魚のやうに  伊波虎英


現実がひだり耳から押しよせる断線したるイヤホン越しに


誰かれを呪はぬためにくだらないテレビに日毎ばか笑ひする


菅野美穂の笑ひ袋が欲しわけもなき哀しみの日々につのりて


わが指の魚のやうに冷たくて触れたきものに触れられぬ夜


透明なクリアファイルの重なりにへだたる書類と書類の文字よ


少々の暴力ならば愛の名のもとに許さる愛はおそろし


恐らくはないのだらうがあるやうに思はせてくれ横綱の品格