ブリッジ・オブ・スパイ

“男たちは、それぞれの「大儀」に身を投じた。”

スパイの映画ですが、ミッションインポッシブルや007とは全く違います。
冒険活劇要素は無く、描かれるのは冷戦時代の社会と、捕らわれたスパイがどのような扱いを受け裁かれるかということ。

ベルリンの壁」というものの存在を知ったのはおそらくその崩壊の時で、子供心に漠然と、それが遠い国で起きた、大きな良き変化であるらしいとだけは受け止めていたと思う。
(あと、壁の破片がそれなりの値段で売買されていたという話題とか)
本作では、その壁が築かれた時の世の中について触れることができて、おぼろげに記憶に残る「ベルリンの壁崩壊」がもたらした歓喜の意味を噛みしめることができた。

終始抑えたトーンで進むシリアスな物語の中で、トム・ハンクスの味が非常に生きていると思います。
個人的にラストは素晴らしい名シーンだったと思うのですが、紛うことなき「くたびれたおっさんの寝姿」に、あれほど平和の尊さを感じて涙することがあるとは思わなかった。
あれは本当に彼ならではだと思います。

ドタバタやドンパチやユーモア要素よりも、歴史に興味があって、人や社会の在り方を追求する作品を観たい方におすすめ。良作だと思います。