KISSを見た!

 「KISS」を見たと言っても、勿論誰かがキスしているところを見たわけではなく、アメリカのロックバンドのキッスのことなのですが…。それもコンサートを「観た」のではなく、渋谷のタワーレコードにいたキッスを「見た」ということなのです。

 のっけからややこしくて申し訳ないのですが、これはある意味、「コンサートを観た」というより凄いことかも…。キッスのメンバーはタワレコでのイベントで来ていたようなのですが、私はそれを知っていたわけではなく、何となく立ち寄ったタワレコで、(おそらくは販促のための写真撮影後に)普通に店を歩いているメンバーに出くわしたのです。

 議会も一段落して、今日はオフにすると決めていました。天気もそこそこなので、趣味のCDショップ巡りにでも行こうと思い立ち、いつものように「吉祥寺でいいか」と考えていると、たまたま妻が渋谷に用があると言います。タワレコの品揃えは渋谷の方が充実しているし…でもわざわざ渋谷まで行くのも面倒だな…などと迷いつつ、結局、久しぶりに渋谷まで足を延ばすことにしました。

 店に着くと、入口付近に人だかりができていたので、何となく「有名人でも来るのかな」と思いながらも、そのままポップスとロックの売場がある5階に直行し、CDを物色しはじめました。しばらくすると、平日の昼間にも関わらずフロアが混んできて、中にはカメラを抱えている人もいたので、やはり有名人が来ているんだろうなと思いながら、さして興味も抱かずに、引き続きCDを物色しながら陳列のコーナーを移動したところで、いきなり生キッスに遭遇したのです。

 最初はありがちな「偽物」というか、誰かがメイクをしてキッスに扮しているだけだろう思ったのですが、分厚いメイクを通しても、ポールとジーンの顔は紛れもなくホンモノです。近々キッスの日本公演が行われることは知っていたので、その記憶につながると今度はホンモノと至近距離で出くわした緊張で心臓が高鳴り出しました(人と会っただけであんなにドキドキしたのは久しぶりです)。

 何しろ中学生の頃は自他ともに認めるキッスファンで、小遣いを貯めてはレコードを買い揃え、仲間内で組んでいたバンドではキッスをコピーし、初めて行った「外タレ」コンサートも日本武道館のキッスでした。ド派手なメイクとコスチューム、ステージでは火を吹いたり、血糊を吐いたり…。あまりの破天荒さに教育上良くないと大人は眉はしかめたけれど、外見もさることながら、真にファンを引き付けたのは、ラウドでありながらポップでキャッチ―な曲そのものにあることを知っていました。

 ともあれ、今日出くわしたキッスはメイクもコスチュームもフル装備で、トレードマークの超厚底のブーツを履いた彼らは異常にデカく、ものすごい威圧感で、ファンならずともあの場にいた人は圧倒されたに違いありません。

 異常な緊張に包まれながらも「そうだ写真」と思い、携帯を出そうと思ったのですが、緊張していたし、50男が「写メ」というのもはばかられ、躊躇しているうちにメンバーはフロアからいなくなってしまいました。その直後に友人からたまたま電話がかかってきて、当然のことながら「今キッスを見たんだ」と話したのですが、「偽物じゃないの」と冷めたことを言われ、やっぱり撮っておけばよかったと後悔しています(苦笑)。

 今朝は予定もなかったので、久しぶりに妻とゆっくり話をする時間があり、妻は入江富美子さんという映画監督のことを話題にしました。この方は元々映画好きなのだそうですが、映画を作った経験は皆無で、当然監督経験もなし、ところがある日一念発起して映画制作を決意、ホームビデオでドキュメンタリー映画を撮り、それが話題を呼んで今や15か国・15万人が観るまでになったというのです。入江さんは映画監督の傍ら様々な啓発活動もされており、その中で「直感を大切に、ふと思ったことを行動に移すことがすべてのスタート」という趣旨のことをおっしゃっていて(私の表現力が未熟で、実際はもっと深いのですが)、妻もそれを実践できるようになりたいということでした。  

 今日の出来事とは何も関係ないようにも思えるし、10台の頃の憧れの対象に出くわしたことを「必然」というほど能天気ではありませんが、一方で、簡単に偶然で片づけたくない自分がいます。最近、妻は入江さんの影響もあってか、自分をポジティブに変えようと努力しているようで(そんなに単純なことではないと怒られそうですが)、傍から見ているとそのことに努力していること自体が痛々しく、ちっともポジティブではないようにも見えます。とはいえ、それによって以前とは明らかに変わった妻の言動が、私だけでなく子どもたちにも良い影響を与えていると感じることが少なからずあって、どちらかというと最善より最悪を想定してきた私も、あながちポジティブ思考も悪くないなと思うようになりました。(最悪を想定することとポジティブ思考は必ずしも対極ではないでしょうが…)

 別にこれといってほしいCDがあったわけではなく、ただ見るだけなら吉祥寺でもよかった。しかも渋谷は人だらけで本来あまり好きではないし、妻に用があるとはいえ、今までの私なら絶対に行っていない。なぜと聞かれれば「ふとそう思った」だけなのですが、今朝妻とした話が頭の片隅にあったことは確かです。

 実は、キッスの来日を知ったのは、今月の8日に妻と行ったヒューイ・ルイス&ザ・ニュースというバンドのコンサートでチラシをもらった時でした。そこには10月23・24日東京公演とあり、どっちみち両日とも仕事のため行くという選択肢はなかったのですが、当然気にはなっていて、WowWowで24日のコンサートを生中継するということを知り、すでに録画予約をしていたところでした。

 私はスピリチュアルなことにほとんど関心はないけれど、私のふとした行動がもたらした「ドキドキ」を偶然で片づけるのはつまらないし、根拠はないけど「必然」とする方がハッピーでいられる気がします。

※写真は勿論今日撮ったものではありません。「キッスを見た」とfacebookに投稿したところ、友人がコメントに添付してくれたものです。