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武蔵野日和下駄  このページをアンテナに追加

2008-12-31 栄養学の歴史

[][] 『栄養学の歴史』 島薗順雄著 (発行朝倉書店1989/5/25)  『栄養学の歴史』 島薗順雄著 (発行朝倉書店1989/5/25)を含むブックマーク  『栄養学の歴史』 島薗順雄著 (発行朝倉書店1989/5/25)のブックマークコメント

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 時折、ピンチヒッターとして台所に立つ男にとっては、グルメを志向する豪華レシピか、簡単を旨とするインスタント食品か、どちらにしても長期的展望とは縁がないわけだから、空腹を満たすか、招待客をうならせるか、栄養のバランスなど気にする方が野暮というもの、括弧付きの<趣味の料理>を娯楽として楽しめばいいと言うことになる。

 だが、家事としての料理となると、少し事情が違ってくる。美味しいことも大事だが、食べる人の健康管理の一環として栄養のバランスを考えながら、家計にしめるエンゲル係数も気にして、調理時間の配分を増やしすぎないように日々の食事を作るという、戦略的思考が少し必要になってくる。

 特に栄養学についての知識がないと、指針になる基準がなくて、何をどの程度食べたらいいか、途方に暮れることになる。そこで栄養学について調べ始めると、栄養学の世界もまた、とてつもなく広くて深い。朝倉書店から出ている「現代人の栄養学」という叢書は、何と全18巻、気の遠くなるような世界が広がっている。参考のためにその表題だけ引用してみよう。

1巻 栄養学総論/2巻 栄養学各論/3巻 臨床栄養学I/4巻 臨床栄養学II/5巻 公衆衛生学/6巻 健康管理概論/7巻 公衆栄養学/8巻 栄養指導論/9巻 給食管理/l0巻 調理学/11巻 食品学総論/12巻 食品学各論/13巻 食品加工学/14巻 食品衛生学・微生物学/15巻 解剖生理学/16巻 病理学/17巻 生化学/18巻 運動生理学

 栄養学も研究者レベルになると、凄いもんだなと感心するやら、怖じ気づくやら、複雑な感慨をおぼえる。私たちが必要とするのは、もう少し次元の低い、生活の糧となるような栄養学的知識、今回、ふと気になったのは栄養学についての文化史、人はどのようにして、栄養についての知識を発見し獲得してきたのかという歴史的な過程に興味がわいた。

 なかなかぴったりくる本が見つからなかったが、ようやく図書館でたどり着いたのが本書、読んでみると記述は教科書的だが、内容豊かな得難い良書、知りたい事柄を簡潔に記述してスッキリしている。栄養学の講座の概論風のテキストのような感じで、面白くも可笑しくもない記述だが、わかりやすさは抜群、読みやすい取り扱い説明書のような文体と言えばお分かりいただけようか、私は、この記述が気に入った。面白く書かれた栄養コラムも楽しいが、直球勝負のテキスト風記述にも捨てがたい味を感じた。

 非常に分かりやすい構成の工夫が凝らされているので、列挙してみよう。

 。云呂ら4章までが、先史時代から近代化学が目覚めるまでの、いわば栄養学の前史にあたる部分、西洋文明と東洋文明の生命観の移り変わりにともなう栄養的な認識の変遷を意識的に整理してあり、簡潔で非常にわかりやすい。この部分の知識がほしかったので、もう少し踏み込んでほしかったが、あまりデータのない時代のことなので、この程度でも十分に満足。

 ■犠呂ら7章までが、近代栄養学が明らかにしてきた三大栄養素。脂質、炭水化物、タンパク質などについての発見の歴史、栄養素の働きなどに触れて詳しく近代栄養学の足跡をたどる。小中の家庭科で学習した栄養の知識が、総括的に記述されていて懐かしいが、発見のプロセスが詳しいので興味深い。

 8章から12章までは無機質やビタミンなどを含め、現代の栄養学に到達するまでの、知識の蓄積の過程をより詳細に跡づける。私には、やや専門的すぎて読むのが辛い部分だった。物質の固有名詞がほとんどカタカナ表記なのがきびしかった(苦笑)。

 ぃ隠馨呂ら15章までは栄養学の実践的周辺領域とでも言うべき、現在の食育基本法につながる社会的な関連事項が、歴史的にまとめられている。

 イ泙拭⊇蝓垢某擁小伝と題するコラムが、18本配置されて、主要人物の業績がまとめられて興味深い歴史読み物になっている。記述は、これも人名辞典のようにきわめて真面目、冗談のかけらさえない。

 最後に、文献紹介、人名索引、事項索引、略語索引がついていて使いやすい体裁となっている。

 大きな章立てがどうなっているか、目次を引用しておこう。

1 先史時代の食生活

2 古代の生命観から生命の科学へ

3 東洋の生命観と本草学

4 近代化学の成立

5 三大栄養素の化学

6 三大栄養素とエネルギー代謝

7 三大栄養素の消化と利用

8 タンパク質の栄養価

9 無機質の栄養

10 ビタミンの発見

11 ビタミンの種類と作用

12 栄養素の必要量と摂取量

13 病態栄養と治療食

14 日本における栄養関連科学の導入

15 日本における栄養学の実践と推進

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2008-12-27 今年のミステリー小説ベスト10

[] 今年のミステリー小説ベスト10  今年のミステリー小説ベスト10を含むブックマーク  今年のミステリー小説ベスト10のブックマークコメント

 朝日新聞の今日の文化欄に、「ミステリー小説 主なベスト10」と題する記事が載っていた。代表的な4つのベスト10の特徴を紹介しながら、ジャンルとしてのミステリーの売れ行き不振傾向と、作家と作品の多様化を最近の特徴として締めくくる内容だった。

 ネット上で探してみると、ミステリー好きのベスト10マニアがいて、過去のデータをアップしてくれているサイトがあった。

<宝島社 「このミステリーがすごい!」1988年〜2009年度版ベスト10一覧リスト>と題するサイトhttp://dvd.or.tv/Bookstore_Konomisu.html

<『週刊文春 傑作ミステリーベスト10』ランクイン作品一覧>と題するサイトhttp://www5a.biglobe.ne.jp/~t-konno/bunshun.htm

参考になって大変に有り難かった。ざっと眺めると、ミステリーにも時代の雰囲気というか世相を反映する傾向があるような気がした。歌謡曲の流行は色濃く時代を反映すると言われているが、人気商品のミステリーにも同じことが言えそうで、ミステリーベスト10の変遷も楽しい。

 今年のベスト10には、まだ読んでいない本が多いので、図書館で借りようとしたが、さすが人気作品、どの本も予約が集中していて、借りられるのは何ヶ月か先になりそうな気配、昔、人気作家のある新作には貸本屋でも順番待ちがあったことを思い出した。

 新刊紹介のルールに、発行から2ヶ月以内の作品を<新刊本>とするルールがあるという話を耳にしたことがある。次々と新しい面白そうな本が誕生し、次々と古くなって忘れられてゆく、この出版物の奔流。ベスト10の背後に一体どれほどの浮かび上がることのなかったミステリーが累積していることだろうか。

 今日の記事を眺めたりしながら、奇妙な感慨がわき上がってきた。最後に、紹介されていた今年のベスト10を引用しておこう。

「このミステリーがすごい!」2008BEST10国内編(07年11月〜08年10月)

.粥璽襯妊鵐好薀鵐弌次憤忘箙太郎、新潮社)

▲献隋璽ー・ゲーム(柳広司、角川書店)

4袷肝愛(牧薩次、マガジンハウス)

す霰髻別かなえ、双葉社)

タ契こΔ茲蝓糞志祐介、講談社/上・下)

Εラスの親指(道尾秀介、講談社)

Ч百合(多島斗志之、東京創元社)

┿核發稜,嗤うもの(三津田信三、原書房)

ディスコ探偵水曜日(舞城王太郎、新潮社/上・下)

ラットマン(道尾秀介、光文社)

「週刊文春」2008ミステリーベスト10国内部門

々霰

▲粥璽襯妊鵐好薀鵐弌

ジョーカー・ゲーム

ぅ薀奪肇泪

ダ蚕の救済(東野圭吾、文芸春秋)

Υ袷肝愛

Щ核發稜,嗤うもの

┨百合

新世界より

カラスの親指

「ミステリが読みたい!」ベスト・ミステリ2008(日本部門07年10月〜08年9月)

.粥璽襯妊鵐好薀鵐弌

∋核發稜,嗤うもの

9霰

ぅラスの親指

イそろし(宮部みゆき、角川書店)

Ε薀奪肇泪

Я衙澄文渊粛魑久、PHP研究所)

┘献隋璽ー・ゲーム

もう誘拐なんてしない(東川篤哉、文芸春秋)

ディスコ探偵水曜日

トーハン年間ベストセラー行本・文芸(07年12月〜08年11月)

[星の絆(東野圭吾、講談社)

∪蚕の救済

ガリレオの苦悩(東野圭吾、文芸春秋)

じい隼笋10の約束(川口晴、文芸春秋)

イ里椶Δ両襦箆妥栂機⊂学館)

L change the WorLd(M、集英社)

Э堂かたつむり(小川糸、ポプラ社)

┘粥璽襯妊鵐好薀鵐弌

私の男(桜庭一樹、文芸春秋)

おそろし

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2008-12-26 三浦家の元気な食卓

[][] 『三浦家の元気な食卓』 三浦敬三、三浦雄一郎、三浦豪太著 (発行昭文社2005/1)  『三浦家の元気な食卓』 三浦敬三、三浦雄一郎、三浦豪太著 (発行昭文社2005/1)を含むブックマーク  『三浦家の元気な食卓』 三浦敬三、三浦雄一郎、三浦豪太著 (発行昭文社2005/1)のブックマークコメント

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 100歳の現役スキーヤー、故三浦敬三さんの本を紹介して、もう少し敬三さんの食事について知りたくなり、図書館でこの本を見つけた。きれいなグラビア満載のビジュアルな料理本の一種だが、三浦家二世代の食事が紹介されていて楽しく読めた。とりわけ、100歳の高齢で一人暮らしをしながら健康を維持していた敬三さんの食事の記事が充実していて、とても参考になったので紹介しよう。

 <これが私のオーソドックスな食事>というキャプションがついた1枚の写真に注目した。この1枚が、敬三さんの食事の全てを語ってくれていると思うので、画像を引用しよう。下の画像がそれ。

 三浦敬三さんの食事で凄いのは、一人暮らしの自分のために、全部自分一人で判断して自分で手作りしていること、基本的な食事を人任せにして、文句を言う以外に芸のない、現代のお父さんには真似のできないその自立ぶりから学ぶことは多い。自分の身体から必要な物を聞きとって、自分のために心を込めて料理を手作りするという姿勢の中に、敬三さんの生き方のエッセンスがある。自立とはこのような生き方のことを言う。

 三浦敬三さんの食事のポイントは以下の通り。

“芽玄米のご飯、白米に比べて栄養を評価すると格段の違いがある。

季節の野菜をたっぷり入れた具たくさんの味噌汁。

3ち靂爐篶于色野菜を使った沢山の常備菜。

ワンプレートに沢山の常備菜を乗せた色鮮やかな盛りつけ、敬三さんの言う食のバランスが一目で分かる。私は、この3点がしっかりしていることに何よりも感心した。

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他にも学ぶことは多いので、以下に目次を引用する。ご覧になって興味をもたれた方は、是非手に取ってご覧いただきたい。雄一郎さん、豪太さんの食事やトレーニング法もなかなか興味深い。有名になったエベレストのキムチ鍋も詳しくでています。

夢を追いかける 三浦家のファミリーアルバム

Message 三浦敬三/三浦雄一郎/三躾蒙太

《百歳現役スキーヤー、三浦敬三の食卓》

多彩なおかずと発芽玄米ご飯、特製みそ汁が私の健康のもと

栄養の宝庫、発芽玄米を自分で作り、主食にしています

丸ごとすべて食べる敬三流筒単おいしい圧力鍋料理

 鶏の丸炊き/参鶏の丸炊きからの展開料理/鶏のソーメンチャンプルー/鶏のサラダ

 参鶏の丸炊きさえあれば、こんなごちそうも簡単にできます/鶏のテリーヌ/煮魚にも圧力鍋が犬活躍します/サンマの煮物/参よく食べるキクラゲも圧力鍋で煮ています/キクラゲの煮物

 毎日のおかずに多用している「煮干しの粉」は手作りです

海藻類や縁黄色野菜はおかずの材料に欠かせません

 ひじきとしいたけの煮物/ピーマンと豚ひき肉の炒め物

季節の野菜たっぷりの特製みそ汁

 根菜類のみそ汁/きのこのみそ汁/ 青野菜のみそ汁

発酵食晶の王者、納豆は毎日欠かさず食べています

 そぼろ納豆/キムチ納豆豆腐

三浦家の特製ドリンク

 敬三特製ドリンク・雄一郎特製ドリシク

特製の手作り茶葉で入れるお茶

 柿&いちじくの葉茶・いちょうの葉茶

デザートはあずきあん。楽しみと健康食を兼ねて煮ています

 あずきあん/あずきあんからの展開デザート/あずきチョコケーキ/フルーツのグラタン

《70歳でエベレスト登頂の、三浦雄一郎の食卓》

極限を乗り切る体力と頑張りを生む

 自然の恵みたっぷりの食生活

 野菜を簡単にたくさん食べたいときには

 ジンギスカン鍋/牛すね肉ときのこの朋子流特製カレー/カキのスペシャルグラタン/サンマと大根と昆布の煮物

 柔らかな焼き上がりのローストビーフ/アスパラの牛因巻き/テールスープ/豚肉、春雨、白菜の煮込み

 ワカサギのマリネ/アボカドとソーメンのサラダ/ひじきとコンニャクの煮物

 わかめとトマトのサラダ/なすとみょうがのサラダ

エベレスト登頂を支えた食事はあつあつの鍋料理

栄養満点で温かく、昧は極上の三浦流エベレスト鍋

 エベレスト鍋の基本はキムチ鍋/エベレスト・ミウラ隊特製のキムチ鍋の作り方

 鍋の最後の楽しみは、ご飯を入れてのキムチ雑炊

 參キムチ鍋の基本のだしで作るエベレスト鍋のバリエーション

 辛みそ鍋/トムヤムクン鍋/トマトスープ鍋/カレー鍋

《祖父敬三と父雄一郎に学ぶ》

三浦式トレーニング・三浦豪太/[敬三篇]トレーニング/[雄一郎篇]トレーニング

《三浦家に学ぶ長寿で健康を実現する食事の摂り方・金谷節子》

 腰や手首の関節を若返らせる食事

 血管の若さを保つ法

 噛むことと呑み込むこと

 皮膚の若さを保つために

 良好な睡眠が健康をつくる

 よき排泄で免疫アップ

 三浦家の元気な食卓

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2008-12-21 日溜まりに満開の山茶花

[] 日溜まりに満開の山茶花  日溜まりに満開の山茶花を含むブックマーク  日溜まりに満開の山茶花のブックマークコメント

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 武蔵野の野に花が少なくなるこの時期、サザンカだけがいつも元気に花をつけるので、寒さに強い品種なんだと思いこんでいたが、やはり日光と暖かさが好みと見えて、ある農家の庭の片隅で、たっぷりと日差しを浴びて、絢爛と咲き誇っているのを見つけた。日陰になる裏側を確かめてみたが、花も蕾もほとんどつけていないばかりか、葉の数もまばら、別に日陰が好きなわけではなく、この時期に花をつける性質なんだと、当たり前のことを納得した。 (画像をクリックしてオリジナルサイズを表示して見てください、見事なサザンカです)

 住まいの近くにも気に入ったサザンカの遊歩道があるが、車の交通量が増えたせいか、最近は何だか元気がない。排気ガスに強いので車道脇に植えたのかと思っていたが、今日の画像のように、排気ガスの影響を受けないところの方が元気がいい。常緑樹の気孔にとって、やはり排気ガスは健康影響が無視できないのだろう。 サザンカは花の時期が長いので、しばらくの間、武蔵野の自然の彩りとして、景観のアクセントになってくれて有り難い。

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2008-12-20 武蔵野の雑木林の冬景色

[] 武蔵野の雑木林の冬景色  武蔵野の雑木林の冬景色を含むブックマーク  武蔵野の雑木林の冬景色のブックマークコメント

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 仲間と一緒にやっている雑木林のゴミ拾いボランティアに行って来た。古い大型のテレビやバッテリー、引っ越しで発生したらしい衣類混ざりの家庭ゴミ(子どもの服を含む)など、たった2時間ばかりの作業でも、軽トラックの荷台が溢れんばかり、人目がなければ何をやっても恥じることのないこの国のモラルに驚くやら呆れるやら。

 武蔵野の雑木林の景観は、心ない人々の不法投棄によって、無惨な姿になりかねない現状にある。毎月1回のゴミ拾いをしていて、やはり一番多いのは空き缶、空きペットボトルなどの、自動販売機由来の品物、売ることを最優先して後の始末を考えないメーカーと一時の簡便さを享受するだけで、後始末を考えないで捨ててしまう消費者、何とかならないものだろうか。目を転じてあたりを見回せば、武蔵野の雑木林の素晴らしいたたずまいが広がっている。


全ての葉っぱを落としてしまった骨組みだけの裸の木々と、

地面を覆い尽くした一面の落ち葉、

今日のように風のない晴れた日には、

冬の雑木林は遠くまで見渡せる透明な光に満たされる。


木々の影が、無数の日時計となって

落ち葉の上を音もなく時を横切ってゆく。

何という安らぎに満ちた静けさ。

この道をどこまでも歩いていきたい。


冬の雑木林の道の向こうに

黒く蹲った墓地が見える。

墓石の上に降り注ぐ

暖かみのない眩しい日差しに目を細め

墓の脇を影のようにひっそりと通り過ぎる。

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2008-12-19 100歳、元気の秘密

[][] 『100歳、元気の秘密』 三浦敬三著 (発行祥伝社黄金文庫2004/2/20)  『100歳、元気の秘密』 三浦敬三著 (発行祥伝社黄金文庫2004/2/20)を含むブックマーク  『100歳、元気の秘密』 三浦敬三著 (発行祥伝社黄金文庫2004/2/20)のブックマークコメント

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 つい5年ほど前には、三浦敬三さんが我が家のヒーローだった。NHKの人間ドキュメントと言う番組で、 「99歳の現役スキーヤー・モンブラン氷河に挑戦」を見て吃驚したのがはじまり。99歳まで元気に生きておられると言うだけでなく、現役スキーヤーとして海外遠征にチャレンジ、しかもモンブランの氷河の滑降だなんて、にわかに信じられない光景だった。

 冒険家三浦雄一郎さんの父親にして、長寿の元気なおじいさんとして、時折メディアに登場するお姿を拝見して、言うことなす事、しっかりしていて格好良く、家中で人気者になっていたのである。残念なことに2006年に亡くなられた。

 今回は、その三浦敬三さんの生き方を紹介する本を推薦しよう。直筆の文章なのか、どなたかが取材して構成されたのか分からないが、余計なところのない簡潔で文意のよく通る文章なので、とてもわかりやすく、全く年齢を感じさせない不思議な文体である。

 文章の鑑賞はさておいて、書かれてある内容が、平凡ではあるが奥が深い。100年を生きて来し方を振り返る位置に立っているせいか、スケールの大きさは半端ではない。しかも、長い生涯の蓄積を、非常にうまく整理して再構成してあり、きわめてわかりやすい良書に仕上がっている。

 第1章は、趣味と仕事が渾然一体となったスキー人生の総括、還暦以降の業績がすごいので、引用してみよう。

・還暦(60歳)雄一郎さんのキロメーターランセの応援を機会に海外初遠征。

・古希(70歳)エベレスト最大の氷河、シャングリ氷河を滑降

・喜寿(77歳)家族でキリマンジャロ登頂及び滑降

・傘寿(81歳)オートルート前半滑降

・米寿(88歳)オートルート後半滑降

・卒寿(90歳)ヴァレーブランシュ滑降

・白寿(99歳)3世代にてヴァレーブランシュ滑降

 この話を読んで、私もスキーではないが何か他のことで、年齢の節目になるようなイベントを企画してみようと言う気持ちになった。元気でなければ出来ないようなプランを立て、そこを目標に心と体を鍛えるというのは面白い。これが第1の元気の秘密。

 第2章は「食事法」、栄養学的に見て、とても良くできているのに吃驚した。高齢者の身体には、おそらくリスクをカバーする余力がほとんど残っていないだろう。毎日の食事で補給してゆく栄養が、即ち生きる力に他ならない。カルシウムと食物繊維と必須ミネラル、栄養のバランス、見事な食生活をご覧いただきたい。これが第2の元気の秘密。

 第3章は、体力を維持する独特のトレーニング法、個々のメニューの具体例もさることながら、「見かけの体力」と「本当の体力」の発想に感服した。トレーニングを積み重ねて磨き上げた体力こそが、「本当の体力」というのは、現役アスリートの発想ではないか、この発想とその工夫に満ちた実践は見事。これが第3の元気の秘密。

 第4章の病気や怪我とのつきあい方、とりわけ医療機関や医者とどうつき合うか、自分の体内に眠る自然治癒力によせる程良い信頼感が素晴らしい。誰でも真似できることではないが、治すのは自分の身体という見極めは見事、参考にしたい。奥さんを介護する下りが、胸を打つ。これが第4の元気の秘密。

 第5章は、ささやかな家族自慢、三浦ファミリーの緩やかな結束の秘密、敬三さんの人付き合いの巧さがしみじみと感じられる。締めくくりの言葉として<自然とともに>という科白に、何ともいえない説得力を感じた。老人と子どもは、自然とともに生きるのが、正しい生き方ということになるだろう。自然とともにが第5の元気の秘密。

 最後に、本書の目次を引用しておこう。

   父、三浦敬三は、なぜいつまでも元気なのか 三浦雄一郎                    

1章 明治・大正・昭和・平成―100年を健康に生きる―

   80年前、「八甲田の樹氷」が決めた運命

   「1年の半分」をスキーに費やす日々

   体力維持を真剣に考え始めたのは「50歳」

   なぜ、「山スキー」に魅了されるのか

   雄一郎が連れていってくれた「ヨーロッパ・アルプス」

   古希、喜寿、傘寿……節目の年に目標を立てる

   「人間の寿命」は何で決まるのか

2章 体の中から元気になるための「食事法」

   便秘も治る、完全食「玄米」

   噛むほどに甘みが出る

   30分で、骨まで食べられるようになる「圧力鍋」

   なぜ「キクラゲ」は不老長寿の食べ物なのか

   各地のおいしいものを食べる楽しみ

   「保存のきく料理」を第一とする理由

   一ロずつ、たくさんの種類を食べる

   食事の最後に食べる「潰け物」のおいしさ

   お茶は「葉っぱごと」いただく

   朝晩の食後には、特製ドリンクを

   簡単に作れる「酢タマゴ」

   黒髪を保ち、シミを防ぐ

   食生活で一番大切なことは何か

3章 何歳からでも始められる、元気な体をつくる「簡単体操」

   老人には、老人に合ったトレーニングがある

   首の運動で、「惚けない頭」を維持する

   「顔の肌」の張りと若さを保つ「口開け運動」

   寝起きに「頭をすっきりとさせる」呼吸法

   「加齢による難聴」は、進行を遅らせることができる

   体操で大切なのは「ゆっくりと、徐々に強く」

   お尻と下半身の筋肉をどう鍛えるか

   スキー体操で、「滑る筋肉」をつける

   ウオーキングに、速歩、ジョギングを組み合わせる

   体の要求には、素直に耳を傾ける

   「脈拍」で健康をチェックする習慣を

   「見かけの体力」と「本当の体力」

4章 避けられぬ怪我・病気とどうやって前向きにつき合うか

   「お医者さんとのつき合い方」を決めた、ある経験

   接骨院に通うのをやめた理由

   徐々に体を動かせば、たいがい治る

   70歳で、娘のために行なった「無理」

   自分で決めた「ギブスをはずす時期」

   肺浸潤、骨祈、白内障、前立腺肥大……

   90歳を過ぎてからの大怪我

   「年を取ってからの長期入院」の怖さ

   80歳、倒れた妻を「痴呆」にした入院生活

   絶望的な「介護の日々」

   葬儀の日、介護疲れを救ってくれた「一杯の日本酒」

   自分の「体の力」を信じて

5章 家族との「健康的な」つき合い方

   冬が大嫌いだった少年時代

   子供、孫へと受け継がれる資質

   父から受け継いだ「凝り性」

   「陸軍の払い下げスキー」の思い出

   「自分の手」で工夫する日々

   戦時中でもやめなかったスキー

   雄一郎にスキーを教えたことは一度もない

   「無理に」させてもいいことは何もない

   今でも「一人暮らし」を続けている理由

   「好きなことだけ」を続ければいい

   熟年世代でも疲れない「山の登り方」

   「第二の人生」は、「余生」ではない

   いくつになっても、わからないことはある

   実はスキーは、熟年者にもっとも適したスポーツ

   頑固であれ、柔軟であれ

   最後まで、白然とともに、自然体で生きる

ru-jiru-ji 2008/12/29 19:26 良い本をご紹介いただきました。早速図書館より借り出しました。私のブログにも紹介させて(写真入り)いただきました。
これよりの生活指針になりました。感謝申し上げます。

toumeioj3toumeioj3 2008/12/30 11:05 ru-ji 様
コメントありがとうございます。
拙い雑文をお役立ていただけたとのこと、嬉しいです。
定年後の生き方を手探りで模索しながら
気がついたことをブログに書き留めている毎日です。
お気づきのことがございましたら
何なりとお聞かせください。
良いお年をお迎えください。

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2008-12-16 石田徹也―僕たちの自画像―展

[] 石田徹也―僕たちの自画像―展』インプレッション  『石田徹也―僕たちの自画像―展』インプレッションを含むブックマーク  『石田徹也―僕たちの自画像―展』インプレッションのブックマークコメント

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 穏やかな冬晴れの日和になったので、練馬区立美術館で開催されている石田徹也展に行って来た。2005年に不慮の事故に見舞われ31歳の若さでこの世を去った石田徹也は、数奇な運命にもてあそばれた画家の一人に入るだろう。生前は、いくつかのコンテストで入賞していたものの、その膨大な作品群を正当に評価される機会に恵まれず、遺族が作品の始末に困り、廃棄する目的で制作した遺作集がきっかけになって注目を浴び、多くの人に知られるようになった。

 かく言う私も、TVの紹介で眼にして遺作集を見ただけで、これまで原画は見たことがなかった。それでも気になる面白い絵を描く画家だという言う認識を持ちつついつか原画を見たいと思い続けてきた。 (画像の左手の階段を上ったところが美術館の入り口)

 今日、初めて原画を見てみて、想像していた以上に絵自体に力があるのに驚愕した。写真製版では分からなかったが、多くの作品は予想していた以上に大きく、画面からせり出してくるような表現力の圧力を感じた。個人の居宅のリビングなどに飾って、所有者の心を慰めるような絵ではない。会場の大きな壁にまとまった数の作品を展示して大きな空間を囲み、石田徹也独自の世界として丸ごと鑑賞すべき性質の作品だった。

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 ,海糧術館がおそらく初めて<自画像>という言葉をコピーとしてつかったのではないかと思うが、石田徹也の絵は、誰がみてもその全てが彼の自画像であることは、間違いない。これまでに描かれた大多数の自画像と違うのは、現代という特異な状況の中に囚われている自分の自画像を時代とともに描きだしていることだ。かつて実存主義の哲学が、人間存在を《世界=内=存在》として捉え、身の回りのあるがままの日常的な生活の細部を現象学的に克明に描き出していたことを思わず思い出した。

 ∪佚津位蕕粒┐蓮現代青年の実存を捉えた、きわめて今日的な絵画だ。僅か10年足らずの創作活動だが、2000年頃を境界にして作風が前期と後期に分けられる。自画像の周辺に配置する現代社会を暗喩するイメージが、ストレートで単一なまとまりを持っているのが前期、単一なまとまりを破り、複数のモチーフを幾重にも寄せ集め、時間的にも空間的にも複雑な広がりを持つようになってきたのが後期、この後期の作風でさらに大きな大画面描いた鏡の乱反射のような大作を見てみたかった。

 L気なねだりだが、あと10年元気だったら、おそらくこれまで誰もが見たことのないようなとんでもない現代人の自画像が見られたのではないだろうか。西洋絵画の大作を見ていると、画面のどこかに画家自らを描き込んだ自画像ならざる自画像によくお目にかかる。ベラスケスの<ラスメニーナス>しかり、ゴヤの<カルロス4世の家族>しかり、宮廷画家の《世界=内=存在》は、宮廷という状況に内在するほかはなかったが、宮廷を喪失した現代の画家は、人間性を疎外する現代的な状況そのものを一種の<宮廷>として生きるほかに術がないのだ。その意味で、石田徹也は、現代の自画像画家であると位置づけるのがふさわしい。この美術館はいいところに着目したので、このポイントをもう少し掘り下げた展示を工夫するともっと良かったのではないだろうか。<僕の自画像>ではなく<僕たちの自画像>としたところがとても良い。

 ぜ画像の周辺に描き出された、いろいろな物象の細部にこだわった克明で緻密な表現が素晴らしい。どこか汚れたり錆びたり壊れかけたりしていて、本来の機能に支障を来しているような、機能不全感のある哀れな物象に何とも言えない哀感が滲む。自画像の男の子の表情の乏しい空虚な眼と併せて、隅々まで細部を見つめて、自分なりの発見を楽しむ見方をお勧めしたい。

 石田徹也は、とにかく原画を見なければ、分からない。今月28日までやっているので、是非実物をご覧いただきたい。

 以前にも石田徹也のことを書いたことがあるので興味のある方は以下のURLをクリックしてみてほしい。http://d.hatena.ne.jp/toumeioj3/20061216

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2008-12-15 官能小説用語表現辞典

[][] 『官能小説用語表現辞典』 永田守弘編 (発行ちくま文庫2006/10/10)  『官能小説用語表現辞典』 永田守弘編 (発行ちくま文庫2006/10/10)を含むブックマーク  『官能小説用語表現辞典』 永田守弘編 (発行ちくま文庫2006/10/10)のブックマークコメント

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 新刊書店をぶらついていて、いつの間にか<官能小説>と呼ばれるコーナーが空間を確保し、だんだん領地を拡大していることが気になっていた。以前に<エロマンガ評論>について書いたとき、<エロの壁>について触れたが、ビデオショップでは、暖簾で仕切られてアダルトビデオが大きな空間を占拠している。書店でも何だかそこだけ別の世界でもあるかのように、目に見えないベールのようなものを感じて気になっていた。

 今回は、個々の官能小説作品ではなく、表現領域として独立したジャンルを形成している官能小説の<表現の次元>をのぞいてみるために、格好の参考図書を見つけたので紹介したい。古語辞典の宣伝文句をもじって言えば、<用例全訳>ならぬ、用例の長文引用が本書の特徴、どんな場面でどんな風に活用(笑)されているかが分かるように工夫されているところが面白い。類書に柴田千秋という人が編纂した「性語辞典」というのがあるが、そちらの方は語彙数では遙かに勝っているが、用例の質量では、本書の方が充実している。官能表現は、語彙の意味よりも、その使用例の方が興味深いのではないだろうか。

 以前に国際線の機内で、深夜の退屈を紛らわせようと本書を読み出して、目がさえて困ったことがあった。末尾に解説を書いておられる重松清さんの説明にもあるように、官能小説の値打ちは読書の<感動>にあるのではなく<興奮>にこそあるのであり、その表現が目指すところは狭くて明快、紛れようがない。煎じ詰めれば官能小説の価値もそこにある訳で、その目的を達成するための言語表現の創意工夫が物凄い。日本語がもっている表現機能を駆使して、隠喩暗喩の技法はもとより可能な限りの<興奮>をめざす表現方法の多様さには、眼を見張るものがある。

 例えば大項目の一つであるオノマトペ、日本語のオノマトペをかくも真剣かつ熱心に追求しているジャンルは果たして他にあるだろうか。これが実際に音響として発生する場面を想像すると、ラブホテルは騒音の坩堝となってしまうだろうという気がする(笑)。この勢いと活気があれば、いずれこのジャンルから源氏物語に肩を並べるような現代の好色文学が誕生するようになるかもしれないと期待してみたくなるほど(笑)。

 欲を言えば、このジャンルの作品の文化史的な流れの解説と、細分化された官能小説内部の枝分かれ状態、そして各ブロックごとの現時点における評価の高いベスト作品の紹介があれば、もっとよかった。自分で探すのは疲れてしまいそう(年かな)。

 本書の構成は、辞典といっても五十音順ではなく、表現対象の部位と領域によって分類してあり、男性女性の性器については詳しく部位ごとに細分化してし整理してある。参考のために、大項目だけ引用しておこう。

女性器−陰部/クリトリス/陰唇/膣/陰毛/愛液/乳首・乳房/尻/肛門

男性器−ペニス/陰嚢/精液

オノマトペ

絶頂表現

 官能表現に関しては女性器が224ページ、男性器が61ページを占めており女性の方が圧倒的、やはり官能表現とは女性器を表現の主たる対象とする表現領域であることがこのことからもよく分かる。たかがポルノと侮るなかれ、されどポルノと言い返したくなるほどの膨大な表現領域を形成している分野なのである。興味のある方は、一度手の取ってみられることをお勧めしたい。日本語の表現力ってこんなに凄いのかと驚愕されることを請け合いです。

 

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2008-12-13 『百人一首』 大岡信著

[] 『百人一首』 大岡信著 (発行講談社文庫1980/11/15)  『百人一首』 大岡信著 (発行講談社文庫1980/11/15)を含むブックマーク  『百人一首』 大岡信著 (発行講談社文庫1980/11/15)のブックマークコメント

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 今と比べると極度に娯楽が少なかった昔の子ども時代、12月になると近所の悪ガキが誘い合って誰かの家に集まり、いつの間にか百人一首で遊んでいた。北国の冬は、12月ともなると曇りや雨霙の日が多くなり、気温が下がると雪が降り出す、そんな時、屋内の遊びとして百人一首が流行ったものだった。昔の子どもの遊びには、はっきりした季節感があった。季節を無視しては遊びそのものが成立しなかったのだ。

 上級生の中に結構作者や歌の内容にも詳しいのが居て、そんなチビガキ同士が拙い聞きかじりの蘊蓄をやり取りしながら、炬燵を囲んで時がたつのを忘れて百人一首で遊びふけったこともあった。今は懐かしい思い出の一齣である。

 中学、高校と古文を習うようになって、何度か授業にでてきて、ガキの頃の手探りの解釈が案外当たっていたことを懐かしく思い出したこともあった。

 だが、読み物として細部の微妙なニュアンスまで掬い上げて、丹念に味わい楽しむようになったのは、さらに大人になってから、特に、今回紹介する大岡信の現代詩訳付きの講談社文庫を読んだのが大きなきっかけとなった。

 著者が前書きで書いているように、高度で優雅な言語の華であるはずの詩文の通釈が、古文解釈の正確さにとらわれすぎて、味も素っ気もない現代語訳が多くて、興醒めすることの何と多いことだろう。解釈は解釈、表現は解釈の鎖をほどいてもう少し色っぽく出来ないものかと不満だった。百人一首でもう一度、大人っぽく優雅に遊んでみたかったのである。

 この大岡信著の百人一首は、そんな不満に見事に答えてくれる。さすがに日本語の表現を駆使する気鋭の現代詩人(これは本書を執筆していた頃のこと、今は大家の風格あり)、大岡信のいわば現代詩訳の百人一首は、通釈に何とも言えない色気が感じられて、こんなに楽しく百人一首を読み物として楽しんだのは初めてだった。一首ごとの意味と情趣のふくらみを、5〜6行の現代詩として再現する試みは、心豊かな言語の楽しい遊び心を刺激して何とも心地よかった。大岡信の言語感覚の素晴らしさに改めて脱帽した一冊だった。

 一首ごとに付された解説も、要領よく簡潔で、次から次へと通読してゆくのに、ほとんど抵抗感がなくすいすい読めるのも本書の特徴、百人一首の本は何冊か手にしたが、今も手元に残っているのは本書と、岡田嘉夫の絵が素晴らしい田辺聖子のものだけになった。

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2008-12-11 新刊本に距離を置いた1年だった

[] 新刊本に距離を置いた1年だった(反省)  新刊本に距離を置いた1年だった(反省)を含むブックマーク  新刊本に距離を置いた1年だった(反省)のブックマークコメント

12月も上旬を過ぎると、いろいろなメディアでその年1年の回顧記事が出始める。一つの区切りとして、そんな記事を楽しみにしている。今週に入って、読売と朝日が文学作品の回顧記事を載せた。記事の中に、時評を担当した方が選んだ今年のベスト3があり、眼を通して愕然とした。

 朝日も読売もどちらも、1冊も読んだ本がなかった。新刊書店で眼にはしていたが、買うまでに至らずそのままになっていた。これはもしかすると、リタイアして現在進行形の文芸に興味を失ってしまった、老化現象かもしれないと思い、少なからぬショックを受けた。

 引用して記憶にとどめ、図書館あたりで借りて、手に取ってみようと言う気になった。皆さんは、何冊お読みになっただろうか。

[読売新聞]5氏が選んだベスト3

●池田雄一(文芸評論家)/・津村記久子『カソウスキの行方』(講談社)/・諏訪哲史『りすん』(講談社)/・村田沙耶香『ギンイロノウタ』(新潮社)

●石原千秋(早稲田大学教授)/・楊逸『時が滲む朝』(文芸春秋)/・喜多ふあり『けちゃっぷ』(河出書房新社)/ ・青木淳悟「このあいだ東京でね」(新潮9月号)

●川村湊(文芸評論家)/・平野啓一郎『決壊』(新潮社)/・飯嶋和一『出星前夜』(小学館)/・津島佑子『あまりに野蛮な』(講談社)

●斎藤美奈子(文芸評論家)/・古川日出男『聖家族』(集英社)/・桐野夏生『東京島』(新潮社)/・町田康『宿屋めぐり』(講談社)

●沼野充義(東京大学教授)/・黒川創『かもめの日』(新潮社)/・楊逸『時が滲む朝』(文芸春秋)/・川上未映子『乳と卵』(文芸春秋)

[朝日新聞]〈私の3点〉

●北上次郎 文芸評論家/▽志水辰夫『みのたけの春』(集英社)/▽中田永一『百瀬、こっちを向いて。』(祥伝社)/▽打海文三『覇者と覇者』(角川書店)

●小池昌代 詩人・作家/▽清水眞砂子『青春の終わった日』(洋泉社)/▽水村美苗『日本語が亡(ほろ)びるとき』(筑摩書房)/▽佐野洋子『シズコさん』(新潮社)

●斎藤美奈子 文芸評論家/▽古川日出男『聖家族』(集英社)/▽桐野夏生『東京島』(新潮社)/▽町田康『宿屋めぐり』(講談社)

●津島佑子 作家/▽リービ英雄『延安』(岩波書店)、『仮の水』(講談社/▽町田康『宿屋めぐり』/▽小池昌代『ことば汁』(中央公論新社)

●沼野充義 ロシア文学者/▽黒川創『かもめの日』(新潮社)/▽水村美苗『日本語が亡びるとき』/▽今福龍太『群島―世界論』(岩波書店)

●松浦寿輝 作家・詩人・仏文学者/▽町田康『宿屋めぐり』/▽安藤礼二『光の曼陀羅(まんだら)』(講談社)/▽高貝弘也『子葉声韻』(思潮社)

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2008-12-08 栄養学と私の半生記

[][] 『栄養学と私の半生記』香川綾著(発行女子栄養大学出版部1985/5)  『栄養学と私の半生記』香川綾著(発行女子栄養大学出版部1985/5)を含むブックマーク  『栄養学と私の半生記』香川綾著(発行女子栄養大学出版部1985/5)のブックマークコメント

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 今は亡き香川綾さんのことを「栄養学の母」と呼ぶ人がいるが、適切な言い方だという気がする。日本人の食生活に香川綾さんほど真剣に学問的に取り組んだ人はほかにいないのではないか。

 多くの料理教室や家庭で、何気なく使われている計量カップや計量スプーンを積極的に普及した人、女子栄養大の創設者、日本語のレシピを定性的なカンやコツなどの職人技から定量的で近代的な計量表記へと転換した改革者、と言えばその功績の偉大さを少しは実感していただけようか。そんな香川綾さんが86歳の高齢になって、ご自分の半生を振り返って書かれた自伝を紹介しよう。

 高齢ながら文意は明快、記述に張りがあり、エピソードの展開にも自慢げな諄さがなく、言いたいことがすっきり読み手に伝わってくる達意の文章、長年教壇に立ってこられた教育者としての面目躍如と言ったらいいか、なかなかの読み物に仕上がっている。

 香川綾さんは、この後さらに12年も生き98歳で亡くなるまで元気いっぱいに長生きされた方、予防医学に端を発した栄養学者の人生として、万人が納得する生涯を全うされた。どのように生きたら長生きできるかの、お手本のような人生だった。立派すぎて真似ることは難しいが、学ぶことは少なくない。食べ物に興味のある方には、是非手にとってみてもらいたい一冊。

 ,海遼椶鯑匹鵑如香川綾さんが何故栄養学をライフラークとするにいたったのか、その理由がスッキリと納得できた。第1章の豊かで幸福感溢れる幼少女期、第2章の4年間の教師生活における苦い挫折、第3章の医師を目指した東京女子医専時代、ここまでを生涯の前期として押さえるのが妥当だと思うが、この前期の記述、刈り込まれて整理されていることとは思うが、香川綾誕生のプロローグとしてよくまとまっている。

 医師を目指す勉学の過程で、予防医学としての栄養学に目覚め、胚芽米の研究と普及活動を経て女子栄養学園の創設へと突き進む。4章と5章が栄養学者としての自己確立期、戦前の迷妄に満ちた時代を一直線に、栄養学の意義に目覚め、研究と実践に打ち込む一途さには頭が下がる。迷いなく一つのことに打ち込める人生は羨ましいほどの輝きに満ちている。

 6章から7章までの戦争と敗戦、戦後復興期をたくましく生き抜き、香川栄養学をさらに充実させ、女子栄養大学を軌道に乗せてゆくプロセスには、まさに女傑の名にふさわしい迫力がある。栄養学が単なる知識としての学問に納まることを拒み、頑ななまでに実践的であることを求め続けた背景がよく分かり、改めて<四群点数法>に込められた意味の重さを実感した。

 ぃ絃楼聞漾∧孤省や厚生省と意見を異にしつつも果敢に、栄養学の実践者として自説を貫こうとする姿は、非常に格好いい。一点の曇りもない、栄光に満ちた生涯、見事と言うほかない。それにしても80歳頃まで続けていた健康法のジョギングといい、一日2回の入浴や束子で肌を擦り冷水を浴びる健康法など、栄養学の実践にプラスする健康法の凄いこと、簡単に真似の出来ることではない。

 欲を言えば、知る人ぞ知る偉大な栄養学者香川綾の生涯を、力のある第三者の手になる評伝で読んでみたい、という読後感が残った。私のようなへそ曲がりな読者にとっては、付け入る隙のない自伝というものは、読み終わっても何だか居心地がわるく、少しもてあまし気味になってしまうものなのかもしれない(苦笑、自嘲)。

 最後に目次を引用しておこう。

第一章 大きなゆりかごの中で

    学び続けて/父が残してくれたもの/母の形見/三つ子の魂百まで

第二章 学んだこと悩んだこと

    白紙の答案用紙を出して/一番だけど二番だ/私には修身が教えられない/姉のこと妹のこと

第三章 東京女子医専時代

    課外学習に熱中して/吉岡弥生先生の教え

第四章 栄養学に魅せられて

    病気を予防するのが医者の本分/夫、昇三のこと/ビタミンと胚芽米/魚一、豆一、野菜が四

第五章 結婚はチャンス、仕事は一生

    結婚と家庭食養研究会の設立/料理カード作り/生活を実験台にして/子供の教育と健康づくり/『栄養と料理』の創刊/女子栄養学園の発足

第六章 試練の申で

    家庭献立材料配給所のこと/日本じゅうの栄養学者を集めてみせる/空襲と学園焼失

第七賃 夫の遺志を継いで

    群馬県大胡町へ学園疎開/昇三の死/疎開学園の思い出

第八章 新たな出発に向かって

    学園の再建/『栄養と料理』の復刊/駒込校舎を再建するまで/短大の神話時代

第九章 実践の手がかりを求めて

    計量カップと計量スプーン/「四群点数法」になるまで/四群点数法の基本/病気の人にも応用できる/成人病と栄養クリニック

第十章 充実と発展

    夜間部の増設/栄養学部と大学院/選択の時代を生き抜くために/新たな一歩に向かって

    あとがき

 「四群点数法」の背景について知りたい方、日本人の食生活に根ざした実践的な栄養学に興味のある方、戦前戦後を逞しく一途に生きた女性像に興味のある方には、是非本書をお薦めしたい。

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2008-12-03 昭和八十三年度ひとり紅白歌合戦

[]「桑田佳祐Act Against AIDS 2008『昭和八十三年度ひとり紅白歌合戦』」(WOWOW12/2/19:00-22:30) 「桑田佳祐Act Against AIDS 2008『昭和八十三年度ひとり紅白歌合戦』」(WOWOW12/2/19:00-22:30)を含むブックマーク 「桑田佳祐Act Against AIDS 2008『昭和八十三年度ひとり紅白歌合戦』」(WOWOW12/2/19:00-22:30)のブックマークコメント

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 昨晩、桑田佳祐のソロコンサートAAA2008『昭和八十三年度ひとり紅白歌合戦』をWOWOWで見た。3時間を超える何とも長いライブ番組だったので、合間に食事を挟んだり煎餅をかじったりして時々気を散らしながら、最後までつきあった。歌う方も大変だろうが、バックのバンドのみなさんやダンサーの方々はさぞ疲れたのではないだろうか。七千数百円のチケットでこれだけ楽しめるなんてコストパフォーマンスは相当に高い。体力勝負の長丁場、観客の皆さんもさぞお疲れだったことだろう。 (画像はテレビ画面を映した桑田さんが気持ちよさそうに熱唱する番組のワンシーン、汗で胸元がビッショリ)

 改めて歌手としての桑田佳祐の実力に感心した。勿論、最初から好みの選曲をしてあるので、嫌いな歌は入っていないと思うが、それにしてもどの曲を歌っても自分の持ち歌のように歌いこなしている様が見事、つい引き込まれてしまった。紅白歌合戦という通り、男性女性歌手の歌を交互に歌いついでゆくわけだが、とりわけ女性歌手の歌を歌っているときに巧さを強く感じた。

 適度に物まねをしながら、盛り上げる部分ではいつの間にか自分の歌い方にしてしまい、意外にも崩した歌い方を押さえて真面目に歌っていたので、聴いていて素直に気分良く聞けた。元の歌手に対する桑田なりの敬意が感じられて好感がもてた。

 年末恒例のNHKの看板番組を、桑田流にどのように再構成するかについても注目して見ていたが、番組の骨格を利用しながら、巧みに笑いを交えて、NHKを怒らせない程度にパロディー化したところ苦労のあとがしのばれた。所々に挟み込まれたギャグとノスタルジーの組み合わせが絶妙、何度も吹き出しそうになりながら楽しんだ。

 タイトルにあるように<昭和八十三年度>という発想がよかった。昭和に生まれ、昭和で育ち、昭和の中で歌手としての自分を確立した昭和の歌手桑田にとっては、昭和の歌を歌うということに特別の思い入れがあるのだろう。私も時代は少しずれるが昭和の子の一人なので、ほとんどの歌を知っており、ある程度は口ずさむことが出来た。こんなにうまく歌えたらカラオケにいっても楽しいだろうに、などと思ったりしながら充実した3時間を過ごさせてもらった。3時間15分、61曲の大熱演だった。最後に当日の曲目を抜き書きしたので書き出しておこう。

ひとり紅白歌合戦・全曲目

第1部[紅白ベテラン対決]

01 サン・トワ・マミー(1966)越路吹雪

02 青い山脈(1949)藤山一郎

03 コーヒー・ルンバ(1961)西田佐知子

04 上を向いてあるこう(1961)坂本九

 <桑田のトーク>

第2部[GSvs恋と涙と太陽対決]

05 君だけに愛を(1968)ザ・タイガーズ

06 恋の季節(1968)ピンキーとキラーズ

07 君に会いたい(1967)ザ・ジャガーズ

08 恋のハレルヤ(1967)黛ジュン

09 ブルー・シャトー(1967)ジャッキー吉川とブルーコメッツ

10 太陽は泣いている(1968)いしだあゆみ

11 風が泣いている(1966)ザ・スパイダーズ

12 夕陽が泣いている(1966)ザ・スパイダーズ

13 真っ赤な太陽(1967)身空ひばり

第3部[フォークソング&ニュー・ミュージック対決]

14 学生街の喫茶店(1972)GARO

15 五番街のマリーへ(1973)ペドロ&カプリシャス

16 心の旅(1973)チューリップ

17 あの日にかえりたい(1975)荒井由美

18 さよならをするために(1972)ビリー・バンバン

19 シルエット・ロマンス(1981)大橋純子

20 ルビーの指輪(1981)寺尾聡

21 時代(1975)中島みゆき

 <桑田のトーク、審査員紹介、爆笑問題コント>

第4部[歌謡曲フルバン&レビュー対決]

22 いいじゃないの幸せならば(1968)佐良直美

23 さらば恋人(1971)堺正章

24 経験(1970)辺見マリ

25 空に太陽がある限り(1971)にしきのあきら

26 終着駅(1971)奥村チヨ

27 長崎は今日も雨だった(1969)内山田洋とクール・ファイブ

28 他人の関係(1973)金井克子

29 君といつまでも(1965)加山雄三

 <桑田のトーク、メンバー紹介>

第5部[クレージーキャッツ&ザ・ピーナッツメドレー対決]

30 だまって俺について来い(1964)ハナ肇とクレージーキャッツ

31 ツーダラ節(1961)ハナ肇とクレージーキャッツ

32 ハイそれまでよ(1962)ハナ肇とクレージーキャッツ

33 ふりむかないで(1962)ザ・ピーナッツ

34 可愛い花(1959)ザ・ピーナッツ

35 情熱の花(1959)ザ・ピーナッツ

36 恋のフーガ(1967)ザ・ピーナッツ

37 恋のバカンス(1963)ザ・ピーナッツ

第6部[????]

38 LOVE LOVE LOVE(1995)DREAMS COME TRUE

39 ロビンソン(1995)スピッツ

 <応援合戦>

第7部[歌謡曲フルバン&レビュー対決Part2]

40 襟裳岬(1974)森進一

41 舟歌(1979)八代亜紀

42 SWEET MEMORIES(1983)松田聖子

43 3年目の浮気(1982)ヒロシ&ハラボー

44 いい日旅立ち(1978)山口百恵

45 現代東京奇譚(2007)桑田佳祐

46 少女A(1982)中森明菜

47 愚か者(1987)近藤真彦

48 狙いうち(1973)山本リンダ

49 情熱の嵐(1973)西城秀樹

50 渚のシンドバット(1977)ピンク・レディー

51 勝手にしやがれ(1977)沢田研二

52 キューティーハニー(2004)倖田來未

53 GOLDFINGER'99(1999)郷ひろみ

 <桑田のメッセージ、野鳥の会コント>

第8部[いよいよ大詰め!!ゆく年くる年対決]

54 時の流れに身をまかせ(1986)テレサ・テン

55 涙そうそう(2000)BEGIN

56 もらい泣き(2002)一青窈

57 タイガー&ドラゴン(2002)CRAZY KEN BAND

58 ラブ・イズ・オーヴァー(1982)欧陽菲菲

59 また逢う日まで(1971)尾崎紀世彦

60 魅せられて(1979)ジュディ・オング

61 あの鐘を鳴らすのはあなた(1972)和田アキ子

<メンバー紹介、フィナーレ>

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