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2018年12月30日 映画を見るなら月夜はおよしよ。2018年映画ベスト10

toshi202018-12-30

[][][]2018年に見て「良かったな」と思った映画から10本を選んでみる。 2018年に見て「良かったな」と思った映画から10本を選んでみる。を含むブックマーク 2018年に見て「良かったな」と思った映画から10本を選んでみる。のブックマークコメント


 みなさま、どうも。ご無沙汰をしております。気がつけば年末でございます。

 今年、ブログ更新量はいよいよ、見る影もなく壊滅状態で大変申し訳なく思います。しかし、映画自体を見る量はむしろ上がっておりTwitterでは映画感想をガンガンかいてたりします。鑑賞量はブログを書かない分、過去最多120本を軽く超えておりまして。しかも面白い映画ばかりで、選定作業は難航いたしました。

 というわけで、自分が出会った映画の中から、「良かったな」という映画を10本選ばせてもらいました。「あれがない」「これもない」という方もいらっしゃるでしょうが、ご容赦いただいて、しばしおつきあいくださいませ。


10位「ボヘミアン・ラプソディ

公式サイト:映画『ボヘミアン・ラプソディ』公式サイト 大ヒット上映中!

 今年最後に爆発的ヒットを記録している、人気ロックバンド・Queenを扱った伝記映画。

 とにかく映画館で見た回数で行ったら今年一番かもしれない。伝記映画としては構成がいびつな映画ではあり、そして虚実をないまぜにした「フィクション」でもある。そういう意味で毀誉褒貶があるのはわかる。だが、それでも後半20分強を実際のライブ再現に使い、そこにドラマを収束させたのは見事であった。あそこまで「ファン以外の層」に「Queen」の音楽を響かせるクライマックスを作り上げたのは、まさに映画ならではの離れ業だと思う。

 加えて、私の初見が「Queenファンが集結した発声可能上映」というのもでかかった。その体験がとにかく衝撃的で、その出会いのせいで、私は「応援上映じゃなきゃ見れない」体になってしまった。どうしてくれる。とにかく「映画館でこそ見なければいけない映画」として忘れがたい体験でした。

 未見の方は公開中に是非。


9位「タクシー運転手 約束は海を越えて」

 韓国・ソウルに住む一介のタクシー運転手が、ドイツ人記者を乗せたことから、衝撃的な事件「光州事件」の目撃者になっていく物語。

 実話を元にしてはいるのだが、主人公のタクシー運転手当人がどういう人物なのか。実は長らくわかっていなかった。そこから想像を膨らませて描いた「フィクション」でもある。政治にまったく興味もなく、デモに対しても辛辣だった「ノンポリ」タクシー運転手が、外国から来たソウルから光州までの「長距離客」をせしめた事から、彼は「自分の国で何が起きているのか」を目の当たりにする。その主人公を肉付けするソン・ガンホの演技がとにかく人間くさく、政治と我々は不可分であることを身を持って教えてくれるのである。

 この映画が韓国で大ヒットしたことで、モデルとなったタクシー運転手の身元とその後の人生が判明した事を含めて、映画の力ってすごいと思わせる傑作であります。

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8位「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書

 ニクソン政権下で作られた、ベトナム戦争を巡る機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」の存在がニューヨーク・タイムズでスクープされたことにより、残りの文書の存在と掲載を巡り、ワシントン・ポストの女性社主の葛藤や編集主幹の不屈の戦いを描いた作品。

 この映画における「新聞」というメディアが「権力」におもねる事なく、戦うことの苦難とその重要性を描いた作品なのですが、とにかく僕にとって衝撃的だったのは、その構成。

 僕の仕事は「新聞の印刷」であります。

 僕は新聞を「書く側」ではなく、「刷って届ける側」であります。この映画は「書く側」のドラマではあります。だが、同時に「日々刷っている」人間に対して最大限の敬意を払ってくれた映画であります。あの「スティーブン・スピルバーグ」が、そんな映画を作ってくれたのです。これが感動せずにはおれますか。

 日々書かれた内容を刷って顧客に届ける。

装填された弾丸が拳銃から射出されたかのように。輪転機が動く。魂を込めた記事が、新聞として刷られていく。その新聞を荷造りし発送する。その新聞が世界を変えていく。

この「刷る」という仕事も日々のたゆまぬ努力によって為されている、書くのと同じくらい大変な仕事なのです。そんな日の当たらない我々の仕事を、こんなドラマックに扱っていただけるとは思わなかった。劇場で嗚咽に近い号泣をしてしまった。とにかくこの作品には「ありがとうございます。」という言葉しかありません。スピルバーグ監督に最大の感謝を。


7位「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル

 ナンシー・ケリガン襲撃事件を起こしたとして、当時世界中に衝撃を与えたフィギュアスケート選手トーニャ・ハーディングが、なぜそんな事件に関わってしまったのか。そこまでの半生を描いた作品。

 優美さを求められる「フィギュアスケート」界において、トーニャ・ハーディングは次々と前人未踏の技を開拓する「技術の天才」であり、彼女のそのハングリーさとある種向こうみずな性格は、母親によって形成されたことが明らかになっていく。そんな「フィギュアスケート」の技術を底上げすることに貢献してきた才能が、なぜ「転落」していったのか。彼女自身の目線から描かれていくのだが。

 その真相はあまりに衝撃的で、劇場で腰を抜かしそうになった。人間って「こんな事」で未来を失うのか。これが「悲劇」なのか。それとも「喜劇」なのか。この映画の物語が事実ならば、そのシナリオを書いた「神」はなんと残酷な事であろうか。あまりの事に「爆笑してしまった」その真相は、是非とも映画本編でご覧ください。



6位「殺人者の記憶法」「殺人者の記憶法/新しい記憶」

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 アルツハイマーを患った老いた殺人鬼が、若き連続殺人鬼と対決するというスリラーである。

 この映画の白眉は、自分を構成するために必要な「記憶」を徐々に失いながら、最愛の娘のために戦う「殺人鬼」の物語であることだ。「殺人鬼」とはいえ、娘が生まれて以降は殺しをやめて一介の動物医院を営む初老の男なのだが、体力差に加え狡猾さも併せ持つ「敵」に対し、「アルツハイマー」が進行する中で戦わざるを得ない苦闘が描かれる。のだが。

 この映画の「別バージョン」である「新しい記憶」で、実はこの映画の物語に「もうひとつの可能性」が観客に提示される。この二本を見ることにより、観客は「記憶」という実にあやふやで不確かでいい加減な存在に、戦慄することになる。自分の「見ていた」物語はどちらなのか。自分は「何」を見ていたのか。観客を「思考の泥沼」に引きずり込む、恐るべき映画であります。

殺人者の記憶法:新しい記憶 [DVD]

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5位「モリのいる場所」

 実在の画家・熊谷守一氏を描いた物語。なのであるが、本作は「伝記映画」ではない。

 30数年自宅から一歩も出なかったと「言われている」熊谷守一氏が自宅でどう暮らしていたのか。彼のとある数日を「スケッチ」した映画で、その自宅の庭がまるで「一個の小宇宙」のように描かれている。「モリ」を演じる山崎努とその奥さんを演じる樹木希林は、本作が初共演とのことだが、まるで長く連れ添った夫婦のように「その世界」にたたずんでおりその演技が実に素晴らしい。

 もちろん「熊谷守一」氏はそこに至るまで様々な苦難を経験してはいるのだが、この映画ではそれは「匂わされる」程度で決して表立って描きはしない。あくまでも二人の老夫婦から見た「世界」に寄り添っている。その視点が実に見事で、沖田修一監督恐るべしと思った次第。


4位「ラッカは静かに虐殺されている

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 シリアの内情を国外向けに報道するシリアの市民ジャーナリストのグループについてのドキュメンタリー映画。

 今年、シリアで拘束された安田純平さんの事件が記憶に新しいが、シリア内戦とそこでの国内の内情を世界に発信するジャーナリストのグループがRBSS、日本語で「ラッカは静かに虐殺されている」である。

 ISによって報道が統制され、真実を報道できない国がどうなるのか。シリアの内情の一端を描くこの映画は非常に衝撃的だ。

 今、日本では「メディア」の存在は非常に軽視されはじめていて、安田純平さんへの一部で行われた「非難」もそこに端を発している。だが、権力におもねり、真実に切り込むメディアを失った国がどうなっていくのか。彼らが住んでいたかつて美しい都市だった「ラッカ」の無残な姿をそのカメラは捉えている。

 ここに出てくるジャーナリストたちは元々記者ではない。様々な職種だった人々が集い、自らの国の惨状を世界に伝えようと文字通り命がけで戦っている姿を描いている。彼らが伝えるシリアの姿はあまりつらく、見るに堪えない。だが、これは世界が知るべき真実であるのだ。この映画は「メディアが死んだ国はこうなるのだ」という警句でもある。


3位「リメンバー・ミー

 歌を禁じられた家に生まれながら、歌手に憧れるメキシコの少年・ミゲルが、憧れのスター歌手が自分の先祖であることを知ったことから、死んだ先祖に会いに「死者の国」に向かう物語。

 私には弟がいて、私が常に映画館まで行って新作映画を見に行くことに訝しげに尋ねることがあり、そこで私は常にこう答えてきた。「その新作映画の一部が、後に古典になるのだよ。」と。それでも弟は納得してなかったのだが、たまたま本作の試写会が当たり、一緒に見に行った時、見終えた後「ようやく言ってる意味がわかった」と興奮した。本作もまた「古典になりうる新作映画」の一本であります。

 この映画を見た後の興奮は忘れがたい。歌を巡る葛藤の物語、死者と生者をつなぐ独自の世界観、ツイストの効いた脚本、そして圧巻のクライマックス。「忘れようにも忘れられない」映画であります。


2位「パディントン2」

 英文学の古典「くまのパディントン」を映画化したシリーズ第2弾。

 ペルーからイギリスにやってきた熊・パディントンの物語は第1作も非常に面白かったが、第2作は輪をかけて素晴らしかった。時まさに「移民問題」でヨーロッパが揺れる時代に作られた本シリーズは、家族向け映画としても大変優秀ながら、異邦人を受け入れる寛容な社会の重要さを高らかに歌い上げもする。

 ミステリ、アクション、コメディ、刑務所もの、そしてミュージカル。この映画はあらゆるジャンルを横断する。

 パディントンが無実の罪で刑務所に入った事から巻き起こる騒動とその顛末は、彼の人柄に触れて人々を巻き込みながら、やがて奇跡的なハッピーエンドへとつながっていく。多幸感あふれるエンディングはまさに素晴らしく、思わず感涙。まごうことなき傑作です。


1位「悪女 AKUJO」

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 父を殺され、暗殺者として育てられた女が復讐の果てに逮捕され、国家直属の女暗殺者として生まれ変わり、新たな人生を始めた事から、さらなる悲劇へと巻き込まれていくアクション映画。

 映画館で見て、一発で衝撃を受けたのはそのアクションである。とにかく「新しい」。オープニングシーンから「どうやって撮ってるんだ?」と思ってしまう壮絶なアクションを観客に叩きつける。

 スタント出身のチョン・ビョンギル監督の目指すアクションは「見たことないもの」への飽くなき探求に満ちている。そして映画で描かれる物語は、激しい情念に満ちている。日本でリメイクされた「殺人の告白」でデビューしただけあり、その物語性も素晴らしい。アクションとドラマが不可分である点も特筆すべきことである。

 激しく、儚く、美しくも切ない。一人の女の「愛」の物語であり、「哀しみ」の物語であり、「狂気」へ至る物語である。

 「誰も見たことない映画」を高い次元で実現した、恐るべき映画だと思います。映画館で見れて本当に幸せでした。

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2018年12月15日 わかっちゃいるけど止められない「映画映画ベストテン」

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http://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20181030

ワッシュさんの「映画映画ベストテン」に参加します。


映画映画ベスト10

1位:Mr.ビーン カンヌで大迷惑?!(2007年 スティーブ・ベンデラック監督)

2位:千年女優(2001年 今敏監督)

3位:これは映画ではない(2011年 ジャファル・パナヒ監督)

4位:ギャラクシー・クエスト(1999年 ディーン・パリソット監督)

5位:ブリグズビー・ベア(2017年 デイブ・マッカリー監督)

6位:アルゴ(2012年 ベン・アフレック監督)

7位:人生タクシー(2015年 ジャファル・パナヒ監督)

8位:アクト・オブ・キリング(2012年 ジョシュア・オッペンハイマー監督)

9位:劇場版 NARUTO 大活劇!雪姫忍法帖だってばよ!!(2004年 岡村天斎監督)

10位:カメラを止めるな!(2018年 上田慎一郎監督)

「カメラを止めるな!」

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「劇場版 NARUTO 大活劇!雪姫忍法帖だってばよ!!」

「アクト・オブ・キリング」(The Act of Killing)

「人生タクシー」(Taxi)

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「アルゴ」(Argo)

「ブリグズビー・ベア」(Brigsby Bear)

「ギャラクシー・クエスト」(Galaxy Quest)

「これは映画ではない」(In film nist)

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「千年女優」

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「Mr.ビーン カンヌで大迷惑?!」(Mr. Bean's Holiday)

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2017年12月31日 映画を称えよ!映画にふるえよ!2017年映画ベスト10

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 みなさま、どうも。ご無沙汰をしております。気がつけば年末でございます。

 今年、ブログ更新量はいよいよ、近年稀に見る少なさでございましたが、大変申し訳なく思います。しかし、映画自体を見る量はむしろ上がっており、いい映画との出会いがたくさんありました。その中から10本を選ぶという、なかなかつらい作業でございました。

 というわけで、自分が出会った映画の中から、「良かったな」という映画を10本選ばせてもらいました。「あれがない」「これもない」という方もいらっしゃるでしょうが、ご容赦いただいて、しばしおつきあいくださいませ。


10位「勝手にふるえてろ

公式サイト:映画『勝手にふるえてろ』公式サイト


 東京国際映画祭にて鑑賞。十代からの片思いを引きずり、20代になってもなお、その「一番好きな彼」を片思いし続けてきたヒロインが、彼女にリアルに好意を向けてくる「二番目の彼」が現れたことで起こる、ヒロインの大混乱を描くラブ・コメディ。

 一人の男を片思いを続けてきたが故にリアルな恋愛からは遠ざかり、コミュニケーション不全に陥ったOL・ヨシカの、大混乱を描いている点がとにかくイマ感がある。自分の絶対的な聖域を作り、そこに踏み込んでくる人間にはたとえ好意を伝えてくる男性であろうとも、心を許していたはずの親友でさえ攻撃的になる。そんなヒロインの心の「大激震」を描いている。

 「理想の恋愛」に心をこじらせてき女性が、リアルな恋愛と対峙する。その時に初めて気づく、自分の中にある「狂騒」。刺さる人間は限定されるかもわからないけど、刺さる人間には思い切り、刺さる。その刺さり方がまたエグい。心臓を貫かんばかりの深さだ。

 心の奥底に踏み込まれることで起こる、ヨシカの心の「ふるえ」は、みっともなく滑稽かもしれないけれど、だけど(人によっては)誰よりも愛おしく見える人もきっと多いんじゃないでしょうか。少なくとも私はその一人です。是非一度ご覧ください。

 


9位「サバイバルファミリー」

 もしも突然、社会から電気が喪われたら。そんな状況に突然放り込まれた日本社会を、一家族の視点から描いた作品。

 ここ数年、なんだかんだと新作が出るたびに僕は矢口史靖監督の新作をベストテンに入れてきましたが、本作もまた非常に優れた娯楽作でありながら、3.11後の日本を見据えた娯楽作になっているように感じます。

 電気を喪った人間がどういう行動を取るのか。その群集心理を描きながら、同時に、かつてない危機に立ち向かう、一家族のロードムービーとしての側面もあったりする。その中で、家族に少しずつ今までの自分にはなかった「自分」が目覚め始めていく。

 今まで矢口監督が培ってきた、「取材によって徹底的にリアリティを固め」ながら、それをきちんと「コメディー」として落とし込むという蓄積が、本作もまた非常にリアルで、そして滑稽でありながらも少しずつ人間として成長していく家族の物語として、非常に完成度の高い形で結実していると思います。

 何より本作は、非常に普遍性の高い設定であり、「ドメスティック」に陥らない、万国共通のテーマであり、きっと多くの人に届く傑作であると思います。


8位「アシュラ」

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 架空の地方都市アンナム市を舞台に、絶対的権力を持って街を腐敗させていく市長の下で手先として働いていた刑事が、ある事件をきっかけにして、市長と検察の対立の渦中に叩き込まれ、やがて破滅していくまでを描く、韓国ノワール。

 とにもかくにも、主人公にしてからが最初から街の腐敗にどっぷり使った悪徳刑事で、冒頭で人生が完全に破綻するような事件が起こる。刑事を辞めて市長の正式な部下になるはずが、そのプランは頓挫し、そこから人生の歯車が狂い始め、そこから様々な「悪人」と絡むことになるのだが、それでもこの映画が面白いのは、言ってみれば「破滅」が定められた男の右往左往の物語としての魅力と、出てくる「悪人」たちが、それぞれに圧倒的な個性を放っているからに他ならない。

 柔らかな物腰で主人公をえげつなく追い詰めてくるクァク・ジョヨン演じる、市長を告発しようと動いている検事・キム・チャインと、彼の右腕となって動き荒事も辞さない検事、チョン・マンシク演じるト・チャンハクが主人公をえげつなく追い詰めます。

 そしてファン・ジョンミン演じる主人公がつるんでいた、悪徳市長パク・ソンベは、その純粋な悪でありながらも抗いがたいカリスマ性を持っており、その魅力はまさに悪魔的。主人公の代わりに彼の手先となる、純朴な性格の弟分・ソンモもまた、市長のカリスマ性によって心を奪われ、やがて「悪人」として開眼していく。そして主人公と袂を分かっていきます。徹底的に追い詰められた主人公が、最後に取った決断とは。その決断が、さらなる地獄の釜を開くのです。

 悪に落ちる快感、後戻りできないと気づいた時の悲哀と絶望、破滅していく魅惑、容赦ないバイオレンスとハイテンションなアクション、そして悪と悪がぶつかり合う興奮。その全てをがここにある。一見の価値ある傑作と思います。


7位「LUCK-KEY ラッキー」

 殺し屋がひょんなことから記憶をなくして売れない役者と人生が入れ替わる、内田けんじ監督のコメディ「鍵泥棒のメソッド」を原案に、いぶし銀の名脇役として活躍してきたユ・ヘジン主演でリメイクした作品なのだが、完全に本歌取りとも言うべき傑作として生まれ変わった。

 日本では「漫画的」な感じになりがちな「殺し屋」という職業も、ノワールが盛んな韓国ならば「映画的」になる。45歳の殺し屋が32歳の売れない俳優として、大真面目に役者道へと邁進する姿を演じるユ・ヘジンはただただ面白いだけでなく、32歳として人生をやり直し、あまつさえ新たな人生を手に入れる、この一見いかついおっさんが、実にかっこよく、そして時に可愛いの。この映画のヒットによって、ユ・ヘジンと言う脇役俳優をも「生まれ変わらせた」この映画。

 まだまだ人生やり直せるんだ!という「おっさんのファンタジー」としても大変優秀で、見ていて笑いながら、最後はうっすら涙を浮かべちゃうような、そんな映画である。一人のおっさんとしてこの映画大好き。本当に好き。

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6位「昼顔」

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 上戸彩主演で大ヒットしたドラマ、「昼顔」の映画版である。

 いや、実を言うとドラマの方は全く見たことがなく、いきなり劇場版を見に行ったのでした。理由は簡単。西谷弘監督の新作だからである。「ガリレオ」シリーズ、「任侠ヘルパー」など、ドラマの劇場版を傑作・秀作に導いてきた監督であり、本作においてもその期待を大きく超える仕上がりとなっている。

 ドラマシリーズで不倫愛を知られてしまい、職も居場所もなくして、映画冒頭で地方都市へと移り住んだヒロイン。けれどそこでかつての不倫相手と運命の再会を果たしたことから、二人は次第に燃え上がり、物語は歯止めの効かない方向へと転がりだしていく。初めはただ、好きなだけだった。たとえ不倫であろうとも、お互い純粋に好きあった二人で生きていこうと決めた。だが、二人が向かった場所は引き返せない、あまりにも深い因業が渦巻く選択であることを、ヒロインは思い知ることになる。

 実を言うと、この映画の前に「午前十時の映画祭」で「突然炎のごとく」を見ていたですが、この映画と「突然炎のごとく」がシンクロするシーンがあって大変興奮した。

 人の夫を奪い、自分のものにする。その道はあまりにも、あまりにも業が深い。その愛は、奪われた者の気持ちを踏みにじることで成立する愛である。純愛などと決して言えはしない。

 奪うもの。奪われるもの。この映画は、その業に真っ向から向き合い、そして物語は一つの終着へと疾走していく。憧れ的に消費されがちな不倫愛。それを巡る因業の果てを描いた傑作である。

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5位「ドリーム」

 1961年。まだ黒人差別が当たり前だった時代、NASAの計算手として働いていた3人の女性たちの活躍を描いた映画である。

 時まさに冷戦時代。宇宙進出は人類の悲願であり、アメリカはソ連としのぎを削り、お互いの国の威信を賭けた宇宙計画を進行させていた。そんな中、圧倒的な計算力を誇るキャサリンはスペース・タスク・グループへと配属された。しかし、そこでも当たり前のように差別的な扱いを受けるキャサリンだったが、次第にその計算力が高く評価されていく。

 ひとかどの人物として仕事で自己実現する「夢」。人類を宇宙へ運ぶ「夢」。そして自分たちに向けられた差別をなくしていく「夢」。黒人女性がそれらを実現することが、「夢物語」だった時代において、一つ一つ困難をクリアしていくことによって、その「夢」が実現していく流れをNASAにもたらした3人の女性。見終わった時に思った。「彼女たちこそが『ワンダーウーマン」である」と。

 大きな目標に向かって、知性を結集していたNASAにおいて、「人種差別」と言うのは目標達成を阻む「エラー」でしかない。目標を持った知的な人間は、そのことにいち早く気づき、それを取り除く。3人の黒人女性のヒーローたちの物語というだけではなく、本当に知性のある人間と言うのは差別しないのだと描いてみせたこの物語は、まさに差別被差別者双方にとっても、学ぶことの多い傑作でありましょう。


4位「ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男」

 南北戦争時代、黒人と白人の差別から無縁の「ジョーンズ自由州」を築いた一人の白人男性、ニュートン・ナイトの生涯を描いた歴史大作である。

 アメリカ本国でもあまり知られてないこの人物は、南北戦争のさなか、南軍から脱走し、逃げ出した奴隷たちや脱走兵たちとともに、銃を取り戦いながら北軍、南軍どちらにも属さない、黒人と白人がともに暮らす独立区を作ったのである。黒人女性と結婚した彼は、戦争が終わり、自由州がアメリカに戻った後も、色濃く残る差別と戦い続けた。

 そしてその戦いは、彼の子孫にまで及ぶ。アメリカ全土で黒人と白人が自由に結婚できる時代になるまでには、彼一世代では終わらなかったのだ。それは映画「ラビング」で描かれた、ラビング夫妻の法廷闘争を待たなければならない。

 差別が根強く続くアメリカで、世代を超えた戦い続けた描く脚本の構成がまた見事である。今、アメリカを覆い始めている空気は、まるでニュートン・ナイトが戦った時代へと戻ろうとするかのようだ。戦いはまだまだ終わらないのである。

 まさしく、今知られるべき人物であると思う。


3位「バーフバリ/伝説誕生」「王の凱旋」

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公式サイト:映画『バーフバリ 王の凱旋』完全版公式サイト

 インドで歴代興行記録を塗り替えた、インドの古代都市・マヒシュマティを舞台にした、貴種流離譚である。

 滝の下で高貴な婦人の手によって救われた赤子シヴドゥは、実はある王国の英雄の息子マヘンドラ・バーフバリであり、数奇な出来事を経て再び王国に帰ってくる。彼はそこで、父である偉大なる英雄王アマレンドラ・バーフバリの活躍と悲しき運命を知ることになる。

 その圧倒的イマジネーションは凡人である我々の想像をはるかに超え、圧倒的な演出に打ちのめされる。第1作こそちょっと突飛な話に見えながら、第2作を見ることで物語が全て繋がり、偉大なる王の数奇な運命と悲劇、王国に起こった物語を主人公が背負い、王としてマヒシュマティ王国へと帰ってくる。その熱量はまさに「王の凱旋」と言うにふさわしい圧倒的力強さで観客を飲み込んでいく。

 この映画の声出し可能な発声可能上映、名付けて「絶叫上映」に何回か行かせてもらっているが、本当に最後は一人の群衆として、「王を称える」ことしかできない。大きな声で「バーフバリ!!」と。

 ツッコミどころももちろんあるのだけれど、それを映画大国・インドの粋を詰め込んだかのような、その有無を言わせぬ力強さでねじ伏せて、全てに圧倒される前後編。是非スクリーンで王の凱旋を称えて欲しいと思います。


2位「トンネル/闇に鎖された男」

感想:俺を救え!「トンネル/闇に鎖された男」 - 虚馬ダイアリー

 韓国・ソウル。突然のトンネル崩落に巻き込まれた自動車セールスマン。彼に残されたのはケーキ1個と飲料水2本、そして電波のかすかに届くスマートフォン。彼の救出作業は難航し、彼には逆境に次ぐ逆境が待っていた。

 この映画の暴き出す経済優先社会の冷酷さ、大衆メディアは男に望むもの。主人公が受ける圧倒的な窮地は誰が生み出し、誰が彼を殺そうとし、誰が彼を救うのか。見終わってその流れにゾッとし、そして主人公が最後に叩きつける一言は魂の言葉として我々に突き刺さるのだ。

 この映画において問われるのは、この映画のどこに「自分」がいるのかと考える想像力である。僕らは主人公を見捨てるのだろうか。そして、自分が主人公であったならばどうしただろうか。現場で救う側の焦燥と、悲劇を「消費」するメディアと、綺麗事を言いながら時に生命を簡単に切り捨てる政府と、時に冷めやすい大衆と。

 優れた映画というのは様々な示唆をくれるものである。この映画を見た後、考えて欲しい。見ていた映画のどこかにきっとあなたが「いる」はずなのである。本当に孤独なサバイバルの中で、本当に信じられるものはなんなのか。それをつぶさに描き切った大傑作だと思います。必見です。


1位「新感染/ファイナル・エクスプレス」

感想:ヨン・サンホ監督と揺らぐ我々。「新感染」「我は神なり」他 - 虚馬ダイアリー


 今年の一番大きい収穫は、ヨン・サンホ監督というでっかい才能を知ったことである。

 もちろん本作「新感染」も衝撃的だったのだけれど、彼の本来のフィールドであるアニメ映画も立て続けに公開されて、「新感染」の前日譚「ソウル・ステーション:パンデミック」や、信仰の意味を問う「我は神なり」などもまた、刺激的で面白くて、実に示唆に富む傑作であり、まさに私に強いインパクトを残した。


 監督がアニメ映画で培ってきた卓越した人間描写は、初の実写映画である「新感染」においても変わらない。普段なら穏やかな人も、追い詰められれば一番大事なのは「自分」になる。本当に追い詰められた時、僕らは「人間らしい」選択をできるのだろうか。「ゾンビ」という題材でありながら、一人の人間としてどうするのか。観客の喉元に突きつけてくる映画なのだ。

 この映画は一番恐ろしいのは、ゾンビではない。それによって右往左往する人間なのだ。それを言葉ではなく、映像で、音で、物語で観客にナイフを突きつけながら問うてくる。あなたならば、どうするのだ?と。

 娘とろくなコミュニケーションも取れず、父親としては落第点だった主人公は、利発な娘さんの存在によって、「たまたま」、「人間らしい選択」を選び取れた。偶然にも、奇跡的にも。だからこそ、「選び取れないかもしれない」僕らは彼の選択に涙を流す。それは「せめてそうありたい」と願う涙なのだろう。そう僕は思うのです。

 「新感染」、本当に恐るべき映画だと改めて思います。


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2017年12月27日 2017年感想を書き忘れた映画たち(5月・6月)

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帝一の國

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 将来総理大臣を目指す破天荒な高校生が生徒会選挙に命を賭けるエリート高校生たちの頭脳戦というストーリーでありながら、青春の懊悩と友情の裏表、幼少期のトラウマと向き合う青春映画でもある離れ業。政治映画としてはやや青臭い部分もあるが、高校生と政治のバランスはこれでいい。

 面白かったけど、帝一が総理大臣になれるかどうかはまた別の話のようには思う。案外、帝一のような計算で動く男よりは、ライバル・大鷹弾みたいな周りが自然と支えていく男の方が国を動かす男になりそうな気はするし、帝一はサブに回った方がいい仕事することを証明した話だったような。


無限の住人

 良かった。時を経ても変わることを許されない男・万次を演じるのがキムタクという配役が白眉。キムタクは何を演じてもキムタクなのは変わらないんだが、この映画はそこがいい。杉咲花ちゃんも処女性と復讐の激情を身の内に同居させる凛というめんどくさい役柄を見事飲み込んでる。

 三池監督は沙村先生が持つ変態的な暴力性に背を向けることなく真っ向勝負してるのも気持ちがいい。逸刀流があっさりしすぎな気もするが、続編への未練を断ち切るかのような完全燃焼な脚本も良い。杉咲花ちゃんは今の少女性を持ち続けるにはギリギリの年齢だし、これでいいかもね。

 しかし全ての悲劇の始まりが音尾琢真の無念にあったというのはちょっと笑ってしまった。無骸流が今ひとつ不完全燃焼だったのは仕方がないか。みんな大好きドS変態クソ野郎尸良を出すためのエクスキューズだったんだろうが、しかしとことんクズだったのはさすが三池監督であった。


「タレンタイム〜優しい歌」

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 タレンタイムという音楽イベントを通して描かれる悲喜こもごものドラマを描くこの映画自体は非常に娯楽的だが、その底に流れる宗教や人種間対立を内包するマレーシア社会を背景にしている。その中でより強く描き出されるのは前向きな、不寛容を超える若者たちへの希望だ。

 多民族国家ならではの様々な言語にさらに聴覚障害の若者の手話が加わり、様々な言葉が飛び交うが、同じ「言葉」を使えれば心が通じ合うとは限らないし、言葉を越えて通じ合う人々もいる。大人が持つ偏見を越えていくのは若者たちの感性だ!というメッセージが力強い。

 それにしても音楽が重要な映画で、見終わった後サントラが欲しくなるんだけど、取り扱いがまるでないのはなんでなんだ。itunesとかで配信しないかな。

「ノー・エスケープ 自由への国境」

 問答無用で移民を殺すジェフリー・ディーン・モーガンの演技が良い。基本頭おかしい凄腕スナイパー殺人鬼なんだけど、人間としての肉付けを付けて、ガエル・ガルシア・ベルナル演じるしがない自動車整備士につけいるスキのようなものを見せて行くさじ加減が見事。

 逃げ場なしの砂漠でワンショットワンキルで殺すスナイパー殺人鬼に狙われる絶望感。だけど砂漠という舞台は実は殺人鬼側にもリスクで、主人公たちが粘れば粘るほど射撃の精度が落ちてくる、という脚本がリアル。主人公が終始基本単なる凡人というのもいい。


「T2 トレインスポッティング

 これはあれだな。スコットランド版「男はつらいよ」だな。私生まれも育ちもスコットランド、エディンバラでございます。スコットランド一汚いトイレで産湯を使い、姓はレントン名はマーク。人呼んでトンズラのレントンと発します。恥ずかしながら帰って参りました。

 なんかユアン・マクレガーとかジョニー・リー・ミラーが一丁前の役者になって地元に帰ってきたらヒゲが待っていて「いよーう、それじゃあとりあえず裸で草原や街中走ってもらおうかあ」とむちゃぶりされる「水曜どうでしょう」感とでも言おうか。

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 「男はつらいよ」説には理由があって、つまるところシリーズを重ねるごとに観客が自らの人生の老いの残酷さや時代から次第に取り残される辛さを、観客が変わらない登場人物を通して噛みしめると言う映画になっているのよね。そんな映画が日本に毎年一回あった訳。

 本作が残酷なのは、第1作公開当時この映画が若者のアイコン映画だったこと。山田洋次作品だったらまだしも、若者の映画が20年後に中年老年の哀しみを描く映画として蘇るって監督ドS。「青春は終わった!人生に帰れ!」的な話だもんな。劇場版エヴァなんか目じゃない。


「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー/リミックス」

おいおいどこまでぶち込んでくるんだよ!この映画からサプライズしか飛び出して来ねえよ!アイツの親父がアレでお前の妹がナニでお前らはコレだあ!で、最後は泣かせる場面しか出て来ねえ!一言叫ばせろ!

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 改めて言うと面白かった。割とキャッチボール辺りからすでに泣いてたんだけど、最後らへんのド直球連投は逆に正直言うと愁嘆場が多すぎて逆に涙が引っ込むくらいに色々ぶち込んでくるので最初のような感想になるわけです。「銀魂」か!という。

 「家族」と言うワードの使い方のジャンプ漫画感、ヤンキー気質感は面白かったな。「ワイルド・スピード」シリーズでもそうだけど、家族の定義をどう考えるかはその人次第で、それで救われる人生もある、と言うのは現実世界でもある話。

 元々力の入り抜きの上手いシリーズではあったけど、オープニングからさすがと感心。ゲラゲラ笑わせながらその分、最後らへんは容赦する事なく力一杯泣きの棍棒で観客を引っ叩いてくるので弱い人は泣きっぱなしだろうなあという感じ。


マンチェスター・バイ・ザ・シー

 死んだものは蘇らない。壊れたものは戻らない。古傷は消えず痛く、越えられない壁はある。そんな世界に放り出され、1人彷徨する男が一筋の希望を見出す物語。本当にかすかで容易にかき消えるかもだが、それでも一歩を踏み出す為の正直しんどい人生の中の希望。

 終盤、ややどんよりした雲の切れ間に晴れ間が見えた途端に、いきなり夕立のゲリラ豪雨をぶち込む脚本がえげつない。しかも一見すると決して残酷には見えないところがスゴい。このシーンに悪人はいないんだよね。だけどこれは・・・。目の前がグラっとした。

「トンネル 闇に鎖された男」

http://d.hatena.ne.jp/toshi20/20170518#p1

「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ

ここ数年見たスーパーヒーロー映画を蹴散らす傑作。これは凄い。

スゲエのは主人公が中年のオッさんで偶然手に入れたスーパーパワーの使い方もとりあえず強盗に使うことしか思いつかないチンピラ。なのに心を壊したヒロインとの触れ合いを通して真のスーパーヒーローに覚醒していくまでを、非常に丁寧に描き出し観客を納得させる。

「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」から「ローガン」をはしごするとヒーローものの夜明けから黄昏までを体験できるのでオススメ。


バーニング・オーシャン

 ようやく見た。本当にバーニングなオーシャンだった。て言うか、複数の判断ミスが爆発的に激甚事故につながって行く様は完全にトラウマ。他人事感ゼロ。そりゃ関わった人やめちゃうよな、こんな事故に出会ったら。経済至上主義は人を殺す系映画。この映画に英雄はいない。

 「バーニング・オーシャン」という邦題は「DEEPWATER HORIZON」という原題よりも直接的で好きだが、原題はアメリカの内省的な映画である意味合いが強いので、これはこれで良い。

「ローガン/LOGAN」

 「ローガン」見ました。なるほど、良かった。

 本当に最後!と言う気合いが乗ってて、まさに「刻みつけた最後の爪跡」って感じ。一切未練を残さない幕引きは気持ち良かった。

 あと前から呟いてたけど、ローガンは老眼なのか?というワスの疑問にちゃんと答えてくれたの感動した。ローガン老眼!


「家族はつらいよ2」

家族はつらいよ2 [Blu-ray]

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ちょう面白かった。山田洋次は死なず!前作「母と暮せば」もなかなかに問題作で度肝抜かれたけど、本作は「生老死」を笑いに変えると言う北野武が「龍三」やりたかった事をいとも簡単に成し遂げてしまった。橋爪功の喜劇センスなくしては成立し得なかった事も付言しておきたい。

もちろんコメディの型としては年式古い。子役の演技も若者の描写もアナクロだし、こんな丁寧な喋り方をする40代50代はいないし、ケータイメールの描写も失笑だよ。その代わり老人の描き方だけは超リアルなんだな。それを橋本功が一手に引き受けてリアリズムある笑いにする。

橋爪功の家主としてのプライドはあって男としての若さへの未練もあって、でも次第に老いていく自分を受け入れられない小市民系老人の演技がとにかく絶品。彼が常に中心にいてそこに振り回される家族を実力派の中堅若手が固める構成が非常にピタッとハマってる。ネタも攻めてる。

今年公開の「破門」もそうだけど、橋爪功のコメディセンス衰えねえのすごいな。入り抜きの加減が完璧なんだよな。人間の小ささ、セコさ、愚かさ、哀しさを演じながらそれが鼻につかない、愛すべき人物になる。まさに名人が演じる落語の人物の如し。彼の代わりって日本にいるか?


ブラッド・ファーザー

ブラッド・ファーザー [Blu-ray]

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老いさらばえたチンピラ親父が、失踪からひょっこり戻ってきた娘のために、なけなしのコネと体力使って人生の最後に大暴れする系映画。最近のトレンドかこれ。上映時間が90分以内なので小気味よく進むのが楽しい。「ローガン」に比べるとメル・ギブソンは父性全開で明快。

基本頭の悪いチンピラで悪い奴は大体友達、そのせいで人生遠回りした親父と、トラブルで闇社会に触れたり麻薬に手を出したりするけど元々快活で頭のいい娘と言うコンビが良い。「よくわからんがメキシコ移民は職を奪うから嫌い」と言うメルギブが娘に諭される場面面白い。


「おじいちゃんはデブゴン」

サモハンが元スゴ腕の軍人で孫を失ったトラウマ抱えて故郷に隠遁した認知症老人と言う、なかなかに複雑な役を言葉少なに演じるアクション映画。孫の面影を感じる少女との心温まる交流と、相手の得物を奪った上で肉体破壊して沈黙させる冷徹アクションの落差凄い。

アンディ・ラウが準主演級で登場。基本クズだが、行動や妻子への愛情が裏目に出て人生崖っぷちのトラブルメイカーと言う何もアンディが演じなくてもって役を熱演してて何でかと思ったら、ラストの後に余禄シーンからスタッフロールでアンディの失恋バラード流れて納得した


「昼顔」劇場版

昼顔 Blu-ray通常版

昼顔 Blu-ray通常版

ヤバイ。これヤバイ。奪い奪われる者の業の深さを描き切った大傑作!やはり、俺たちの西谷弘監督は本物だ。やりおる。

不倫愛の果てに2人で生きる決断をしたカップルに待ち受ける罪と罰。許されぬ禁断愛、などというキラキラと惹かれ合う男女の不倫愛の光と闇を明らかに描き出し、お前ら純粋な愛の物語で終われると思うなよ!という、明確な意思を持って描かれてるのがすごいわ。伊藤歩が裏ヒロイン。

本作は配役の勝利だわ。華のある上戸彩を無邪気に夫を奪う表ヒロインとし、奪われる妻役に伊藤歩という、華は足りないけど演技力抜群な若手女優を配置した事で、この映画の陰影がより深まった。何気に重要なレストランオーナー役平山浩行も、チャラさと重さが同居するいい存在感だった。

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2017年12月26日 2017年感想書き損ねた映画たち(3月・4月)

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「お嬢さん」(パク・チャヌク

 世にも美しく歪な変態ミステリー映画。純粋を装う生まれ育った朝鮮が嫌い元泥棒の侍女。日本語にうんざりな日本の貴族お嬢様。伯爵を装う詐欺師に、日本人になりたい朝鮮人の富豪。4人が邂逅する事で始まる物語は誰も見たことの無い世界へと誘う。パク・チャヌク恐るべし。

 日本に併合されてた頃の朝鮮と言う設定で日本語台詞がやたらと飛び交うのも面白いんだけど、それがこの映画の舞台となる富豪の家が和洋組み合わさった歪な館で、それと相まって現実世界から隔絶された世界観へと繋がっている。だから最初違和感あるんだけど終盤は全く気にならなくなる。

 コンゲームの要素もあるんだけど、そこには性愛なしでは成立し得ない展開が多いのも面白い。男が望む女性への願望と、女性が望むものにはズレがあるんだけど、それを知り尽くしながらどこまで利用できるかが勝利の鍵となる。誰が勝つのかは相手を知り利用できた者。まさに頭脳戦である。

 朝鮮を舞台にしていながらそこから隔絶された無国籍感溢れる館を舞台とする事で、小道具の使い方も粋だ。きちんと種を見せながら展開を読ませない伏線回収も見事で、「あ、ここでコレが!」と思わされる展開も多い。ラストの展開も非常に納得度高い。

(★★★★)

「アシュラ」(キム・ソンス)

アシュラ [Blu-ray]

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 アイゴーアイゴー。傑作。最高。

 主人公の悪徳刑事は冒頭10分で人生が詰みになるので、後は人生投了する以外にないんだけど、病身の妻を抱えているので金が要る。だから人生下りずにひたすら悪人だらけのワンダーランドを彷徨うおとぎ話。自分たちの悪事でがんじがらめでどこにもいけない男たちの哀歌でもある。

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 基本的にチョン・ウソン演じる刑事は冒頭ですでにこんな感じなのであとはもう堕ちるだけという絶望感満載で始まるので、あんまりかわいそうではない。可哀想なのはこの地獄に巻き込まれた弟分のほう。

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 ファン・ジョンミン演じる市長は基本的に人間のクズみたいな人なんだけど、人物像にブレがないのと欲望に基本的に真っ直ぐなので見てて一番気持ちがいい。なんか人を籠絡しようとする時、藤田和日郎先生が描く悪役みたいな笑顔になるのが最高に気持ち悪い(褒め言葉)。

 ちなみにこの映画で俺が一番イケメンだと思ったのは刑事の弟分のチュ・ジフン

 ・・・ではなくクァク・ドウォン演じる検事の部下を演じるチョン・マンシク!映画ではコワモテで荒事をこなし、ならず者相手に一歩も引かない武闘派。でも笑うとチョー可愛い!

 「アシュラ」のチョン・マンシクさんのベストショットはここ!クソカッコいい!ここで、俺の中で渡辺謙を越えたね!世界に羽ばたけチョン・.マンシク兄貴!

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(★★★★★)


「少女は悪魔を待ちわびて」(モ・ホンジン)

 「サニー」「怪しい彼女」のシム・ウンギョン主演の復讐サスペンス。例えるなら能年玲奈ちゃんが外ではホワホワした空気を振りまきながら、裏では父親を殺した殺人鬼への復讐を計画する修羅と化している、みたいな話。可愛い顔してアグレッシブな復讐するヒロイン。

 さすが韓国の復讐モノは恨みの熱量が深い。ヒロインが本当に刺し違える覚悟で復讐を練っているので、最初ヒロインが殺人鬼側を押しまくる。そして、殺人鬼側が彼女の存在に気付き逆襲へと至るのが終盤なのだが、その殺人鬼相手に指すヒロインの一手がこの映画のミソ。

 この映画の特異点はヒロインが復讐を練っているなんて普段はおくびにも出さないところ。ゆるふわ愛されキャラで元刑事の娘って事で警察にもきっちり信頼を獲得してる辺り抜け目がない。この辺は「少女」という「武器」の使いどころ。そしてそれは復讐計画に連なっていく。

 ただ、警察が凄まじく無能なのが残念かなあ。殺人鬼がモーテルから逃げる段で、被害者の部屋に死体を発見することなく鑑識が撤収しちゃってるのはギャグだと思った。

(★★★)

「哭声 コクソン」(ナ・ホンジン)

哭声/コクソン [Blu-ray]

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 ネタバレ。ワンちゃんかわいそう。


一言で言えば「訳がわからない。」。でも怖い。恐ろしい。面白い。ところどころに聖書ネタをぶち込んでくるのはナ・ホンジンが熱心なキリスト教信者らしいけど今までの作品でそれ感じたことねえー(笑)。誰が善で誰が悪か、宙ぶらりんになったまま放り出される感覚はすごい。

 結局誰が悪かったんだ!と言う方向性でこの映画を見ると、思考が迷走する映画と思う。実際俺、未だに混乱してる←お前かーい。信じられる人間が誰もいない不安。悪が誰かかも特定し得ない混乱。しかし迫り来る恐怖は厳然としてある。例えるなら足場のないジェットコースターね。

 おそらく一応物事の因果がストンと腑に落ちる答えがあるんだろうけど、観客にそれを噛み砕いて教える気が監督にないね。だからもうみている間「なんなの!」「なんなの?」「・・・なんなの・・・」と色んな「なんなの」が頭の中に浮かんでは消える。不安が最後まで消えない。

 上映時間長すぎて忘れてたけど、序盤は結構愉快なへっぽこ警官と出来た娘の日常を点描していて、それが後半に効いてくる作劇というのは、なかなか堂に入ってたなあーと。ナ・ホンジンってこういう作劇出来るんだ!って感じはあったかな。娘さん役の子が新人女優賞取ったのわかる。

(★★★☆)

「ラビング 愛という名前のふたり」(ジェフ・ニコルズ

 しみじみといい映画すぎてもうね。なんかこう。つええ。この夫妻つええ。

 パンフでルース・ネッガが「夫妻は怒りという感情にしがみつかなかった」という洞察が深い。白人の夫と黒人の妻というカップルが結婚し子を持ち、当たり前に暮らす事を禁じられ、紆余曲折を経て裁判という茨の道に至る。そんな彼らに怒りを表す余裕はないという。

 この映画のクライマックス、ある種扇情的な展開をこの映画は意図的に避けて裁判の間も淡々と生活をするラビング一家の日常を点描する。この裁判はアメリカ社会において画期的な裁判となるが、勝とうが負けようがふたりはこの生活を続けるだろうと思わせる力強さ。

 ふたりにはもちろん様々な感情のうねりが身のうちにあるだろう。裁判によって嫌がらせを受け、黒人の友人の対応も変わる。しかしその上でそれを押し殺しながら、「愛」のために裁判を続ける事で「意思」を示す。身のうちの「怒り」すらも「愛」への推進力にする。

 だからこの映画は「英雄の話」という感じがまるでない。伝記映画感すらない。「とある夫妻の意思が必然の結果を呼び込む」物語に見える。それがたまたま「アメリカ社会を変えただけ」という。多分結果が伴わなくともふたりの愛は揺るがない。そう思わせる映画だ。

(★★★★)

「SING/シング」(ガース・ジェニングス)

 良かった。こう言うシンプルな直球ど真ん中の「歌が人生を肯定する」のど自慢映画。王道な物語をてらいもなくやり切ったのが気持ちがいい。善も悪すらも包み込むところもいい。歌い出せば恐れは消えていく。ちょっと人生に疲れたおっさんにもこういう映画は効く。

 しかし「マイウェイ」って本当にいい唄だよねえ。

(★★★☆)


わたしは、ダニエル・ブレイク」(ケン・ローチ

わたしは、ダニエル・ブレイク [Blu-ray]

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ケン・ローチ監督の静かなる怒りに満ちた傑作。政治はだれを生かし、だれを殺すのか。心臓を悪くして働けなくなった、頑固で跳ねっ返りの老大工の視点を通して描く。あなたはだれだ。

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 この爺さんは英雄でもなければ悪人でもない。口うるさくて頑固でデジタル音痴だが、長年仕事をしながら妻の介護を続け、我慢強く曲がった事はきらいで困った隣人には迷わず手を貸す人情にあふれた大工だった。しかし心臓のせいで職をなくした事で福祉の世話になる。

 医師から働く事を止められ、しかし福祉からは就労可能と言われ給付金を打ち切られる。働きたいけど働けない、でもって福祉は彼を突き放す。同じように福祉から見放されたシングルマザーのケイティを救うのは政府ではなく、同じ境遇のダニエルと言う皮肉。

 福祉を民営化に移した事で福祉からあぶれたイギリスの社会的弱者の現実を否応なく描いているが、それでも楽しく見られるのはダニエル爺さんのキャラクターに負うところが大きい。ぼやきながらも諦めずに食らいつき、困難な状況にあってもケイティに手を貸す情の深さ。

 この映画は「情けは人のためならず」な人情の大切さを描いているが、その限界を描いてもいる。彼らの困難や貧困はほんのボタンのかけ違いから起こった事で、彼らを救うのは構造的な社会問題を解決するしかないのである。この映画は政治が救えるものを描いてもいる。

(★★★★☆)

「ムーンライト」(バリー・ジェンキンス

 個人的にはすごく真っ当にフツーにいい映画。人生の師匠的なオトナの男がヤクの売人、優しかった母はその男が売るクスリで壊れていき、たったひとりの心許せる親友はある事件ですれ違ってから疎遠になる。大人の裏を知り、母の愛を疑い、友とのすれ違いに後悔する。ある人生の点描。

 我々の中にもある風景。大人に裏切られた気持ち、母の愛を失う怖さ、友との気まずい別れ。それでも人生は続く。我々にも代替可能な人生の話。でもそれこそがこの映画が黒人映画の成熟を示すもの。被差別の話ではなく、人種性別生志向関係なく共感可能な人生を黒人主人公で描く事。

 黒人映画は過去の歴史を振り返り、被差別者として、社会的弱者として、人生を落伍したら這い上がれずひたすら殺し合いの地獄を見るとかそういう映画ばかりだった。だが、「ムーンライト」はその連鎖から黒人を引き上げた。シャロンは黒人だが、私たちなのだ。

 黒人社会のリアリズムを失う事なく、現実からは目を背けず、黒人以外の人種だにも広く深く物語を共有させる高みにまで近づけたからこそ、この映画は非常にエポックであり、評価されてるのだと思う。びっくりするほど普通の人生賛歌。だからこそこの映画はスペシャルなんだと思う。

(★★★)

夜は短し歩けよ乙女」(湯浅政明

「夜は短し歩けよ乙女」 Blu-ray 通常版

「夜は短し歩けよ乙女」 Blu-ray 通常版

 あえてアニメ映画としての気負いを排してテレビアニメ版「四畳半神話大系」を雛形として正統進化しつつ、映画的快楽をも持ち合わせるに至った快作。四畳半ファンは納得の仕上がり。

 星野源の先輩はどうなるかと思ってたけど、クライマックスの進撃してくる乙女に対して、朦朧とした頭で脳内会議を始める場面で本領を発揮。頼りなさげな声の洪水が否応なくリアル。神谷浩史だと声が力強すぎるもんなー。この辺は逃げ恥を想起させるところでもある。

 見ていて思っていたけど、見た目が可憐で声が花澤香菜でも、酒豪で武道をたしなみ基本男に興味がない「黒髪の乙女」は中身が慈愛に満ちたおっさんみたいなので、普通に好感持ってしまった。割と言い寄ってきた男は「お友達パンチ」と言う名の鉄拳制裁をするの面白い。

(★★★★)

PとJK」(廣木隆一

PとJK [Blu-ray]

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 少女漫画的シチュエーションラブコメと演出、キャスティングが噛み合ってないのが面白い。「警官と女子高生の結婚」と言うファンタジーめいた設定と、当て馬的不良キャラの函館の街の底を漂う生活のリアリズムの配分の高低差がすごい。函館の上流と下流の落差たるや生きる世界が違う感。

 ふわっふわな警官と女子高生の結婚というシチュをリアルに落とし込めるかが眼目だったとは思うんだけど、ヒーローが警官として向かい合うもののリアリズムを描けば描くほどシチュが浮く。それを繋ぎとめてたのは土屋太鳳の圧倒的色気のなさだったのは皮肉。つか太鳳ちゃんつよそう。

 正直、土屋太鳳ちゃんを普通の女子高生として見るのが難しい。走るにしても自転車乗るにしてもいちいち動きがキレキレで、ヒーローに守られるキャラと言うより守る側でしょ。こんな肉体派な普通の女子はいない!亀梨くんは怖そうだけど実は繊細なキャラに合ってただけにバランスがもう。

(★★★)

「ゴースト・イン・ザ・シェル」(ルパート・サンダース

 これは賛否あろうが、面白く見た。士郎正宗先生の原作の映画化ではなく、押井攻殻を翻案した作品として見るのが正しい。チョイチョイ押井ファンがニヤリとするようなワードとが散りばめられてて、作り手の押井愛が炸裂してる感も好印象。リスペクトは深い。

 話としては電脳化技術はそこそこ進んでいるが、義体技術はまだ黎明期という設定。スカヨハ義体の少佐が本当の自分を探す話。話としてはやや古臭くなった感はあるけど、ネットが発達した今となっては少佐がスカヨハ義体を手放す理由もないのでこの終わり方を支持する。

 やっぱりスカヨハの「身体」ならぬ「義体」自体が魅力的で、彼女のアクションで駆動する映画になってるのは、押井攻殻よりも評価できる点。彼女の身体で義体の身体性に説得力を持たせてるのはアニメで出来なかった事で、身体を離れず自分を獲得する物語に回帰してる。

 もちろん押井攻殻を超えたという気は無いが、実写化企画としては成功の部類に入るんではないか。ふんだんに予算を使って、スカヨハを主演に出来たのはとにかく大きい。たけし演じる荒巻が終始日本語なのも電脳化社会の解釈としては面白い。

 俺が本作を否定できないのは、それをする事でスカヨハの魅力そのものを否定するような気がするからだ。スカヨハの義体を作ったジュリエット・ビノシュ演じるオウレイ博士にノーベル賞をあげたい。

(★★★☆)


「人生タクシー」(ジャファル・パナヒ)

人生タクシー [DVD]

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 日本より一歩も二歩も先行く人権無視のディストピア、イランより届いた、映画製作を止められたイラン人映画監督によるイランで上映できないイラン映画。タクシーから世界を撮る。政治的に反骨な映画でありながら娯楽的、記録映画のような虚構でもある。パナヒ監督は俺のヒーローだ。

 一言で言うと「笑ってはいけない」シリーズのバス移動パートのタクシー版とも言える。監督自身が運転手を務め、車載カメラやスマホ、デジカメで撮影。きっちり仕込みを入れ、客に「今の客、役者でしょ?」なんてメタ発言も入れつつ、虚実入り混じるパナヒ監督のタクシー行脚。

 元々娯楽的な「オフサイド・ガールズ」みたいな意欲的な作品を撮ってきたパナヒ監督が政治的に政権と対立して映画製作を禁止され、ゲリラ的に映画を作らざるを得ず、そのアイデアの中で生まれたのが傑作「これは映画ではない」であり本作である。この反骨、この逞しさ。素晴らしい。

(★★★★)

「PK」(ラージクマール・ヒラーニ)

PK ピーケイ [Blu-ray]

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 早稲田松竹にて。噂にたがわぬ大傑作だった。笑って泣けて広くて深い。まったく見事なエンターテイメントでありながら、底に流れる問いは下手なアート映画よりも深い哲学がにじみ出る。凄まじかった。観てよかった。ありがとうインド。ありがとうPK。

(★★★★★)

「イップ・マン/継承」(ウィルソン・イップ)

イップ・マン 継承 [Blu-ray]

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 「求めた強さの先にあるのは愛であるべき」という気恥ずかしいほどにまっすぐな映画だった。名を成し戦う時も最少限度の動きと力で敵を沈黙させるイップ師匠と、天才だけど不遇で野心的、どんな相手も全力で叩き潰す同じ拳の使い手チョン・ティンチとの対比も面白い。

 面白かったのはまっすぐで清く正しく技も心も誰よりも強いイップ師父が、周りの面倒に首を突っ込みほったらかされる妻や、運に恵まれず正しくない方法で日銭を稼ぎながら名を成そうとする者からどう見えるか、と言うのを忌憚なく描いているところ。正しさは時に毒にもなる。

 我々凡人は常に正しくはいられない。弱い。師父はまっすぐに道を極めるために妻を置いてけぼりにしてきた悔いを持ち、道を捨ててでも妻に尽くそうとする。そしてその愛を返すように奥さんは師父を道へと戻す。愛を得た拳は、1人の不遇な青年を救済する。この流れが美しい。

(★★★★)

「ライオン 25年目のただいま」(ガース・デイビス)

 あかん。これあかんやつやで。兄・グドゥと別れて幼サルーが壮絶なる迷子生活を始める序盤でほぼ壊滅的に涙腺が崩壊してる。一言で言えば「はじめてのおつかい」壮絶迷子編ですよ。こんなの泣くわ。しかも大人でも一人旅が怖いインドやで。ハードモードすぎる。

 綱渡りに次ぐ綱渡りで生き抜く序盤の迷子編だけでも俺の涙腺軽く決壊してるけど、そこに四半世紀の時の流れというドラマ。何不自由なく生きることがこれほどまでに辛いというサルーの引き裂かれるアイデンティティ。そして探り当てる故郷への道。そこで待つ真実!

 実話ならではの容赦なさと残酷さ。それでも、それでもサルーの心はかつてない平穏を取り戻す。そりゃそうだよな。彼はずっと旅を続けていたんだ。どこへ行っても彼は旅の途中だったんだ。誰も彼の「ホーム」にはなり得なかった。ホームになり得たのは「兄」だけ。

(★★★★)

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2017年12月25日 2017年感想書き損ねた映画たち(1月・2月)

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 Twitterに書いた感想を交えながら、感想を書き損ねた映画たちを振り返っていきます。


「ホワイト・バレット」三人行(ジョニー・トー

 ジョニー・トーの新作「ホワイト・バレット」見たけど、「変かっこいい」と言うジャンルの極致のような映画だった。あとやっぱりパンフレットはなかった。パンフ作る余力すらないと言うのは哀しい。面白い映画だけど、クライマックスの銃撃シーンの歌の謎さだけは首をひねりつつ、かっこよさに痺れる。つーか、何この歌。

 ・・・と思って、銃撃戦でも流れる主題歌について検索してたら、あれ、香港の懐メロカバーなのね。わかるかー!

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 わかりやすく言うと、テレビアニメ「輪るピングドラム」の「生存戦略」の場面でARBのカバーが流れる感じに近い演出なのね。本作の銃撃シーンはジョニー・トー監督の「変」な感性が爆発したシーンだと思います。(★★★★)

輪るピングドラム キャラクターソングアルバム

輪るピングドラム キャラクターソングアルバム


「ドラゴン×マッハ!」殺破狼2(ソイ・チェン)

 「SPL/狼よ静かに死ね」のシリーズ続編であり、タイのアクションスター・トニー・ジャーと、実力派・ウー・ジンのW主演で映画化した香港映画。

 楽しかった。3人のマスターの肉体の躍動を堪能。パッケージングが香港製なのでタイアクション映画の「イカレてる!」感はないんだけど、明らかに目の前で起こってるトンデモナイアクションを過不足なく見せ切る編集が見事で、常人にもきちんと何が起こってるか目で追える。

 獄長(マックス・チャン)がトニー・ジャーを軽くあしらうところは、ドラマとは全く違う感動がある。あそこ、変な声出た。香港アクションの層の厚さ、底力を見た思い。

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 その後本作の「絶叫上映」と言うものに初めて参加して、その魅力にも開眼するきっかけになりました。大好き。(★★★★)


「疾風スプリンター」破風(ダンテ・ラム

疾風スプリンター [DVD]

疾風スプリンター [DVD]

 ダンテ・ラム監督による、恋と友情と野望を描く自転車レース活劇映画。

 見てすぐに分かった。本来これ、フィクションで扱う題材じゃねーよ。自転車ロードレースの生感が凄すぎる。並の監督なら絶対手を出さない。そのくらいレースシーンの出来栄えがハンパない。本気すぎる。ダンテ・ラム監督怖い。そして、ベタベタなドラマとの落差がエライことに。

 エンディングにメイキングダイジェストが出るんだけど、それ見てるだけでもどんだけ過酷な現場だったか、想像するだけでちびる。怪我人続出だし、可愛いヒロインも思いっきりしごかれてるし、主演クラスも生傷絶えない。よく死人が出なかったもんだと心の底から思う。

 それでいて主人公とヒロインのベタベタ過ぎて「少女漫画かよ!」的な恋愛模様とか、レースシーンが過酷な撮影すぎてスタッフが逃げ場が欲しかったとしか思えないギャップスゴイ。当て馬役のフラレ方も少女漫画の王道だし!振られたシーンで笑いそうになったの初めでだ。

 香港映画のパワフルさの一端がこの映画にあると思います。大好き。(★★★★)


ザ・コンサルタント」The Accountant(ギャビン・オコナー)


 この映画、間違いない。緻密に積み上げられた設定で、一人の「正義の執行者」が誕生するまでを解き明かす作劇は、見事すぎて感嘆のため息が出る。この地に足ついたリアリティー、主人公は障害者で、異質なるものを排斥しようとする社会の病巣も絡める視点は素晴らしい。

 とても愉快な映画なんだけど、予告編だと全然そう見えないのがかわいそうな映画。みんな見てね!秘密基地とか大好きな心が小学生な人や、相手の目を見て話せない人とか、特定の話題でしか盛り上がれないオタクは必見ダヨ!

 本作はいい意味で最初の印象を裏切られた映画で、ベン・アフレックが手にした新たなるアクション・ヒーローシリーズになって欲しい作品でした。社会的弱者と言われる障害者たちが、隠されたスペシャルな才能を獲得していく物語としても面白い。超・大好き。(★★★★☆)

 

ルパン三世/カリオストロの城」MX4D版(宮崎駿

 言わずと知れた宮崎駿の代表作の一つが、MX4D版でリバイバル上映。

 とりあえず大スクリーンで見られる貴重な機会と言うことで、普通に見ててもエグいくらい楽しいんだけど、カーチェイスからアクションから漫画映画的小ネタギャグかまで、MX4Dの物理演出が入るのも楽しい。塔の屋根からのずり落ちから次元のプロレス技まで反応。

 久々に大スクリーンで見て、「ああ、やっぱり映画館で見なきゃいけない映画だ。」と思いましたですよ。地下水道に落とされて発見する日本人の遺体の上に書かれた文字ってビデオだと潰れてなんのこっちゃだけど、大スクリーンだとくっきりはっきり。時計台で潰れる伯爵も見えるよ!

 クラリス姫抱きしめない例のやーつ、あれ中年になってからの方がより味わい深いな!もういじり倒された古典なのに、大スクリーンで見続けてあのクライマックス。「愛しいからこそ抱きしめない、抱きしめてはいけない、」っておっさんになってからの方が響くんだ!


「牝猫たち」(白石和彌

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 日活ロマンポルノが平成に復活したシリーズの1作にして「凶悪」「日本で一番悪い奴ら」の白石和彌監督の新作。

 池袋をうろつく学生時代を過ごしたあたくしにドンピシャな白石和彌監督のロマンポルノリブート作。シリアスと笑い、優しさとバイオレンス、性と死を縦横無尽に横断する白石節。なんで音尾琢磨さんがキャスティングされてんのかと思ったらオチが。攫うなあ音尾さん。場内大爆笑。さすが。

 引きこもりやホームレスデリヘル嬢、シングルマザーに虐待される子供、妻に先立たれた老人、人妻嬢の孤独を掘り下げるなど、社会派な匂いを漂わせつつ、最後に「なーんちゃってーー!」ってひっくり返すちゃぶ台が音尾さんなのね。これに関しては「見事」と言うほか無いわ。あれは笑う。

 人間群像劇としても大変優秀で、その点、「エロシーンが入る以外何やってもいい」と言うロマンポルノの王道的な作品なのかも。ただ、白石監督はかっちりとした娯楽映画にしてるけど、大きくははみ出さない生真面目さも感じる。あと音尾さんはかつての竹中直人枠を狙える位置に来たなあ。

 このロマンポルノシリーズは、まだまだ続けて欲しいですね。(★★★★)


「沈黙 サイレンス」Silence(マーティン・スコセッシ

 なんちゅー精神的SM映画。舞台が無知な日本人が拷問を用いて棄教を強いるなんて時代からちょっと経た長崎で、S側のイッセー尾形演じる奉行と浅野忠信演じる通詞も、M側アンドリュー・ガーフィールド演じる神父が長崎に来たことにうんざりしているのが面白い。

 奉行や通詞は一度棄教させた経験があって、どうすれば神父が棄教するか、その心理手に取るように把握している。だからSMの力の強弱の加減まで完成されていて、アンドリュー・ガーフィールドごとき若い神父をどのように落とせるか、段取りまで完璧という恐ろしさ。勝てない。

 弱さや業の肯定という意味では落語に近く、窪塚洋介演じるチキン系信者キチジローの存在が布石となって効いてくる。意識高い系神父は最初キチジローを愛せない。だが、自らの無力、神の沈黙を通して彼の中に「神の声」を知り、キチジローに対して愛を持てるようになっていく。

 表向き信仰を捨てたとして、それが果たして信仰を捨てたことになるのか。神父としての栄光を捨てることでアンドリュー・ガーフィールドはよりキリスト教の主の「真理」へと近づいていく、と言う皮肉な展開は、なるほどキリスト教圏で物議を醸すはずだわ。深すぎる問いだ。

 見て思ってたのは、世界のありようの発見ではなく、再確認だった。なので見てる時は「ひゃー!」とか「うわー!」とか声に出してたんだけど、割と見終わった後は淡々とした感じで劇場を出てきた。この感じが不思議だった。そこがこの映画の奇妙さであると感じる。

 (★★★★)


LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門」(小池健

 テレビシリーズ『LUPIN the Third -峰不二子という女-』、2014年の映画『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』の流れをくむスピンオフシリーズ「Lupin the Thirdシリーズ」の第3弾。

 五ェ門が元軍人の男に完膚なきまでの敗北を喫し、そこから再び立ち上がり更なる強さの境地へと至る事でリベンジを果たす復活劇。五ェ門という最強の男を挫く敵役・ホークのターミネーターもかくやの最強ぶりの描写が見事。暴力描写も容赦ない。

 小池ルパンの前作「次元大介の墓標」から地続きとなる話のようだけど、そっちを見てなくてもあまり問題ない。ルパン一味も銭形も登場するけど、五ェ門とホークのレベルがハイレベルすぎて傍観者にならざるを得ないのだが、その立ち回り方が五ェ門の琴線に触れるってのは面白い。

 (★★★★)

「未来を花束にして」Suffragette(サラ・ガヴロン)

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 女性参政権を巡る女性たちの闘いを描いた映画。いやー「花束を」なんて邦題ついてるけど、そんなヤワなもんじゃねーな。本当に捨て身。思った以上に活動が過激なんだけど、そうならざるを得ないほど出てくる男たちがクソで、差別社会の地獄を生きるヒロインのサバイバルなのだ。

 ヒロインのモードの夫にしても敵対する警部にしても当時としては善良なる「普通」の男たちだ。彼らは差別者ではない。だが次第に参政権運動に関わるようになるヒロインを恐れ、または無法を行う女のように扱う。今の当たり前を求める事が昔はそうではなかった。ツライ話だ。

 虐げられた人々が声を上げると社会は驚くほど冷淡になる。それは今の社会もまさにそう。「普通」の人々が彼女たちの敵に回る。当たり前を求める果てなき闘争。その末に未来は、世界は少しずつ変わっていく。そこに人間の希望がある。その事を描いた映画である。それ大事。

 なんか女性映画として売られてるけど、男が見て損はない映画だ。強く生きる闘う女性を見るの大好きな人は見るといいと思う。お勉強だけでは理解できない「差別社会」の砂の味を体感できるし、政治運動の大事さを実感できる。つか「この世界の片隅に」だってこんな世界なんだぜ?

 本作を見てるとこういう歴史を経て我々の「権利」は勝ち取られてきたと言う事がわかるし、社会的強者と言うのは、油断すると弱者から尊厳から何から取れるものはすべて剥ぎ取っていく事を知る事が出来る。映画に教えられる事は本当に多いぜ。

 (★★★★)


「サバイバル・ファミリー」(矢口史靖

 いやー素晴らしい。電気が全て消えた世界という設定を徹底的にシミュレートしつつ、一家族が生き残りを賭けて日本を迷走する中で、家族の絆と生きる力を獲得し始めるまでを丁寧に描いてる。ワンアイデアもここまで突き詰めるとゾンビものより怖いホラーにも喜劇にもなる。

 電気のない世界に放り出された世界では人間は時にゾンビより怖いけれど、だからこそ生まれる感情の爆発や肉体の躍動、人間の本来あるべき情が溢れ出る。それを丁寧に段階を追ってきちんと描くことで、限りなく説得力を持たせる矢口史靖監督の手腕、ここに極まる。見事。

 しかも今回は非常に普遍的な物語なので、うまくすれば韓国や中国などのアジア諸国はおろか、欧米でもでリメイクが可能。昨今の日本映画らしからぬ、ドメスティックに陥らない映画力溢れる作品なので、本当に素晴らしい。これは矢口監督、やったな。大ホームランだと思う。

 とりあえず3.11後の映画としては決定版と言えるかもしれない。未曾有の状況で人間の力が呼びさまれると言うのは、阪本順治監督の大傑作「顔」に近い。と言っても、小日向さんは普通のサラリーマンでいきなり器用になるわけもなく、劇的に変わるのはむしろ子供達の方。

 リアルにシミュレートしつつ娯楽映画の強靭さを失わない、矢口史靖監督の映画力は韓国映画にだって負けはしないと思う。傑作。大好き。(★★★★★)


「破門 ふたりのヤクビョーガミ」(小林聖太郎)

破門 ふたりのヤクビョーガミ [DVD]

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 黒川博行氏の「疫病神」シリーズの第5作「破門」の映画化。

 面白かった。この映画、全然話題になっとらんけど何でや。キャストも適切だし演出もいい。主演の佐々木蔵之介と横山裕に華がないくらいで映画は面白かった。こういうちゃんとした日本映画に客入らないのおかしい。だから日本映画は斜陽になる。橋爪功まだまだ巧い。

 横山裕に華がないと書いたけどけなしてるんじゃない。この映画に関してはそこがいい。この華のなさが異様にリアル。佐々木蔵之介と比べても月とスッポンのスッポンの方に見えるが、だからこそクライマックスにすごく共感できる。その意味でもこの映画侮れない。

 この映画、脇も異様に豪華で國村隼にキムラ緑子、北川景子、木下ほうかに宇崎竜童と錚々たる面々が脇を固めてタイプキャストな演技を披露してる。ポイントポイント抑えた配役で安心して話が追える。正直「ナイスガイズ!」と比べても遜色ないと思うんだけどなあ。

 加えて橋爪功だよ。出資金を集めて高飛びした食えねえ映画プロデュサー役なんだけどやっぱり巧い。ヤクザを向こうに回して殴られるわ箸刺されるわす巻にされるわ結構ひどい目に遭うんだけど、それでもめげない諦めない、そして憎めない。それを飄々とこなす。流石。

(★★★★)


ラ・ラ・ランド」La La Land(デミアン・チャゼル)

 くっそ!くっそ!クライマックスで大いに泣いてしまった。あかんわあんなん。思い出しても泣く。ダメダメ、こんなの。泣くに決まってんだから。ツボに完全にハマってしまった。

 正直言うと序盤はそこまで乗れてなかったんですよね。オープニングなんかは演出がテクニカルすぎて若干引きながら見てた。でも、あの夕焼けのダンス辺りから次第に引き込まれて、ふたりの恋と夢の道程を見つめつつあのクライマックス。もうね。ダメな。あーもう。してやられた。

 毀誉褒貶いろいろ言われる映画ですけど、僕は肯定派ですね。あのクライマックスは、なぜこの映画が「ミュージカル」だったのかを明確に示していて、とにかく心を撃ち抜かれてしまった。大好き。なのです。(★★★★)


「ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男」Free State of Jones(ゲイリー・ロス

 南北戦争時代、アメリカに奴隷解放宣言よりも早く、白人と黒人が平等に暮らせる「ジョーンズ自由州」を築いた男・ニュートン・ナイトの、黒人差別との果てなき戦いを描いた歴史大作。

 この非寛容が進む時代にあって、黒人奴隷と脱走兵を率い、アメリカの自由と平等を信じて果てなき戦いを続けた反骨の白人男性・ニュートン・ナイトの生涯を描いたこの映画は、まさしく今見られるべき映画だろう。このマコノヒーに痺れないならその人の魂は死んでる。

 ゲイリー・ロスは85年後、ニュートン・ナイトの孫である男性が直面した、ある裁判を物語に絡ませる。そして、その裁判は、ニュートン・ナイトの戦いは終わっていない事を浮かび上がらせる。その作劇は、今、アメリカで起こっていることと奇しくもつながっていく。凄い。


 この映画は非常に素晴らしい傑作だと思っていますし、いま、アメリカで進行している事態に通じる映画であると感じています。そんな私が、2回目を見に来た時に製作者の方のティーチインにたまたま遭遇したのでした。

 2回目。プロデューサーのブルース・ナックバーさんのティーチインあり。やっぱり傑作。構想から完成まで11年。最初はゲイリー・ロス監督と別に企画を進めていたけど、監督から合同でやろうと持ちかけられてこの映画に繋がったとの事。ちなみにナックバーさん、日本在住。

 ニュートン・ナイトはアメリカでも存在はあまり知られておらず、マシュー・マコノヒーも関わるようになるまで知らなかったそう。マコノヘは演技に集中するタイプでなかなか役が抜けない。周りの役者と無駄話もせず、監督と演技を詰める話ばかりしていたとの事。

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 実際の写真とマコノヘ比較。目力の強さが激似。

 ニュートン・ナイトになりきったマシュー・マコノヒーの演技も大変素晴らしく、差別の根深さと世代を超えた戦いを描いていく構成が見事な傑作と思います。大好き。(★★★★★)

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2017年12月17日

[][]男の魂に火をつけろ!のオールタイム映画ベストテンに参加します。 男の魂に火をつけろ!のオールタイム映画ベストテンに参加します。を含むブックマーク 男の魂に火をつけろ!のオールタイム映画ベストテンに参加します。のブックマークコメント


2017-10-31

ワッシュさんの「オールタイム映画ベスト10」に参加します。





オールタイムベスト10

1位:「ショーシャンクの空に」(1994年 フランク・ダラボン監督)

2位:「ボーン・スプレマシー」(2004年 ポール・グリーングラス監督)

3位:「大誘拐 RAINBOW KIDS」(1991年 岡本喜八監督)

4位:「12人の優しい日本人」(1991年 中原俊監督)

5位:「鴛鴦歌合戦」(1939年 マキノ正博監督)

6位:「千年女優」(2001年 今敏監督)

7位:「ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ!」(1992年 ニック・パーク監督)

8位:「ムトゥ 踊るマハラジャ」(1995年 K.S. ラヴィクマール監督)

9位:「魔女の宅急便」(1989年 宮崎駿監督)

10位:「ピカドン」(1978年 木下蓮三/木下小夜子)





1位:「ショーシャンクの空に」

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2位:「ボーン・スプレマシー」



3位:「大誘拐 RAINBOW KIDS」

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4位:「12人の優しい日本人」



5位:「鴛鴦歌合戦」


6位:「千年女優」

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7位:「ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ!」



8位:「ムトゥ 踊るマハラジャ」

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9位:「魔女の宅急便」(1989年 宮崎駿監督)

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10位:「ピカドン」(1978年 木下蓮三/木下小夜子)

ピカドン PICADON

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2017年10月27日 ヨン・サンホ監督と揺らぐ我々。「新感染」「我は神なり」他

toshi202017-10-27

[][]「新感染/ファイナル・エクスプレス」「ソウル・ステーション/パンデミック」「我は神なり」 「新感染/ファイナル・エクスプレス」「ソウル・ステーション/パンデミック」「我は神なり」を含むブックマーク 「新感染/ファイナル・エクスプレス」「ソウル・ステーション/パンデミック」「我は神なり」のブックマークコメント



監督:ヨン・サンホ


 「固い信念なんてものは、かえって信用がおけんね。だいたい戦争なんてものは固い信念を持ったもの同士が起こすんだからね」

 田中芳樹「銀河英雄伝説」より


 韓国のアニメーション監督、ヨン・サンホ監督の作品が、実写とアニメーション合わせてここ2ヶ月で3本公開されて、それを見た。

 「新感染 ファイナル・エクスプレス」「ソウルステーション/パンデミック」「我は神なり」の3本である。

 一言で言って、全て面白い。でも面白さの質、というか、描こうとしているもの、楽しませようとしているものが違う。作品ごとに、描こうとしているものが違うし、それぞれにきちんと独自の突出した個性があるのが、何と言っても驚異的なのである。


 その中でも、映画ファンの圧倒的熱狂をさらったのが今年9月に公開された「新感染/ファイナル・エクスプレス」である。


「新感染/ファイナル・エクスプレス」の圧倒的娯楽性に隠された人間描写の確かさ

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 「新感染」はジャンルとしてはゾンビ映画に属する。

 舞台は韓国随一の高速鉄道、KTXである。ソウル発の高速鉄道に乗り込んだ、ファンドマネージャーである父親とその娘が、釜山に向かう列車内で、人々がゾンビになっていく感染する災禍に遭遇し、非常に限られた列車内でのサバイバルを余儀なくされる物語である。

 

 何と言っても「新感染」に関しては、私が今年一番涙を絞らされた作品という事もあるんだが、自分がなぜこんなにも翻弄されたかと言えば、一言で言って出てくる登場人物に対する、なんとも言えず「ドライ」な人間観に尽きるのである。


 普通「泣かせ」というと、人はつい「ウェット」に描かないと見ている人間は泣かない、と思いがちだけど、実はそうじゃないんだ、とこの映画は教えてくれる。人というものは追い詰められると「身勝手」で「非情」で「どうしようもない生き物」であるか、という哀しい「事実」をきちんと描けるかではないか、と思うのである。

 追い詰められると人は「自分だけが生き残りたい」と願う。他人を蹴落としてでも自分だけは助かりたい。目の前に広がるどうしようもなく広がる地獄がいきなり訪れたら、実は誰しもがそう考えてしまう。それはどうしよもない「生存本能」ではないかと思うのだ。その本能と情の間で、たやすく人は「本能」を選んでしまう。

 この映画はそんな人間の醜さを余すところなく描き出している。


 そもそも、である。コン・ユ演じる主人公の父親・ソグにしたってが、決して心優しい父親からは程遠く、妻との別居を娘と向き合わざるを得ず、しかし彼女に対してどう接していいかわからない、なんともダメな父親で、自分が彼女に以前何を誕生日プレゼントしたかも忘れて同じものをあげちゃうくらい、ダメなのである。

 そんな父親が釜山行きの列車内で災禍に出会ったときどうしたか、と言えば、やっぱり他の人間と変わることはなく、彼はとりあえず、自分だけが助かる方法だけを考える。自分さえ助かれば周りの人間はどうでもよく、彼はファンドマネージャーとしてのコネをフル活用して、てめえだけが生き残る術を探す。

 その姿を娘はつぶさに見ているのである。


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 しかし、彼はあることをきっかけにして娘や他人の為に生き残ろうと決意するのであるが、それは娘からの泣きながらの叱咤を聞いた時からである。自分ひとりでは自分の姿はわからない。ましてや自分を「まとも」で「普通」で「善良」と信じて疑わない人ほど、そんな自分の醜さを認めることは出来ないものなのである。彼が自分の「醜さ」と真摯に対峙したときに初めて、彼は「まとも」な主人公として映画の中で動き始めるのである。彼はこの絶望的状況で出会った数少ない乗客、ワーキング・クラスのサンファ(マ・ドンソク)、彼の妊娠中の妻・ソンギョン(チョン・ユミ)ら数人とともに、娘を救うために闘い始める。

 だからこそ、我々観客はこの父親に心から共感し、「生きて欲しい」と願い、彼の闘いの果てのある決断に、涙が止まらなくなるのである。


「ソウル・ステーション/パンデミック」でより深まる、哀しい人間と非情な社会への眼差し

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 さて。その前日譚となる映画がヨン・サンホ監督の3作目の長編アニメーション作品「ソウル・ステーション/パンデミック」である。


 この映画の特徴的な点は、人がゾンビ化する災禍に出会った登場人物たちが「新感染」よりも社会的に下層の人たちばかりであるという点である。「新感染」は高速鉄道という割とお高めな移動手段を使える人々であるが、「ソウル・ステーション」に出てくる人々は、そんな移動手段を簡単には使えない、くらいの人たちが多い。そもそも最初の犠牲者はホームレスなのである。

 この映画のヒロインだって、10代で家出した元・風俗嬢で、借金を背負わされて逃げ出し、行き場をなくして彼氏の部屋に厄介になってはいるが、彼氏はネットで彼女に売春させようと持ちかけてくる甲斐性なしで、経済的に部屋代も滞納し続けている状態で大変困窮している。

 相も変わらず彼女に体を売らせようとする彼氏に愛想つかしたヒロインが部屋を飛び出して、街をさまよっていたところ、彼女はゾンビ禍に遭遇する訳であるが。その頃、ネットで売春を呼びかける写真を見た彼女の父親が彼女を探しにやってくる。

 ゾンビに追われ続けながら、彼女が思うこと。それは「家に帰りたい」と思うことだった。彼女は父親と再会し、「家」へとたどり着けるのか。

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 この映画に関して言えば娯楽要素よりも、一度落ちたらなかなか這い上がれない、人間社会の格差。その分厚くて非情な壁を、下層に「落ちてしまった人々」の目線で描き出しており、ゾンビ事件も登場人物たちにとって十分脅威なのだが、それ以上に下層の人々を切り捨てる「人間社会」の怖さの方がより空恐ろしく、なんとも腹にズンと重くのしかかる。

 格差社会というものがどういうものか、それをゾンビ禍の中で逃げ惑うヒロインを通して浮き彫りにしていくという離れ業をやっており、娯楽性の高い「新感染」に比べると、作家性がより色濃い作品になっている。



「我は神なり」が描き出す、「神なき世界」に置ける「信仰」の意味。

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 「新感染」「ソウル・ステーション」が2016年に韓国公開された映画であるが、アニメ監督として2013年に発表したのが本作「我は神なり」である。

 この映画の彼の目線は、前の2作よりもさらに辛辣に人間社会を見据えている。ヨン・サンホ監督は、哀しく弱い人間という生き物の「業」を「信仰」を通じて描こうとする。


 舞台はダム建設によって沈むことが決定している韓国のとある村である。

そこへやってくるのが宗教を看板にして、村人たちに支払われる補償金を分捕ることが目的の詐欺グループであり、彼らはカリスマ性ある牧師・リンを通じて寄る辺なき村人たちの心を掴んで今まさに食い物にしようとしていた。

 一方その頃、村に一人の男が帰ってきていた。ソウルの大学に合格した娘の進学資金を、一夜にしてギャンブルで使い果たして悪びれもしないその男・ミンチョルは、村の人々からは厄介者あつかいされていたが、彼はその独自の嗅覚で、詐欺師の存在と彼らが行おうとしている犯罪にいち早く気づき、それを止めるべく動き出す。

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 「神に見捨てられた村」の村人たちの心を癒そうと「やさしい嘘」を語る牧師・リンは村人たちから心酔されており、神をも恐れず村人たちが信じる宗教を「詐欺師」と触れ回るミンチョルは村人から「悪魔に憑かれている」と白眼視され始め、周りは彼を遠ざけ始める。一方詐欺師グループも、ミンチョルを排除しようと動き始める。


 詐欺師たちの語る「心癒される嘘」か、神をも恐れぬ男の「絶望的な真実」か。あなたならどちらを選ぶ?

 この強烈な問いは、観客に簡単に答えを出させない。


 この映画がすごいのは、決してどちらかを善、どちらかを悪と規定しない事である。詐欺師グループが開いた宗教が、村人たちに与える「効能」を映画はしっかりと描き出し、神なき世界を見据えるミンチョルもまた、心が離れていく娘への執着を捨てきれぬ。誰もが人は、何かにすがらねば生きてはいけぬ。それは決して例外はない。そんな人間の「業」を見据えているのである。

 自分が犯した悪行がきっかけで、詐欺師たちの宗教が語る「優しい嘘」に心を取り込まれていく娘を、ミンチョルは必死に押しとどめようとする。だが、彼女からその嘘を奪って、さて、離れた彼女の心は戻るのであろうか。

 詐欺師の片棒を担いでいると自覚しながらも村人たちに「癒し」を与え続けるリン。だが、彼もまた、心にある「執着」を抱え、苦しんでいる。誰が正しくて、誰が悪いのか。


 この映画はそんな善悪定かならぬ物語に、いちおうの決着をつける。その結末をあなたはどう感じるのか。是非、一度御覧いただきたい。人という生き物の不完全さを見据えた傑作である。 


ヨン・サンホ監督作品を通して鑑賞することで見えてきたもの。


 ヨン・サンホ監督の眼差しは徹頭徹尾「神が不在の世界で生きる人間」を見据えている。それはゾンビという題材であろうとそうでなかろうと変わらない。この映画に英雄はいない。ただ人間がいるだけだ。

映画の主人公だろうとそうでなかろうと、人はどこまでも愚かで救いがたい、不完全な生き物だ。

しかし、だからこそ。人は追い詰められた時、何を選び取るかによって、その人の価値は測られるのではないか。


 さて。


 ここからは「新感染」の話になる。

 やや、ネタバレなので見てない方は、見てから読んでください。







 実は「新感染」を見終えた時、ひとりの登場人物のことが頭から離れなかった。それはバス会社で常務を務める乗客の男性である。

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 彼は本作においてはゾンビ以上の悪役的な立ち位置として物語を牽引し、その行動は多くの観客をイラつかせ、または激怒させるに十分であった。

 Twitterでは彼への怨嗟の声渦巻き、「もっと惨たらしく死ねばいい」という声もあった。

 しかし、この映画の終盤、彼が放った台詞は、私の心にある逆転を起こした。


 そうか、そうだったのか、と。


 彼はただ怖かったのだ。そして、どうしても生き残りたかったのだ。ただ、それだけだったのだ。


 確かに彼は主人公のように「他者のために闘う」道を選び取る事が出来なかった。あまつさえ、多くの犠牲の果てに生き残ろうとした。普通に考えて、許される事ではない。


 しかし、だ。

 我々は果たして彼を責められるのだろうか。いきなり地獄のような状況に叩き込まれ、わけも分からず命の危険に晒されて、怖い、死ぬほど怖い、それでも生きたい、死ぬわけにはいかない。ただそう願った、そんな一市民である彼を。

 観客は忘れているが、彼もまたこの災厄に巻き込まれた「被害者」でもあるのだ。

 彼は一言で言えば「主人公の影」である。もしも同じ列車に娘がいなかったなら。または、涙をこぼしながら彼に言葉を投げかけなかったら。主人公はどういう決断をしたろうか。他者を押しのけてでも、自分だけ助かろうとしたのではないだろうか。

 そして胸に手を当てて考えてみて欲しい。

 私たちは同じ状況に陥った時、このバス会社常務氏と同じ事をしないと胸を張って言えるだろうか。


 そう考えると「新感染」という映画はより、空恐ろしい映画に見えてくる。ヨン・サンホが見据えてる世界は、善も悪もない。絶望と希望が紙一重の、神なき世界の「ニンゲン」たちのどうしょうもない蠢きを描き続けているのである。

善に見えるものも、悪に見えるものも、実は等しく同じ人間であり、彼らが選び取った方法で人物の「いい悪い」を区別してるに過ぎなかったのだ。「こんなこと」さえなければ、彼らは「ごくごく普通の一般市民」だった。つまりこれはこの映画に出てくる誰も彼もが、我々の「可能性」だったのだ。


  私に言えることは、「神のいないこの世界でゾンビに襲われた時、せめて人間らしい決断を選び取れるよう、心して生きたいものだ。」という事だけである。

ヨン・サンホ監督の映画は観客にすら刃の切っ先を向けて試してくるのだ。



「あなたならどうする?」と。

2017年05月18日 俺を救え!「トンネル/闇に鎖された男」

toshi202017-05-18

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原題:터널/Tunnel

監督・ 脚本:キム・ソンフン


「さあ救え・・・!(中略)救うんだ・・・!ゴミども・・・!」

福本伸行「カイジ」より)

賭博黙示録 カイジ 5

賭博黙示録 カイジ 5


 人生に理不尽というのは当然起こることがある。


 ただ、その理由は二つある。自分に責任がある場合と、ない場合である。


 この映画の主人公、イ・ジョンス(ハ・ジョンウ)は圧倒的に後者である。なぜならば、たまたまその日、地元の日常でよく使うトンネルを通ったというだけのことだからだ。

 トンネルに入る直前に立ち寄ったガソリン・スタンドでもたもたしている爺さんにイライラしつつ、お詫びに差し出されたペットボトル2本。そして、偶然車に積んでいた娘への誕生日ケーキ。車の営業マンとしての契約も取り付け、意気揚々と車を走らせるジョンス氏はハド・トンネルへと差し掛かる。交通量が少ないそのトンネルをすすんでカーブを抜けた辺りで突如轟音が鳴り響く。そして信じられない光景が展開していく。トンネルが天井から崩れてジョンス氏に迫っていたのである。

 気がつくとジョンス氏はがれきに埋もれた車内にいた。なんとか生きているものの完全に立ち往生となったジョンス氏はかすかに拾えるトンネル内のアンテナから119番する。救助隊が到着するとソウル側からの出口は完全に崩落。南側からの出口だけが完全な崩落を免れていた事が、ジョンス氏の命を支えていた。


 トンネル崩落のニュースは瞬く間に韓国国内に広がり、国を挙げての救出が始まる。現場にはジョンス氏の妻・セヒョン(ペ・ドゥナ)も駆けつけ、現場を手伝いながら事態を見守る。その救助隊の隊長・キム・デギョン(オ・ダルス)は韓国一の救助隊を自負し、ジョンス氏救出のために動き出す。だが、予想外の事態が頻発する現場は、やがて様々な困難に直面することになる。

 ジョンス氏、そしてキム隊長はひとつひとつその困難に向かっていくが・・・、やがて彼らに試練が訪れる。




極限下のサバイバルと予想を越えて困難な救出

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 この映画の前半部はジョンス氏のサバイバルと、救助隊やセヒョンの苦闘に光が当てられる。


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そのテロルは生きている。「テロ,ライブ」 - 虚馬ダイアリー



このくだりのジョンス氏を演じるハ・ジョンウの非常に場持ちする演技は見事であり、また、国民的バイプレイヤーとして不動の人気を誇るオ・ダルスの非常に人間味あふれる演技は、映画を牽引する大きな力となっている。そして、ジョンス氏の生還を祈る健気な妻が韓国が誇る至宝・ペドゥナである。まさに最強の布陣である。


 ジョンス氏が遭遇した事態はただただ、理不尽である。そしてキム・デギョン隊長を初めとした救助隊の面々はある種、国の「尻ぬぐい」をしている状況である。

 なぜならば、事態が動いていく中で明らかになるのは、そもそもの原因がバドトンネルの「手抜き工事」であったこと、そして、バドトンネルの近くで、国が主導するニュータウンをつなぐ第2トンネル建設が重なった事であった。

 つまり、国が本来の仕事をきちんとしていれば起こりえない、複合的な事故である。ジョンス氏に死を呼び寄せる原因は国であり、社会である。


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 その尻ぬぐいを一手に引き受けるキム隊長と救助隊は、ジョンス氏救助まであと一歩のところまでたどり着く。・・・はずだった。ところが、思わぬ原因でその作業が無駄だったと発覚する。

 絶望するジョンス氏。電源が落ちる、唯一の連絡手段であるスマホ。辛酸をなめるキム隊長。悲嘆にくれるセヒョン。


 そこから終盤にかけて、この映画は視点を大きく広げる。


 一人の男が崩落事故で孤独に耐えながらサバイブする事故を巡る社会という「人間」のうねりを描くドラマになっていくのだ





(以下終盤の展開に触れていきます。)

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2017年01月08日 暗殺!ウオ娘「人魚姫」

toshi202017-01-08

[][]「人魚姫」 「人魚姫」を含むブックマーク 「人魚姫」のブックマークコメント

原題:美人魚

監督・脚本:チャウ・シンチー


 大晦日も仕事して、元旦の朝帰ってみれば、すぐに体調を崩し、三が日はひたすら布団から出られず、テレビを見て過ごすという、のっけから最悪のスタートを切った私。

 ようやく体調が戻って初めての休日。2017年最初に見る事に決めた映画。それは「少林サッカー」でおなじみ、今や香港喜劇界のヒットメーカーにしてトップランナー、チャウ・シンチー監督の新作でありました。


 公開直後、上映が都内で1館のみというこの扱いもさることながら、スケジュールが日に2回しか上映しないという、人気監督にあるまじき扱いを受け、当然のことながら、私が早めに上映されるシネマート新宿に行ってみれば、すでに立ち見まで埋まり、満席という大盛況。ロビーには人がごった返し、明らかなキャパオーバー。私はネットで前日にチケット予約してたので座れたものの、当日だったら危なかった。改めてその根強い人気を裏付ける結果となったわけですが、さて、映画はというと。



 これが!これが!もう最高!さすが、香港喜劇王の面目躍如。


 それもそのはず。なにせ、全世界で興行収入600億円以上という「君の名は。」どころか、「千と千尋の神隠し」のほぼ倍を稼ぎ出した超メガヒット作である。

 それにも関わらずである。日本映画界はこの映画をこんな小規模公開してるとは一体、何を考えているのか。バッカじゃねえーの!としか言いようが無い。まさに「ありえねえーー!」でありますよ。


 若き実業家・リウ(ダン・チャオ)は香港の自然保護区域を買収し、そこに一大リゾートを計画する。貧乏な生まれから脱し、無学ながらも一代で財を為したリウに近づいてくるのは、彼の財力を目的にしてくるものだけだった。

 そんなリウにひとりの女性がある目的を持って近づいてくる。彼女の名はシャンシャン(リン・ユン)という。奇妙な歩き方をするこの娘。実は、リウを暗殺するために近づいてきた刺客。リウが買収した自然保護区域に住み、彼が財を為した海洋探査の為の「ソナー」に苦しめられてきた「人の上半身と魚の下半身」を持った一族。

 そう、シャンシャンは「人魚」なのであった。だが、二人はやがて惹かれ会い恋に落ちていく。そして、リウに惚れていたビジネスパートナーだったルオラン(キティー・チャン)は、嫉妬に狂い、人魚族殲滅のために動き出してしまう。


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 「どんな美人も初登場はブサイクに描く」お約束から、好きな作品の引用を恥ずかしげも無くぶち込み、個性的というにはあまりにアクが強すぎるキャラクターたち(特にショウ・ルオ演じる蛸の下半身を持つ「タコ兄」は面白すぎる)、そして提供される笑いはあまりに濃ゆい。コッテコテなギャグ、ベッタベタな笑いのつるべ打ち。

 だが、世界設定は驚くほど酷薄。人間と人魚たちの闘いの描かれ方は、あまりにも壮絶かつ暴力的で、一瞬「ウッ」となるほど。前作「西遊記 はじまりのはじまり」で見せつけた暴力性はチャウ・シンチーの中で健在なのであるが、しかし、そこを王道の「許されざる恋」というラブストーリーという柱をドンと乗せることによって、環境問題を取り上げた社会派的作品とも違う、酷薄なる世界を「愛」が救う!という、堂々たる王道を往く。

 このベタな笑いを恐れず、人の中にある暴力性を描くことを恐れず、環境問題をストーリーに絡ませつつも社会派作品になることを軽やかに避けながら、「愛」の尊さを恥ずかしげもなく歌い上げる!まさに、娯楽と喜劇というジャンルのど真ん中を突き進む!チャウ・シンチーのブレない直球ど真ん中っぷりは、本作でいよいよ極まっていると言っていい。


 これほどのヒットメーカーになりながら、決して自分を見失わないチャウ・シンチーの威風堂々たる娯楽作家ぶりは、まさに見事という他はない。自らの作家性を極めつつ、更なる覇道を突き進む!

 新年一発目の映画に選んで大正解!悪かった体調が嘘のように回復しはじめたのは、この映画の本気っぷりに当てられたに相違ない。まさに、我らが「星爺」快心の大傑作であります。(★★★★★)

 

侵略!イカ娘 1 (少年チャンピオン・コミックス)

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あんじー祭りあんじー祭り 2017/01/30 18:02 兄さんもうすぐJCOMホームページがなくなるけどこのまま江戸川番外地なくなってしまうの?