武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 朝のワンプレート(16)

 《外食を食べ残す》

 いささか古い話ではあるが、1990年に発行されてベストセラーになった主婦之友社の『外食カロリーブック』が提起した食事のとり方は、興味深かった。男性版では肥満解消のためとサブタイトルを付け、女性版ではダイエットのためとサブタイトルを付けて、2冊出ていた。
 要するに、現代では多くの人が1日3食のうち1回は外食に頼るケースが多いので、その外食を全部食べないで、何かをどれだけか<食べ残す>というやり方で、健康管理をしてゆこうという提案であった。残りの2食は自宅で栄養管理するとして、まず難しいけれど分かりやすい外食に的を絞り込んだところが面白いアイディアだった。医師と管理栄養士の共同作業というふれこみだった。
 外食のスタイルを和風料理、洋風料理、中華朝鮮料理、軽食スナック、ファストフード、ファミリーレストランに6分類したのも分かりやすかった。付録にその他のメニューも付けるなどして、外食慣れした現代人の食生活を実に良く反映していた。
 一読して分かったことは、全部食べていたら肥満にいたるのは当たり前ということ、ところが、実践してみると分かることだが、ささやかに外食を<食べ残す>ということが、案外難しいのである。
なぜ食べ残しが難しいか、一つは食のモラルとして、小さい頃から家庭や学校で「残さないで全部食べなさい」という躾を受けて、このモラルがすっかり内面化しており、心理的に葛藤が生じること。もう一つは社会性の面で、一緒に食べている同僚やお店の調理した人たちから、「体調が悪いの?」「美味しくないのか?」といった負の反応を引き起こしてしまい、あらぬ波風を立ててしまうこと。心優しい人善人にはこれも辛いことだった。
 ダイエットや肥満解消のためでなくとも、大人であれば自分に合った適正カロリーに合わせて食事管理ができなければ自分の健康管理も出来なくなり、トータルな自己管理能力に欠けた人物と見なされても仕方ないだろう。これが難題なのは世界共通のこと。片方で世界の半数が飢えているというのに、飽食の結果の食べ残しに苦労するなど、何という贅沢な茶番劇だろうか。先進諸国の大人達の食に対する管理意識の欠落が、回り回って、途上国における飢餓の問題に繋がっているような気がしてならない。カロリーの過剰が意識できるかどうかは、カロリー不足の深刻さも理解できるかどうかと、表裏一体になっている。


 前置きはこれくらいにして、朝の献立を紹介してゆこう。このプレートは食べ残す必要がないように盛りつけてあります(笑)。


4月某日の朝食(上) ・味噌汁(油揚げ、椎茸、ネギ)・ご飯・蕪の葉のおひたし・ニンジンの温野菜・小松菜のおひたし・パプリカの温野菜・春菊のおひたし・ブロッコリーの温野菜・蕪の甘酢漬け・白菜キムチ・舞茸とナメコの旨煮・プレーンオムレツ・画像にはないがコーヒー入りホット牛乳

4月某日の朝食(下) ・味噌汁(椎茸、タケノコ、青のり、ネギ)・ご飯・ブロッコリーの温野菜・カリフラワーの温野菜・小松菜のおひたし・モヤシのおひたし・オクラのおひあし・パプリカの温野菜・蕪の甘酢漬け・苦瓜のきんぴら・筍の含め煮・プレーンオムレツ・画像にはないがコーヒー入りホット牛乳