もうひとつのMF文庫

晴れた日は、お隣さんと。 (MF文庫ダ・ヴィンチ)

晴れた日は、お隣さんと。 (MF文庫ダ・ヴィンチ)

先月、メディアファクトリーからMF文庫ダ・ヴィンチが創刊された。毎偶数月25日発売だそうだ。初回配本ラインナップは以下のとおり*1

全然知らない人ばかりだ。福田栄一を除けば、アンソロジー『怪談実話系 書き下ろし怪談文芸競作集』の執筆陣の中に何人か見覚えのある名前がある程度だ。同じMF文庫でも、MF文庫Jと読者層はほとんど重なっていないだろう。別に「ダ・ヴィンチ文庫」でよかったんじゃないだろうか?
それはともかく、『晴れた日は、お隣さんと。』について。
これは、『監禁』以来1年ぶりの福田栄一の単著*2だ。第2作の『玉響荘のユーウツ』を読んで気に入ったので、それからずっと読み続けている*3が、これも面白かった。
福田栄一の小説はどれでも面白いのだが、その面白さを手短に説明するのはなかなか難しい。曖昧模糊としているというのではなく、明確な面白さなツボがあるのだが、それを端的に表す言葉が見あたらないのだ。その点で米澤穂信と似ているようにも思うが、米澤作品の大部分はジャンル分けすればミステリに含まれるが、福田作品はどれもミステリとは呼びにくい。それでも、これまでは「ミステリ風味のシチュエーションコメディ」とか「どたばたタイムリミットサスペンス小説」とか、なんとなくジャンル小説っぽいフレーズで紹介できたのだが、今回は全くの普通小説だ。いや、『あかね雲の夏』に比べれば、やや一般文芸っぽさが少ない*4のだが。
まあ、本の紹介をするのに強いてレッテル貼りをすることもない。文庫本だから気軽に買えて手軽に読めるはず。福田栄一初体験にはぴったりかもしれない。どういう読者になら積極的に薦められるのかはわからないが、読者を選ぶような妙な癖やアクはないから、安心して読めるだろう。

*1:折り込みチラシ掲載順。

*2:この間に、アンソロジーRe-born はじまりの一歩』が出ているが、これは未読。

*3:でも、まめにチェックしていないので、新刊が出ているのに半年以上気づかなかったこともある。

*4:物凄く奇妙な言い回しだと自分でも思うが、ほかにうまい表現が見つからなかった。