人はなぜ物語を

欲するのか、それは人間の根源的な欲求なのである…
てな感じの趣旨のブログ記事を、いくつか見た。というか冒頭の一文で検索してヒットしたページをいくつか読んでみたら、皆だいたい同じようなことが書いてあったのだ。
誰だって「物語」が大好きですよね? 「物語」が嫌いな人間なんてこの世に一人もおりません! …とまでは言い過ぎだろうけど、まあそれくらいのノリである。
しかしながら、「(自分は)物語が大好きなんだよね」ではなく「(自分のことはさておき、世間の人たちって)物語が大好きなんだよね」の方が、個人的にはしっくりくるのだ。そりゃわたしだって人間なので、やっぱり「物語」の必要性は否定しない。とはいうものの、どちらかというと不得意な方だよな、とは思う。



まず、小説のたぐいをめったに読まない。小説本を手に取るなど年に数回あるかないか。テレビドラマの類もまず見ない。映画館に行くのも多くて年数回、そういや今年はまだ2回ぐらいだったかな。
マンガは、まあ読む。といっても次から次へと新刊を買いまくるようなことはない。アニメについても、年1〜2タイトルくらい。
本じたいは昔からわりと読む方だとは思うけど、小説は読まないというとびっくりする人もいる。じゃあ何読んでんの。エッセイとか人文書だよ、と答えると不思議な顔をされる。人文書とかは「勉強」であって読書とは呼ばないとまで言われたこともある。いいやん別に、こちとら単にそっちの方が面白いから読んでんねんし。
文庫で小説を手にしてもまず巻末の解説から読む手合いだ。それで作品の背景とか作者のこととか周辺の知識を得て、それで肝心の本文はほとんど読まないこともある。
けして「物語」が嫌いなワケではないんだけど、いくぶんかの苦手意識はあるのかなと思う。というか、「湯水のように物語を消費する」ことに抵抗があるというか。
「物語」の消費に慣れていないから、単純な話、同じ「物語」をいつまでも反芻して楽しめてるということは言えるかもしれない。映画館で感心したらのちにブルーレイディスクを買うのは当然として、原作本や関連ムック本にまで手を出すこともよくある。いちどひとつの「物語」に反応したら、その世界にどっぷり浸りたいのだ。その間、他の「物語」に浮気することはないのかと言われたらまあ別にそうでもないし、マンガ原作の映画とかも基本的には観ない方なので、この説にあまり説得力はないのだけど(先日、とある人気マンガの映画化作品のDVDを見つけたので勢いで購入したものの、あまりのつまらなさに10分くらいで止めてしまった。ぶくおふに売り飛ばすにしてもせめて一度くらいは最後まで観た方がいいのかなあ、などと思いつつそれも億劫だなあとか思ってたりする)。



映画にしろ小説にしろ、あるいはマンガにしろ、年に百本とかそれ以上のハイペースで次々と消化していく人のことが、正直よく分からないでいる。そういう人からみたらわたしなんざ「物語を必要としない人」レベルに見えるかもしれない。ま、お互い様である。
しかし、「物語の消費」が人間の本能に根ざすものだとしたら、この差はいったい何なのだろう。健啖家と食が細い人、あるいは肉食系と草食系とか、そんな感じなんだろうか。