さんかんしをん  伊波虎英


揃(ぞ)ろ目に生まれ揃ろ目に死にしキェルケゴールの三十四歳、その五月闇


虐待のニュース途切れぬ日常にスザンヌ・ヴェガを思ひ出したり


緘黙の鴉のごときコーヒーを胃に沈めたき閏日の朝


暖房はこたつと湯たんぽのみなれば起き抜けにわが鼻水止まず


オリーブ油白く濁れる寒き日もありて三月さんかんしをん


字余りの短歌のやうな背番号31の掛布雅之


グァーグァーと家鴨のやうに鳴く奴のすがた見えねど鴉と信ず