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2006-03-03 映画『博士の愛した数式』に見る「清明な日本の風景」

toxandoria2006-03-03

映画『博士の愛した数式』に見る「清明な日本の風景」


  信州上田地方の春の風景が心地よく美しい。スクリーンからまるで本物の微風が吹いてくるようだ。80分しか記憶が続かない天才数学者博士)と清楚な美貌のシングルマザー杏子深津絵里)、そしてその息子(齋藤隆成)との心温まるコミュニケーション物語。“わずか80分の温かい心の交流”の記憶。しかし、翌日にはその記憶が博士(寺尾 聰)の脳裏からすっかりデフォルトされてしまう・・・交通事故後遺症である短期記憶障害に苦しむ博士・・・吉岡秀隆の語りと回想シーンが物語を静かに紡ぎだしてゆく。


 初めは、シングルマザーの家政婦・杏子にとって困難の連続。博士と同じ言葉の会話が繰り返される日々。それでも少しずつ博士とのコミュニケーションが可能となるにつれて、彼女は、博士が語る「素数友愛数虚数オイラーの公式」などの数や数式に秘められた神秘的な美しさに魅了されていく。やがて、10歳の息子が一人で留守番していると知った博士は、息子も連れてくるよう杏子に約束させる。そして博士は息子がやって来ると彼を√(ルート)と名づけた。


 杏子が終章で“心の時間は数学の真理と同じで流れ去りません、それは、この胸の中にあるのです、だから今を生きることが大切なのです”と語る。この言葉が印象的だ。


 最後に、エンドクレジットの前に流れるウイリアムブレイクの詩(下記)が再び映画の感動を呼び覚ます。


『Auguries of Innocence』


To see a World in a Gran of Sand


And a Heaven in a Wild Flower,


Hold Infinity in the palm of your hand


And Eternity in an hour.


(原詩は、http://www.cs.rice.edu/~ssiyer/minstrels/poems/368.htmlによる)


『無心のまえぶれ』


ひとつぶの砂にも世界を


いちりんの野の花にも天国を見


きみのたなごころに無限


そしてひとときのうちに永遠をとらえる


(訳詩は、http://www1.odn.ne.jp/~cci32280/PoetBlake.htmによる)


・・・・・・・・・・・・・


●『阿弥陀堂だより』、『雨あがる』などの監督小泉堯史による「第1回本屋さん大賞1位」を受賞した小川 洋子の作品を映画化した『博士の愛した数式』を鑑賞しました。数学をテーマにしながら堅苦しさや難解なところは、まったくありません。しかも、決して多弁な映画ではなく、どちらかというと寡黙であり“優しい眼差し”と“日本の美しい自然の原風景”がコミュニケーションの主役を演じています。


●小川 洋子の原作にちりばめられている“清明、魂、いつくしむ、敬う、孤高・・・”などの言葉が見事な“日本の風景の映像美”にデフォルメされ、加古 隆の流麗な音楽が情感を盛り上げています。


●ここ数ヶ月の間に鑑賞した映画、『蝉しぐれ』(http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20051129/p1)と『単騎、千里を走る』(http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20060217)にも通じる“日本の原風景”の映画化です。是非、鑑賞をお勧めしたい作品です。


<『博士の愛した数式』の公式ホームページ

http://hakase-movie.com/

f:id:toxandoria:20070521215305j:image

・・・加古 隆(http://www.takashikako.com/)の流麗なテーマ音楽を聴くことができます。また、この映画では、爽やかに情感を盛り上げてくれるソプラノ歌手・森 麻季(http://www.japanarts.co.jp/html/JA_artists/vocal/mori_1167/pro.html)の透明感がある美しい歌声も忘れることができません。

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