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2005-04-04 自由と実践理性の葛藤、その現代的意味(2/2)

自由と実践理性の葛藤、その現代的意味(2/2)

 西垣通氏(東京大学大学院情報学環教授)によると、今まで見てきた「絶対知仮説」と「相対知仮説」のいずれが正しいか?の答えは簡単に見つかりそうもありません。ただ、一つ言えることは、現代の科学全般と合理的・論理思考方法、つまり「絶対知仮説」が例えばアフォーダンス理論のような「相対知仮説」によって少しづつ修正されつつあるということが言えるようです。また、「相対知仮説」から導かれる「暗黙知」の役割も根本的に見直すべきなのかもしれません。ただ、人間を含めた生物によって自覚的に意識されにくい「暗黙的な身体知」がかかわる領域、例えば、遺伝子治療などの先端医療技術、生態系と地球環境問題、貧困問題、戦争と平和の問題、公共善と正義論などの問題については、「相対知仮説」の前提がないと説明しにくいことが次第にわかりつつあります。なぜなら、人間も含めた地球上の生物たちは、本来は自覚的な意識など殆ど持たずに日常生活を生きている存在だからです。


 ところで、この「人間の自由意志」についての誤解は、1991年ソ連邦崩壊を契機にアメリカ発のグローバリズムの流れに乗って急速に地球上を駆け巡ることになりました。現在、アメリカのブッシュ政権は世界の殆どの市民社会から批判を受けながらも(http://www.mochida.net/report04/7apkn.html)、世界最強の軍事力政治権力威圧のための武器としながら、強力な「ユニラテラリズム」(米国一国主義)政策を強引に推し進めており、日本英国など先進諸国政府一角が率先して歩調を合わせています。グローバル市場原理主義や現在の日本の「構造改革路線」を支える根本思想は「新自由主義ネオリベラリズム)」です。そのルーツは、シカゴ学派マネタリストと呼ばれる反ケインズ論の祖・F.A.ハイエク(1899-1992)及び、それを引き継ぐミルトン・フリードマン(1912- )らで、彼らの主張の最大の特徴は“物価や名目所得の変動をもたらす最大の要因が貨幣量(マネーサプライ)の変動である”ことを強調する点です。また、彼らは政府の財政的な介入を認めるケインズ主義や“公平な富の分配”を強調する福祉国家論など、いわゆる制度論的な発想を「社会科学的な無知」であるとして厳しく批判します。その代わり、彼らが提唱する価値観は“自由と市場主義”です。それは、国民の一人ひとりが自己責任の原則に基づいて自由に“市場”へ参加するようになれば、市場における経済活動を通じて自ずから最も適切な調整と分配が達成できるという真に素朴で狂信的(カルト的)とさえ思える“原理主義的”な考え方です。


 1993年IMF・世界銀行・米国政府関係者がワシントンに集まり、このような考え方を一つの戦略として取りまとめたのが「ワシントン・コンセンサス」です。このコンセンサスは「8つの基本合意内容」から成っており、それは「W.C.に拠点を置く金融機関サイドに偏重した財産権保護・政府主導の規制緩和・政府予算規模の縮小・資本市場の徹底自由化・為替市場の徹底開放・関税と輸入障壁の引き下げ・基幹産業の徹底的な民営化外国資本による国内企業の吸収と合併の促進」です。実は、これには1991年のソ連邦崩壊後(ポスト冷戦構造)の全世界を、米国が再び経済面で強力に支配してゆくための“新戦略”の意味があったのです。このようなアメリカの“新自由主義を基本に据えた新戦略”のシナリオに従って現在の「グローバル市場原理主義」が世界的に進みつつあり、日本における「小泉構造改革」も米国のこのような要望に応じる形で、その一環として進められているのです。しかも、不幸なことに、この「グローバル市場原理主義」とプロテスタント右派(一説ではアメリカ国民の4割を占める大勢力)を中心とする「宗教原理主義」の二大勢力が融合した形でブッシュ政権を支えているという現実があるのです。


 そして、このようなアメリカの一国主義的な傾向は、「テロとの戦い」の口実とされた「先制攻撃論」(予防戦争論)と「イラク戦争の混迷状態」に象徴される不安の種を次々と世界中にバラ撒きつつあります。従って、今や世界第二位の“経済大国”となった日本にとって最も重要なことは、「絶対知仮説」に偏重して常軌を失い(カルト化)つつあるアメリカの政治権力機構に対して自信を持って修正を迫る(実践理性的な意味での説得を試みる)ことです。


因みに、2004・9・19付の朝日新聞・記事『同盟経済、スティグリッツコロンビア大教授に聞く』で、ジョセフ・スティグリッツ教授は、今、日本が世界で果たすべき役割に関して次のような点を指摘しています。(同記事より、要点を抽出、聞き手=N.Y.尾形聡彦・記者

<米国主導のグローバル市場原理主義の現状>


WTO(世界貿易機関)等が推進する世界経済のルールが不公平なため怒りを呼び、特に発展途上国で多くの問題を引き起こしている。


●国際金融システムが、米ドルを機軸通貨としているのに、米国の巨額の財政赤字などを背景に非常に無責任な状態に陥っている。


●国際的な相互依存が進み、米国の経済運営の失敗に伴う米国の弱体化が他の地域にも波及している。


日米同盟国としての日本の役割>


●英国など米国を指示する多くの国々では、政治的指導者と国民の間の乖離が増大しているが、小泉首相などのリーダーたちは『首脳クラブ』の仲間であることを大切にしており、自国民が求めることより米国の利益を優先するという間違いを犯している。


●経済の面でも、各国の中央銀行総裁たちが、自国民よりもIMF(国際通貨基金)や米国財務省の意向を気にするという誤りを犯している。


<日米経済の一心同体化について>


●世界最大の経済国である米国と相互依存が進展するのは必然だが、日本は米国の言うことを聞きすぎである。例えば、アジア通貨危機(1997)の際に日本が提唱したAMF(アジア通貨基金)は非常に優れた構想だったが、米国がアジアでの影響力低下を恐れて反対した。しかし、米財務省の分析は誤りだったので、この時、日本政府は米国の圧力に屈するべきではなかった。


●日本政府は日本国民に対して責任を負っているのであり、米国に対してではない。米国債を売れば米国が報復しないだろうかという不安もあるだろうが、現行のWTOルールのもとでそれは不可能だ。


<望ましい日米関係の姿について>


●グローバルな経済・社会の安定のためには、最強の国に皆が従うのではなく「チェック・アンド・バランス」を機能させる必要がある。現在はこの機能が不十分なので、日本は、もっと自らの方向性(一般国民の大多数の意志に基づく)に自信を持って、米国をチェックできる存在になる必要がある。


京都議定書採択のときの日本の役割は非常に大きかった。科学的証拠は圧倒的だったのに、ブッシュ大統領は“証拠はない”と言い切った。証拠に向き合おうとしない人間がいるのは、世界にとって非常に危険なことだ。

●非常に大きな力が一極(米国)に集中している現在の状況は、米国にとっても世界にとっても危険だ。米国に圧力がかかって、米国を国際基準に引き戻すことが非常に重要なのだ。米国が正しいこともあれば、間違っているときもある。米国に対しては自らの判断で望むべきだ。それこそが成熟した民主主義である。

<アジアのリーダーとしての日本について>


●日本の役割は、米国、中国ロシア東アジアの国々と話し合う姿勢を明確にして、いろいろな問題に対して最善の解決策を目指すことである。


●日本は発展途上国への政府援助の対国内生産GDP)比で米国よりもずっと大きな割合で貢献している。日本は、米国に言われたとおりにしているのではなく、自らが正しいと思うことを主張する必要がある。日本国民の利益のため、そして望むらくはグローバルなレベルでの「社会正義の原則」のためにそうした声を発信して行く必要がある。


 また、日本国内に目を向けても、論理的・合理的思考のフレームの中で正しい方向性を見失い一種の「原理主義の罠」に嵌ったまま抜け出せなくなったような、拗れて深刻化した社会・経済問題が次々と噴出しています。例えば、それは以下のような問題点です。日本の政治指導者たちは一刻も早く「知的覚醒」(実践理性(倫理観)の重要性についての自覚)の必要性を理解すべきだと思われる所以が、このような直近の現実の中から明確に浮かび上がってきます。これらの記述を一瞥しただけで、いかに彼ら日本のリーダーたちの目が国民一般へ向けられていないかがわかります。彼らの眼差しは、忠犬ハチ公よろしくシッカリと米国ブッシュ大統領の方へ向けられているのです。


総合科学技術会議内閣設置法に基づく総理大臣諮問機関)が、今夏、来るべき再生医療の鍵になり得る「ヒトクローン胚研究」にゴーサインを出した。これは生命倫理の軽視ではないか?

・・・最低限の倫理規範を明示してから、公共化したオープンな研究環境のなかで、そこで定められた規範に抵触しない範囲で自由に研究できるという体制整備が不十分のまま、研究着手のゴーサインだけが出されてしまった。

▲「家計の金融資産に関する世論調査」(金融広報中央委員会、事務局・日銀)の発表内容(6/25〜7/5調査実施)により、日本国民の『家計が火の車状態である』ことが明らかになった。

・・・家庭の金融資産の平均保有額は1,052万円で、前年より47万円も減少した。逆に借金は38万円増加している。ここには、賃金抑制やリストラで定期収入が減り、貯蓄を取り崩してやりくりする火の車状態の苦しい家計の状態が表れている。しかも、貯蓄のない世帯の割合は全体の20%を超えており、昭和30年代後半の水準まで落ち込んだ。また「十分な貯蓄や保険がない」ために、老後の生活に不安を覚える世帯の割合が8割を超えていることが分かった。

cf.http://www.asyura2.com/0406/hasan36/msg/822.html


▲7月22日に警察庁が発表したデータによると、昨年1年間に自殺した人は前年より2,284人増えて34,427人となった。これは、1978年以降の自殺者数では最多の記録である。

・・・自殺者数が3万人を超えるのは6年連続である。負債や事業不振、生活苦などの経済・生活問題が動機とみられる自殺者数が初めて8,000人のラインを突破して8,889人となった。これは、過去最高だった昨年を大きく更新しており、それは動機別の割合の25.8%を占めており、1994年(11.2%)の2倍以上という異常な数字となっている。しかも、年齢別で見ると50代以上の中高年がほぼ60%で、長引く不況の深刻な影響が窺える。また、9月初旬に発表されたWHO(世界保健機構)の調査結果によると、人口10万人あたりの日本の自殺者数は世界第10位で、これは主要先進国旧ソ連東欧圏を除く)の中ではトップであることが判明した。なお、前回(1999年)の調査では日本(同指標16.8人)は先進諸国の中で第23位であったが、今回は、特に45〜64歳の中高年男子の自殺者数が急増した。ここも、日本における近年の構造改革関連政策や過度のリストラと合理化のシワ寄せが暗い影を落としている。


▲「政府税調」(総理大臣の諮問機関)が「退職金課税強化」と「特別減税(一律20%)廃止」の検討に入った。

・・・現在、政府税調はサラリーマンの退職金所得への課税を強化する方針について具体的な検討に入っている。また、平成10年以降、景気対策のためという名目で続けられてきたサラリーマン所得に対する一率20%の特別減税の廃止についても検討が開始された。


▲「年金担保融資制度」の悪用による被害が拡大しつつある。

・・・「福祉医療機構」(独立行政法人)にだけ認められている「年金担保融資制度」を悪用した、貸金業者による詐欺事件が全国的に多発している。この制度は、国内で唯一認められている公的年金担保の融資制度であるが、高齢者の無知につけこんで手続きに仲介した貸金業者が違法な仲介手数料などを奪い取る悪質な事件が多発している。この事件は、ここ数年の間に全国に広がっているので貸金業法に年金担保融資の禁止を取り入れるなど緊急の対策が必要だが、国会がこの問題へ真剣に取り組む気配が見られない。


▲「連帯保証人制度の廃止」と「悪徳貸金業への規制強化」が放置状態となっている。

・・・この二つの問題はコインの表裏の関係にあり、これらの問題は近年の自殺者数の異常な増加にもかかわっている。個人に無限の責任を押しつける(催告の抗弁権も検索の抗弁権もない)連帯保証人制度は日本独特の非人道的な制度であり、日本における法制(法整備)の後進性の象徴である。事業主のための「信用保証協会」の制度も、最終的には連帯保証人を求めているので、我が国の「信用保証協会」は何のためにあるのか理解ができない不思議な存在となっている。欧米にも連帯保証人に近い制度はあるが、一定の限定条件がついており、日本のように無限責任ということはない。ごく最近会社ぐるみの盗聴事件を起こした業界ナンバーワンの貸金業者による「盗聴事件裁判」で、直接その事件にかかわった会長懲役刑(3年)の実刑判決が出たり、企業に関する根保障制度の改革が検討されたりしているが、根本的な問題解決への歩みは遅々としている。


郵政民営化に限らず、「日本の構造改革」路線は“米国企業→米国政府→日本政府”という、いわば不可逆システムの流れに沿った《年次改革要望書》(米国通商代表部・作成)のシナリオに忠実に従ったものであることが明らかにされた。

・・・・この問題はノンフィクション作家関岡英之氏が雑誌正論』(10月号)の記事「ここまで進んでいるアメリカの日本改造」で取り上げたため急に注目を浴びることになった。関岡氏によると、実に不可思議なことだが未だかつて日本の新聞テレビ等の主要マスコミは、この『年次改革要望書』の存在自体を一度も取り上げたことがないとのことである。なお、この日本語版『年次改革要望書』はアメリカ大使館HP(下記URL)に掲載されている。

http://japan.usembassy.gov/j/p/tpj-j20031024d1.html


(2004.9.21 News-Handler、初出)

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