武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 11月第1週に手にした本(31〜6)


*情けないことに書庫にあることを忘れて同じ本を買ったり、読んだことすら忘れたりするようになってきた。読んだり読みかけたりした本を備忘録としてメモ、週1で更新していきます。
◎岡部牧夫編著『エーデルワイス・シリーズ③名作の山』(角川書店1968/9)*このシリーズの中でも出色の力作、自然と山岳に野外活動に関係する世界各国の自然文学ガイド。豊富な引用に簡略で適切な解説が付いているので、読みたい本が次々と出てきて嬉しい困惑の連続だった。一応付箋を付けておくだけにしたが、10カ所以上に付箋が付いてしまった。世界の山岳図書への広範でバランスのとれた目配りに感心した。40年以上も前の本とは思えなかった。良書はいつまも良書だ。
新実徳英著『うたの不思議―「白いうた青いうた」の秘密』(音楽之友社2009/1)*以前に紹介したCD「白いうた青いうたオリジナル版全曲集」の故谷川雁の歌詞について、もう少し詳しいことが知りたくて手にした。谷川自身が歌詞を解説するコラムが興味深かった。
現代詩手帖特集版『戦後60年<詩と批評>総展望』(思潮社2005/9)*1945年から2004年までを60年<戦後の混沌から>54年、55年<相対的安定期へ>64年、65年<高度経済成長と大学闘争>74年。75年<大衆消費社会の出現>84年、85年<冷戦構造の崩壊>94年、95年<21世紀と高度情報化社会>04年と6期に分割して各時代の代表的な試論を掲載、最後に年表を附した特集号。現代詩について、作者と読者が重なり合う自己完結した閉鎖社会と揶揄されることがあるが、これを読むと、作者と読者と評者の3者が重なり合う多重閉鎖社会という気がした(苦笑)、編集方針のせいかもしれない。
結城浩著『数学ガールフェルマーの最終定理』(ソフトバンククリエイティブ2008/8)*前作の「数学ガール」同様、高校生を主人公にした学園ものジュブナイルの爽やかで軽いタッチのストーリーに乗せて、数学の知識を繰り広げる一種の啓蒙小説。
結城浩著『数学ガールゲーデル不完全性定理』(ソフトバンククリエイティブ2009/11)*「数学ガール」シリーズの3作目、次第に数学マニアの世界になってきた。図書館で借りたこの2冊は、ざっと眺めただけで返却日が来てしまった。素敵な「数学ガール」3部作は、画期的な数学関連出版と評価したい。でも数学が難解でなくなったわけではない。
◎針ヶ谷鐘吉篇『植物短歌事典(正編)(続編)』(加島書店1960/2,1967/11)*文字通りの植物を詠った短歌を集め整理した事典。俳句の歳時記に似ているが季節による分類はしていない。万葉集から現代まで、膨大な植物詠の短歌を蒐集してある。本草学の植物画を添えてあるのが嬉しい。書架の直ぐに手の届くところに置いておこう。
串田孫一篇『エーデルワイス・シリーズ④山の博物誌』(角川書店1968/7)*山岳地帯の植物、鳥類、蝶や昆虫・魚類、動物たちなどについてエッセイのアンソロジー
桂川潤著『本は物である―装丁という仕事』(新曜社2010/10)*レビューにアップしてあります。
宮下章著『ものと人間の文化史・海藻』(法政大学出版局1974/2)*食材としての海藻(海草ではない)の知識が欲しくなって手に取った本、海藻王国に長年暮らしながら、いかに海藻について無知だったか知らされ恥じ入った。食生活に海藻を導入する手掛かりになるばかりではない、海藻の文化史の名著である。
◎河津一哉解説『今とむかし廣重名所江戸百景帖』(暮らしの手帖社1993/6)*廣重の名所江戸百景の全カラー画像に大正八年(関東大震災前)の同じ場所のモノクロ写真と平成五年現在のモノクロ写真をセットにして、それぞれの名所とその変遷について解説文を添えたもの。三枚の画像を代わる代わる眺めていると、江戸東京の余りの変貌振りに言葉にならない感慨がわいてくる。この先一体どう変わっていくのか、私の死後の東京の変貌振りをタイムマシンで覗いて見たい気がしてきた。