探偵どうでしょう(映画「探偵はBARにいる」)

☆×4

探偵はバーにいる (ハヤカワ文庫JA)

探偵はバーにいる (ハヤカワ文庫JA)

バーにかかってきた電話 (ハヤカワ文庫JA)

バーにかかってきた電話 (ハヤカワ文庫JA)

あらすじ
探偵の「俺」(大泉洋)はススキノのいわば「何でも屋」。助手で空手の名人・高田(松田龍平)と夜な夜なバー「ケラーオオハタ」でオセロをしながら依頼を待つ。
ある日、コンドウキョウコを名乗る人物から1本の電話がかかってきた。
「ミナミという弁護士に質問してほしい」。怪しい匂いを感じ取りつつ会いに行くと、裏社会の男にいきなり生き埋めにされる。
依頼よりも連中に一泡吹かせたくなった「俺」がいろいろ調べると…。

近年では「アフタースクール」といった映画、数々のドラマで活躍する大泉洋。舞台をススキノ(北海道)にすると「水曜どうでしょう」を浮かべる人も多いだろう。事実、「俺」はそのままで高田を藤村D*1やミスター*2ヤスケン*3に置き換えると、「俺」のキレぶりやボヤキはまんま「どうでしょう」となる。


(かっこよく見えるけれどなぜか笑える探偵・大泉)

オープニングの雄大な雪原に生き埋めされ命からがら脱出してキレるさまは、数々の無茶ぶり企画「サイコロの旅」「カブ縦断」シリーズのようであり、ススキノで追い詰められて助けを懇願する姿は「サイコロの旅」で1/6を引き当てて確定した夜行バスを「やめてくれよぅ」*4だ。

バーで缶ピースを吸いながらカクテルを決める姿は普通、いわゆる探偵の姿でハードボイルドを感じさせるが、道民ではなくとも「どうでしょう」のイメージが強いと探偵・大泉はギャグしか見えない。

ところが「どうせカッコ悪くなるんだろう」という鑑賞者の底意地の悪さを逆手に取ったオーソドックスな探偵ぶりは板についたもので、松田優作萩原健一といった昭和の名探偵をほうふつとすらさせる。
出オチを味わえるローカルタレントだが、実は演劇集団「TEAM NACS」で培った力は本物であり、「アフタースクール」での抑制された演技以上に、大泉の新たな代表作となった。


キャラクターも魅力的でよい。大泉のどこかすっとぼけながらもカッコイイ探偵は新たな探偵像といっていいし、いつでも寝てるか食べてるかのズボラ学生・助手高田の松田龍平も普段のかっこよさを控えめに、それでいて空手の達人というトランプのジョーカーみたいなオールマイティーさ。
ちなみに高田がたいがい食べていたお菓子は北海道銘菓「北菓楼」の「開拓おかき」。甘エビやイカなど5種類ほどあるが、一番オススメは「日高昆布」。どうでもいいけど「北海道おかき」とかいうゲロマズおかきもあるから、お買い求めの際は「開拓おかき」かどうか確認を忘れなく!


そして今作、最も驚かせてくれたのが悪役・高嶋政伸だろう。ドラマ「ホテル」やヤマダ電機CMでのイイ人から一変、極悪でいつもゲップばかり吐くゲスな姿は新境地。高嶋政伸が所属するニセ右翼団体「則天道場」の波岡一喜も相変わらずクセのあるチンピラぶりがナイスでした。
小雪も悪女ちっくながらラウンジのママが似合う魅力的な姿は安定感があった。でもやっぱり小雪のあらゆる長さが苦手で大泉との初対面での「美人だ…美人すぎる…」との感嘆には同意できないけどな!

「俺」のナレーションで状況や経緯を説明するくどい演出も若干は見られたが、「相棒」スタッフだけにテレビ的な手法として許容範囲だろうか。
そんなことより最後の最後の小樽行きが徒労に終わるとか…あーた、ホントに役に立たないネェ!?

真の道民映画へ

北海道映画といえば自然、人情とか浪花節や演歌の似合う作品ばかりだった。今後は道民映画といえばこの作品になるだろう。
BAR内部こそセットなものの、舞台のほぼすべてがススキノ。BAR外観はススキノはずれの飲み屋街で撮影され、随所に札幌市民なら「ここもロケ地か!」という感動を味わえる。

  • 冒頭のパーティー会場は南7西2の「ジャスマックプラザホテル」。西田敏行の殺害場所はそこから徒歩10分以上かかる北4西3の旧西武ロフト館裏の小道。会場のすぐそばなのにっ!
  • アヴァン・タイトルのチンピラとの追いかけっこは南3西5の「ノルベサ」。繁華街の中心にそびえたつ観覧車が目印。
  • 弁護士・ミナミのオフィスがあるのは北洋銀行本店とショッピングモールのある「札幌ビッセ」。高田の車がエンストして褒め殺しした場所は大通公園の真横。
  • 「俺」が高嶋政伸に突き飛ばされ階段落ちする場所は地下鉄東豊線豊水すすきの駅1番出口。出口前には札幌映画界の良心こと「ゲオディノス」があり、さらにその近くには松田龍平小雪が大泉に連れられ味わった「油そば」が名物の「米風亭」も。
  • 「俺」がアキラ父をぶらんぶらんさせるビルはススキノど真ん中。真下にはドキュメンタリーシリーズ「警察24時」おなじみのススキノ交番。そんなとこで脅しちゃったんですね。

映画×短歌

モジャモジャは優作だからかっこいい んなこたないネェ、どうでしょう?

*1:大泉への無茶ぶりを楽しむ「どうでしょう」ディレクター

*2:番組構成兼出演の甘いモノ嫌いこと鈴井貴之、大泉所属OFFICE CUE社長

*3:裸ネタ好き、TEAM NACSの安田顕

*4:「サイコロの旅」全国編で、あまりの引きの悪さに哀れみの東京ボーナスステージで「5つは飛行機で直帰、1つは夜行バスで逆方向」を得たが、見事に九州行き夜行バスを引いた