■プライマリー・バランスを超える財政赤字の正当化
- 作者: 鍋島直樹
- 出版社/メーカー: 名古屋大学出版会
- 発売日: 2017/03/03
- メディア: 単行本
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鍋島直樹さま、ご恵存賜りありがとうございました。
ポスト・ケインジアンは、民間の貯蓄が超過している場合には、政府が赤字財政の下で公共投資をするべきだ、と発想します。
むろん、「財政赤字」が深刻になると、かえって経済を不活性にしてしまうでしょう。ですがポスト・ケインジアンは、それほど深刻に考えないようですね。86頁参照。
「投資に対する貯蓄の潜在的な超過が存在するときにのみ財政赤字の必要が生じる」というのはその通りですが、では民間の貯蓄が、投資に対して慢性的に超過している場合は、どのように考えるべきでしょうか。
GDPの成長率が国債の金利よりも高い場合に、基礎的財政収支(プライマリー・バランス)の赤字は持続可能、というのがこの学派の教義(ラーナーの機能的財政アプローチ)でありますが、この考え方に問題はないでしょうか。
この場合、GDPの成長率と金利は、実質で考えても、名目で考えてもよい、ということになっているようですが、たとえば名目で、GDPの成長率がほぼゼロになる場合には、貯蓄が慢性的に超過している場合でも、財政赤字は正当化できないことになりますよね。そうした事態において、この学派はどんな政策を提案するのか。興味を持ちました。