ラノベ喫茶を作るには

一本足の蛸 - ラノベ喫茶についての覚え書きの続き。ちなみに、昨日の日帰り旅行では長浜で長浜ラーメンを食べました。滋賀県長浜市で「本場九州の長浜ラーメン」が食べられるとは!
さて、ラノベ喫茶の話。
ラノベ喫茶を作ろうとすれば、まずはマンガ喫茶を参考にすることになるのだが、マンガ喫茶に置いてあるマンガをそっくりそのままラノベに置き換えればラノベ喫茶になるというほど簡単なものではない。
マンガ喫茶インターネットカフェを兼ねていることが多い。マンガで暇つぶしをする客もいれば、ネットゲームで遊ぶ客もいる。また簡易宿泊所かわりにマンガ喫茶を使う客もいる。そのような、さまざまな客のニーズを取り込んで成長してきたのがマンガ喫茶だ。もともと喫茶店のマンガの数を増やしたのが起こりで「マンガ喫茶」という名称が定着しているとはいえ、今となっては「複合カフェ」と呼ぶほうが実態に適合している。
複合カフェは都心部の駅前から郊外の国道脇まで、さまざまな立地条件のところで展開しているが、これはさまざまな客層のニーズに対応しているという強みによるものだ。ラノベ喫茶ではそうはいかないだろう。
ここで第一のポイント。ラノベ喫茶はマンガ喫茶に比べると客層を絞り込むことになる。
ただし、ひとつだけ留保しておこう。複合喫茶のサービスの一つとしてラノベを提供するということなら、客層を絞り込むことにはならない。実際、売れ筋のラノベ置いているマンガ喫茶ならある。だが、今話題にしているラノベ喫茶はそういうものではなくて、店内のほとんどまたはすべての本がラノベで、「ラノベを置いている」ということが売りになるような、そんな店だ。その意味でのラノベ喫茶はどこにでも開設できるというものではない。ロードサイドは諦めたほうがよさそうだ。
次に、「ラノベを置いている」ということが売りになる別業種の店にどうやって対抗するか、ということが問題になる。別業種の店というのは、具体的に言えば書店だ。新刊書店と古書店の両方が競争相手となる。
マンガ喫茶の場合、買うよりも安い値段で本が読めるというメリットがある。手許に持っておきたいほど思い入れがあるわけではないが、時間に余裕があれば読んでみたいマンガがあるとき、または特定のマンガが読みたいわけではないが、何となく暇つぶしをしたいときには、マンガ喫茶に入ればよい。立ち読みのできる書店ならただで本が読めるが、あまり行儀のいいことではない。それに椅子やソファに腰掛けて、お菓子を囓りながら気楽に落ち着いてマンガが読めるのはマンガ喫茶ならではだ。
このメリット、ラノベ喫茶の場合はどうだろう? 1時間300円の料金でも2時間読めば600円だ。これではたいていのラノベの定価を上回る。読むのが速い人なら1時間で2冊くらいは読めるかもしれないが、それでも新古書店の100円均一棚で買ったほうが安くつく。となると、マンガ喫茶の料金システムそのままではラノベ喫茶を使うメリットはあまりないことになるだろう。
ここで第二のポイント。ラノベ喫茶には安さ以外のメリットが必要だ。
玲朧月氏のコラム及びここでのコメントでは明確に一つの方向性が打ち出されている。ラノベ喫茶に図書館機能を持たせ、書店では入手できないラノベが読めることを売りにするというものだ。付加価値の付け方はほかにも考えられるが、基本的にはこの路線がいちばんだと思われる。
だが、「絶版になって今では読めないラノベが置いてある」ということを売りにして、食いつく客はどういう層の人々だろうか? ラノベ読者の大部分は昔のラノベにさほど関心を持たないだろう。「日々多くの新刊が出ていて、それらを追いかけるだけでもお腹いっぱい。そのうえ、なんで昔のラノベまで手を出す必要があるの?」
では、好きなラノベ作家の本なら絶版になった過去の作品も含めて全部読みたい、という読者はどうか。そんなコアなファンならきっと古書店をかけずり回ってオールコンプリートを目指すだろう。やっぱり手許に本を置いておきたいからね。
結局、ラノベ喫茶の主要ターゲットは、一般読者とコアなファンの中間ということになる。古書店で本を買い集めるほどの手間をかける気はないが、過去のラノベにも関心があり、読めるのなら読んでみようと思っている、そんな人々だ。
客層を絞り込むのがラノベ喫茶の宿命とはいえ、これでは絞り込み過ぎのような気もする。秋葉原日本橋でも果たして経営が成り立つかどうか……。でも、乗りかかった船だ。なんとか客を集めることができるものとして、話を続けることにしよう。
さて、中途半端だとはいえ、いちおうはラノベファンをターゲットにするのなら、複合カフェのような「なんでもあり」は不要だし、コストを考えると切り捨てたほうがいいだろう。ラノベ情報を検索するためにインターネットの設備は必要だとしても、全席にパソコンを据える必要はない。また、終電を逃して転がり込んでくるような客は相手にしないから、24時間営業の必要もない。どうせあまり大勢の客が一気に来ることはないので、マンションの1室でも営業できるかもしれない。いや、それではさすがに本棚を置くスペースが確保できないか。
設備、営業時間、店舗面積などを工夫しても、たぶんマンガ喫茶並の料金設定では維持はできないだろう。では1時間1000円ならいいのか? 1500円? いや、時間制をやめたほうがいいかもしれない。本は時間を気にせずに読みたいものだ。
かといって、貸本屋方式で1冊いくらの勘定だと回転率の悪さが命取りとなる*1恐れがある。これもうまくいかない。
行き詰まりだ。どうしようもない。
「どうしようもない」では結論としてあんまりなので、以下、説得力は全然ないが、思いつきを書き並べてみる。

  • 「子供に読書習慣を身につけさせる」という大義名分で行政から補助金を得る。
  • 「読者の生の声を出版社に届ける」と称して出版社に出資させる。
  • 書店に併設する。
  • 期間限定でボランティアが手弁当で運営する。
  • ラノベのかわりにマンガを置く。

……ダメだ。

*1:これはここで既に指摘されているとおり。