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2017年12月31日 映画を称えよ!映画にふるえよ!2017年映画ベスト10

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[][][]2017年に見て「良かったな」と思った映画から10本を選んでみる。 2017年に見て「良かったな」と思った映画から10本を選んでみる。を含むブックマーク 2017年に見て「良かったな」と思った映画から10本を選んでみる。のブックマークコメント


 みなさま、どうも。ご無沙汰をしております。気がつけば年末でございます。

 今年、ブログ更新量はいよいよ、近年稀に見る少なさでございましたが、大変申し訳なく思います。しかし、映画自体を見る量はむしろ上がっており、いい映画との出会いがたくさんありました。その中から10本を選ぶという、なかなかつらい作業でございました。

 というわけで、自分が出会った映画の中から、「良かったな」という映画を10本選ばせてもらいました。「あれがない」「これもない」という方もいらっしゃるでしょうが、ご容赦いただいて、しばしおつきあいくださいませ。


10位「勝手にふるえてろ

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公式サイト:映画『勝手にふるえてろ』公式サイト


 東京国際映画祭にて鑑賞。十代からの片思いを引きずり、20代になってもなお、その「一番好きな彼」を片思いし続けてきたヒロインが、彼女にリアルに好意を向けてくる「二番目の彼」が現れたことで起こる、ヒロインの大混乱を描くラブ・コメディ。

 一人の男を片思いを続けてきたが故にリアルな恋愛からは遠ざかり、コミュニケーション不全に陥ったOL・ヨシカの、大混乱を描いている点がとにかくイマ感がある。自分の絶対的な聖域を作り、そこに踏み込んでくる人間にはたとえ好意を伝えてくる男性であろうとも、心を許していたはずの親友でさえ攻撃的になる。そんなヒロインの心の「大激震」を描いている。

 「理想の恋愛」に心をこじらせてき女性が、リアルな恋愛と対峙する。その時に初めて気づく、自分の中にある「狂騒」。刺さる人間は限定されるかもわからないけど、刺さる人間には思い切り、刺さる。その刺さり方がまたエグい。心臓を貫かんばかりの深さだ。

 心の奥底に踏み込まれることで起こる、ヨシカの心の「ふるえ」は、みっともなく滑稽かもしれないけれど、だけど(人によっては)誰よりも愛おしく見える人もきっと多いんじゃないでしょうか。少なくとも私はその一人です。是非一度ご覧ください。

 


9位「サバイバルファミリー」

 もしも突然、社会から電気が喪われたら。そんな状況に突然放り込まれた日本社会を、一家族の視点から描いた作品。

 ここ数年、なんだかんだと新作が出るたびに僕は矢口史靖監督の新作をベストテンに入れてきましたが、本作もまた非常に優れた娯楽作でありながら、3.11後の日本を見据えた娯楽作になっているように感じます。

 電気を喪った人間がどういう行動を取るのか。その群集心理を描きながら、同時に、かつてない危機に立ち向かう、一家族のロードムービーとしての側面もあったりする。その中で、家族に少しずつ今までの自分にはなかった「自分」が目覚め始めていく。

 今まで矢口監督が培ってきた、「取材によって徹底的にリアリティを固め」ながら、それをきちんと「コメディー」として落とし込むという蓄積が、本作もまた非常にリアルで、そして滑稽でありながらも少しずつ人間として成長していく家族の物語として、非常に完成度の高い形で結実していると思います。

 何より本作は、非常に普遍性の高い設定であり、「ドメスティック」に陥らない、万国共通のテーマであり、きっと多くの人に届く傑作であると思います。


8位「アシュラ」

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 架空の地方都市アンナム市を舞台に、絶対的権力を持って街を腐敗させていく市長の下で手先として働いていた刑事が、ある事件をきっかけにして、市長と検察の対立の渦中に叩き込まれ、やがて破滅していくまでを描く、韓国ノワール。

 とにもかくにも、主人公にしてからが最初から街の腐敗にどっぷり使った悪徳刑事で、冒頭で人生が完全に破綻するような事件が起こる。刑事を辞めて市長の正式な部下になるはずが、そのプランは頓挫し、そこから人生の歯車が狂い始め、そこから様々な「悪人」と絡むことになるのだが、それでもこの映画が面白いのは、言ってみれば「破滅」が定められた男の右往左往の物語としての魅力と、出てくる「悪人」たちが、それぞれに圧倒的な個性を放っているからに他ならない。

 柔らかな物腰で主人公をえげつなく追い詰めてくるクァク・ジョヨン演じる、市長を告発しようと動いている検事・キム・チャインと、彼の右腕となって動き荒事も辞さない検事、チョン・マンシク演じるト・チャンハクが主人公をえげつなく追い詰めます。

 そしてファン・ジョンミン演じる主人公がつるんでいた、悪徳市長パク・ソンベは、その純粋な悪でありながらも抗いがたいカリスマ性を持っており、その魅力はまさに悪魔的。主人公の代わりに彼の手先となる、純朴な性格の弟分・ソンモもまた、市長のカリスマ性によって心を奪われ、やがて「悪人」として開眼していく。そして主人公と袂を分かっていきます。徹底的に追い詰められた主人公が、最後に取った決断とは。その決断が、さらなる地獄の釜を開くのです。

 悪に落ちる快感、後戻りできないと気づいた時の悲哀と絶望、破滅していく魅惑、容赦ないバイオレンスとハイテンションなアクション、そして悪と悪がぶつかり合う興奮。その全てをがここにある。一見の価値ある傑作と思います。


7位「LUCK-KEY ラッキー」

 殺し屋がひょんなことから記憶をなくして売れない役者と人生が入れ替わる、内田けんじ監督のコメディ「鍵泥棒のメソッド」を原案に、いぶし銀の名脇役として活躍してきたユ・ヘジン主演でリメイクした作品なのだが、完全に本歌取りとも言うべき傑作として生まれ変わった。

 日本では「漫画的」な感じになりがちな「殺し屋」という職業も、ノワールが盛んな韓国ならば「映画的」になる。45歳の殺し屋が32歳の売れない俳優として、大真面目に役者道へと邁進する姿を演じるユ・ヘジンはただただ面白いだけでなく、32歳として人生をやり直し、あまつさえ新たな人生を手に入れる、この一見いかついおっさんが、実にかっこよく、そして時に可愛いの。この映画のヒットによって、ユ・ヘジンと言う脇役俳優をも「生まれ変わらせた」この映画。

 まだまだ人生やり直せるんだ!という「おっさんのファンタジー」としても大変優秀で、見ていて笑いながら、最後はうっすら涙を浮かべちゃうような、そんな映画である。一人のおっさんとしてこの映画大好き。本当に好き。

鍵泥棒のメソッド [Blu-ray]

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6位「昼顔」

昼顔 Blu-ray通常版

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 上戸彩主演で大ヒットしたドラマ、「昼顔」の映画版である。

 いや、実を言うとドラマの方は全く見たことがなく、いきなり劇場版を見に行ったのでした。理由は簡単。西谷弘監督の新作だからである。「ガリレオ」シリーズ、「任侠ヘルパー」など、ドラマの劇場版を傑作・秀作に導いてきた監督であり、本作においてもその期待を大きく超える仕上がりとなっている。

 ドラマシリーズで不倫愛を知られてしまい、職も居場所もなくして、映画冒頭で地方都市へと移り住んだヒロイン。けれどそこでかつての不倫相手と運命の再会を果たしたことから、二人は次第に燃え上がり、物語は歯止めの効かない方向へと転がりだしていく。初めはただ、好きなだけだった。たとえ不倫であろうとも、お互い純粋に好きあった二人で生きていこうと決めた。だが、二人が向かった場所は引き返せない、あまりにも深い因業が渦巻く選択であることを、ヒロインは思い知ることになる。

 実を言うと、この映画の前に「午前十時の映画祭」で「突然炎のごとく」を見ていたですが、この映画と「突然炎のごとく」がシンクロするシーンがあって大変興奮した。

 人の夫を奪い、自分のものにする。その道はあまりにも、あまりにも業が深い。その愛は、奪われた者の気持ちを踏みにじることで成立する愛である。純愛などと決して言えはしない。

 奪うもの。奪われるもの。この映画は、その業に真っ向から向き合い、そして物語は一つの終着へと疾走していく。憧れ的に消費されがちな不倫愛。それを巡る因業の果てを描いた傑作である。

突然炎のごとく Blu-ray

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5位「ドリーム」

 1961年。まだ黒人差別が当たり前だった時代、NASAの計算手として働いていた3人の女性たちの活躍を描いた映画である。

 時まさに冷戦時代。宇宙進出は人類の悲願であり、アメリカはソ連としのぎを削り、お互いの国の威信を賭けた宇宙計画を進行させていた。そんな中、圧倒的な計算力を誇るキャサリンはスペース・タスク・グループへと配属された。しかし、そこでも当たり前のように差別的な扱いを受けるキャサリンだったが、次第にその計算力が高く評価されていく。

 ひとかどの人物として仕事で自己実現する「夢」。人類を宇宙へ運ぶ「夢」。そして自分たちに向けられた差別をなくしていく「夢」。黒人女性がそれらを実現することが、「夢物語」だった時代において、一つ一つ困難をクリアしていくことによって、その「夢」が実現していく流れをNASAにもたらした3人の女性。見終わった時に思った。「彼女たちこそが『ワンダーウーマン」である」と。

 大きな目標に向かって、知性を結集していたNASAにおいて、「人種差別」と言うのは目標達成を阻む「エラー」でしかない。目標を持った知的な人間は、そのことにいち早く気づき、それを取り除く。3人の黒人女性のヒーローたちの物語というだけではなく、本当に知性のある人間と言うのは差別しないのだと描いてみせたこの物語は、まさに差別被差別者双方にとっても、学ぶことの多い傑作でありましょう。


4位「ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男」

 南北戦争時代、黒人と白人の差別から無縁の「ジョーンズ自由州」を築いた一人の白人男性、ニュートン・ナイトの生涯を描いた歴史大作である。

 アメリカ本国でもあまり知られてないこの人物は、南北戦争のさなか、南軍から脱走し、逃げ出した奴隷たちや脱走兵たちとともに、銃を取り戦いながら北軍、南軍どちらにも属さない、黒人と白人がともに暮らす独立区を作ったのである。黒人女性と結婚した彼は、戦争が終わり、自由州がアメリカに戻った後も、色濃く残る差別と戦い続けた。

 そしてその戦いは、彼の子孫にまで及ぶ。アメリカ全土で黒人と白人が自由に結婚できる時代になるまでには、彼一世代では終わらなかったのだ。それは映画「ラビング」で描かれた、ラビング夫妻の法廷闘争を待たなければならない。

 差別が根強く続くアメリカで、世代を超えた戦い続けた描く脚本の構成がまた見事である。今、アメリカを覆い始めている空気は、まるでニュートン・ナイトが戦った時代へと戻ろうとするかのようだ。戦いはまだまだ終わらないのである。

 まさしく、今知られるべき人物であると思う。


3位「バーフバリ/伝説誕生」「王の凱旋」

バーフバリ 伝説誕生 [Blu-ray]

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公式サイト:映画『バーフバリ 王の凱旋』完全版公式サイト

 インドで歴代興行記録を塗り替えた、インドの古代都市・マヒシュマティを舞台にした、貴種流離譚である。

 滝の下で高貴な婦人の手によって救われた赤子シヴドゥは、実はある王国の英雄の息子マヘンドラ・バーフバリであり、数奇な出来事を経て再び王国に帰ってくる。彼はそこで、父である偉大なる英雄王アマレンドラ・バーフバリの活躍と悲しき運命を知ることになる。

 その圧倒的イマジネーションは凡人である我々の想像をはるかに超え、圧倒的な演出に打ちのめされる。第1作こそちょっと突飛な話に見えながら、第2作を見ることで物語が全て繋がり、偉大なる王の数奇な運命と悲劇、王国に起こった物語を主人公が背負い、王としてマヒシュマティ王国へと帰ってくる。その熱量はまさに「王の凱旋」と言うにふさわしい圧倒的力強さで観客を飲み込んでいく。

 この映画の声出し可能な発声可能上映、名付けて「絶叫上映」に何回か行かせてもらっているが、本当に最後は一人の群衆として、「王を称える」ことしかできない。大きな声で「バーフバリ!!」と。

 ツッコミどころももちろんあるのだけれど、それを映画大国・インドの粋を詰め込んだかのような、その有無を言わせぬ力強さでねじ伏せて、全てに圧倒される前後編。是非スクリーンで王の凱旋を称えて欲しいと思います。


2位「トンネル/闇に鎖された男」

感想:俺を救え!「トンネル/闇に鎖された男」 - 虚馬ダイアリー

 韓国・ソウル。突然のトンネル崩落に巻き込まれた自動車セールスマン。彼に残されたのはケーキ1個と飲料水2本、そして電波のかすかに届くスマートフォン。彼の救出作業は難航し、彼には逆境に次ぐ逆境が待っていた。

 この映画の暴き出す経済優先社会の冷酷さ、大衆メディアは男に望むもの。主人公が受ける圧倒的な窮地は誰が生み出し、誰が彼を殺そうとし、誰が彼を救うのか。見終わってその流れにゾッとし、そして主人公が最後に叩きつける一言は魂の言葉として我々に突き刺さるのだ。

 この映画において問われるのは、この映画のどこに「自分」がいるのかと考える想像力である。僕らは主人公を見捨てるのだろうか。そして、自分が主人公であったならばどうしただろうか。現場で救う側の焦燥と、悲劇を「消費」するメディアと、綺麗事を言いながら時に生命を簡単に切り捨てる政府と、時に冷めやすい大衆と。

 優れた映画というのは様々な示唆をくれるものである。この映画を見た後、考えて欲しい。見ていた映画のどこかにきっとあなたが「いる」はずなのである。本当に孤独なサバイバルの中で、本当に信じられるものはなんなのか。それをつぶさに描き切った大傑作だと思います。必見です。


1位「新感染/ファイナル・エクスプレス」

感想:ヨン・サンホ監督と揺らぐ我々。「新感染」「我は神なり」他 - 虚馬ダイアリー


 今年の一番大きい収穫は、ヨン・サンホ監督というでっかい才能を知ったことである。

 もちろん本作「新感染」も衝撃的だったのだけれど、彼の本来のフィールドであるアニメ映画も立て続けに公開されて、「新感染」の前日譚「ソウル・ステーション:パンデミック」や、信仰の意味を問う「我は神なり」などもまた、刺激的で面白くて、実に示唆に富む傑作であり、まさに私に強いインパクトを残した。


 監督がアニメ映画で培ってきた卓越した人間描写は、初の実写映画である「新感染」においても変わらない。普段なら穏やかな人も、追い詰められれば一番大事なのは「自分」になる。本当に追い詰められた時、僕らは「人間らしい」選択をできるのだろうか。「ゾンビ」という題材でありながら、一人の人間としてどうするのか。観客の喉元に突きつけてくる映画なのだ。

 この映画は一番恐ろしいのは、ゾンビではない。それによって右往左往する人間なのだ。それを言葉ではなく、映像で、音で、物語で観客にナイフを突きつけながら問うてくる。あなたならば、どうするのだ?と。

 娘とろくなコミュニケーションも取れず、父親としては落第点だった主人公は、利発な娘さんの存在によって、「たまたま」、「人間らしい選択」を選び取れた。偶然にも、奇跡的にも。だからこそ、「選び取れないかもしれない」僕らは彼の選択に涙を流す。それは「せめてそうありたい」と願う涙なのだろう。そう僕は思うのです。

 「新感染」、本当に恐るべき映画だと改めて思います。


フェイク~我は神なり [DVD]

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2017年12月25日 1月から2月の感想書き損ねた映画たち

[][]1月2月の感想書き損ねた映画たち 1月2月の感想書き損ねた映画たちを含むブックマーク 1月2月の感想書き損ねた映画たちのブックマークコメント

 Twitterに書いた感想を交えながら、感想を書き損ねた映画たちを振り返っていきます。


「ホワイト・バレット」三人行(ジョニー・トー

 ジョニー・トーの新作「ホワイト・バレット」見たけど、「変かっこいい」と言うジャンルの極致のような映画だった。あとやっぱりパンフレットはなかった。パンフ作る余力すらないと言うのは哀しい。面白い映画だけど、クライマックスの銃撃シーンの歌の謎さだけは首をひねりつつ、かっこよさに痺れる。つーか、何この歌。

 ・・・と思って、銃撃戦でも流れる主題歌について検索してたら、あれ、香港の懐メロカバーなのね。わかるかー!

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 わかりやすく言うと、テレビアニメ「輪るピングドラム」の「生存戦略」の場面でARBのカバーが流れる感じに近い演出なのね。本作の銃撃シーンはジョニー・トー監督の「変」な感性が爆発したシーンだと思います。(★★★★)

輪るピングドラム キャラクターソングアルバム

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「ドラゴン×マッハ!」殺破狼2(ソイ・チェン)

 「SPL/狼よ静かに死ね」のシリーズ続編であり、タイのアクションスター・トニー・ジャーと、実力派・ウー・ジンのW主演で映画化した香港映画。

 楽しかった。3人のマスターの肉体の躍動を堪能。パッケージングが香港製なのでタイアクション映画の「イカレてる!」感はないんだけど、明らかに目の前で起こってるトンデモナイアクションを過不足なく見せ切る編集が見事で、常人にもきちんと何が起こってるか目で追える。

 獄長(マックス・チャン)がトニー・ジャーを軽くあしらうところは、ドラマとは全く違う感動がある。あそこ、変な声出た。香港アクションの層の厚さ、底力を見た思い。

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 その後本作の「絶叫上映」と言うものに初めて参加して、その魅力にも開眼するきっかけになりました。大好き。(★★★★)


「疾風スプリンター」破風(ダンテ・ラム)

疾風スプリンター [DVD]

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 ダンテ・ラム監督による、恋と友情と野望を描く自転車レース活劇映画。

 見てすぐに分かった。本来これ、フィクションで扱う題材じゃねーよ。自転車ロードレースの生感が凄すぎる。並の監督なら絶対手を出さない。そのくらいレースシーンの出来栄えがハンパない。本気すぎる。ダンテ・ラム監督怖い。そして、ベタベタなドラマとの落差がエライことに。

 エンディングにメイキングダイジェストが出るんだけど、それ見てるだけでもどんだけ過酷な現場だったか、想像するだけでちびる。怪我人続出だし、可愛いヒロインも思いっきりしごかれてるし、主演クラスも生傷絶えない。よく死人が出なかったもんだと心の底から思う。

 それでいて主人公とヒロインのベタベタ過ぎて「少女漫画かよ!」的な恋愛模様とか、レースシーンが過酷な撮影すぎてスタッフが逃げ場が欲しかったとしか思えないギャップスゴイ。当て馬役のフラレ方も少女漫画の王道だし!振られたシーンで笑いそうになったの初めでだ。

 香港映画のパワフルさの一端がこの映画にあると思います。大好き。(★★★★)


ザ・コンサルタント」The Accountant(ギャビン・オコナー)


 この映画、間違いない。緻密に積み上げられた設定で、一人の「正義の執行者」が誕生するまでを解き明かす作劇は、見事すぎて感嘆のため息が出る。この地に足ついたリアリティー、主人公は障害者で、異質なるものを排斥しようとする社会の病巣も絡める視点は素晴らしい。

 とても愉快な映画なんだけど、予告編だと全然そう見えないのがかわいそうな映画。みんな見てね!秘密基地とか大好きな心が小学生な人や、相手の目を見て話せない人とか、特定の話題でしか盛り上がれないオタクは必見ダヨ!

 本作はいい意味で最初の印象を裏切られた映画で、ベン・アフレックが手にした新たなるアクション・ヒーローシリーズになって欲しい作品でした。社会的弱者と言われる障害者たちが、隠されたスペシャルな才能を獲得していく物語としても面白い。超・大好き。(★★★★☆)

 

ルパン三世/カリオストロの城」MX4D版(宮崎駿

 言わずと知れた宮崎駿の代表作の一つが、MX4D版でリバイバル上映。

 とりあえず大スクリーンで見られる貴重な機会と言うことで、普通に見ててもエグいくらい楽しいんだけど、カーチェイスからアクションから漫画映画的小ネタギャグかまで、MX4Dの物理演出が入るのも楽しい。塔の屋根からのずり落ちから次元のプロレス技まで反応。

 久々に大スクリーンで見て、「ああ、やっぱり映画館で見なきゃいけない映画だ。」と思いましたですよ。地下水道に落とされて発見する日本人の遺体の上に書かれた文字ってビデオだと潰れてなんのこっちゃだけど、大スクリーンだとくっきりはっきり。時計台で潰れる伯爵も見えるよ!

 クラリス姫抱きしめない例のやーつ、あれ中年になってからの方がより味わい深いな!もういじり倒された古典なのに、大スクリーンで見続けてあのクライマックス。「愛しいからこそ抱きしめない、抱きしめてはいけない、」っておっさんになってからの方が響くんだ!


「牝猫たち」(白石和彌)

牝猫たち [Blu-ray]

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 日活ロマンポルノが平成に復活したシリーズの1作にして「凶悪」「日本で一番悪い奴ら」の白石和彌監督の新作。

 池袋をうろつく学生時代を過ごしたあたくしにドンピシャな白石和彌監督のロマンポルノリブート作。シリアスと笑い、優しさとバイオレンス、性と死を縦横無尽に横断する白石節。なんで音尾琢磨さんがキャスティングされてんのかと思ったらオチが。攫うなあ音尾さん。場内大爆笑。さすが。

 引きこもりやホームレスデリヘル嬢、シングルマザーに虐待される子供、妻に先立たれた老人、人妻嬢の孤独を掘り下げるなど、社会派な匂いを漂わせつつ、最後に「なーんちゃってーー!」ってひっくり返すちゃぶ台が音尾さんなのね。これに関しては「見事」と言うほか無いわ。あれは笑う。

 人間群像劇としても大変優秀で、その点、「エロシーンが入る以外何やってもいい」と言うロマンポルノの王道的な作品なのかも。ただ、白石監督はかっちりとした娯楽映画にしてるけど、大きくははみ出さない生真面目さも感じる。あと音尾さんはかつての竹中直人枠を狙える位置に来たなあ。

 このロマンポルノシリーズは、まだまだ続けて欲しいですね。(★★★★)


「沈黙 サイレンス」Silence(マーティン・スコセッシ

 なんちゅー精神的SM映画。舞台が無知な日本人が拷問を用いて棄教を強いるなんて時代からちょっと経た長崎で、S側のイッセー尾形演じる奉行と浅野忠信演じる通詞も、M側アンドリュー・ガーフィールド演じる神父が長崎に来たことにうんざりしているのが面白い。

 奉行や通詞は一度棄教させた経験があって、どうすれば神父が棄教するか、その心理手に取るように把握している。だからSMの力の強弱の加減まで完成されていて、アンドリュー・ガーフィールドごとき若い神父をどのように落とせるか、段取りまで完璧という恐ろしさ。勝てない。

 弱さや業の肯定という意味では落語に近く、窪塚洋介演じるチキン系信者キチジローの存在が布石となって効いてくる。意識高い系神父は最初キチジローを愛せない。だが、自らの無力、神の沈黙を通して彼の中に「神の声」を知り、キチジローに対して愛を持てるようになっていく。

 表向き信仰を捨てたとして、それが果たして信仰を捨てたことになるのか。神父としての栄光を捨てることでアンドリュー・ガーフィールドはよりキリスト教の主の「真理」へと近づいていく、と言う皮肉な展開は、なるほどキリスト教圏で物議を醸すはずだわ。深すぎる問いだ。

 見て思ってたのは、世界のありようの発見ではなく、再確認だった。なので見てる時は「ひゃー!」とか「うわー!」とか声に出してたんだけど、割と見終わった後は淡々とした感じで劇場を出てきた。この感じが不思議だった。そこがこの映画の奇妙さであると感じる。

 (★★★★)


LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門」(小池健

 テレビシリーズ『LUPIN the Third -峰不二子という女-』、2014年の映画『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』の流れをくむスピンオフシリーズ「Lupin the Thirdシリーズ」の第3弾。

 五ェ門が元軍人の男に完膚なきまでの敗北を喫し、そこから再び立ち上がり更なる強さの境地へと至る事でリベンジを果たす復活劇。五ェ門という最強の男を挫く敵役・ホークのターミネーターもかくやの最強ぶりの描写が見事。暴力描写も容赦ない。

 小池ルパンの前作「次元大介の墓標」から地続きとなる話のようだけど、そっちを見てなくてもあまり問題ない。ルパン一味も銭形も登場するけど、五ェ門とホークのレベルがハイレベルすぎて傍観者にならざるを得ないのだが、その立ち回り方が五ェ門の琴線に触れるってのは面白い。

 (★★★★)

「未来を花束にして」Suffragette(サラ・ガヴロン)

未来を花束にして [DVD]

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 女性参政権を巡る女性たちの闘いを描いた映画。いやー「花束を」なんて邦題ついてるけど、そんなヤワなもんじゃねーな。本当に捨て身。思った以上に活動が過激なんだけど、そうならざるを得ないほど出てくる男たちがクソで、差別社会の地獄を生きるヒロインのサバイバルなのだ。

 ヒロインのモードの夫にしても敵対する警部にしても当時としては善良なる「普通」の男たちだ。彼らは差別者ではない。だが次第に参政権運動に関わるようになるヒロインを恐れ、または無法を行う女のように扱う。今の当たり前を求める事が昔はそうではなかった。ツライ話だ。

 虐げられた人々が声を上げると社会は驚くほど冷淡になる。それは今の社会もまさにそう。「普通」の人々が彼女たちの敵に回る。当たり前を求める果てなき闘争。その末に未来は、世界は少しずつ変わっていく。そこに人間の希望がある。その事を描いた映画である。それ大事。

 なんか女性映画として売られてるけど、男が見て損はない映画だ。強く生きる闘う女性を見るの大好きな人は見るといいと思う。お勉強だけでは理解できない「差別社会」の砂の味を体感できるし、政治運動の大事さを実感できる。つか「この世界の片隅に」だってこんな世界なんだぜ?

 本作を見てるとこういう歴史を経て我々の「権利」は勝ち取られてきたと言う事がわかるし、社会的強者と言うのは、油断すると弱者から尊厳から何から取れるものはすべて剥ぎ取っていく事を知る事が出来る。映画に教えられる事は本当に多いぜ。

 (★★★★)


「サバイバル・ファミリー」(矢口史靖

 いやー素晴らしい。電気が全て消えた世界という設定を徹底的にシミュレートしつつ、一家族が生き残りを賭けて日本を迷走する中で、家族の絆と生きる力を獲得し始めるまでを丁寧に描いてる。ワンアイデアもここまで突き詰めるとゾンビものより怖いホラーにも喜劇にもなる。

 電気のない世界に放り出された世界では人間は時にゾンビより怖いけれど、だからこそ生まれる感情の爆発や肉体の躍動、人間の本来あるべき情が溢れ出る。それを丁寧に段階を追ってきちんと描くことで、限りなく説得力を持たせる矢口史靖監督の手腕、ここに極まる。見事。

 しかも今回は非常に普遍的な物語なので、うまくすれば韓国や中国などのアジア諸国はおろか、欧米でもでリメイクが可能。昨今の日本映画らしからぬ、ドメスティックに陥らない映画力溢れる作品なので、本当に素晴らしい。これは矢口監督、やったな。大ホームランだと思う。

 とりあえず3.11後の映画としては決定版と言えるかもしれない。未曾有の状況で人間の力が呼びさまれると言うのは、阪本順治監督の大傑作「顔」に近い。と言っても、小日向さんは普通のサラリーマンでいきなり器用になるわけもなく、劇的に変わるのはむしろ子供達の方。

 リアルにシミュレートしつつ娯楽映画の強靭さを失わない、矢口史靖監督の映画力は韓国映画にだって負けはしないと思う。傑作。大好き。(★★★★★)


「破門 ふたりのヤクビョーガミ」(小林聖太郎)

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 黒川博行氏の「疫病神」シリーズの第5作「破門」の映画化。

 面白かった。この映画、全然話題になっとらんけど何でや。キャストも適切だし演出もいい。主演の佐々木蔵之介と横山裕に華がないくらいで映画は面白かった。こういうちゃんとした日本映画に客入らないのおかしい。だから日本映画は斜陽になる。橋爪功まだまだ巧い。

 横山裕に華がないと書いたけどけなしてるんじゃない。この映画に関してはそこがいい。この華のなさが異様にリアル。佐々木蔵之介と比べても月とスッポンのスッポンの方に見えるが、だからこそクライマックスにすごく共感できる。その意味でもこの映画侮れない。

 この映画、脇も異様に豪華で國村隼にキムラ緑子、北川景子、木下ほうかに宇崎竜童と錚々たる面々が脇を固めてタイプキャストな演技を披露してる。ポイントポイント抑えた配役で安心して話が追える。正直「ナイスガイズ!」と比べても遜色ないと思うんだけどなあ。

 加えて橋爪功だよ。出資金を集めて高飛びした食えねえ映画プロデュサー役なんだけどやっぱり巧い。ヤクザを向こうに回して殴られるわ箸刺されるわす巻にされるわ結構ひどい目に遭うんだけど、それでもめげない諦めない、そして憎めない。それを飄々とこなす。流石。

(★★★★)


ラ・ラ・ランド」La La Land(デミアン・チャゼル)

 くっそ!くっそ!クライマックスで大いに泣いてしまった。あかんわあんなん。思い出しても泣く。ダメダメ、こんなの。泣くに決まってんだから。ツボに完全にハマってしまった。

 正直言うと序盤はそこまで乗れてなかったんですよね。オープニングなんかは演出がテクニカルすぎて若干引きながら見てた。でも、あの夕焼けのダンス辺りから次第に引き込まれて、ふたりの恋と夢の道程を見つめつつあのクライマックス。もうね。ダメな。あーもう。してやられた。

 毀誉褒貶いろいろ言われる映画ですけど、僕は肯定派ですね。あのクライマックスは、なぜこの映画が「ミュージカル」だったのかを明確に示していて、とにかく心を撃ち抜かれてしまった。大好き。なのです。(★★★★)


「ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男」Free State of Jones(ゲイリー・ロス

 南北戦争時代、アメリカに奴隷解放宣言よりも早く、白人と黒人が平等に暮らせる「ジョーンズ自由州」を築いた男・ニュートン・ナイトの、黒人差別との果てなき戦いを描いた歴史大作。

 この非寛容が進む時代にあって、黒人奴隷と脱走兵を率い、アメリカの自由と平等を信じて果てなき戦いを続けた反骨の白人男性・ニュートン・ナイトの生涯を描いたこの映画は、まさしく今見られるべき映画だろう。このマコノヒーに痺れないならその人の魂は死んでる。

 ゲイリー・ロスは85年後、ニュートン・ナイトの孫である男性が直面した、ある裁判を物語に絡ませる。そして、その裁判は、ニュートン・ナイトの戦いは終わっていない事を浮かび上がらせる。その作劇は、今、アメリカで起こっていることと奇しくもつながっていく。凄い。


 この映画は非常に素晴らしい傑作だと思っていますし、いま、アメリカで進行している事態に通じる映画であると感じています。そんな私が、2回目を見に来た時に製作者の方のティーチインにたまたま遭遇したのでした。

 2回目。プロデューサーのブルース・ナックバーさんのティーチインあり。やっぱり傑作。構想から完成まで11年。最初はゲイリー・ロス監督と別に企画を進めていたけど、監督から合同でやろうと持ちかけられてこの映画に繋がったとの事。ちなみにナックバーさん、日本在住。

 ニュートン・ナイトはアメリカでも存在はあまり知られておらず、マシュー・マコノヒーも関わるようになるまで知らなかったそう。マコノヘは演技に集中するタイプでなかなか役が抜けない。周りの役者と無駄話もせず、監督と演技を詰める話ばかりしていたとの事。

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 実際の写真とマコノヘ比較。目力の強さが激似。

 ニュートン・ナイトになりきったマシュー・マコノヒーの演技も大変素晴らしく、差別の根深さと世代を超えた戦いを描いていく構成が見事な傑作と思います。大好き。(★★★★★)

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2017年12月17日

[][]男の魂に火をつけろ!のオールタイム映画ベストテンに参加します。 男の魂に火をつけろ!のオールタイム映画ベストテンに参加します。を含むブックマーク 男の魂に火をつけろ!のオールタイム映画ベストテンに参加します。のブックマークコメント


映画オールタイムベストテン:2017 - 男の魂に火をつけろ!

ワッシュさんの「オールタイム映画ベスト10」に参加します。





オールタイムベスト10

1位:「ショーシャンクの空に」(1994年 フランク・ダラボン監督)

2位:「ボーン・スプレマシー」(2004年 ポール・グリーングラス監督)

3位:「大誘拐 RAINBOW KIDS」(1991年 岡本喜八監督)

4位:「12人の優しい日本人」(1991年 中原俊監督)

5位:「鴛鴦歌合戦」(1939年 マキノ正博監督)

6位:「千年女優」(2001年 今敏監督)

7位:「ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ!」(1992年 ニック・パーク監督)

8位:「ムトゥ 踊るマハラジャ」(1995年 K.S. ラヴィクマール監督)

9位:「魔女の宅急便」(1989年 宮崎駿監督)

10位:「ピカドン」(1978年 木下蓮三/木下小夜子)





1位:「ショーシャンクの空に」

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2位:「ボーン・スプレマシー」



3位:「大誘拐 RAINBOW KIDS」

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4位:「12人の優しい日本人」



5位:「鴛鴦歌合戦」


6位:「千年女優」

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7位:「ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ!」



8位:「ムトゥ 踊るマハラジャ」

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9位:「魔女の宅急便」(1989年 宮崎駿監督)

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10位:「ピカドン」(1978年 木下蓮三/木下小夜子)

ピカドン PICADON

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2017年10月27日 ヨン・サンホ監督と揺らぐ我々。「新感染」「我は神なり」他

toshi202017-10-27

[][]「新感染/ファイナル・エクスプレス」「ソウル・ステーション/パンデミック」「我は神なり」 「新感染/ファイナル・エクスプレス」「ソウル・ステーション/パンデミック」「我は神なり」を含むブックマーク 「新感染/ファイナル・エクスプレス」「ソウル・ステーション/パンデミック」「我は神なり」のブックマークコメント



監督:ヨン・サンホ


 「固い信念なんてものは、かえって信用がおけんね。だいたい戦争なんてものは固い信念を持ったもの同士が起こすんだからね」

 田中芳樹「銀河英雄伝説」より


 韓国のアニメーション監督、ヨン・サンホ監督の作品が、実写とアニメーション合わせてここ2ヶ月で3本公開されて、それを見た。

 「新感染 ファイナル・エクスプレス」「ソウルステーション/パンデミック」「我は神なり」の3本である。

 一言で言って、全て面白い。でも面白さの質、というか、描こうとしているもの、楽しませようとしているものが違う。作品ごとに、描こうとしているものが違うし、それぞれにきちんと独自の突出した個性があるのが、何と言っても驚異的なのである。


 その中でも、映画ファンの圧倒的熱狂をさらったのが今年9月に公開された「新感染/ファイナル・エクスプレス」である。


「新感染/ファイナル・エクスプレス」の圧倒的娯楽性に隠された人間描写の確かさ

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 「新感染」はジャンルとしてはゾンビ映画に属する。

 舞台は韓国随一の高速鉄道、KTXである。ソウル発の高速鉄道に乗り込んだ、ファンドマネージャーである父親とその娘が、釜山に向かう列車内で、人々がゾンビになっていく感染する災禍に遭遇し、非常に限られた列車内でのサバイバルを余儀なくされる物語である。

 

 何と言っても「新感染」に関しては、私が今年一番涙を絞らされた作品という事もあるんだが、自分がなぜこんなにも翻弄されたかと言えば、一言で言って出てくる登場人物に対する、なんとも言えず「ドライ」な人間観に尽きるのである。


 普通「泣かせ」というと、人はつい「ウェット」に描かないと見ている人間は泣かない、と思いがちだけど、実はそうじゃないんだ、とこの映画は教えてくれる。人というものは追い詰められると「身勝手」で「非情」で「どうしようもない生き物」であるか、という哀しい「事実」をきちんと描けるかではないか、と思うのである。

 追い詰められると人は「自分だけが生き残りたい」と願う。他人を蹴落としてでも自分だけは助かりたい。目の前に広がるどうしようもなく広がる地獄がいきなり訪れたら、実は誰しもがそう考えてしまう。それはどうしよもない「生存本能」ではないかと思うのだ。その本能と情の間で、たやすく人は「本能」を選んでしまう。

 この映画はそんな人間の醜さを余すところなく描き出している。


 そもそも、である。コン・ユ演じる主人公の父親・ソグにしたってが、決して心優しい父親からは程遠く、妻との別居を娘と向き合わざるを得ず、しかし彼女に対してどう接していいかわからない、なんともダメな父親で、自分が彼女に以前何を誕生日プレゼントしたかも忘れて同じものをあげちゃうくらい、ダメなのである。

 そんな父親が釜山行きの列車内で災禍に出会ったときどうしたか、と言えば、やっぱり他の人間と変わることはなく、彼はとりあえず、自分だけが助かる方法だけを考える。自分さえ助かれば周りの人間はどうでもよく、彼はファンドマネージャーとしてのコネをフル活用して、てめえだけが生き残る術を探す。

 その姿を娘はつぶさに見ているのである。


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 しかし、彼はあることをきっかけにして娘や他人の為に生き残ろうと決意するのであるが、それは娘からの泣きながらの叱咤を聞いた時からである。自分ひとりでは自分の姿はわからない。ましてや自分を「まとも」で「普通」で「善良」と信じて疑わない人ほど、そんな自分の醜さを認めることは出来ないものなのである。彼が自分の「醜さ」と真摯に対峙したときに初めて、彼は「まとも」な主人公として映画の中で動き始めるのである。彼はこの絶望的状況で出会った数少ない乗客、ワーキング・クラスのサンファ(マ・ドンソク)、彼の妊娠中の妻・ソンギョン(チョン・ユミ)ら数人とともに、娘を救うために闘い始める。

 だからこそ、我々観客はこの父親に心から共感し、「生きて欲しい」と願い、彼の闘いの果てのある決断に、涙が止まらなくなるのである。


「ソウル・ステーション/パンデミック」でより深まる、哀しい人間と非情な社会への眼差し

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 さて。その前日譚となる映画がヨン・サンホ監督の3作目の長編アニメーション作品「ソウル・ステーション/パンデミック」である。


 この映画の特徴的な点は、人がゾンビ化する災禍に出会った登場人物たちが「新感染」よりも社会的に下層の人たちばかりであるという点である。「新感染」は高速鉄道という割とお高めな移動手段を使える人々であるが、「ソウル・ステーション」に出てくる人々は、そんな移動手段を簡単には使えない、くらいの人たちが多い。そもそも最初の犠牲者はホームレスなのである。

 この映画のヒロインだって、10代で家出した元・風俗嬢で、借金を背負わされて逃げ出し、行き場をなくして彼氏の部屋に厄介になってはいるが、彼氏はネットで彼女に売春させようと持ちかけてくる甲斐性なしで、経済的に部屋代も滞納し続けている状態で大変困窮している。

 相も変わらず彼女に体を売らせようとする彼氏に愛想つかしたヒロインが部屋を飛び出して、街をさまよっていたところ、彼女はゾンビ禍に遭遇する訳であるが。その頃、ネットで売春を呼びかける写真を見た彼女の父親が彼女を探しにやってくる。

 ゾンビに追われ続けながら、彼女が思うこと。それは「家に帰りたい」と思うことだった。彼女は父親と再会し、「家」へとたどり着けるのか。

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 この映画に関して言えば娯楽要素よりも、一度落ちたらなかなか這い上がれない、人間社会の格差。その分厚くて非情な壁を、下層に「落ちてしまった人々」の目線で描き出しており、ゾンビ事件も登場人物たちにとって十分脅威なのだが、それ以上に下層の人々を切り捨てる「人間社会」の怖さの方がより空恐ろしく、なんとも腹にズンと重くのしかかる。

 格差社会というものがどういうものか、それをゾンビ禍の中で逃げ惑うヒロインを通して浮き彫りにしていくという離れ業をやっており、娯楽性の高い「新感染」に比べると、作家性がより色濃い作品になっている。



「我は神なり」が描き出す、「神なき世界」に置ける「信仰」の意味。

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 「新感染」「ソウル・ステーション」が2016年に韓国公開された映画であるが、アニメ監督として2013年に発表したのが本作「我は神なり」である。

 この映画の彼の目線は、前の2作よりもさらに辛辣に人間社会を見据えている。ヨン・サンホ監督は、哀しく弱い人間という生き物の「業」を「信仰」を通じて描こうとする。


 舞台はダム建設によって沈むことが決定している韓国のとある村である。

そこへやってくるのが宗教を看板にして、村人たちに支払われる補償金を分捕ることが目的の詐欺グループであり、彼らはカリスマ性ある牧師・リンを通じて寄る辺なき村人たちの心を掴んで今まさに食い物にしようとしていた。

 一方その頃、村に一人の男が帰ってきていた。ソウルの大学に合格した娘の進学資金を、一夜にしてギャンブルで使い果たして悪びれもしないその男・ミンチョルは、村の人々からは厄介者あつかいされていたが、彼はその独自の嗅覚で、詐欺師の存在と彼らが行おうとしている犯罪にいち早く気づき、それを止めるべく動き出す。

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 「神に見捨てられた村」の村人たちの心を癒そうと「やさしい嘘」を語る牧師・リンは村人たちから心酔されており、神をも恐れず村人たちが信じる宗教を「詐欺師」と触れ回るミンチョルは村人から「悪魔に憑かれている」と白眼視され始め、周りは彼を遠ざけ始める。一方詐欺師グループも、ミンチョルを排除しようと動き始める。


 詐欺師たちの語る「心癒される嘘」か、神をも恐れぬ男の「絶望的な真実」か。あなたならどちらを選ぶ?

 この強烈な問いは、観客に簡単に答えを出させない。


 この映画がすごいのは、決してどちらかを善、どちらかを悪と規定しない事である。詐欺師グループが開いた宗教が、村人たちに与える「効能」を映画はしっかりと描き出し、神なき世界を見据えるミンチョルもまた、心が離れていく娘への執着を捨てきれぬ。誰もが人は、何かにすがらねば生きてはいけぬ。それは決して例外はない。そんな人間の「業」を見据えているのである。

 自分が犯した悪行がきっかけで、詐欺師たちの宗教が語る「優しい嘘」に心を取り込まれていく娘を、ミンチョルは必死に押しとどめようとする。だが、彼女からその嘘を奪って、さて、離れた彼女の心は戻るのであろうか。

 詐欺師の片棒を担いでいると自覚しながらも村人たちに「癒し」を与え続けるリン。だが、彼もまた、心にある「執着」を抱え、苦しんでいる。誰が正しくて、誰が悪いのか。


 この映画はそんな善悪定かならぬ物語に、いちおうの決着をつける。その結末をあなたはどう感じるのか。是非、一度御覧いただきたい。人という生き物の不完全さを見据えた傑作である。 


ヨン・サンホ監督作品を通して鑑賞することで見えてきたもの。


 ヨン・サンホ監督の眼差しは徹頭徹尾「神が不在の世界で生きる人間」を見据えている。それはゾンビという題材であろうとそうでなかろうと変わらない。この映画に英雄はいない。ただ人間がいるだけだ。

映画の主人公だろうとそうでなかろうと、人はどこまでも愚かで救いがたい、不完全な生き物だ。

しかし、だからこそ。人は追い詰められた時、何を選び取るかによって、その人の価値は測られるのではないか。


 さて。


 ここからは「新感染」の話になる。

 やや、ネタバレなので見てない方は、見てから読んでください。







 実は「新感染」を見終えた時、ひとりの登場人物のことが頭から離れなかった。それはバス会社で常務を務める乗客の男性である。

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 彼は本作においてはゾンビ以上の悪役的な立ち位置として物語を牽引し、その行動は多くの観客をイラつかせ、または激怒させるに十分であった。

 Twitterでは彼への怨嗟の声渦巻き、「もっと惨たらしく死ねばいい」という声もあった。

 しかし、この映画の終盤、彼が放った台詞は、私の心にある逆転を起こした。


 そうか、そうだったのか、と。


 彼はただ怖かったのだ。そして、どうしても生き残りたかったのだ。ただ、それだけだったのだ。


 確かに彼は主人公のように「他者のために闘う」道を選び取る事が出来なかった。あまつさえ、多くの犠牲の果てに生き残ろうとした。普通に考えて、許される事ではない。


 しかし、だ。

 我々は果たして彼を責められるのだろうか。いきなり地獄のような状況に叩き込まれ、わけも分からず命の危険に晒されて、怖い、死ぬほど怖い、それでも生きたい、死ぬわけにはいかない。ただそう願った、そんな一市民である彼を。

 観客は忘れているが、彼もまたこの災厄に巻き込まれた「被害者」でもあるのだ。

 彼は一言で言えば「主人公の影」である。もしも同じ列車に娘がいなかったなら。または、涙をこぼしながら彼に言葉を投げかけなかったら。主人公はどういう決断をしたろうか。他者を押しのけてでも、自分だけ助かろうとしたのではないだろうか。

 そして胸に手を当てて考えてみて欲しい。

 私たちは同じ状況に陥った時、このバス会社常務氏と同じ事をしないと胸を張って言えるだろうか。


 そう考えると「新感染」という映画はより、空恐ろしい映画に見えてくる。ヨン・サンホが見据えてる世界は、善も悪もない。絶望と希望が紙一重の、神なき世界の「ニンゲン」たちのどうしょうもない蠢きを描き続けているのである。

善に見えるものも、悪に見えるものも、実は等しく同じ人間であり、彼らが選び取った方法で人物の「いい悪い」を区別してるに過ぎなかったのだ。「こんなこと」さえなければ、彼らは「ごくごく普通の一般市民」だった。つまりこれはこの映画に出てくる誰も彼もが、我々の「可能性」だったのだ。


  私に言えることは、「神のいないこの世界でゾンビに襲われた時、せめて人間らしい決断を選び取れるよう、心して生きたいものだ。」という事だけである。

ヨン・サンホ監督の映画は観客にすら刃の切っ先を向けて試してくるのだ。



「あなたならどうする?」と。

2017年05月18日 俺を救え!「トンネル/闇に鎖された男」

toshi202017-05-18

[][]「トンネル/闇に鎖された男」 「トンネル/闇に鎖された男」を含むブックマーク 「トンネル/闇に鎖された男」のブックマークコメント

原題:터널/Tunnel

監督・ 脚本:キム・ソンフン


「さあ救え・・・!(中略)救うんだ・・・!ゴミども・・・!」

福本伸行「カイジ」より)

賭博黙示録 カイジ 5

賭博黙示録 カイジ 5


 人生に理不尽というのは当然起こることがある。


 ただ、その理由は二つある。自分に責任がある場合と、ない場合である。


 この映画の主人公、イ・ジョンス(ハ・ジョンウ)は圧倒的に後者である。なぜならば、たまたまその日、地元の日常でよく使うトンネルを通ったというだけのことだからだ。

 トンネルに入る直前に立ち寄ったガソリン・スタンドでもたもたしている爺さんにイライラしつつ、お詫びに差し出されたペットボトル2本。そして、偶然車に積んでいた娘への誕生日ケーキ。車の営業マンとしての契約も取り付け、意気揚々と車を走らせるジョンス氏はハド・トンネルへと差し掛かる。交通量が少ないそのトンネルをすすんでカーブを抜けた辺りで突如轟音が鳴り響く。そして信じられない光景が展開していく。トンネルが天井から崩れてジョンス氏に迫っていたのである。

 気がつくとジョンス氏はがれきに埋もれた車内にいた。なんとか生きているものの完全に立ち往生となったジョンス氏はかすかに拾えるトンネル内のアンテナから119番する。救助隊が到着するとソウル側からの出口は完全に崩落。南側からの出口だけが完全な崩落を免れていた事が、ジョンス氏の命を支えていた。


 トンネル崩落のニュースは瞬く間に韓国国内に広がり、国を挙げての救出が始まる。現場にはジョンス氏の妻・セヒョン(ペ・ドゥナ)も駆けつけ、現場を手伝いながら事態を見守る。その救助隊の隊長・キム・デギョン(オ・ダルス)は韓国一の救助隊を自負し、ジョンス氏救出のために動き出す。だが、予想外の事態が頻発する現場は、やがて様々な困難に直面することになる。

 ジョンス氏、そしてキム隊長はひとつひとつその困難に向かっていくが・・・、やがて彼らに試練が訪れる。




極限下のサバイバルと予想を越えて困難な救出

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 この映画の前半部はジョンス氏のサバイバルと、救助隊やセヒョンの苦闘に光が当てられる。


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そのテロルは生きている。「テロ,ライブ」 - 虚馬ダイアリー



このくだりのジョンス氏を演じるハ・ジョンウの非常に場持ちする演技は見事であり、また、国民的バイプレイヤーとして不動の人気を誇るオ・ダルスの非常に人間味あふれる演技は、映画を牽引する大きな力となっている。そして、ジョンス氏の生還を祈る健気な妻が韓国が誇る至宝・ペドゥナである。まさに最強の布陣である。


 ジョンス氏が遭遇した事態はただただ、理不尽である。そしてキム・デギョン隊長を初めとした救助隊の面々はある種、国の「尻ぬぐい」をしている状況である。

 なぜならば、事態が動いていく中で明らかになるのは、そもそもの原因がバドトンネルの「手抜き工事」であったこと、そして、バドトンネルの近くで、国が主導するニュータウンをつなぐ第2トンネル建設が重なった事であった。

 つまり、国が本来の仕事をきちんとしていれば起こりえない、複合的な事故である。ジョンス氏に死を呼び寄せる原因は国であり、社会である。


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 その尻ぬぐいを一手に引き受けるキム隊長と救助隊は、ジョンス氏救助まであと一歩のところまでたどり着く。・・・はずだった。ところが、思わぬ原因でその作業が無駄だったと発覚する。

 絶望するジョンス氏。電源が落ちる、唯一の連絡手段であるスマホ。辛酸をなめるキム隊長。悲嘆にくれるセヒョン。


 そこから終盤にかけて、この映画は視点を大きく広げる。


 一人の男が崩落事故で孤独に耐えながらサバイブする事故を巡る社会という「人間」のうねりを描くドラマになっていくのだ





(以下終盤の展開に触れていきます。)

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2017年01月08日 暗殺!ウオ娘「人魚姫」

toshi202017-01-08

[][]「人魚姫」 「人魚姫」を含むブックマーク 「人魚姫」のブックマークコメント

原題:美人魚

監督・脚本:チャウ・シンチー


 大晦日も仕事して、元旦の朝帰ってみれば、すぐに体調を崩し、三が日はひたすら布団から出られず、テレビを見て過ごすという、のっけから最悪のスタートを切った私。

 ようやく体調が戻って初めての休日。2017年最初に見る事に決めた映画。それは「少林サッカー」でおなじみ、今や香港喜劇界のヒットメーカーにしてトップランナー、チャウ・シンチー監督の新作でありました。


 公開直後、上映が都内で1館のみというこの扱いもさることながら、スケジュールが日に2回しか上映しないという、人気監督にあるまじき扱いを受け、当然のことながら、私が早めに上映されるシネマート新宿に行ってみれば、すでに立ち見まで埋まり、満席という大盛況。ロビーには人がごった返し、明らかなキャパオーバー。私はネットで前日にチケット予約してたので座れたものの、当日だったら危なかった。改めてその根強い人気を裏付ける結果となったわけですが、さて、映画はというと。



 これが!これが!もう最高!さすが、香港喜劇王の面目躍如。


 それもそのはず。なにせ、全世界で興行収入600億円以上という「君の名は。」どころか、「千と千尋の神隠し」のほぼ倍を稼ぎ出した超メガヒット作である。

 それにも関わらずである。日本映画界はこの映画をこんな小規模公開してるとは一体、何を考えているのか。バッカじゃねえーの!としか言いようが無い。まさに「ありえねえーー!」でありますよ。


 若き実業家・リウ(ダン・チャオ)は香港の自然保護区域を買収し、そこに一大リゾートを計画する。貧乏な生まれから脱し、無学ながらも一代で財を為したリウに近づいてくるのは、彼の財力を目的にしてくるものだけだった。

 そんなリウにひとりの女性がある目的を持って近づいてくる。彼女の名はシャンシャン(リン・ユン)という。奇妙な歩き方をするこの娘。実は、リウを暗殺するために近づいてきた刺客。リウが買収した自然保護区域に住み、彼が財を為した海洋探査の為の「ソナー」に苦しめられてきた「人の上半身と魚の下半身」を持った一族。

 そう、シャンシャンは「人魚」なのであった。だが、二人はやがて惹かれ会い恋に落ちていく。そして、リウに惚れていたビジネスパートナーだったルオラン(キティー・チャン)は、嫉妬に狂い、人魚族殲滅のために動き出してしまう。


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 「どんな美人も初登場はブサイクに描く」お約束から、好きな作品の引用を恥ずかしげも無くぶち込み、個性的というにはあまりにアクが強すぎるキャラクターたち(特にショウ・ルオ演じる蛸の下半身を持つ「タコ兄」は面白すぎる)、そして提供される笑いはあまりに濃ゆい。コッテコテなギャグ、ベッタベタな笑いのつるべ打ち。

 だが、世界設定は驚くほど酷薄。人間と人魚たちの闘いの描かれ方は、あまりにも壮絶かつ暴力的で、一瞬「ウッ」となるほど。前作「西遊記 はじまりのはじまり」で見せつけた暴力性はチャウ・シンチーの中で健在なのであるが、しかし、そこを王道の「許されざる恋」というラブストーリーという柱をドンと乗せることによって、環境問題を取り上げた社会派的作品とも違う、酷薄なる世界を「愛」が救う!という、堂々たる王道を往く。

 このベタな笑いを恐れず、人の中にある暴力性を描くことを恐れず、環境問題をストーリーに絡ませつつも社会派作品になることを軽やかに避けながら、「愛」の尊さを恥ずかしげもなく歌い上げる!まさに、娯楽と喜劇というジャンルのど真ん中を突き進む!チャウ・シンチーのブレない直球ど真ん中っぷりは、本作でいよいよ極まっていると言っていい。


 これほどのヒットメーカーになりながら、決して自分を見失わないチャウ・シンチーの威風堂々たる娯楽作家ぶりは、まさに見事という他はない。自らの作家性を極めつつ、更なる覇道を突き進む!

 新年一発目の映画に選んで大正解!悪かった体調が嘘のように回復しはじめたのは、この映画の本気っぷりに当てられたに相違ない。まさに、我らが「星爺」快心の大傑作であります。(★★★★★)

 

侵略!イカ娘 1 (少年チャンピオン・コミックス)

侵略!イカ娘 1 (少年チャンピオン・コミックス)

 

あんじー祭りあんじー祭り 2017/01/30 18:02 兄さんもうすぐJCOMホームページがなくなるけどこのまま江戸川番外地なくなってしまうの?

2017年01月02日 奇跡は映画館で起こってる。2016年映画ベスト10

toshi202017-01-02

[][][]2016年に見て「良かったな」と思った映画から10本を選んでみる。 2016年に見て「良かったな」と思った映画から10本を選んでみる。を含むブックマーク 2016年に見て「良かったな」と思った映画から10本を選んでみる。のブックマークコメント


 どうも。あけましておめでとうございます。

 ぐずぐずしていたら、年が明けてしまいました。更新量としては相変わらず微妙ですが、ぼちぼち生きてます。


 毎年言っていることですが、年末にベストを選ぶ段になるとつくづくイイ映画が多いと思う訳ですが、今年は日本映画が席巻した印象の多い年ですね。楽しい映画がいっぱいありましたが、2016年に「出会えた」映画の中から「たった」10本だけ、「あー・・・これはどうしても選びたい」と思ったものを選んで見たいと思います。

 あの映画がない!この映画がない!という方もおりましょうが、ご容赦いただいて、しばしお付き合いください。では参ります。。


10位「殿、利息でござる!」

殿、利息でござる! [Blu-ray]

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感想:勝ったのは百姓!「殿、利息でござる!」 - 虚馬ダイアリー

 仙台藩の吉岡宿で、「伝馬役」という重い課役を少しでも軽減するために、窮乏する藩にお金を貸して、そこから利息を取って賄った実話を元にした、中村義洋監督初時代劇映画。

 士農工商の厳しい身分制度を定めた江戸時代。メインの登場人物は武士階級はおらず、ほとんどが農民階級。武士階級はほんの一握りだった時代にもかかわらず、農民階級の物語は描かれづらい江戸時代において、一揆も起こさず、暴力も使わず、知恵と信念で理不尽な支配階級である武士に一泡吹かせようという、そんな「農民」たちの映画である。登場人物も決して一枚岩ではなく、それぞれに望みやコンプレックス、私欲がありながらも、やがて、ひとりの男が貫いた志に集う。

 ひとりの男が貫いた信念が、様々な人々に伝播し、やがて、支配階級の搾取に対し、一泡吹かせる大計画を成就させていく。さびれゆく宿場を舞台に、刀も持たずに知恵と信念と・・・血の滲むような思いで絞り出した「多くのお金」で立ち向かう。そんなこの映画が私は大好きです。


9位「ビューティー・インサイド」

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 一晩寝ると老若男女問わず姿形が変わってしまう青年が、ひとりの女性に恋をする。そんな奇想天外な設定の、韓国発の恋愛映画。老いも若きも男も女も問わぬ、123人の俳優がひとりの「男」を演じている。

 ふたりは恋に落ちる。好きになったのは「彼」自身だと彼女は言う。けれど「彼」が毎日会うごとに見た目が変わる、なにより彼女自身が「彼」を容姿がまったくの別人になるがゆえに見つける事が出来ない。

 「容姿」が変わっても「彼」の「中身」は変わらない。そのはずである。けれども、中身は同じでも毎日違う「人間」が彼女に会いに来る。彼女の中ではその認知のゆらぎが、そのまま心のゆらぎへとつながっていく。恋愛ってなんだろう。恋するってどういう事?そんな「恋愛」の本質を見る者に問うてくる。実験的でありながらあまりにストレートな、映画でしか出来ない恋愛物語を描ききった作品です。一見の価値ありです。


8位「ズートピア

感想:誰がために世界は成る。「ズートピア」 - 虚馬ダイアリー

 ディズニー映画最新作であり、動物だらけのアニメでありながら、決して「可愛さ」だけの映画でも愉快なだけの映画では無い。

 見た目(種族)に囚われないウサギの新人警官・ジュディと見た目に屈して流されてきた詐欺師の狐・ニックが出会い、動物たちが種族を越えた自由と繁栄と偏見と差別が重なり合う大都会で起こる難事件を追う。田舎でもあった単純な差別が、都会ではより複雑に重なり合って偏在してるという視点が見事。

 アニメーション映画としてのクオリティ、個性的で魅力的なキャラクターたち、娯楽映画としての楽しさもさることながら、差別とは人の心に必ず起こりうる。それを自覚していく事こそが、差別をなくしていくための一歩である。そんな真実を物語を通して伝えきる。なんとも見事な傑作である。

 


7位「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」

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感想:深く高らかに潜航せよ「トランボ/ハリウッドに最も嫌われた男」 - 虚馬ダイアリー

 第2次世界大戦後のハリウッド。赤狩り吹き荒れるハリウッドで、職を失い、仕事を失ったひとりの脚本家・ダルトン・トランボの実話の映画化である。

 脚本家としての職を失った後も決してペンを折らず、偽名を使って「脚本家」として生き抜いてきた彼は、ついに映画史に残る傑作を世に放つ。時代は思想弾圧の真っ只中にあり、時にはかけがえのない友を失いながら、自らの才能を恃みに生き抜いた男が、この映画で最後に起こす逆転劇は、すこぶる爽快である。

 こんな男が実際にいたのだ!そんな驚きに満ちた、「すごい男」の話である。彼が何者で、どのような映画に関わっていたのか、知らない方がより驚けると思いますよ。


6位「映画 聲の形

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感想:ディスコミュニケーション・ベイビーズ「映画 聲の形」 - 虚馬ダイアリー

週刊少年マガジン」に連載された作品を、京都アニメーションが映画化。年末に駆け込みで見て目を泣き腫らして帰ってきた。

 小学生時代に起こしたいじめ事件を引きずりながら、自分は人に関わる資格も、ましてや生きる資格すらもないと絶望を抱えていた主人公が、イジメ事件のきっかけとなった聾唖の少女と再会したことをきっかけに、少しずつ人として再生していくまでを描く。人を傷つけられる痛みを知ったことで、過去に自分が起こした相手の痛みに気づき、そしてそんな自分を「殺す」ことで生きてきた少年が、それでも自分は生きていいのだ、というその端緒をみつけるまでの物語、というところが、自分の琴線に触れた。

 「伝わらない」「伝えられない」ゆえの孤独に痛み、または相手を傷つけるかもしれぬという可能性におびえる少年少女たちが、それでも生きるために支え合おうという落としどころが、とてもいい。恋愛成就して解決、という方向に逃げなかったのも自分の中でかなりぐっときてしまったところです。


5位「ヒメアノ〜ル」

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感想:キミとボク、何が違った?「ヒメアノ〜ル」 - 虚馬ダイアリー

 金も趣味も生きがいもなく茫漠たる日常を生きる青年・岡田は、バイトの先輩に連れられて、先輩が好きな女性を見に行った時に、かつて高校の同級生だった森田くんと再会する。一時期とても仲が良かった二人だが、森田がいじめに遭うようになってから疎遠になっていた。だが、バイトの先輩の思い人である女性とうまく行き、日常に彩りが出てきたその日から、岡田は森田くんから命を狙われる事になる。森田くんは、その女性をつけ回していたストーカーであり、人の命を奪うことを何とも思わぬ「殺人者」になっていたのである。

 この映画は、暴力描写も一切容赦がないにも関わらず、簡単なジャンル分けを許さない映画である。岡田という青年の「日常」と、森田くんの生きる「非日常」がシームレスに世界がつながっているという、吉田恵輔監督の演出力がとにかく圧巻。「日常」と「非日常」が違和感なく移行する映画の「タイトルバック」が出た瞬間は、今も忘れがたい鮮烈さに満ちている。非日常の暴力もあなたのすぐとなりにある、というその視点が徹頭徹尾貫かれている為、森田がなぜ暴力と殺人の螺旋に囚われるようになったのか、岡田が森田くんに向き合い始めた時に知る真実は、そのままストンと観客の心に落ちる。

 岡田と森田くん。彼らふたりは、一体何が違ったろうか。日常を生きる平凡な青年と、非日常な暴力を行う青年。そこにどんな差があったろうか。そう問いかけるかのようなラストは、戦慄しつつも、涙が止まらなかった。


4位「オデッセイ」

 突如起きた砂嵐がきっかけで火星にひとり取り残された宇宙飛行士が、みずからの知恵を駆使してサバイブする様を描いたリドリー・スコット監督作品。

 あらゆる困難を宇宙飛行士としての知恵と、植物学者としての経験、さらに前向きな性格と音楽の力でひとつひとつ乗り越えていくという物語が単純に面白いし、彼の生還のために登場人物全員が各々の立場で考え、行動することで道を開いていくという物語が、底抜けに気持ちがいい。こんなせちがらい世の中だからこそ、時に人の「強さ」、人の「善なるところ」を信じてみたくなる作品というエンターテイメントに出会うというのも、またいいものです。

 この作品は、その点において言えば、物語の壮大さ、作品の規模、脚本と演出、すべてが総合的に優れている。まさに何度でも見たい作品であり、80歳も間近になった監督の作品とは思えぬパワフルさに満ちた大傑作だと思います。


3位「日本で一番悪い奴ら」

感想:勤勉なるものは毒をも食らう。「日本で一番悪い奴ら」 - 虚馬ダイアリー

 柔道で名を馳せ、柔道がきっかけで北海道県警に引き抜かれた、真面目な体育会系青年だった警官が、幅を利かせる先輩に薫陶を受けたのをきっかけに、悪徳刑事としての道をひた走っていくピカレスク・コメディである。

 かつて柔道で大学を日本一に導きながら、馬鹿正直にマジメすぎて刑事としてはぱっとしなかった警官が、一つの「悪いやり方」を教わり、その成功体験を得た時から、その「やり方」こそが正しく、ひいては警察と国民のためになる、という思い込みとともに、「愚直に勤勉にマジメに」悪徳刑事の道を突き進んでいくという物語。彼の「成功体験」の痛快さ、悪徳刑事の手口がひとつひとつ露わになっていく「知的」な面白さ、彼とつながる裏社会の「S」たちとの友情と絆、やがて、それらがすべて「破滅」へと「裏返っていく」物語の哀しさが同居する、奇妙な味わいの「笑って泣けるエンターテイメント」となっていく。

 かつて「機動警察パトレイバー」で後藤隊長は言った。「おれたちの仕事は、本質的にいつも手おくれなんだ。」と。そこを越えて犯罪に関わっていくのは、警察としての仕事の領域ではないと。警察の正義とは「正しい警官」であればこそ掲げられるものである。そんな「正しい警官」としての領域をことごとく踏み外し、しかしそれが「正義であり、ひいては国民のためになっている」と思ってしまうことの「怖さ」。そして、その心を利用している「奴ら」の存在とは。それらを存分に描ききった、「面白うてやがて哀しき」傑作であります。


2位「この世界の片隅に

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感想:世界を遠くに見つめながら「この世界の片隅に」 - 虚馬ダイアリー

 太平洋戦争まっただなかの戦時中に、広島から呉にお嫁に行ったすずさんとその周辺の人々の日々を描いた、片渕須直監督の7年ぶりの新作である。

 公開前から前評判が聞こえてきて、自分も公開されてすぐ見に行って、頭をガツンと殴られたような衝撃を受けて帰ってきた。作り込まれた背景描写と、細やかな日常ドラマ。そしてそして突如すずさんに牙を剥く戦争の暴力。すずさんたちの日常を軽やかに描きながら、背景として緻密に再現された「街」が、「風景」が、その先につながる「世界」、ひいては「我々の時代」までも連なっているような、そんな無限に近い広がりを持った強烈な映画体験を観客に与える事が、この作品の妙味であるとボクは思います。

 見た後しばらく、感想が出てこないという、映画で無ければ出来ない体験をさせてもらいました。泣けるとか泣けないとかね、そんなことは正直どうでもいいですね。こういう簡単には言葉に出来ない作品に出会った時に、どう作品と向き合い、自分の言葉にするかというのが、自分のブログを続ける最大のテーマでありますので、久々に充実した気持ちで感想を書かせて頂きました。作品に出会えた事に感謝です。



1位「ハドソン川の奇跡

感想:私は「仕事」をしただけさ。「ハドソン川の奇跡」 - 虚馬ダイアリー

 2009年に実際に起こった「ハドソン川不時着水事故」について描いた、クリント・イーストウッド監督最新作。

 この映画の主人公であるベテラン機長、チェスリー・"サリー"・サレンバーガー (以下サリー)はこの不時着水事故でハドソン川へと向かい、死者をひとりも出さなかった事から「英雄」として報じられます。しかし、彼の「不時着水」という、ある種ハイリスクな選択は、「国家安全運輸委員会」に問題視され、シミュレーションした結果、さらにリスクの少ない方法があったのではないか、と糺されます。

 この映画は何故ベテランパイロットのサリーが、リスクの少ない方法を採らず、リスクの高いハドソン川の不時着水へと至るのかについて、自問自答しながら向き合っていく映画であります。その中で、イーストウッド監督は、なぜ「奇跡」は起こったのかをひとつひとつ、明らかにしていくのです。


 ひとつの事を愚直に続ける事。そして「当たり前」のことを行うために真摯に向き合い続けること。この映画が導き出す「奇跡」の「種」は、そんなシンプルで当たり前のことである。奇跡というのは捨て身の努力で為すものではなく、その事態に出会った時に「仕事をするべき人」がそこいて「そして適切に仕事をする」ときに初めて起こるものであると。


 この映画を見る前、実は結構映画感想をブログに書くことの意義について考えていたんです。自分はこの映画感想を書き続けて17年になります。結構な長きに渡り書いてきました。しかし、Twitterの台頭で、だれでも簡単に手軽にさっと映画感想を書けるようになりました。自分もTwitterでさっと書くことが苦にならなくなっていましたし、見た後にすぐ書けるというのは大きな利点です。ブログというのは手間がかかるわりには、反応が鈍いメディアですが、Twitterなんかはすぐに反応が返ってきます。長く続けていた事に意味はあったのか。ふと考えてしまっていたのです。

 この映画を見た後、非常に目を見開かれた思いがしました。愚直に一つのことを続けていくことも決して悪いことではないのだと。そして、自分にもまだやれることがあるかも知れぬ。そういう気持ちになりました。奇跡に近道などないと。そんな薫陶をくれたこの映画に、ボクは大変感謝しておるのです。この映画を通して、イーストウッドに力強く背中を押された気持ちがしたのです。

 非常に個人的な理由で申し訳ありませんが、それがこの映画を今年一番の映画に挙げる理由であります。

aq99aq99 2017/01/22 19:52 ご無沙汰でした。2016年ブロガーが選んだ映画ベスト10ができあがりました(ついでに2015年も)。「ヒメアノ〜ル」「日本で一番悪いやつら」「トランボ」「ズートピア」と、多少なりとも琴線に触れたものの、結局見に行かなかったことが、この記事読んでて後悔しきりです。というわけで、今年もよろしくお願いします(今頃なに言ってんだか)。

toshi20toshi20 2017/01/23 17:34 >aq99 さん おおー。お帰りなさいませ!復活おめでとう御座います。やっぱりね、aq99さんのこの企画、ないと寂しかったんですよ。素直に嬉しいです。集計お疲れ様でした。

yanyan 2017/10/12 16:18 かれこれ十数年ブログを拝見していますが、いつも興味深く読ませていただいております。
コメントするのは初めてですが、自分のようなファンもいることをお伝えしたく、書き込ませていただきました。
今後とも無理のない範囲でブログを続けていただけることを祈念いたします。

toshi20toshi20 2017/10/15 09:34 ありがとうございます。ブロガーとしては半分死んでる状態ですが、映画はむしろ前より見てたりするんで、期待しないでお待ち頂ければ、と思います。

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2016年12月15日 ディスコミュニケーション・ベイビーズ「映画 聲の形」

toshi202016-12-15

[][][]「映画 聲の形「映画 聲の形」を含むブックマーク 「映画 聲の形」のブックマークコメント

監督:山田尚子

原作:大今良時

脚本:吉田玲子


 遅まきながら師走も半ばになってからの鑑賞。気がつけば流れ流れてさいたま新都心まで足を伸ばしていた。


ワシの娘がこんなに可愛いわけはない - 虚馬ダイアリー


 以前書いた事があるが、私は京都アニメーションの作品が苦手だった。正直今もそれほど苦手じゃないとは言えない。

 初めて京都アニメーションの存在を認知したのがご多分に漏れずであろうの「涼宮ハルヒ」シリーズなのだが、その時点からすでに苦手意識を持っていて、なかなか心が受け付けなかった。その後「涼宮ハルヒ」にはなんとか慣れてきたものの、苦手意識は変わらず、「らき★すた」などの話題作を出すたびに一応第1話に目を通すが、「ああー。うーん。いいや。」とそこで見るのをやめる。唯一まともに見ていたのはテレビアニメ「日常」くらいのもので、この映画を監督している山田尚子監督作品「けいおん!」にしろ「たまこまーけっと」にしろ、ちょろっと見て「ああー、うーん。苦手だ。」とそのたびに心を閉ざしてきた。

 一度苦手意識を持ってしまうと、どうしても足が遠のく。心が離れる。「映画 聲の形」にしたってがそんな感じである。


 だが、Twitterで公開後しばらく経っても話題が途切れることなく、様々な論争が起こったり、騒動が起こったり、同僚のひとりがいたく褒めていたのも手伝って、ようやく3ヶ月近く経って重い腰を上げたわけである。

 で、見ました。


 結果。大号泣。


 もう油断してたのもあるのだが、完全にツボにはまって泣いてしまった。



主人公が持つ自己嫌悪の壁。

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聲の形(1) (週刊少年マガジンコミックス)

聲の形(1) (週刊少年マガジンコミックス)


 原作漫画は読まずに臨んだのだが、見終わった後速攻で全巻買って読み、色々考えた。

 物語は、主人公の石田将也が小学生時代にひとりの女の子が転校してきたところから始まる。その女の子は耳が不自由な聾唖の子であった。名前を西宮硝子という。

 彼女は手話や筆談でコミュニケーションが出来るが、耳が聞こえない、まともにしゃべれないというハンデから次第にクラス内で浮き始め、からかいの対象となる。女子は無視をしたり、陰口をたたいたりしていたが、彼女に直接ちょっかいをだしていたのは、彼女の「おかしさ」を退屈紛れに興味を抱いた将也だった。しかし、彼女の補聴器を壊した事で彼女の母親が直接学校に抗議をし、将也はいじめの主犯として教室で担任から糾弾され、それがきっかけで次第に彼自身がイジメの標的となっていく。

 かつて一緒につるんでいた奴らからいじめられ、阻害され、孤立した結果、将也は高校生となった時には、周りとの壁を自分からつくっている男になっていた。自分が硝子にしていた過去と向き合えば向き合うほどに、自己嫌悪は募り、やがては自殺を試みようとするまでに至る。そんなとき、彼は硝子と再会する。


 映画を見ていてなにに不意を突かれたのか。それは、傷つけられる痛みを覚えた事で、人を傷つけてきた過去と向き合うたびに、自分には「生きている価値」がないんじゃないか、という主人公が抱えているその感覚が非常によくわかるからだ。自分が自分に戻ることを許せない。自分がこわい。なにより、自分が死ぬほど嫌い。

 自己嫌悪の感情が強すぎるあまりに、そして自分を信じられないがゆえに他者を自ら遠ざけ、近づかない。その将也の感情は、ある時期自分が持っていた感情とすごく似ていた。将也はかつての自分と共有出来る部分の多さに、思わず引き込まれる。

 そんな彼が壁を取り払おうとしたのは、かつていじめてしまった相手、硝子だった。


聾唖という題材と、ディスコミュニケーションというテーマ。

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 この映画、聾唖の人にはすこぶる評判が悪いそうな。それはなんとなくわかる気がする。それは硝子のキャラ造形にある。

 聾唖の人間も普通の人間だ。いじめられればイヤだし、傷つく。しかし、彼女はそのいじめられた将也に対し、拒絶をしない。そのことに対して、聾唖の人たちは当然違和感を抱く。俺達はこんなんじゃない、と。次第に距離を縮めていく中で、証拠は将也にほのかな好意すら抱いていく。


 この映画が聾唖者を扱ったことで、この物語の眼目はむしろわかりにくくなっていたのではないか、と思うのだが、実際の所、俺がこの映画に対してひどく共感していたのは、この映画は「ディスコミュニケーション」についての映画なのでは無いか、ということだった。

 ヒロイン・硝子が聾唖者であることは、ほんのきっかけに過ぎず、実際は「人と人はそう簡単にはわかり合えなどしない。」という事なのでは無いか。

 将也は少なくとも小学生時代、硝子が何を考えているのか知りたいと思っていた。そんな気がする。だから彼自身は無意識にちょっかいを出す。しかし、彼女はそれをおくびにも出さない。何をしても何をやってもワカラナイ。相手の「あるべき感情」が見えない。その事に将也はいらつき、やがて行動がエスカレートする。

 一方硝子は普通にコミュニケーション取れないという事実に、異様なコンプレックスがある。彼女が声を発すると周りが困惑し、時に笑われ、からかわれる。だから感情を見せないし、その事に対し申し訳なく思ってしまう。これは彼女の「性分」なのだと思う。


 「伝わらない」「伝えられない」。

 そのすれ違いがこの物語のすべての始まりなのでは無いかと思ってしまう。それは別に聾唖者には限らない。健常者だろうと同じ事だ。ほんの少しボタンが掛け違っただけで、人は簡単にわかり合えなくなる。それは主人公が直に経験してきた事だ。

 この映画の登場人物達は、どこかでそういう壁を作り、または相手の思いを斟酌せずに「自分の一方的な感情」をぶつけたりする。会話が成立しているようでしていない。わかり合えているようでわかり合えてない。コミュニケーションの難しさ、伝えることの難しさがこの映画の根幹にはあるのだと思う。


 「伝えられない」事の深く暗い絶望は想像以上の闇なのかもしれぬ。終盤にヒロインが起こす「行動」はまさに、それが募ってしまったが故に起こしたことのように思う。

 主人公が物語を通して心の壁を取り払って、今まで聴いてこなかった声を聴く。見てこなかった顔を見る。そして涙をこぼす。

 そこから全てが始まっていく。「生きる価値すらない」と思ってきた人間が、初めて「自分にも価値があると思える」人生が。俺が泣いてしまったのは、多分その「始まり」を共有できたからだと思うのである。大好き。(★★★★☆)

2016年11月30日 2016年下半期感想書き損ねた映画たち

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クリーピー 偽りの隣人」(黒沢清

クリーピー 偽りの隣人[Blu-ray]

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 黒沢清監督作品でびっくりするほど評判がいいにも関わらず、あんまりノレなかった。いや、前半部はかなり期待を持たせる入り方なんですけど、後半がね。語りが雑に見えてしまう。

 この映画のテーマは身近に迫る洗脳の恐怖だと思うんだけど、やっぱりね、実際の洗脳の話を聞いちゃうと香川照之演じる隣人は漫画にしか見えないのよね。そこがどうしても引っかかる。

 はっきり言って「洗脳」された人の実体験、それもテレビのバラエティー番組である「しくじり先生」で辺見マリが語った「洗脳」された実話の方が1万倍恐いので、見てない方はDVD化されたから見られるがよろし。香川照之以上に邪悪な人間はこの世に実在する。(★★★)

INFINITO―辺見マリ写真集

INFINITO―辺見マリ写真集


「葛城事件」(赤堀雅秋

葛城事件 [Blu-ray]

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 うーん。これも周りの評判が良かったのに、びっくりするほどノレなかった作品。テーマとしては三浦友和演じる強権的な父親の抑圧から家族がひたひたと壊れていく過程を描いていくドラマなので、「わかるわかる」と思いながら見ているんだけど(長男パートは痛くわかる)、そこから家族の1人から「大量殺人事件者」が出る、って出口を見た時に、一気に醒める感じがあって、「結局、なんではけ口が見も知らぬ人間なんだ。」という理不尽さへの怒りの方が勝ったかな。「だからなんだよ。勝手言ってんじゃねーぞ!」という気持ちが強い。

 見終わった後、この家族への興味を大分失っていた私なので、この家族の人々に共感を持ち続けられる人には傑作なのでしょう。私の感想は「普通」。(★★★)


レッドタートル ある島の物語」La tortue rouge(マイケル・デュドク・ドゥ・ビット)

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 スタジオジブリと海外アニメーション監督が組んだ作品。ジブリと言えば宮崎駿と思われているけれど、宮崎駿もまた高畑勲の傍流に過ぎぬと言われればまさにそうで、「高畑勲」の天才は、今話題の「この世界の片隅に」まで受け継がれている、日本アニメの源流であるように、本作もまた、高畑勲イズムの流れを汲んでいると思う。

 いやね。なにせ、日本昔話にもいくつかある、人間と他種の動物が結ばれるという、「異類婚姻譚」を全編ほぼサイレント(一応ボイスはあるがセリフがない)本格アニメーションとして真っ向から語りきるという、いくらなんでもそりゃ無茶だろというような企画を押し通すスタイルは、高畑勲の最新傑作「かぐや姫の物語」に通底する「おとぎ話を演出の粋を集めてリアルに語り直す」ような、独特の味わいがあり、見終わった後の「面白かったけど!面白かったけど無茶を押し通したな!」という、気持ちが強い。

 こういう「自分の物差しだけでは到底出てこない作品」との出会いは、それだけで嬉しくなってしまう。私は好き。(★★★★)


「ソング・オブ・ザ・シー」Song of the Sea(トム・ムーア)

SONG OF THE SEA

SONG OF THE SEA

 こちらもまた、非常に暖かみのあるアニメーションでありながら、北欧のセルキー神話というあざらし絡みという独特の話をモチーフとした、お国柄を感じさせるアニメーション。

 海ではアザラシ、陸では人間となる妖精がモチーフとなっているため、最初「え?なにこの設定?」と思うものの、その設定だけ受け入れてしまえば、妹・シアーシャ(可愛い)の為、家族のために奮闘するお兄ちゃんの少年に共感すること請け合いであります。全編絵本のような映像と、ケルト音楽を下敷きとした非常に美しい音楽も素晴らしく、もっと話題になってもいい秀作でありました。(★★★★)


ゴーストバスターズ」Ghostbusters(ポール・フェイグ

 問答無用の人気シリーズ、男女逆転で帰ってきた話題作。うーん、面白かったな。オリジナルを撮ったアイバン・ライトマン監督が製作に加わってるのもあってか、オリジナルの雰囲気を損なってないまま、うまくアップデートしていた気はする。

 で、感想としては、話題となった男女逆転の女性キャラたちよりも、男性秘書を演じるクリス・ヘムズワースのバカキャラっぷりがすべてをさらっていった印象で、この辺は「頭悪い女=かわいい」としてきた従来の映画への皮肉と捉えるべきなのかも知らん。それにしても「男目線でみても相当リアリティがないけど魅力的なバカ」というキャラ造形へのもやもやは、かつて女性たちが男性優位の映画を見た時に感じてきたものなのかと思うと、「申し訳なかった!」と思わされるねえ。スタッフロールまでクリヘム、ノリノリで、彼が主演と言っても差し支えはなかった。(★★★★)



グランド・イリュージョン/見破られたトリック」Now You See Me 2(ジョン・M・チュウ

 「グランド・イリュージョン」の完全なる続編。しかも前作を見ている事が前提の作劇のため、ヒットには結びつかなかった印象。前作は年間ベストに入れたくらい大好き。手品をモチーフにした綱渡り系エンターテイメント。

 個人的な感想としては前作の方が好きだが、この映画のテーマである「物事の認知は一つではない」というテーゼは貫かれているので、シリーズとしてのぶっとい幹はそのままに、無茶な大仕掛けを仕掛ける話はきらいじゃない。ただ、大味かつ無茶な物語を演出の力で押し切った前作に比べると、今回はちょっと演出の勢いが持続しきれなかった印象で、大仕掛けのネタ晴らしもちょっとノリきれなかった感じはする。

 ただ、最後のオチは前作を見ていると「ああ!そういう事なのか!」と思えたので、そこそこ満足して劇場を出た。第3作もやるそうだけど、大丈夫なのか。(★★★☆)


「超高速!参勤交代リターンズ」(本木克英)

超高速! 参勤交代リターンズ [DVD]

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 前作はびっくりするくらい好きだったので、公開後すぐに見に行ったけど。こちらは前作の勢いを大きく落としてしまった。前作は参勤交代の「上り」なので江戸に近づくにつれ、チャンバラも異様に盛り上がっていったのだが、今回は参勤交代の「下り」。国許で起こる騒動の為、国盗りレベルのチャンバラなんか起こした日にはお家断絶される江戸時代、騒動をどう収束させるのかがクライマックスのメインになってしまったのは、残念。シナリオとしては真っ当だけど、チャンバラ時代劇映画としては勢いが削がれてしまった。(★★★)


「怒り」(李相日)

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 評判に後押しされて見に行って、こちらは大号泣。泣きはらして帰ってきた。その後のネット上の賛否は意外と分かれていた気がするけど、1人の男の一滴の「怒り」が生み出す波紋のドラマを渾身の演出で描き出した、大力作。特に宮崎あおいと広瀬すずは素晴らしかった。宮崎あおい演じる、純粋に恋人と結婚したいと願い続けた女が一瞬の疑念に迷う、その表情を映し出したその「画」はぞくっとした。あのシーンがこの映画の白眉。この画を見れて本当に良かった。(★★★★☆)


「隻眼の虎」(パク・フンジョン)

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 大傑作「新しき世界」の監督最新作が「ワールド・エクストリーム・シネマ」という「一日一回、一週間限定単館上映」という、驚きの小規模で公開。本当にさあ、最近の韓国映画への冷遇ぶりはどうにかして欲しい!

 日本占領下の朝鮮で、日本軍からの要請で、一線から退いた猟師親子と、人喰い虎の闘いと絆を渾身の演出で描いた映画なのだが、後半あっと驚くハートフルな展開を見せるのがびっくりである。この辺、徹底して酷薄な展開を期待する向きにはかなり賛否分かれるんであろうが、映画の惹句「殺戮だけが本能か?」という文句に嘘は無かったので、俺は嫌いじゃないです。(★★★★)


「オーバー・フェンス」(山下敦弘

 「そこのみにて光輝く」などで知られる佐藤泰志の函館三部作の最後の一本の映画化。主演のオダギリジョーは相変わらずの凪の海のような独特の存在感。躁うつの女性を蒼井優は熱演しているのだが、正直言って痛々しさが先に立つ。山下敦弘監督のリアリズム演出の地力はさすがで安心して見られるのだが、「そこのみ」ほどのじりじり感が沸き立ってこなかったのが正直なところで、ひとつひとつのパーツはすばらしいのに、それが物語としてひとつにまとまらなかった印象。映画って難しい(★★★)


永い言い訳」(西川美和

永い言い訳 (文春文庫)

永い言い訳 (文春文庫)

 人を寸鉄釘で刺すような人間観を描かせたら日本随一の監督・西川美和監督最新作は、バス事故で妻を亡くした小説家と、一緒に亡くなった妻の親友の家族とのふれあいを描く。

 人間観の鋭さはそのままに、「それでも人は人でしか救えない」という希望のような暖かさを醸し出す西川監督の新境地。逝った側の話ではなく、あくまで遺された側の話で、彼らの無様な右往左往と、それでも生きていかにゃならん人間が手を取り合う尊さが同居する。

 面白いのは主人公を小説家にすることで、実際に自分が書く「理想とする作家像」と「無様な実像」に対して主人公が自覚的な事で。それゆえに長くコンプレックスにとらわれて来たのが、妻の死から始まる出来事を通して緩やかに溶解していく過程をも描いていて、そこがすごく共感できた。

 主人公は長く自分しか見てこなかった。他者を見なかった。だから妻が何を望み、何を考えていたのかも知らない。しかし、その後悔を抱えればこそ他者を見たときにその「愚かさ」に気づきもする。他者は自らの鏡。それに気づいた時、主人公は他者のために本気になれるようになる。

 自分の愚かさに気づき、自分の間抜けさを悔い、失った痛みに今更のたうったところで妻は帰ってこない。けれど、そんな今の自分だからこそ、救える他者もいた。自暴自棄に刹那的な主人公の奥底に眠る深く暗い絶望が、希望へと変わっていく過程を丁寧に織り込んでいる。まったく見事。大好き。(★★★★☆)


「ケチュンばあちゃん」(チャン)

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 東京国際映画祭で鑑賞。「アジアの未来」部門に出品された韓国映画。

 済州島に住む海女を営むケチュンばあさん(ユン・ヨジョン)は、最愛の孫・ヘジと仲良く暮らしていたが、ある日、買い物に出かけた際、ヘジを誘拐されてしまう。

 十数年後、警察から連絡があり、長く行方不明だったヘジ(キム・ゴウン)と再会できたケチュンばあさんはとても喜び、孫との共同生活を再開する。ヘジは、幼い頃好きだった絵の才能を開花させつつあり、ヤン・イクチュン演じる美術教師に才能を見いだされ、ついにはソウルで行われるコンクールに出品するが・・・。


 まったく事前情報がない状態で、見るまでここまで仕掛けだらけの話とは思わなかった。実に「韓流エンターテイメント」の粋を集めたような映画で、びっくりした。とにかく「泣かせ」の仕掛けの連打で「うわ!うわ!うわ!」と思いつつ見てた。ボクは普段、そういう映画にはあんまり感心はしないんだけど、本作はそこにひとつ、ぶっとい幹の「愛についての哲学」を滲ませていて、そこにひどく感心した。ケチュンばあちゃんの生き方が、その映画の仕掛けと相まって、非常に味わい深い映画になっていたので、日本公開決まればいいな、と思います。大好き。(★★★★)


 

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2016年11月29日 戦火は消えぬがゆえに。「戦争映画ベスト10」

toshi202016-11-29

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戦争映画ベストテン - 男の魂に火をつけろ!

ワッシュさんの「戦争映画ベスト10」に参加します。





戦争映画ベスト10

1:ピカドン(1978年 木下蓮三/木下小夜子)

2:激動の昭和史/沖縄決戦(1971年 岡本喜八監督)

3:イノセント・ボイス/12歳の戦場(2004年 ルイス・マンドーキ監督)

4:二百三高地(1980年 舛田利雄監督)

5:高地戦(2011年 チャン・フン監督)

6:硫黄島からの手紙(2006年 クリント・イーストウッド監督)

7:ノー・マンズ・ランド(2001年 ダニス・タノヴィッチ監督)

8:火垂るの墓(1988年 高畑勲監督)

9:セデック・バレ(2011年、ウェイ・ダーション監督)

10:スターシップ・トゥルーパーズ(1997年 ポール・バーホーベン監督)



1位「ピカドン」

ピカドン PICADON

ピカドン PICADON

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 ホラー映画ベストテンにも投票したんだけど、改めてこちらでも投票。いやもう、実は「この世界の片隅に」を見た後に真っ先に思い出したのはこの短編アニメーション映画でね。私が見たのは小学生低学年の頃に、区民児童上映会で「はだしのゲン」と同時上映で見て、数十年経っても忘れ得ぬトラウマを刻んでくれた作品。裏「この世界の片隅に」ともいうべき、「生活者たちが一瞬にして地獄に叩き込まれる」作品で。俺はもう核の是非を問う議論をする前に是非一度、世界中の人たちがこれを見ておくべきなんですよね。

 私みたいにね、こういうトラウマアニメーション映画とか、広島の被爆者たちの怨念の塊ような絵本とか、「はだしのゲン」のような漫画を幼少期に見ているとですよ。もう、戦争に対する憧れなんて口に出来なくなりますよ。地獄はすずさんたちの遠景のすぐ向こう側にあるんですよ。本当に、あったんですよ。

 真面目な話、兵士でなく、民間人がこんな目に遭わされたという事実は、日本人は決して忘れられちゃならんのです。「反戦メッセージを直接的に描くべきじゃない?冗談じゃねえ、バカヤロウ!」と思いますね。



2位「激動の昭和史/沖縄決戦」

 最近になって、大変衝撃だったニュースがある。

教科書に沖縄戦「集団自決」 10年ぶり復活 日本史最大手の山川出版 | 沖縄タイムス+プラス ニュース | 沖縄タイムス+プラス

 沖縄戦で民間人が集団自決した表記が10年ぶりに復活。ってことはさ、10年もの間、本土の学生たちは沖縄で民間人が集団自決したことを学校で学んでないって事かい?マジかい?俺はね、情けなくて情けなくて。Twitterで思わず沖縄の人に謝っちゃったよ。申し訳ないことだよ。そりゃあ、沖縄の人が決して忘れがたい無念を日本人が知らないはずさね。酷い話だ。

 太平洋戦争末期、沖縄で何が起こったか。「日本のいちばん長い日」の岡本喜八監督が、豪華キャストで描き出す本作は、圧倒的火力差の米軍に追い詰められた日本軍と民間人がどのように戦ったかを描き出す、戦争映画の大傑作である。若者こそ見るべきだ。そして、太平洋戦争唯一の本土決戦の場となった沖縄の方々が、どのような目に遭ったか。その一端だけでも感じて欲しいのである。


3位「イノセント・ボイス/12歳の戦場」

イノセント・ボイス~12歳の戦場~ [DVD]

イノセント・ボイス~12歳の戦場~ [DVD]

 1980年代の内戦下のエルサルバドル。そこでは政府軍に12歳で徴兵される。

 普通に生活している場所に銃弾が飛び交う。そんな場所で父が去った一家を支える11歳の少年。やがて来る、12歳の誕生日。少年はひとつの決断を迫られる。

 兵士は横暴の限りを尽くし、心ある大人は迫害を受け、殺されていく。そんな地獄と背中合わせの町にも一日一日があり、生活があり、喜怒哀楽がある。力強い生をスクリーンに映し続ける彼らにもやがて、過酷な運命が待っている。

 戦争は日常のすぐそばで起こっている事の衝撃。子供でいられる時期すら奪われる少年達の過酷さ。こんな現実が世界にはいくらでも転がっているという事を改めて突きつけられる作品である。


4位「二百三高地」

二百三高地 [Blu-ray]

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5位「高地戦」

(追記していきます。)