劣化コピー

有名作家の文体や作風に影響を受けた新人がデビューすると、よく「××は○○の劣化コピーだ」と言って貶す人がいる。
だがしかし! ネット書評家気取りの諸君、君たちは劣化コピーの真の恐ろしさを知らない。
マルチメディアだのITだのと言っても、世間ではまだまだ手書きの書類が結構多い。そして、筆圧でコピーする複写用紙は伝票から申請書まで、社会の至るところで使われ続けている。
だが、この複写用紙が曲者だ。
紙に常に同じ圧力がかかるという理想的状況でも2枚目、3枚目になるとだんだん字がぼやけてくる。さらに、特に訓練を受けていないふつうの人は、線の向きや文字の種類ごとに少しずつ筆圧が異なり、そのムラのせいで複写があまくいかないことも多いのだ。
数字の「8」の左半分がかすれて「3」になってしまうことなど珍しくはない。
さらにまずいのは、専用の複写用紙ではなく、紙と紙の間にカーボン紙を挟んでコピーをとる場合だ。カーボン紙の大きさが用紙より小さいせいで複写漏れがおきたり、書いている間に1枚目と2枚目が微妙にずれてあらぬところに文字が記載されてしまったりする。また、それを補正しようとして2枚目以降に直にボールペンなどで書かれたときには、もはや「同じ内容が記載された複数の用紙」とは言えなくなってしまい、それぞれの紙をじっくりと見比べなくてはならない。
これは苦痛だ。
泣きそうになる。
マルチメディアだのITだのと言っている御時世に、なんでカーボン紙で4枚複写などという方法を使わにゃならんのだ。せめて、ゼロックス使用可にしてほしい……。
以上、某アンケート調査の集計係の独り言。