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2015年12月31日 映画は死なないよ。2015年映画ベスト10

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 どうもです。今年も終わりますね。更新量としてはやや落ちてますが、ぼちぼちとやっています。

 しかし・・・今年の豊作ぶりは異常ですね。毎年ベストはどうしようかと思ってるんですが、体感的に見る映画見る映画、ベスト級に面白い映画の頻度が高すぎじゃないですか?もちろん、鑑賞量は格段に上がってるわけではないので、見逃してる映画も多いはずなんですが、それでも、今年は10本選択するのに「え・・・?これも外さなきゃならんの?」というような事態にはなってます。

 その中で思い入れがあるもの、これだけは入れなきゃ!というものを詰め込んでみました。「あれがないじゃない!」「これもないじゃない!」という不満もありましょうが、ご容赦ください。



10位「皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇」

 今年見た映画の中で、一番ガツンと頭をぶん殴られたような衝撃があった。

 麻薬戦争の渦中に巻き込まれた、メキシコの都市シウダー・フアレスのドキュメンタリー。アメリカと目と鼻の先の国境沿いの都市なんですよ?なのに、そこにあるのは底なしの地獄。麻薬組織が産業と政治、そしてドラマや音楽などの文化にまで入り込んで影響力を強めていく様子、そして彼らが引き起こす殺人事件がなんの捜査もされぬまま、闇から闇へと葬られていく現状が、これでもかと描かれていて、劇場で見終わった後、ちょっと世界の見え方が変わるほどのショックがあった。この世には俺達の想像と理解を超えた地獄が、まだまだあるのだ。映画はそれをすくい上げることが出来る。映画ってすごい。


9位「百円の恋」

百円の恋 [DVD]

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 厳密には去年公開なんですが、今年の元旦に最初に見た映画なのでこちらでランクイン。

 安藤サクラの圧倒的演技力、そして30過ぎのニートで引きこもりダメ女が、家を出て恋をし、だけどボロボロにされ、ボクシングにのめり込んで立ち上がっていく日本女性版「ロッキー」というドラマ性がとにかく良い。今年は本家「ロッキー」シリーズの新作「クリード/チャンプを継ぐ男」も公開され、なかなかの秀作でしたが、ドラマとボクシング絡め方、安藤サクラの肉体的なリアリズム、何よりリングに立てるギリギリの年齢で目覚めた女が成長し、立ち上がるまでをこれほどまでに泥臭く描いたこちらの方に軍配を上げたい。話も演技も、見ている者に痛さが突き刺さるボクシングドラマである。


8位「恋人たち」

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感想:「選ばない」ことを選ぶまで。「恋人たち」 - 虚馬ダイアリー

 2008年にベスト1に選んだ「ぐるりのこと。」の橋口亮輔監督7年越しの長編新作。

 性格がちょっと傲慢なゲイの弁護士四ノ宮、乾いた日常を送る雅子妃ファンの主婦・瞳子、突然理不尽に妻を殺された男・アツシ。それぞれのドラマを無名の俳優を据えて、よりそれぞれの中に眠る「感情」を引きずり出していくドラマ。それぞれに突き刺さるドラマなのだが、監督自身の経験も織り込んだアツシパートはとにかく圧巻。弱者に決して優しくない社会で突き放されてきたアツシの中に、とぐろを巻いていく絶望をこれでもかと描き出し、それでも人を救うのは人なのだという、人のぬくもりと希望を決して手放さない、その暖かな監督の目線が、この映画をより深いものにしている。

 今、殺伐とした時代の中で、この映画はその処方箋たり得るのではないか、と思えるほどの傑作。


7位「あの日のように抱きしめて」

感想:愛は不死鳥。されど飛び立つ。「あの日のように抱きしめて」 - 虚馬ダイアリー

 「東ベルリンから来た女」のクリスティアン・ペツォールト監督の新作。今年見た中で最も鮮烈なラストシーンがあるとするなら、この映画のラストだとボクは思う。

 第二次世界大戦終戦後のベルリン。ナチスの強制収容所から奇跡的に生還したものの、顔に大けがを負い、再建手術を施されたヒロインは、それでも心の支えだった愛する夫と再会するが、夫は彼女に気がつかずに遺産目当ての偽装夫婦になろうと提案してくる。ヒロインはそれでも過酷な地獄でも思い続けた夫との逢瀬にときめいていくが、ついに彼女は夫が隠し続けてきた、ある真実にたどりついてしまう。

 彼女の決意がこもった、愛する夫の伴奏で「スピーク・ロウ」を高らかに歌うシーン。ここがとにかく完璧。ぐわっと心を持っていかれる。youtubeで何度も何度もそのシーンだけ見て、思い出し泣きするくらい好きである。本年度ベスト・エンディングだと思う。


【関連リンク】

「あの日のように抱きしめて」ラストシーン動画(当然ネタバレにつき、本編鑑賞後の視聴推奨。)

Speak Low performed by Nina Hoss @ Phoenix (spoiler alert) - YouTube

 


6位「幕が上がる」

幕が上がる [DVD]

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感想:アガレ☆未開幕少女「幕が上がる」 - 虚馬ダイアリー

 平田オリザ原作の同名小説を、本広克行監督がももいろクローバーZ主演で映画化。

 ももいろクローバーZは「普通に好き」というぐらいのテンションで見に行ったにも関わらず、アイドルとして彼女たちの歩んできた道程と、劇中の演劇の呪いのような魅力に決意を持って進んでいく姿が、見事なまでにシンクロすることによって、ここまでの深い陶酔をもたらす映画になるのかと驚きと感動を覚えた。なんかね、「訳もなく涙が止まらない」という状況をもたらされるとは想像だにしていなかったので、とにかくびっくりした。本広克行監督が真摯に追いかけてきた、「演劇と映画の融合」がももいろクローバーZというアイドルが加わることで、高い次元で完成された、アイドル映画としてもエポックメイキングな傑作。

 


5位「マッドマックス/怒りのデス・ロード」

感想:残酷な俺が支配する。「マッドマックス/怒りのデス・ロード」 - 虚馬ダイアリー

 これほ今年最も熱狂をさらった映画であり、どうせみんなベストに選ぶんでしょ?と思いつつ、それでも!それでもやっぱりベストに入れないわけにはいかないと思ったのは、この映画が「世界の酷薄さ」に対して、どこまでも真摯であり続けた傑作であるからである。これほどまでに馬鹿馬鹿しいほどの狂騒を描いた娯楽映画であるにも関わらず、「この世界に行ってみたい」とは微塵も思わせない所は徹底している。つまり僕らがこの映画に対して心置きなく興奮するのは、スクリーン1枚隔てた「酷薄な世界」でいつ終わるとも知れぬ「生」を爆発させている姿を見ているからに他ならない。

 僕らは彼らを救えないし、僕らは彼らにはなれない。だが、彼らの「生」にはまばゆい輝きを見る。だから、みんな惹かれていくのではないかと思う。


4位「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」

感想:私を探し出して「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」 - 虚馬ダイアリー

 予告編で話題をさらったノンスタント飛行機宙ぶらりんアクションがまさかの映画のつかみに過ぎなかったという、みんな大好き「ミッション:インポッシブル」最新作。いや、この映画嫌いな人、いないでしょ?最高ですよね。ボクも大好きです。

 今回の話を引っ張るレベッカ・ファーガソン演じるヒロインがとにかく魅力的。常にトム・クルーズの上を行く、敵か味方かわからない、謎めいた魅力もさることながら、人として女として組織人として揺れ動きながら、イーサン・ハントとプロフェッショナルとして対峙し続ける、その硬質さに心打ち抜かれる。もちろん、「インポッシブル」なアクションに挑戦し続けるシリーズの質も一段と高まっており、アクション・ドラマ・ヒロインすべてがシリーズ最高を更新した、最高傑作だと思います。


3位「私の少女」

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感想:あなたの全部をだきしめて 「私の少女」 - 虚馬ダイアリー

 韓国の至宝・ペ・ドゥナと、「冬の小鳥」「アジョシ」の天才子役・キム・セロンがともに存在感を発揮する、チョン・ジュリ監督長編デビュー作。

 左遷されたエリート警察官が、派遣された村で出会う一人の少女。家庭内暴力、性的マイノリティへの偏見、外国人の不法就労問題など社会的問題にも目配せしつつ、描かれるのは、自分を理解してくれるたった一人の存在、その大好きな女性を救うために行う、一人の少女のあまりにも果断な決断とその顛末である。

 シンプルな物語構造ながら、展開を二転三転させつつ、やがて驚くべき結末へと導かれる物語を、新人監督が撮り上げてしまう韓国映画の底力を感じずにはいられない傑作である。


2位「グローリー/明日への行進」

グローリー/明日への行進 [DVD]

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感想:拳なき決戦「グローリー/明日への行進」 - 虚馬ダイアリー

 黒人差別撤廃のために戦い続けた、アメリカを代表する非暴力の偉人、キング牧師と、それに関わる人々の苦闘を描いた作品。

 キング牧師の人生ダイジェストにすることなく、あえて「血の日曜日」事件から「セルマ行進」へと至るまでの地道で孤独な戦いを続ける、まだ30代の「一人の男」としてキング牧師を見つめている。決して清廉なだけではいられない、キング牧師のメディアを利用する戦略家としての顔、大統領に根回しする政治家としての顔も描きつつ、非暴力によって黒人達に「当たり前の権利」をもたらす為の、「暴力を用いない喧嘩」を続けるキング牧師。

 暴力ではなく、非暴力不服従による抵抗運動を選んだ人々。あえて、偉人伝としてではなく、社会を変えるための「公民権運動」という戦い、その究極の「ミッション・インポッシブル」に挑み続けた人々の物語として描き出す視点が見事。謂われ無き差別、暴走する権力に対して人は立ち上がり、そして暴力なしでもそれらを止め、社会の仕組みを変えることが出来る。いや非暴力だからこそ、である。「偉人伝」ではなく、今の日本とも決して無縁ではない、本来の「当たり前」を得るための戦いを描いた「人間ドラマ」である。

 


1位「花とアリス殺人事件」

花とアリス殺人事件 [Blu-ray]

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感想:ぼくたちは、おんなのこ「花とアリス殺人事件」 - 虚馬ダイアリー

 岩井俊二監督が、「花とアリス」の前日譚をアニメーション映画化した作品。

 なぜ1位にしたか、と言うと、ボクはこの映画がアニメーション映画において、エポックメイキングな大傑作であると思っているからです。


 みんなアニメ映画と言えば、絵空事を描くジャンルだと思ってるけど、日常を描いてもいいわけです。以前、ワッシュさんの企画に乗っかってアニメ映画ベストテンについてのエントリを書きました。そこで1位にした映画は、テレビアニメを再編集した高畑勲監督の「劇場版 赤毛のアン/グリーンゲーブルズへの道」なんです。これは別にウケを狙って選んだわけでもなく、大マジなんです。


【関連リンク】

虚馬ダイアリー的アニメ映画ベストテン - 虚馬ダイアリー

「赤毛のアン/グリーンゲーブルズへの道」感想:スタンダードサイズの魔法 - 虚馬ダイアリー


 映画館に特化してないスクリーンサイズ。しかもスタンダードサイズであるにも関わらず、高畑勲の編集によって劇場アニメとして映画館のスクリーンで見るテレビアニメ「赤毛のアン」。しかし、これが驚くほど「映画」として引きつけられた。なぜなら、高畑勲の演出が完璧だからなんです。作画がキレイとか、キャラクターデザインがどうのとか、話が地味とか、そういうことではなく、天才監督が選りすぐったスタッフ*1とともに全力で作ると、テレビアニメですら劇場で見てもなんら違和感がないどころか、きちんと映画にすらなるってことです。

 「花とアリス殺人事件」もまた、演出の完璧さが映画の骨格を形作ってる映画なのです。高畑勲の天才を引き継ぐ存在が、まさか実写映画出身監督から現れようとは思いもしませんでした。


 実は「花とアリス殺人事件」は、今年一番見ている映画で、劇場では2回ほどですが、Blu-rayはもちろん、itunes storeでも購入して繰り返し繰り返し見てる。常にiPadに保存してあって、いつでも見られるようにしてあるくらい好きなんです。そして、スキあらば見ています。繰り返し見ても飽きません。

 映画としては派手な見せ場もなく、基本的に地味です。アニメ専門監督でもないので作画が崩れてるところもある。でもなんの問題にも感じないし、圧倒的に面白い。

 岩井俊二監督はもともと「理想とする画」がきちんと見えてる人なんですね。だから、女子の演技でも身振り手振りで細やかに実演できるんです。中学生の「花」と「アリス」の演技すら、です。監督自身がおっさんから少女にまでなりきれる。

 そんな監督がアニメーション映画を作る。その事で、岩井俊二の演出はより理想の画に近づいていくわけです。アニメ出身の若手映画監督たちよりも、もっとも「リアルアニメーション映画」の神髄に近いところにいるというのは、皮肉だともおもうけれど、まさにこの映画はそれを証明してると思うのです。間違いなく今年を代表する傑作だと思っています。

*1:場面設計:宮崎駿! キャラクターデザイン:近藤喜文