「裁判所は、シェル石油に損害を与える抗議を許可する」


 大修館書店の「辞書のほん」というフリーペーパー(だよね、黙って持って帰っちゃったけど)があって、それに小野博さんがちょっとおもしろいことを書いていた。

 「アムステルダムは小さなレジスタンスにあふれている」という記事だ。

 街角に、「シェルをとめろ 北極圏を守れ」というメッセージの印刷されたグリーンピースのステッカーがあちこちに貼られていて、彼らは巨大な垂れ幕をシェル石油の本社に掲げたり、給油タンクにテープを貼って使えなくしたり、かなり過激な活動をしていたらしい。

 もちろんシェルは即座に抗議をやめるようにグリーンピースを訴えたが、アムステルダム裁判所が出した判決は、なんと「抗議活動は合法」というものだった。理由は、北極開発は地球規模の重要事項であり、それに対して200万人以上の市民が署名によって異議を表明しているのにもかかわらず、シェルはその民意を無視して計画を強行するのだから、非民主的なシェルに対してグリーンピースが一定の損害を与える抗議活動をすることを裁判所は許可するというものだ。そのきわめて明快で、風通しのいい判決文を読みながら、オランダってちゃんと自分の頭で考えている大人が沢山いる国なんだなと改めて感じた。

 みよ、このまともさ。シェルは結局、北極圏での石油採掘を断念した。

 電気代不払いもがんばらなくてはね!

 そういえば、脱原発署名も700万筆を超す今日この頃・・・。


大修館書店「辞書のほん」第8号 2013年冬号
アムステルダムは小さなレジスタンスにあふれている」小野博
http://www.taishukan.co.jp/item/jishonohon/mokuji.html

グリーンピースの声明
 Dutch court grants Greenpeace right to stage peaceful protests against Shell
Press release - October 5, 2012
http://bit.ly/QzYyPA
http://www.greenpeace.org/international/en/press/releases/Dutch-court-grants-Greenpeace-right-to-stage-peaceful-protests-against-Shell/

ちなみに英国では1996年、兵器工場施設に女性活動家たちが侵入し、トンカチで戦闘機の計器類などをたたき壊して約150万ポンド(約3億円)の損害を与え、逮捕・起訴されましたが、一審裁判で4人全員が無罪になりました。確か、大量殺戮を未然に防止する正当な行動だ、という判決理由だったと思います。検察側は負けると控訴できないのでそのまま確定しました。
これは「プラウシェア」と呼ばれる行動ですが、これやグリーンピースのアクションに比べて日本での抗議行動はきわめて穏やかなものですが、警察・国家権力の横暴さ、人権を守らない司法、黙っているメディアは目に余ります。