武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 朝のワンプレート(21)

 《朝食抜きはアリか》
 充実した朝食をテーマにしているので、<朝食抜き>の言説はいつも気になっていた。朝食を食べないことによる長寿法や健康法などというものが、あること自体が不思議だったが、調べてみるとネット上にあるわあるわ、吃驚するほど話題になっていることが分かった。
 試しにどんな主張なのかと、よく引用されている『長生きしたければ朝食は抜きなさい』(河出書房新社)を手にしてみた。主旨を整理して要約すれば、一つは、現代人は食べ過ぎているので健康のために小食をすすめ、具体的には朝食を抜いた方が良いと言うもの。もう一つは、体内に老廃物<宿便>が溜まって有害なので、排出した方が良い、この二つが柱になっている。
 私的には、それらの言説には、ほとんど説得力を感じなかった。この国が食糧不足だった江戸時代初期の頃、ほとんどの人々は一日二食だった。推定では平均寿命は50歳ぐらいだったと言う。平均寿命が80歳を超える現代において、三食食べていると長生きしないと言う主張がいかに虚説か、言うまでもあるまい。
 また、体内に老廃物が溜まるという宿便についての言説だが、口から大腸まで、体内の消化器官表面の代謝期間は短く、何かが消化器官内に滞留できるとしたら、大腸の末端以外にあり得ず、それは単なる便秘でしかなく、医学的には<宿便>などというボキャブラリー自体存在せず、これも妄説であることは明らか。
 かくして<朝食抜き>と<宿便>を、もっともらしく語るいかなるセールス・トークも、決して信用してはならないと言うこととなる。巷に流布している現代の迷信とでもいえばいいか。
 確かに、飽食の時代と言われ、食べ過ぎと肥満による成人病が課題となっている現代人の問題多き食生活ではあるが、そこにつけ込んで、とんでもない虚妄で商売をするなんて、呆れてものも言えない。
 ほどほどに美味しい、バランスの取れた朝食を、しっかり噛みしめて、今日一日を元気に過ごそうと気持ちと体調を整えることは、誰にとっても大事なこと。そんな朝食を抜いてしまおうなんて、何と侘びしく虚しい悪足掻きだろう、論外である。
 

 前置きはこれくらいにして、朝の献立を紹介してゆこう。少しずつ野菜の味が濃くなってきている、太陽の恵みというべきか。

5月某日の朝食(上) ・味噌汁(豆腐、油揚げ、切り干しダイコン)・ご飯・キャベツの胡麻和え・蕪の甘酢漬け・トマト・京菜のおひたし・キュウリの浅漬け・蕪の葉のおひたし・里芋の煮っ転がし・プレーンオムレツ・画像にはないがコーヒー入りホット牛乳


5月某日の朝食(下) ・味噌汁(豆腐、油揚げ、切り干しダイコン)・ご飯・キャベツ胡麻和え・白菜キムチ・京菜のおひたし・ニンジンの温野菜・アスパラガスの温野菜・キュウリの浅漬け・里芋の煮っ転がし・プレーンオムレツ・画像にはないがコーヒー入りホット牛乳