ユナイテッド93

2001年9月11日.
4機の旅客機がハイジャックされた.
3機はターゲットに到着.


1機のみ到着せず.

大勢の乗員・乗客を乗せたユナイテッド航空93便は,離陸後にテロリストによってハイジャックされていることが判明する.やがて,その情報は搭乗者のみならず,地上にいる彼らの家族や管制塔にも伝わった.耳を疑う情報が流れ,想像を絶する恐怖に襲われながらも,機内の人々は一丸となってある決断を下す……….



恐かった………
終盤,妃紗は泣きっぱなしででした.
そして,終了後にすぐ立ち上がれなかった.絶望感と虚無感で胸がいっぱいになってしまったから.何より震えてた.

この映画が評価できるのはテロリスト達が主人公ってこと.アメリカのアメリカによるアメリカの為の映画であることは間違いありませんが,ただの被害者作品ではないんです.


地上の管制塔や情報機関がこぞってパニックになってるのを他所に,乗客達は「俺達でやろう.助けはない」って状況を悟る.コレ,テロリスト達も同じなんだよね.乗客の奮起は予想外だったかもしれない.でも,指示をくれる上司はいない.頼りは爆弾と小さなナイフと操縦桿.
作戦成功か失敗か.全ては自分達に懸かってる

乗客とテロリストとか,アメリカ人とイラク人とかそんなラベルが無意味な人間と人間の戦い.だから怖い.剥き出しの感情のひとつひとつが恐い.


この映画で,うろたえるテロリストを見てふと『華氏911』のあるシーンを思い出した.
マイケル・ムーア監督が,アメリカの政治家やお偉いさん達に『あなたの息子さんを戦地に送るというのはどうですか』って直撃インタビューするシーンです.誰も彼もそそくさとカメラの前から逃げる.上の人間は誰も手を汚さない.正にそれを露呈するシーンなんですが,これ,イラク側にも言えることなんじゃないでしょうか.
自爆テロとしてその身を作戦捧げるのは,末端の人間なんでしょう.彼らの素人ぶりがそれを肯定してる.
アッラーの神の導くままに.自分達の行いは正しいという信念だけを持たされて.彼等もまた被害者かもしれません.

でも,どっちが被害者とか,どっちがより悪いとか,そんなの下々の人間は知らないよ.わかることって,戦争がある限り,どこかの国の名前も知らない誰かが『愛している』って呟いて死ぬだけだってこと.