なんだ……新刊出るのか……

ふだん、ラノベの新刊情報をマメにチェックしていないので、電撃文庫の9月刊行予定のことはここで初めて知った。予想通り狼と香辛料IX 対立の町<下>』が予定に入っている。
平和氏の言うとおり、確かに新刊が出るのはめでたいことだ。それは決して否定できることではない。
しかし……。
心の奥で、ふとこんなことを思ってしまう。「なんだ……新刊出るのか……」と。
このがっかり感はいったい何なのだろう? 自分でもよくわからない。だが、わからないなりに理屈を捏ねてみよう。
支倉凍砂の軌跡は谷川流のそれをなぞっている。デビュー直後からネット上のラノベサイト界隈で注目を集め、『このライトノベルがすごい!』で1位になり、やがてラノベファン以外にも認知されてゆき、そしてアニメ化へと至るという、一見栄光に満ちた道筋の裏で、物語はどんどん停滞していき、ときおり作者の苦渋の陰が見え隠れし、この迷走状況はいったいどこまで続くのかと思っているうちに、シリーズ初の上下巻へと至る。
もちろん、相違点も探せばいくらでもある。たとえば谷川流は「ハルヒ」以外にもいくつかのシリーズを物しているが、支倉凍砂は「狼と香辛料」以外には書いていない*1。「ハルヒ」はアニメが大ヒットしたが、「狼と香辛料」は中ヒット程度だった。「ハルヒ」は多くの聖地巡礼者を生んだが、「狼と香辛料」の聖地巡礼など聞いたこともない。などなど。
だが、小異を捨てて大同に目を向けるなら、支倉凍砂は基本的に谷川流と同じ道を歩んでいると言えよう。ただし、二人の距離はデビューが3年弱、「このラノ」1位が2年、アニメ化が2年弱、と少しずつ縮まっている。そして、上下巻の上巻の発売は『涼宮ハルヒの分裂』が昨年3月、『狼と香辛料VIII』が今年5月だから、1年強のタイムラグとなっている。
この相似形を前にして、読者は何を期待するのか? もちろん、1年前に谷川流が成し遂げた「驚愕」の再現だ! 新キャラが登場し、事件を予感させるエピソードが積み重ねられ、いよいよこれから面白くなりそうだといういちばんいいところで宙ぶらりんにしてしまうミラクルを、もう一度みたい、体験したいと思わないファンがいるだろうか? 口には出さなくても、みんな思っているはずだ。「このまま下巻が出なかったら(ネタとして)面白いよな」と。
だがしかしっ!
いったん告知した新刊の発売延期が極端に少ない電撃文庫のことだから『狼と香辛料IX 対立の町<下>』はきっと予定通り9月には出ることだろう。もし出なかったら、驚愕ポイントは3つどころではない。手持ちのはてなポイント全部賭けてもいい*2くらいだ。それがわかっているから、がっかりしてしまったのだろう。
とかくこの世は思うようにいかないものだ。人生とは妥協の積み重ねだ。こうなったら仕方がない。『狼と香辛料IX 対立の町<下>』が、発売延期ネタの面白さを凌駕する面白さを備えていることを期待することにしよう。

*1:もしかしたら書いているかもしれないが発表していない。

*2:現段階で381ポイントある。少なくて申し訳ないが、どなたか勝負しませんか?