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2016-06-03

ブレッソンの『白夜』

一週間ほど前から、これまで世界のどこでもビデオにもDVDにもなっていないロベール・ブレッソンの『白夜』(1971)が、2012年に本作品をリバイバル公開したエタンチェの制作によって、Blu-ray DISCとしてアマゾン限定で発売されているが、その封入リーフレットに解説を寄せた(「『白夜』解説」、2-17頁)。

リーフレットには、シネフィル・イマジカの山下泰司氏による「『白夜』マスターについて」という短い文章も収められており、それによるとマスターは2012年に日本でリバイバル上映された際に作られたピエール・ロム監修の上映用プリントをHDテレシネしたもので、そこからBlu-ray化に際してさらにデジタル修復が施されている。音声はテレシネ時にオノ セイゲン氏がノイズ修復・マスタリングしたものとのこと。

ジャケットのデザインは塚本陽氏。リバーシブルなのも嬉しい。モノとして所有する喜びを増幅してくれる、細部まで行き届いたデザインだ。リーフレットもシンプルで綺麗だ。

これまでソフト化もされず、画質の悪い海賊版以外では見るのが困難だったこともあり、『白夜』について書かれた文章は世界的にも少ない。

とはいえ、日本では、初公開時(1978年2月25日)に、辻邦生氏(『毎日新聞』3月6日夕刊)と蓮實重彦氏(『朝日新聞』3月22日夕刊)による読み応えのあるエッセイが書かれている(後者は『シネマの記憶装置』に収録。両方とも、1999年の東京国際映画祭におけるブレッソン・レトロスペクティヴの際に刊行されたカタログに再録されている)。

それだけでなく、2012年のエタンチェによる再公開時に発行された劇場用パンフレットもある。山城むつみ、伊藤洋司、福田桃子、葛生賢の各氏による、それぞれの仕方でこの作品の核心を突く充実した論考に加えて、行き届いたシナリオ採録も収められている。もはや入手困難かもしれないが、『白夜』を、そしてブレッソンをより深く理解するためには必読であろう。

ブレッソンとはまったく異なる資質の持ち主であるヴィスコンティの『白夜』(1957)と見比べるのも一興だろう。こちらはやや甘ったるいロマンスに堕しているという印象は否めないが、それでも、ヒロインが下宿人とともに『セビリアの理髪師』を見に行くオペラハウスのシーンや、雪の中で下宿人とともに去って行くラストシーンなど、いくつかのシーンは忘れがたい。ドストエフスキーの原作は、何種類か訳があり、わたしはロシア語を解さないので訳文の印象だけでの判断となるが、いみじくも『やさしい女』とカップリングされている井桁貞義訳が好みだった。

やさしい女・白夜 (講談社文芸文庫)

やさしい女・白夜 (講談社文芸文庫)

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