そろそろ支持者がほぼ皆無の持論を乱暴にブチあげとこうか。

「じゃあ本格って何よ」という議論が手付かずです。

「本格」? 虚辞でしょ。
前の記事を読んだときから思っていたのだが、一連の議論で他の人々が誰も「本格」というタームを重視していないのに、どうしてややこしい問題を持ち込んで議論を混乱させるのか、その意図がわからない。
一部の人は「本格」という言葉そのものに強い思い入れがあって、「何が本格なのか/でないのか」という問題に拘る傾向があることは承知しているが、およそこの問題ほど実りがないものはない*1。あれほど「本格! 本格!」と言い続けた大乱歩ですら、『幻影城』の冒頭で探偵小説の定義を行う際には、「本格探偵小説」という言葉を一度も用いなかった*2ことを思い出す*3べきだ。
そもそもミステリ界において「本格」などという言葉は「本格派vs.社会派」という対立構造がなくなった昭和の終わり頃*4にはほぼ歴史的使命*5を終えている*6。それ以降は、みんな好き勝手に過去の残像を解釈して何となくこの言葉を使っているだけで、テクニカルタームとしては全く使えない代物になっている。
もちろん「本格」という言葉を使いたい人は好きに使っていい。雑談の中でこの言葉を使ったからといって咎め立てたりはしない。
だが、他人が「本格」という言葉を使わない/重視しないからといって、それをネタに騒ぎ立てるのは見苦しい。もし騒ぎ立てることに理があると思うなら、まずは「あなたが本格だと思うものが本格です」以外の仕方で理論的考察に耐えうる程度に「本格」を特徴づけてもらいたい。「『本格』を定義せよ」などと言っているわけではない。必要十分条件を明示することまでは求めない。ただ、議論の参加者が共有できる、ある程度の特徴づけ*7を求めるだけだ。
話はそれからだ。

*1:いや、もしかしたら、もっと実りのない問題があるかもしれない。疑似問題の泥沼は果てしなく広がり、その底は想像を絶するほど深い。

*2:そのかわり、当時も今はまったく一般的ではない「純探偵小説」という言葉を用いている。

*3:もしまだ『幻影城』を読んだことがないなら今から読めばいいし、読んだが「本格」の忌避に気づかなかったのなら再読して確かめてみればいい。どちらも面倒なら、もちろん議論からさっさと身を引いてもいい。

*4:本当はもうちょっと前だと思う。

*5:もともとそんなものがあったのかどうかすら疑わしいが。

*6:見出しにも書いたとおり、この見解にはほとんど支持者がいない。誰か味方になって〜!

*7:「あなたが本格だと思うものが本格です」ではその条件を満たさないのは言うまでもない。