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2015年11月30日 2015年下半期感想書き損ねた映画たち

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「野火」(塚本晋也

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 大岡昇平氏の小説「野火」の、市川崑監督に次ぐ2度目の映画化。

 これについてはですね。正直言えば書きたかったんですけど。ただ、メインで上映されてる間は書けなかったんですよね。作品の評判がいいのなら、まずこの映画の動員の邪魔になるような事は書けないな、という気持ちが正直あった。

 まず、前評判が非常に高くて、見てみて非常に塚本監督が非常に情熱を傾けて作っているのはわかったし、自主製作でここまでのものを作るってのはすごい!とは思ったんです。力が入ってるし、向かい合ってる題材もまさに「今こそ作るべき映画!」なんだと思うし。それにね、こういう一兵士の視点で戦争の中にある地獄の風景というものは、若い子が見て、なにかを得て帰ってほしいな、って気持ちもあるわけです。だからまず、多くの人が見るベキ映画だとは思ったんです。

 でも。ボクは正直なところ、前評判で期待しすぎたのか。「あれ?」と思ってしまったんですよね。感想を書くならその事をボクは書かないわけにはいかないから、映画感想自体を書かなかった。

 なんていうんですかね。個人的な事を言うと悲劇が「くるぞくるぞくるぞ・・・・キター!」というのがある程度読めてしまうというか、映画への没入から「ふっと」醒めてしまう瞬間が、何度か訪れるんですよね。この題材ならもう、見終わった後の現実の風景が、見る前とまるで違う!というほどの没入を期待してしまっていたわけです。それが塚本監督独特のカットを細かく割るあの独特の演出を含めて、「あ、これ映画なんだ。」と思ってしまうようなところが、ふっと訪れてしまう。そうなると割と冷静にこの映画を眺めてしまっていたわけです。

 でもそれはね、個人の感覚の差であると思うのだけれど、ボクは個人的にノリきれなかった事は「申し訳ない」と思ってしまいました。それほどの力作です。(★★★)


極道大戦争(三池崇史

 ヤクザバンパイアに噛まれたらみんなヤクザになる、という世にもキテレツな設定で突き進む、ヤクザと吸血鬼モノのハイブリッド娯楽映画。

 三池崇史監督が原点に返ったようなパワフルさを取り戻した、旺盛な突破力とバカバカしさに満ちた、ジャンル映画という枠をも突破する快作にして怪作。まー徹頭徹尾熱く、そしてくだらないというのがまず良いし、ヤクザ映画、ゾンビ映画、カンフー映画、怪獣映画など、どんなジャンルでも面白ければなんでもぶち込むんでぐつぐつ煮込んで「食える奴だけ食え!」と観客の目の前に叩きつけるそのいい意味での遠慮のなさ、粗さ、突き抜け方が「三池崇史は死なず!」という宣言をしているようで、見ていて非常に嬉しかった。その分眉をひそめる人が多いのもわかるけど、上映時間中目をランランに輝かして見ていた。「ああー楽しかった−!」と心から言える作品である。大好き。(★★★★☆)


「バケモノの子」(細田守

 獣人・熊徹に育てられた男の子・九太の冒険を描く、細田守監督の新作。

 いや、題材としては好きなんですよね。獣人の熊徹と人間である九太の疑似親子の物語自体はすごく好みだし、師弟関係でありながら、教え教えられるという間柄になる過程なんかは心おだやかに楽しんでいたのだけれど、まーとにかく人間界パートから登場するヒロインがねえ。うっざい。いや、まあ、細田守のヒロインってどこかしらそういう「ウザさ」みたいなものをデフォルトで抱えてきてる部分はあったんだけど、今回のヒロインの楓はちょっと許容範囲を超えてきた。なんでこんなにイライラさせられたのか。

 獣人界パートで完結した方が個人的にはキレイにまとまったのでは無いか、という気持ちは強いかな。ヒロインを「人間界における九太の師匠」的な立ち位置にしたかったのかもしれないが、小学校にも通ってない少年が一から字を覚えて最後は大検まで受ける、みたいな展開はちょっと主人公補正にしても無理矢理過ぎるし。別に大学に行かないでも身を立てる方法はありそうなものだけれども。

 あと、人間界と獣人界をわりと出入り自由な世界として描いたのは何故なんだろうな。獣人界では人間が「心の闇」を抱える存在として恐れられる割には、人間がいつでも迷い込みそうな感じにしてしまった意図がよくわからなかったりなど、わりと納得のいかない世界設定。ま、それを含めて気になる点は多々あれど、熊徹と九太の関係性は楽しめました。いっそヒロインがいなければ良かった(まだ言うか。)(★★★)



「悪党に粛清を」The Salvation(クリスチャン・レヴリング)

 兄と共にデンマークからアメリカに入植してきた男が、7年目にして妻子を呼び寄せるが、乗合馬車で家に向かう途上で妻子を殺され相手を撃ち殺した事で、加害者の兄である街に巣くう悪党と対峙することになる西部劇。

 シンプルな復讐劇のように見えて、油田開発に絡み心をねじ曲げてしまった悪党、保身に走り悪党の味方をする住人、使えるモノはなんでも使い、身を伏せながら冷徹に敵を殺していく元兵士の主人公。この映画が描くキャラクターたちの人間観は決してシンプルじゃ無い。

 怒りを内面に押し殺して悪党に対して冷徹に復讐を行っていくマッツ・ミケルセン、かつては善人だった男が変質し屈服されてきた事への反攻を開始するエヴァ・グリーン。人を変えるのはなんなのか。悪とはなにか。善人とはなにか。そして復讐とはなにか。

 善悪が簡単に反転する人間という生き物をつぶさに捕らえた脚本が、完遂されながらも復讐の虚しさとともにあるラストへと続いていく。救済という原題が、逆に皮肉にも映る、皮相な人間観に貫かれたデンマーク発(南アフリカオールロケ)の激シブ西部劇である。大好き。(★★★★)


ナイトクローラー」Nightcrawler(ダン・ギルロイ

ナイトクローラー [Blu-ray]

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 面白かった。人間、仕事というフィルターが入ると、ある程度人を残酷に扱えるようになるという、人間の真理を描いていて、ちょっとそこが空恐ろしくなる。主人公は事故や事件のスクープ映像を狙うパパラッチなわけだけど、彼は職業人としては驚くほど優秀な人間であるのだが、そこに一切の人間としての善悪の彼岸を軽々と越えて行動する。しかし、仕事を離れてしまえば普通に喜怒哀楽のある朴訥とした人間であるという、その描き方がある意味徹底していたせいか、そこまでこころざわつかずに最後までするするっと見れてしまった。なんていうんだろう、「お仕事映画」というジャンルとして見れてしまうというか。

 主人公はサイコパスというよりも「ソシオパス」という部類に入るのだろう。職業として動くときに限り、一切の善悪に頓着しなくなる。それは多かれ少なかれ職業人が持っている特質ではあるが、それが度を越えて「いや、それはないわー。」なところまで描いているが、不思議と後味は悪くない気がするのが本当にね、びっくりした。ブラック企業とはこうして生まれていくのであるなという、ひとつの雛形としても見られる。大好きとは言いがたいが、興味深かった。(★★★★)


「カンフー・ジャングル」一個人的武林(テディ・チャン)

 一門の名声を上げるための私闘で相手を殺した罪で服役していた、元警察の指導武官だったハーハウ・モウ(ドニー・イェン)が、武術界の精鋭を狙った連続殺人の捜査協力のために仮釈放され、担当捜査官のロク警部とともに犯人を追う。その恐るべき犯人の正体とは。

 これは素晴らしかったです。アクションに次ぐアクションのつるべ打ちながら、物語してサスペンスとアクションへとつなぐバランスが見事で、見ていて飽きさせない工夫がなされていて、なおかつ主人公が「愛なきカンフーは殺人技だ!」という境地へと至る物語が、「伝統ある香港アクション映画を次代へ繋いでいきたい」という熱い思いと祈りとともに描かれている。クライマックスの車がびゅんびゅん走る高速道路上での対決をはじめとした、超絶アクションの数々に震えながらも先達への深い感謝にあふれたスタッフロールには「まだまだ香港アクション映画は死なないぞ!」という熱い宣言のようにも見え、時代劇が作られなくて久しい我が国の状況を見ると、羨ましくもあるのです。大好き。(★★★★☆)


コードネーム U.N.C.L.E. 」The Man from U.N.C.L.E.(ガイ・リッチー)

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 「0011/ナポレオン・ソロ」のリメイク、と知らずに見に行って大変面白かった。東西冷戦下のアメリカとソ連の共通の敵、ナチスの残党に核技術の流出を防ぐために、双方のえり抜きスパイふたりが手を組む。その二人の名はナポレオン・ソロとイリヤ・クリヤキン。仲良く喧嘩しな。

 「後は若い者同士で」ってお見合いかよ!みたいなソロとイリヤの引き合わせから始まり、協力するけど馴れ合わない、適度な距離感で丁々発止する個性真逆な米ソスパイコンビの掛け合いや、ナポレオン・ソロが相手の組織の女ボスをたらし込む一方、イリヤと科学者の娘の「少年漫画のラブコメか!」的な恋愛模様を展開するとか、あえて冷戦時代というわかりやすい敵味方の時代の共通の敵との対決というシンプルな構造で、老若男女問わずそういうあらゆるニーズに応える展開を用意している感じのシナリオが面白い。

 物語の構図自体はシンプルながら、米ソのなぜガイ・リッチーがこの映画を監督するのかが判明するまで、実にスマートな映画に仕上がっていて楽しめました。あと、Twitterで関連が指摘され話題になってた「エロイカより愛をこめて」を読んだ事がないので、とりあえず電子書籍で読み始めた事をご報告しておきます。大好き。(★★★★)

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