七番目は不思議じゃない七不思議

七不思議の作り方 (電撃文庫)

七不思議の作り方 (電撃文庫)

佐竹彬の新刊を発売月中に読み終えたのはこれが初めてだ。φシリーズでは、読みかけては中断し、また読みかけては中断するのが常*1で、つい読みやすい別の小説に浮気してしまうことが多かったが、今回は比較的すらすらと読めた。偉そうな物言いだが、この作家は着実に成長している。
今回、特によかったのは何と言ってもタイトルだ。φシリーズのタイトルは森博嗣っぽくて好きではない*2のだが、『七不思議の作り方』というタイトルにはその種のアクがない。アクはないけどインパクトはある。七不思議を作るとはどういうことだろう? で、どうやって作るのだろう?
これで中身が七不思議と全然関係なかったら困りものだが、もちろんちゃんと七不思議を扱っている。七不思議を作る側、その謎を見破ろうとする側が入り乱れて、のんびり楽しく学園生活を繰り広げるというお話だ。米澤穂信古典部シリーズを連想した。ただし古典部シリーズに比べるとミステリ色はかなり薄いので、これから読む人はご注意。
七不思議にまつわる構図のためにキャラクターが配置されているので、続篇は書きにくそうだが、同じキャラクターで全然別の物語を作ることは不可能ではないだろうし、逆に七不思議に関する設定だけ引き継いだゆるやかな連作にすることもできるだろう。今後どんなふうに展開していくのか、あるいは転進するのか、興味を惹かれる。次回作にも期待。
最後にひと言。章扉の「博士」の台詞はないほうがよかったと思う。

*1:といっても3冊しか出ていないが。

*2:これはつまり森博嗣の小説のタイトルが好きではないということでもある。