Spiegelfuge

かってちくま文庫で企画されていたと仄聞するそれは、ある不幸な偶然によって実現の可能性が限りなく低くなったようだけど、どこかで引き取ってもらうわけにはいかないものだろうか。ぶっちゃけた話、今ある程度の水準の『伝奇集』とか『アレフ』の翻訳しか我々が持ってないというのは日本文化の恥じゃ。ロバート・バートンの原著をちょっとでも覗いていれば「二十四通の手紙の変奏」なんていう阿呆な訳は出てこないはずだし、「鏡を通って(Through the looking glass)」とか「シャム双生児の神秘(The Siamese Twin Mystery )」とか、あまりに非ボルヘス的な訳が巷には横行しておる。(一部は最新の訳では直っている。また、英訳からの重訳とはいえ、晶文社版の『異端審問』はけっこういい線いってると思う。) これも伝え聞くところによると、T教授などはプレイヤッドの二巻本仏訳全集でわざわざ読んでいるそうではないか。

うたかた

  • 泡沫候補とはどのような候補なのですか?
  • 泡沫候補から公開討論会に出たいと言われたら?
  • 出演依頼しなかった泡沫候補から選挙管理委員会に抗議の電話があり、これを受けて選管からも「みんなでやりませんか」と相談がありました。
  • マニュアルでは、要請基準に「主要新聞すべてに出馬表明が掲載」等の条件をつける方法が書かれていますが、すべてに掲載されていれば、たとえ泡沫候補であっても出席要請はすべきでしょうか?

外出

よく考えれば、今週月曜日から一度も外に出ていない事に気づいた。
勤め人だった頃だと考えられないことだ。
ああ、引きこもりっていいなぁ。
でも、いつまでも引きこもっていると精神衛生上よろしくないので、今からちょっと書店に行ってきます。

AdventureのないAlice、または孤独増幅装置としてのインターネット

不思議の国のアリス』の原題は”Alice's Adventures in Wonderland”だが、しばしば”Alice in Wonderland”と表記される。これはディズニー映画のタイトルだと何かの本で読んで知って、それから長い間、アニメ版のタイトルが誤って原作のタイトルと混同されたものだと思いこんでいた。
ところが、ある時*1、『不思議の国のアリス・ミステリー傑作選 (河出文庫)』というアンソロジーを読んでいると、そこに収録されていた小栗虫太郎の「方子と末起」*2で「不思議の国のアリス」に「アリス・イン・ワンダーランド」とルビが振られているのを発見し、これまでの思いこみが全く誤りであることを知った。なぜなら、ディズニー版「アリス」は1951年の作だが、「方子と末起」はそれよりも前、1938年に発表されているからだ。
この発見は個人的には非常に興味深いものだったが、他人には言わなかった。というのは、当時、そんなこと*3に関心のある人が周囲に誰もいなかったからだ。興味関心を共有できる人が近くにいないというのは孤独なことだ。
それから長い年月が過ぎて、今述べたようなことはすっかり忘れてしまっていたのだが、今日ふとしたはずみにそれを思い出した。今も近くにはそんなことに関心のある人はいない。だが、今はインターネットがある。近くにあらずんば遠くを見よ!
だが、よく考えてみると、世間の「アリス」ファン諸氏にとってこんなことは全くとるにたらない瑣事に過ぎないだろう。インターネットは遠隔地に拡散した人々を集約する機能をもつが、同時に生半可な知識を無効化する力もある。「アリス」の原題から「Adventure」を抜いた略称がいつ頃から使われるようになったのか、そして日本ではその略称がいつ頃に受容されたのかを調べるのでなければ、全く意義はない。そう考えると、インターネットは孤独を癒す装置というより、それをさらにいっそう増幅する装置であるように思う。

追記(2007/07/09)

「アリス」の原題にまつわる話題など。
ところで、上の記事を書いたきっかけの「ふとしたはずみ」とは、近所の書店で『不思議の国のアリス・オリジナル』を見かけたことを指す。てっきり、とうの昔に絶版になっていたと思いこんでいたので、少し意外だった。
そういえば、『子供部屋のアリス (挿絵=テニエル)』という本もあったが、これもまだ生きているのだろうか。

*1:たぶん1988年頃のことと思われる。

*2:これは青空文庫で読める。どうでもいいが、この小説のタイトルをずっと「方子と未起」だと勘違いしていた。

*3:「アリス」の原題はもとより、「アリス」の物語そのものに関心のある人すらいなかった。

「イカ焼き」といえばイカを焼いたものだと思っていた関西人ですが、何か?

なお、イカに醤油味をつけて姿焼きにした、いわゆる「焼きイカ」とは異なる食べ物である。関西圏以外では「焼きイカ」のことを「イカ焼き」とも呼ばれるため混同することが多い。

イカ焼きと聞いて関東人がイメージするものと関西人がイメージするものは違うらしいです。

ところがこのいか焼き、大阪ではチビッコでも知ってる常識メニューですが、大阪以外では、まったく通じない料理なんですね。

大阪人は時々、非大阪食文化圏の居酒屋で、「いか焼き」などと書かれたメニューを見つけて、喜び勇んで注文してしまうことがあるのですが、これには決まって悲しい結末が待っています。出てくる料理はたいてい、「いかの姿焼き」なのです。「これ、いか焼きちゃうやん…」と悲嘆にくれつつ、涙とともにいかを丸かじりした大阪人が、これまで幾多いたことか…。読者からのメールでも、東京で「いかやき」っていったら「イカの姿焼き」の事と勘違いされます。といったご指摘をいただいております。