出口のない海

時は1945年4月.青年が,一隻の潜水艦に乗り込んでいく.
彼の名は並木浩二(市川海老蔵).戦況苦しい日本を前に,自ら志願した極秘任務を果たそうとしているのだ.
野球ボールを握る彼の胸に,今までの思い出が去来する.高校時代,甲子園優勝投手として周囲の注目を集め大学に進学したこと.大事な肩を痛めたこと.
しかし夢をあきらめなかった日々.
そして日米が開戦.同級生らが志願しはじめ,並木も海軍への志願を決める.彼の任務は人間魚雷“回天”としての,敵艦への激突だった.


回天の細部や,操作方法,利点とかがすごく詳しく描かれていて,それはワクワクしました.興奮したというか.

回天を初めて上官に見せてもらい,『この回天には,脱出装置は付いていない』
ということをその時初めて知らされた.『自由に観察して構わない』と言われたあとの並木くん達の表情が,何を示しているのかが気になって仕方ない.

好奇心か.
恐怖心か.

目の前にある塊に身を預けた時,それは死を意味する.


映画を観ていると,死は甘く,魅惑的で,一度虜になると離れ難いものなんだと強く思う.
『お国の為に』
この作品も,そう誓って,散っていくことが自分にとっては極上の形で,それ以外は受け入れられなくて.

なんて真っ直ぐで,狭くて,純粋なんだろう.


自分が搭乗するはずだった回天が壊れ,激突する機会さえ与えられなかった沖田(伊藤充則),一度乗り込んだものの今回も故障により海に散ることが出来ず,『軍神になりたい…』と懇願した北(伊勢谷友介),最期に「オカン……」と呟いて突っ込んでいった佐久間(柏原収史),そして本懐とは違う形で回天に全てを捧げた並木………
みんな,「死」に魅入り,それを求めた.男なら,お国の為に.その思いに捕われ,囲まれ,逃げられず.

純粋ゆえ,他の選択肢を選べない.八方塞がり.

出口のない海』というタイトルは,そんな彼らを表わした言葉なのかもしれない.

妃紗には理解出来ませんが……


*余談*
 実は,この映画で妃紗はほとんど泣けませんでした.北くんの,「軍神になるしかないんだ!」という魂の叫びには震えましたが,それが頂点でした.
というのも,主人公の並木くんがあまりにもヒーロー過ぎたからだと思う.
いいとこのぼっちゃんで,大学に通うような有望な人物で,家族に優しく,恋人が居てってパーフェクトなの.海軍に入ってからも面倒見がよくみんなに慕われて,潜水艦の中でも冷静で…….
なんか,感情移入できなかったんです.上手く説明できないんですが……

あとは,海老蔵の演技にちょっと違和感覚えたのかも^-^;