「なぜなら彼女は一本足の蛸です。彼女の足は他の誰にも繋がっていません。人として生まれながら人類や他の生命体の何とも共有する部分を持たないのです。真の孤独とは、彼女のために用意された言葉ですよ」
谷川流『絶望系 閉じられた世界』電撃文庫(2005),p.243
2012-02-10
■[雑文]復興庁

東日本大震災から約11ヶ月経過した今日、復興庁が設置された。
復興庁設置とともに、復興大臣という役職も新設されたそうだ。そこで、「あれ?」と思った。「○○省」のトップは「○○大臣」だが、「△△庁」のトップは「△△庁長官」というのではなかっただろうか? 金融庁の「金融大臣」は俗称だし。
で、調べてみると、復興庁設置法第8条第1項に「復興庁に、復興大臣を置く。」と規定されているので、正真正銘「復興大臣」が正式名称だとわかった。だが、復興大臣は復興庁の長ではない。同じく復興庁設置法第6条第1条に「復興庁の長は、内閣総理大臣とする。」とある。復興大臣は復興庁のナンバー2ということになる。
ところで、ウィキペディアによれば
内閣総理大臣を長(主任の大臣)とし(設置法6条)、内閣総理大臣を助け、庁の事務を統括するために復興大臣を置く(設置法8条)。初代復興大臣には東日本大震災復興対策担当大臣を務めた平野達男が就任した。
建制順では、組織としての復興庁は府省と同列で、内閣府の次、総務省の前となるが、復興大臣は主任の大臣でないため、大臣の並びとしては総務大臣の前ではなく内閣府特命担当大臣の次となる(設置法附則3条1項の表)。復興副大臣、復興大臣政務官については、組織の順序と同様、総務副大臣の前、総務大臣政務官の前となる。
復興庁 - Wikipedia
と、かなりややこしい。
ちなみに、日本の行政機関 - Wikipediaの「現在の行政機関の一覧」をいま見ると、「復興庁」の項の「長の名称」の欄には「復興大臣」と書いてあった。
■[雑文]LRTの次はBRT?

新たな公共交通の導入を検討している新潟市は、2014年度までに、市中心部に専用車線を走る2両編成の連節型バス「BRT」(Bus Rapid Transit)の運行を目指すことを盛り込んだ基本方針をまとめた。新潟駅―白山駅間を走らせ、運営は新潟交通(新潟市)に任せたい考えだ。13日の市議会全員協議会で説明する。
asahi.com:14年度までに「BRT」-マイタウン新潟
この書き方だと、連節バスがBRTだという誤解を招くのではないかと思う。
「BRT」とは輸送システムの名称だが、システムは目に見えない。目に見えないものを目に見えるもので説明するのは「わかりやすい」が、偶像崇拝に陥る危険もある。ちょうど、「LRT」が低床型路面電車のことだと誤解され、矮小化されたように。
まあ、新聞記事にあまり目くじらを立てても仕方がない。市の検討委員会*1の委員長である横浜国立大大学院中村文彦教授は、その筋の専門家だから、東日本大震災被災地で検討されている名ばかりの「BRT」とは違って、ちゃんとしたBRTを考えているのだろうと思う。
- 作者: 中村文彦
- 出版社/メーカー: 学芸出版社
- 発売日: 2006/10/30
- メディア: 単行本
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以前この本を読んで、バスの可能性の豊かに感心したことがある。それ以降、それまでLRTに抱いていた幻想を自分の中で相対化することができた。非常に貴重な読書体験だった。
というわけで、新潟市のBRT導入構想に頭から反対する気はない。連節バスを導入するほどの需要があるのかどうか気になるところではあるが、その辺はちゃんと考えた上なのだろう。まさか、見た目が珍しいから観光客誘致の起爆剤になる……などという思いつきによるのではないだろうし。
*1:というのは新たな交通システム導入検討委員会を指しているのだと思う。
2012-02-06
■[雑文]今日の椿事は明日の茶飯事?

4日午前9時10分ごろ、大阪府茨木市西河原1丁目のJR京都線で、大阪発長野行き特急「しなの」(10両編成)がシカをはね、一時運転が止まった。乗客約200人にけがはなかったが、上下2本が部分運休し、18本に最大23分の遅れが出た。
朝日新聞デジタル:JR特急、子ジカはねる 大阪・茨木の住宅街 - 社会
同じ事件を扱った記事がほかにもあったが、リンクだけに留める。
- 特急がシカと衝突…大阪・6700人に影響 - MSN産経ニュース
- 珍しい…JR東海道線 特急とシカが衝突 ― スポニチ Sponichi Annex 社会
- 大阪府内で特急とシカが衝突、緊急停車 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
これらの記事から察するに現場はこの辺りだろうか?
確かにあまりシカが出てこなさそうな場所だ。
ただ、今は狩猟期間中だから、半矢のシカが山から下りてきて街中に出没することは考えられる。もしそうだとすれば、これはただの偶発事だということになるのだが……。
同じ偶発事でも、シカ生息地の個体密度が上がって、街に「あふれ出て」この事件が起こったのだとすれば、少し話は違ってくるかもしれない。ちょっと厄介な未来が待ち受けているかもしれない、という予感がする。
まあ、先のことはわからない。今は、事態を静かに見守ることにしよう。
関連記事
2012-02-04
■[雑文]悲しき起爆剤

JR土浦駅前のイトーヨーカ堂が閉店を決め、土浦市に店舗跡の売却を持ちかけたという話題を扱った記事の中にこんな一節があった。>
以前から、新聞記事で用いられる「起爆剤」に関心があり、何度か言及したこともある。 今回の記事を読んで、商業施設のあとに公共施設が入ることで「起爆剤」となると期待される「中心市街地活性化」って何だろう、という素朴な疑問が浮かんだのだが、それはさておき、先ほど引用した箇所の次の段落を見てみよう。一方、市が新庁舎建設の移転候補地として検討しているのは、〈1〉中央1丁目地区〈2〉土浦駅前北地区〈3〉京成ホテル跡地――の3か所だが、土浦店が新たな候補地に浮上する可能性が出てきた。建設費が安く済むメリットがあるうえ、約700人の職員のほか、1日当たり最大で1600人ほどの市民の出入りが見込めるため、中心市街地活性化の起爆剤となることに期待感があるからだ。
ヨーカドー撤退 土浦市が建物購入検討 : 茨城 : 地域 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
>
うーん。 駅前の再開発ビルに誘致した大規模小売店の撤退というのは地方都市の中心地空洞化の典型的なパターンのような……。 ところで、土浦市といえば、土浦連続殺傷事件を連想するのだが、この事件では確か駅構内でも人が殺されたはず、と思って調べてみたら、土浦駅ではなく隣の荒川沖駅だった。うろ覚えの記憶はあてにならないものだ。 閑話休題。 「起爆剤」繋がりでもう一つの記事を紹介しておこう。土浦店は1997年10月、土浦駅前の再開発事業で建設された商業ビル「ウララ」にオープン。地下1階から4階まで計約1万5000平方メートルの売り場面積があり、駅周辺のにぎわい創出に貢献してきた。しかし、イオン土浦ショッピングセンターが郊外に進出するなどし、駅周辺の空洞化が進み、業績は低迷していた。
ヨーカドー撤退 土浦市が建物購入検討 : 茨城 : 地域 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
>
こちらの記事にはノーコメント。東京電力福島第一原発事故の影響で観光客の減少に悩む会津若松市は、地元を舞台にした2013年放送予定のNHK大河ドラマ「八重の桜」を起爆剤にしようと、盛り上がりを見せている。
観光客減に悩む会津若松 大河ドラマ起爆剤に : 福島 : 地域 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
2012-02-01
■[雑文]市町村別女性比率ランキング

ふと思いついて、こんなことをつぶやいた。
男性にモテたい女性は青ヶ島村へ行きましょう。昨年の国勢調査で最も女性比率が低い村です。約36.3%。逆に女性にモテたい男性は京都市東山区に行くとよいでしょう。女性比率は57.7%となっています。
これはもちろん冗談だ。モテない男が女性の多いところに行けばモテるようになるということはないし、その逆もまたしかり。
ただ、ここで紹介した数値そのものはでたらめではない。
2010年国勢調査のデータがもとになっている。
せっかくなので、女性比率の高い市町村と低い市町村をそれぞれ1位から10位まで挙げてみよう*1。ついでに政令指定都市の区のデータも参考値として掲げておく。
まず、女性比率の高い市町村から。
| 順位 | 都道府県 | 市町村 | 女性比率(%) |
|---|---|---|---|
| (参考) | 京都府 | 京都市東山区 | 57.7 |
| 1 | 和歌山県 | 古座川町 | 55.6 |
| (参考) | 福岡県 | 福岡市中央区 | 55.6 |
| 2 | 山口県 | 阿武町 | 55.5 |
| 3 | 北海道 | 歌志内市 | 55.4 |
| 4 | 北海道 | 上ノ国町 | 55.4 |
| 5 | 静岡県 | 熱海市 | 55.3 |
| 6 | 北海道 | 神恵内村 | 55.2 |
| 7 | 高知県 | 奈半利町 | 55.2 |
| 8 | 北海道 | 上砂川町 | 55.1 |
| 9 | 和歌山県 | 太地町 | 55.1 |
| 10 | 山口県 | 周防大島町 | 55.0 |
次に、女性比率の低い市町村。
| 順位 | 都道府県 | 市町村 | 女性比率(%) |
|---|---|---|---|
| 1 | 東京都 | 青ヶ島村 | 36.3 |
| 2 | 東京都 | 小笠原村 | 37.1 |
| 3 | 沖縄県 | 北大東村 | 37.7 |
| 4 | 北海道 | 月形町 | 39.5 |
| 5 | 東京都 | 利島村 | 39.9 |
| 6 | 長野県 | 川上村 | 40.8 |
| (参考) | 大阪府 | 大阪府西成区 | 41.1 |
| 7 | 沖縄県 | 渡名喜村 | 41.8 |
| 8 | 沖縄県 | 南大東村 | 42.3 |
| 9 | 北海道 | 占冠村 | 44.1 |
| 10 | 青森県 | 六ヶ所村 | 44.2 |
人口の少ない市町村ほど、ちょっとした男女の人数差が大きく比率に反映されるので、全国でもっとも人口の少ない青ヶ島村の男女比に偏りがあるのは納得できる。
一方、人口1万人以上の六ヶ所村や4万人近い熱海市になぜこのような偏りが生じているのかは見当がつかない。たぶん何か理由があるのだろうけれど。
政令指定都市の区をみると、大阪都構想のアキレス腱とも言われる大阪市西成区の女性比率の低さは頷けるのだが、京都市東山区や福岡市中央区の女性比率の高さの理由はよくわからない。女子大の学生寮でもあるのだろうか?
リストを見ながらあれこれ考えをめぐらせていると、時間を忘れてしまうほど楽しいのだが、それでは時間がもったいないので今日はこれでおしまい。
追記
よく考えたら(よく考えなくてもそうだが)国勢調査が実施されたのは昨年ではなく一昨年だった。冒頭のつぶやきの「昨年」は「昨年度」と読み替えてください。
kechack
2012/02/02 11:05
六ヶ所村は原発労働者、熱海は旅館の仲居などの観光労働者が多いせいでは
trivial
2012/02/04 22:48
六ヶ所村のほうはそうかもしれないですね。村なのに人口1万人超えていますし。ともあれ、もう少しデータを収集してみようと思います。
2012-01-28
■[雑文]世にテンプレパブコメの種は尽きまじ

意見は送りたいけれど、「どう書いたらわからない」
renの部屋 【緊急】兵庫県の特定鳥獣保護管理計画が改悪の方向へ パブコメ1/31締切!
「県の計画全文を読んでいる時間がない」という方もいらっしゃると思います。
特に今回は時間が無いので、兵庫県に本部を置く日本熊森協会にお願いし、
協会が兵庫県の会員向けに作成したパブコメの文例を送って頂きました。
内容に賛同できる方は、以下をそのままコピペして
お使い頂いて構いません。もちろん、これにご自分の意見をプラスして
お使い頂くのも自由です。ご活用ください。
以前、「2分でOK!」のテンプレパブコメの悪夢 - 一本足の蛸で紹介した例に比べると、自分の意見をプラスしてもいいと書かれているだけ良心的といえるかもしれないけれど、「どう書いたらわからない」とか「県の計画全文を読んでいる時間がない」という人にまで意見提出を勧めるのはやり過ぎだと思う。
ちなみに、兵庫県の第3期ツキノワグマ保護管理計画(案)はここから入手できるのでざっと読んでみたのだが、本文だけなら6ページ、表紙から資料まで全部ひっくるめても30ページしかないので、読むのにさほど時間はかからないと思う。
ところで、個人的に気になったのは次の箇所だ。
本県に生息する二つの地域個体群は、それぞれ隣接府県にまたがって生息しているとともに、生息域の拡大により地域個体群の境界も不明瞭になっている。このような状況において、本県だけで地域個体群ごとの管理方針を設定することは困難なため、全県の推定生息数の中央値をもとに、下記のような考え方により管理方針を設定する。
兵庫県だけで管理方針を設定するのは困難だというのなら、京都府や鳥取県などと共同で管理方針を決めるのが筋というものだろう。いちおう
県内に生息するクマの個体群のうち、「東中国地域個体群」は鳥取県と岡山県、「近畿北部地域個体群」は京都府と連続して分布している。各地域個体群の健全な維持を図るため、隣接府県との連携強化を進めていく。
とは書かれているものの、「連携」の中に「管理方針の共同設定」が入っていないのはなんともかんとも……。
こんなことを書くと、「特定鳥獣保護管理計画は鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律第7条に基づき都道府県ごとに定めるものだから、共同でつくることはできない」などという人がいるかもしれないが、そんなことはない。条例でも関門景観条例のような例がある。法的には行政計画でも同様のやり方が可能なはずだ。実務上は難しいとは思うが、将来的な方向性として書き込むくらいは構わないのではないだろうか。
あと、細かいことだが、
の「農業センサス」という語に
という註釈が附されているのだが、これはちょっと紛らわしい。日本では農業センサスが単独で実施されたのは1995年が最後で、その後は「農林業センサス」または「世界農林業センサス」という名称で行われている。でもって、2010年世界農林業センサスでは、
2010年世界農林業センサスは、農林業経営を把握するために個人、組織、法人などを対象にして実施する調査と、農山村の現状を把握するために全国の市町村や農業集落を対象に実施する調査に大別されます。
農林水産省/調査の概要
となっている。つまり、すべての農家を対象とする調査と、農業集落を単位とする調査とでは。同じセンサスであっても調査系統が異なっているので、本文と註釈とがずれている。
この計画案が、「くまもりNews」(日本熊森協会公式ブログ)で書かれているほど「むずかしくて分かりにくい」とは思わないのだが、この「農業センサス」などはもうちょっと紛れの少ない書き方に改めたほうがいいのではないかと思う。でもこういうことで兵庫県庁へ意見を送る気にはならない。とはいえ、修正案も出さずに言いっぱなしというのも無責任だから、試案*1を掲げておく。
まず本文。
この「農業集落」に註釈をつける。
農業集落:市区町村の区域の一部において農業上形成されている地域社会のこと。具体的な農業集落の地域範囲は2010年世界農林業センサス農山村地域調査に拠る。