイメージを、自分で描いてみることができたわけですね。

 こうした人工知能の成果は、おそらく他の分野にも応用できるでしょうから、例えばAIにたくさん小説を読ませて、さらに批評家の批評パタンも読ませれば、AIは自分で小説を書いて、その小説を別のAIの批評家に評価してもらって、それでAIはさらに上手な小説を書いて、批評家も批評が上手になって、云々といったことが起きるかもしれませんね。

 さらに、小説に対して「AI大賞」のような賞が受賞される時代が、近い将来、来るかもしれません。あるいは、ネットでランクが上位になる小説を分析して、ランクが高くなりそうな小説を正当に評価できるようなAIが現われるかもしれません。

 音楽にも、応用できますね。作曲の「AI大賞」という。

 空想は拡がりますが、「専門家よりもいっそう専門的」「アーティストよりもいっそうアーティスト的」「自分よりももっと自分の好みを知っている(そして見つけられる)」などといったAIが出現するようになった時代には、いったい「自己の自己性」とはなんなのか。その理解がおそらく変化するでしょうね。「自分のことは、AIのほうがよく知っている。では自分とは何者なのか。」これは考えてみるに値します。

2017-02-28 ■消費税でも格差縮小の効果あり このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント


18歳からの格差論

18歳からの格差論

井手英策『18歳からの格差論』東洋経済新報社

井手英策様、ご恵存賜りありがとうございました。

 政策としては、消費税のみで、富裕層貧困層のあいだに、大きな分配効果があるというのですね。この説得の仕方だと、累進所得税には反対しているように見えますが、それが真意でしょうか。

 国際社会調査プログラムの調査によれば、「格差の是正は政府の責任である」という質問に賛成した日本人は、54%でした。ところがOECDの平均は69%なのですね。

 日本において、ウソをついて生活保護をもらう人の割合は、0.5%程度。これはあまり多くないですね。でも中間層の人たちは、生活保護の不正受給に対して厳しい視線を向けます。ここら辺の認識ギャップが激しいというのは同感です。

2017-02-27 ■「和む」ことは「福祉」の理念の一つ このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント


山脇直司Glocal Public Philosophy

Institut International de Philosophie

山脇直司様、ご恵存賜りありがとうございました。

 ドイツでの出版ですね。公共哲学の網羅的な整理になっています。いろいろな日本人も出てきます。

 最後に、グローカル公共哲学が行きついた理念は、「和」であり、また「輪」、人々の苦悩を和らげる柔軟な平和のための連帯、というわけですね。

 「和解」「人間の輪」「平和」「調和」「和らげるmitigate」「慈悲」「和む(なごむ)」という理念の系列があります。

 私は次のように考えます。こうした系列の理念は、緊張した理性の動きとは異なり、人を弛緩させるような作用をもちますが、それはすなわち、理性や攻撃的な心性が弛緩されたところに生まれる社会秩序というものであり、これは公共性というよりもむしろ福祉のテーマです。福祉からみた公共性です。実はこれは、アーレントハーバーマスも語らなかった社会秩序の次元であり、「福祉国家」の「福祉」をこのような観点から理解するとき、権利としての福祉論や、ケイパビリティ論などとも異なる次元が見えてきます。たしかに、「和む」ことが一つのコミュニケーションとして求められる場面は、福祉サービスのなかでもそれほど多くはないのでしょう。しかしこの視点から、諸々の福祉サービスの在り方を再検討してみる価値はあると思います。また「福祉」や「ウェルビイング」の理念を再規定する意義があると思います。