Hatena::ブログ(Diary)

Random-Access Memory(ver.2.0) RSSフィード

2010-01-17

新しい労働社会

| 17:52 | 新しい労働社会を含むブックマーク

新しい労働社会―雇用システムの再構築へ (岩波新書)

新しい労働社会―雇用システムの再構築へ (岩波新書)

『新しい労働社会』を読みました。


この本の著者である濱口さんのブログは愛読して、

そこからずいぶんと多くを学んでいます。

RSSリーダーに登録済み)


特に人文系の分野しか学んでこなかった私にとっては、

労働法制や、労働をめぐる諸問題について、無知で、

ブログ記事を読むなかで、こういう風に考えればよいのかと、

発見することが多いのです。

(すべての記事を確認はできないのですが)


この『新しい労働社会』に書かれている話は、

突飛な話ではないかと思います。

普段、ニュースで耳にする労働問題が、

筋道だてて整理されていき、

今の日本のあり方とは少し違うあり方が

見えてくる本となっているかと思います。


と言ってばかりではつまらないですので、

以下、著書の範囲を超えている部分もありますが、

感想を書いていきます。


■感想1


第3章でシングルマザーのことが記載されています。

下記の事実についてはじめて知りました。


「日本のシングルマザーの就業率は80%以上と

世界的に見て驚異的に高く、さらに日本では就労している

シングルマザーの方が生活保護を受給している

シングルマザーよりも貧しいのです」(p.155)


このエピソードが紹介された後、

この仕組みでは、働くことが得にならずモラルハザードが生じる、

そこで生活保障制度の中に、働く意欲を喚起するような仕組みを

ビルトインしつつ、生活保障制度を柔軟化していかねばならないと

著者の論が続いているかと思います。


上の状況を聞いて率直に思ったのは、

「なぜ彼女たちは生活保護を選択しないのか、

それとも選択できないのか」ということです。

生活保護の申請がおりないのでしょうか?

アクティベーション的な政策の導入以前に

"福祉へのアクセス可能性"を

もっと確保せねばならないのではと感じました。


■感想2


ブログのなかでも数多く言及されていた

教育の職業的レリバレンス論ですが、

私も重要な論点だと考えています。


私はもともと人文系なので、この話は、

リベラルアーツ 対 職業教育」の図式で

考えられるのかなと予測していましたが、

その予測は見事に外れました。


筆者は下記のように書いています。

「大学は、『学術の理論(…)文化の発展に寄与する』

という建前と、現実の就職先で求められる

職業能力とのギャップをどう埋めるのか

という課題に直面しています。」(p.144)


つまり大学のなかの"研究"と"教育"の齟齬が

労働社会の構造変化に伴い、

表面に出てきたというのが現状なのではないでしょうか。

研究はすべて「建前」というわけではありませんが、

「無用の長」としての性格を多分に有しており、

職業的レリバレンスとは異なる位相にあるかと思います。


大学教育のコストを公的に負担する代わりに、

大学で職業的レリバレンスの高い教育を行うという選択肢は、

おそらく多くの方が納得する正当性の高い選択肢かと思います。

では"研究"を公的に保障する仕組みはいかにあるべきか、

これはすぐには答えられない難しい問題かと思いました。


念のために申し添えておくと、

問題は(非常に)多いにせよ、

大学の研究空間は重要だと考えています。

しかし社会の文脈のなかで、

大学での"研究"という営みを

捉える時期が来ているのかもしれないと感じたのです。

事業仕分けを見た際もそう感じました。)

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/tsubosh/20100117/1263718341