教科担任制のデメリット

小学校の教科担任制。実は極端に教科が偏っています。教科担任制(小学校でいう分科の授業)の多くは理科や音楽、図工です。逆に算数、国語、社会、体育ではそれほど多く行われません。これにはいくつか理由が存在します。そこを掘り下げながら、まずは現状の教科担任制の問題点を示していきます。
 
小学校の「分科」の実態
現状の小学校で特別な加配がない場合、学級担任制を基盤とする小学校では教科担任制を回せるほどの教師の数はおりません。多くの学校では教務主任や教務が分科の授業を受け持って授業するということになります。これは実は専門性とは関係なく、主に高学年の学級担任の空き時間(つまり事務仕事をするための時間ね)を確保するためのものです。これによって、小学校高学年の教師は週に2〜3時間程度の時間を空き時間としていただき、その時間で行事関係や成績処理、子どものノートの整理を行います。低学年や中学年では学級の時数が少ないので、その補正をするという役割があります。
こうして年度始めに分科として教務主任や教務などにやって欲しい授業などを相談することになりますが、教務主任の専門性とは基本的に関係なく、授業の準備に時間のかかる理科などが選ばれます。ですから分科で授業をやっているからといって、その分科授業をやっている先生が理科が得意とは限りません。そして同じような理由で音楽、図工が選ばれることが多くなります。
逆に国語や算数が選ばれない理由は「時数」です。国語や算数はどの学年でも基本的に毎日ありますから、これを分科として任せれば教務や教務主任の負担が多くなります。
小学校で行われている多くの分科授業は「専門性」とはそれほど関連はありません。
 
交換授業の実情
それでも近年は小学校でも専門性が問われることが多くなってきています。その一つが小中連携が密接になってきたことにあります。僕も小中一貫校に勤務していた時には、小学校6年生の担任をしながら、中学校の理科も授業していました。この例からもわかるように、世の中のニーズは確実に専門性(少なくとも小学校の高学年では)へと向かっています。
しかし、上で述べたように今の人的配置では難しいこともあり、多くの学校で交換授業が行われます。交換授業というのは、例えば1組の先生が2組の国語もやるかわりに、2組の先生が1組の算数をやるという形です。本校でも実は最初にこの形を管理職から提案されましたが、僕は強固に反対しました。これは持続モデルではないからです。例えば学年3クラスだととたんに複雑になります。また、学年2クラスであっても一人の先生が年休をとれば、隣のクラスの授業まで影響を及ぼします。さらに時間割の設定がかなり複雑になり、設定するのが難しくなります(小中一貫校では、中学校の教務主任が毎週遅くまで時間割づくりに追われていました)
中学校の先生がこれをイメージするならば、週に25コマ、3学年の授業を持つようなものです。確実にパンクします。実際に交換授業を教育委員会レベルで行っていたところは、教師の負担感が増えたと感じることが多くなったり、なかにはやめてしまったところもあります。

これが今の小学校の「分科」の実情です。小学校で教科担任制が広がらないのはこうした理由があるからなのです。