一度作ってしまった「物語」を崩すことは難しい

昨日の件で共同通信の記事を引用して、さらに、
「ボランティアを申請の条件にはしない」
と太字で書いたのに、理解できない人がいるみたいだ。


俺の共同通信の記事に対する理解は間違っているのか?理解が間違っていないとしたら、そしてそれが事実と違うというのなら、それは共同通信が「誤報」をやらかして、それを俺が信用してしまったということだ。しかし、共同通信誤報だという確かな根拠はあるのだろうか?


共同通信の記事は9月25日付だ。誤報だとしたら文部科学省はそれを一ヶ月近く放置していることになる。だから正しいのだとは言えないけれど、ある程度、この記事は正しいのではないかという根拠にはなるだろう。


その記事に

ボランティアを申請の条件にはしない。

とある。


共同通信の記事が何を言っているのかといえば、大学入学前に無利子奨学金を申請する場合、現在は学力基準と家計基準がある。これは「申請時点」の状態のことであり、「申請以後」のことではない。

学力基準:
(1) 高等学校又は専修学校高等課程の1年から申込時までの成績の平均値が3.5以上
(2) 高等学校卒業程度認定試験もしくは大学入学資格検定に合格した人、又は科目合格者で機構の定める基準に該当する人
家計基準:家計の基準額は、世帯人員によって異なります。
本人の父母又はこれに代って家計を支えている人(主たる家計支持者一人)の収入金額が選考の対象となりますが、4人世帯の収入・所得の目安はおよそ次の金額以内です。

大学で奨学金の貸与を希望する方へ-JASSO


ところが、この条件を満たしていても枠が不足して奨学金を受けられないケースが問題視されていた。そこで、文部科学省は予算を増額して、基準を満たしていれば全員が奨学金を受けられるようにする。


さらに、基準を満たしていない場合も、ボランティアをしていれば、奨学金を受けられる可能性があるという話だ。


この際、「ボランティアを申請の条件にはしない」とあるので、従来の基準で条件を満たしていれば、ボランティア経験の有無は関係ない。


大学入学後にボランティアをしなければならないという話でもない。


文科省、ボランティア経験を加味 大学生ら無利子奨学金 - 47NEWS(よんななニュース)

 文部科学省は24日、所管の独立行政法人日本学生支援機構」が大学生らに貸与する無利子奨学金の審査基準について、現行の世帯所得や学業成績のほかに、来年度からボランティアの経験も加味する方針を決めた。

 それでも所得が基準を上回ったり、成績が下回ったりした場合は受けられないが、ボランティアをすれば基準外でも“救済”される可能性が出てくる。ボランティアを申請の条件にはしない。

何度繰り返して読んでも、そう解釈できる。


※ただし、奨学金には毎年一回「適格認定」というのがあり、「人物」「健康」「学業」「経済状況」の報告が求められる。この際に「ボランティア」が追加されるなら、入学後もボランティア活動をしなければならなくなる。しかし、記事はそこまで言及されていない。「無利子奨学金の審査基準」と書いてあるので「継続」の話ではないと考えるのが妥当だろう。


で、話題となった読売新聞の記事には、

 文部科学省は、国費を財源とする無利子奨学金の貸与を大学生らが受ける際の条件について、成績や世帯収入に加え新たに「社会貢献活動への参加」を追加する方針を固めた。

奨学金の条件「社会貢献活動への参加」追加へ : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
と書いてある。これは共同通信の記事と何ら矛盾しない。すなわち同じことが書いてあると考えるのが妥当だろう。こっちには「受ける際の条件」と書いてあるので、上に書いた「継続」の話でないことがよりはっきりする。「誤解」の元は「社会貢献活動への参加」を「在学時に社会貢献活動をすること」と解釈したことからくるのだろう。しかし、共同通信の記事を見れば、それは「申請前に社会貢献活動をしていたこと」と解釈すべきものだ。


また、

 来年度から貸与者らに文書で呼びかけを開始し、周知期間をおいて数年後の条件化を目指す。社会貢献活動の場の提供に積極的な大学にも補助金などを上乗せする方針。同省は、公費で学ぶ学生に社会還元の意識を根付かせたいとしている。

「公費で学ぶ学生に社会還元の意識を根付かせたい」がもう一つの誤解の元だろうが、これは「社会貢献活動の場の提供に積極的な大学にも補助金などを上乗せする方針」にかかるものだろう。


ここに「社会還元」と書いてある。「社会還元」とは何かということを考えて見るべきではなかろうか?


「社会貢献活動・ボランティア」といえば、アキカン拾いや老人ホーム訪問なんかをすぐに思い浮かべるのかもしれないけれど、そういうものだけが「社会貢献活動」ではない。学生の「社会還元」といえば、学業で得た知識を社会に還元することではなかろうか?


ついでに「公費で学ぶ学生」は「奨学金を受けた学生」を意味するのかも考えるべきでしょうね。


ちなみに、現在でも大学院の奨学金免除の評価基準として「専攻分野に関連したボランティア活動等」がありますね。